ワンダーボーイ アーシャ・イン・モンスターワールド
【わんだーぼーい あーしゃ・いん・もんすたーわーるど】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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Nintendo Switch プレイステーション4 Windows(Steam)
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発売元
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スタジオアートディンク G CHOICE
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開発元
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MONKEYCRAFT
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発売日
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Switch/PS4
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2021年4月22日
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Win
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2021年6月29日
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定価(税別)
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Switch
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パッケージ通常版:3,980円 スペシャルパック:5,980円 ダウンロード版:3,480円
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PS4/Steam
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ダウンロード版:3,480円
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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備考
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パッケージ版はSwitch版限定
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判定
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良作
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ポイント
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オリジナルに忠実なリメイク 問題点も微改修 忠実故の物足りなさ
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ワンダーボーイ/モンスターワールドシリーズリンク
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概要
1994年にメガドライブ用ソフトとして発売されたワンダーボーイシリーズの一作『モンスターワールドIV』のリメイク作。
当時製作していたウエストンはすでに解散しているが、オリジナル版の制作に携わっていたスタッフが再集結することで実現した。
なお、リメイク元では初の女性主人公採用作ということでワンダーボーイの名称は使われていなかったが、シリーズ作品であることを明確にするためか、ナンバンリングを外しタイトルを微妙に変更した上でタイトルの冒頭に「ワンダーボーイ」の名前が冠されている。
変更・追加点
オリジナルスタッフを集めて原作を忠実にリメイクした、と公式で謳っているが、若干の変更点もあるため原作とリメイクで変更した点を記述する。
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3D化によって鮮明になったグラフィック周り
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オリジナル版では装備の種類を変えてもグラフィックに変化がなかったが、本作ではデザインが新規のものに改められた上でグラフィックにも反映されるようになった。
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また、オリジナル版における体力強化装備が「鎧」から「腕輪」に変更された(効果自体はオリジナル版と同じ)。
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セーブの制限の緩和
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セーブ地点でしかセーブできなかったオリジナル版に対しほぼ、すべての地点でセーブメニュー画面から自由にセーブすることが可能になった。セーブファイル数も2個から12個に増加した。
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各地にいたセーブ仙人自体はヒント役として残されている。
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攻撃アクションの仕様変更
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「攻撃を4回当てると5回目のヒットが威力2倍のマジカルヒットになる」という原作の仕様が変更され「{攻撃をN回当てると攻撃力がMプラスされるマジカルヒットを任意で使用可能になる(NとMの数値は剣によって異なる)」という形となった。
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原作の剣は攻撃力の数値が違うだけで上位が出たら買い換えるしかなかったが、この仕様によりマジカルヒットの出しやすさや期待値で剣を選択する余地が生まれた。溜まったマジカルヒットをいつ使うか選べるようにもなっている。
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メダルを入手して入る4つのダンジョンに限り再度探索できるようになった
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ただし後述の通り取り返しの付かない要素や入れなくなる場所(ゲーム開始~沈黙の塔まで)自体は残っている。
本作独自の追加要素
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モンスターワールドシリーズとしては何気に初めてキャラクターボイスが導入された。
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主人公であるアーシャの声は声優のファイルーズあい氏が演じている…のだがそれに留まらず、ペペログゥやプラプリル王妃、果てにはモンスターの声までも担当しており、たった一人で30近い役を全て演じ分けている。
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回復アイテムが出やすくなったイージーモードが追加された。
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ゲーム内にはノーマルモードに関して「原作に近い難易度」と補足されているが、後述の仕様からノーマルであっても原作よりはかなり簡単になっている。
評価点
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こだわりの原作再現
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リメイク作で鬼門になりがちな元のゲーム性・シナリオを壊してしまうような追加要素はなく、公式が掲げる「手触り感はメガドライブ版のまま」というコンセプトに嘘偽りはない。
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起動時のペペログゥがやってきてSEGAのロゴの色が変わったり、初めて到達したステージでは刺繍風の背景をバックに地名が出るなど原作で印象的だった演出がちゃんとそのままとなっている。
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オリジナル版の有名な裏技である「所持金が777になると大金が手に入る」「デバッグの鎧」も本作ではしっかりと残されている。
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モブキャラや小物もメガドラのドット絵を3Dに落とし込みつつ、情報量が少ないキャラやオブジェクトには装飾が足されるなど現行機で見ても見劣りしないように調整されている。
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音楽はもちろん現行機相応の物にアレンジされているが、いずれも原曲から大きく印象が変わってしまわない程度に留められている。
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メガドラ音源への切り替え機能も搭載しているのだが、その解禁方法が「原作でサウンドセレクトモードを出すための隠しコマンドを入力する」というもので、なかなか遊びが効いている。
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一方良改変と言える箇所もある。
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『モンスターワールドIV』と言えば真っ先に話題になるであろう「アーシャが宝箱を開ける時のモーション」がちゃんとそのまま…ではなくお尻の振り方が異なる複数のモーションが導入された。
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また、アーシャが狭いパイプに入る時に頭から入ったのに出てくる時はお尻の方からという不自然な描写があったのだが、こちらはちゃんと修正されている。
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オリジナル版は王妃の服装がシナリオ通して変化がなかった(ドット自体はオリジナル版も変わる)のだが、本作では衝撃的な姿に変化するようになり、その姿は大変好評。
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グラフィックはドットから3Dになったが過度にリアルな物にせず、モンスターワールド「らしい」アニメ調の3Dになっている
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原作では当然ながら二次元的な絵作りをしていたが、本作は立体的な視点を生かした演出になっている箇所もあり、ただ3Dになっただけでなく3Dになったことを効果的に活用できている。
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親切になった点
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原作はペペログゥを呼ぶのがAボタン、ジャンプがCボタンに割り振られていたためメガドラのコントローラーだと操作ミスすることがあったが、本作ではペペログゥを呼ぶのはRボタン、ジャンプはBボタンとなり操作難度が緩和された。
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原作は回復アイテムをそれぞれ1個しか持てなかったが、本作では2個以上所持できるようになった。
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原作ではセーブ仙人に話しかけた時しかセーブできなかったが、本作ではどこでもメニュー画面からセーブできるようになった。
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上述の通りセーブスロットが12個に大増量されているため、あまりアクションに慣れていない人でもフル活用することでハートを残しつつ先に進みやすくなっている。
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オリジナル版の賛否両論・問題点も「一部」改良されている
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原作では序盤に「まずは鎧を用意する」(※実際はペペログゥを孵化させるのが正解)という嘘ヒントがあったのだが、本作では改善されペペログゥがいないと先に進めないことが分かりやすくなった。
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オリジナル版のプレーヤーに「アーシャがペペログゥを雑に使ってる」とネタにされたことを受けてか、ペペログゥの特性に関する看板の文言が変更されている。
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クリア済みのダンジョンに再侵入できるようになった。
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このため取り逃した「命のしずく」を回収しにいけるようになった。ただし...(後述)
賛否両論点
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ボスデザイン
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各ダンジョンのボスは「複数の同じ物体がくっついた」シンプルなデザインとなっている。これが動きまくるのはオリジナル版発売当時は「プログラム的に難しい多関節を実現していてすごい」という評価を受けていたのだが…
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さすがに2021年ともなるとシンプルすぎてカッコよさや迫力という観点ではかなり微妙な物になっている。
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なお限定パッケージ版の資料によると「デザイン変更も検討したのだが、最終的にオリジナル版を尊重した」とのこと。
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一部のセリフが変更・追加されているのだがその中に「16bit」や「ゲーマー」などメタい単語が出てくるものがあるため、笑えたという意見もあれば世界観への没頭を阻害するという意見もあり、賛否両論となっている。
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相対的に原作より格段にヌルくなっている
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前述したオリジナルとの変更点の繰り返しになるが「
セーブポイントが限られている
→
ダンジョンの内部でも自由にセーブ&ロードが可能
」「
HPを完全回復する薬は一度に1つしか持てない
→
最大9個まで持てるため意図的に稼ぎプレイをすれば実質的にはHPを5倍にしてダンジョンに挑める
」…と新しい仕様はこちらに有利になるものばかりなのに、敵の配置や難易度は旧仕様を想定したバランスのままなので、原作経験者はもちろん新規プレイヤーにとっても攻略は簡単になった。これならばハードモードが欲しかったところである。
問題点
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キャラクターボイスは掛け声を発する場面とちゃんとしたセリフをしゃべる箇所の両方があるのだが、主人公であるアーシャはほぼセリフを発さずパートボイスのみになっている。
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これ自体はキャラクターイメージの固定化を避けたい、いわゆる「しゃべらない主人公派」の人への配慮など事情があるのかもしれないが、ムービーシーンにおいて本来別の箇所用に収録した汎用ボイスを使いまわしているため演技が合っていないシーンがいくつか見受けられる。
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見ていて違和感があるだけでなく、演じた声優に対しても不本意な流用で失礼である。
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悪い意味でも原作そのままな箇所もある。
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後半のダンジョンのいじわるさが漂うギミックに関しても忠実に再現している。
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上記の通りすでに挑んだダンジョンの命のしずくも回収できるようになったのだが、ストーリー後半の展開も原作準拠のため終盤になると結局回収できない状況に陥ってしまう。
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無いに等しい新要素
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以上の通り追加ダンジョンやハードモード等の新要素が一切ないため、ゲームボリュームは90年代のアクションゲームそのままである。
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初見でも7時間程度あればクリアできてしまうため、4000円近い価格設定でこれは現代の観点だとボリューム不足感もある。
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唯一追加されたものと言えば「命のしずくを全て取ってクリアするとエンディングが変わる」ことだが、
原作よりマシになったとはいえこちらでも「命のしずくを取らずにセーブするともうそのデータでは取れなくなる」という箇所はいくつもあるため攻略を見ないのならばメモを取って何度もやり直す覚悟で進めなければならない。
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そこまでやって達成した特殊エンディングの内容は……
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エンディングでアーシャを歓迎してくれるモブNPCの数が増える。以上。
2つのエンディングの内容を動画に撮って見比べないとわからないくらいの細かい変化しか起きない。
大した変化がないことはそのエンディング中でネタにしているが、手間をかけてコンプリートした報酬としては微妙過ぎる。
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命のしずくについてもう1つ。ライフ最大値はしずく10コで1増える。しかし、MAXは旧作通り15コなので、コンプリートを目指す場合、150コ集めた時点で上限に達してしまい、あとの50コはただ集めるだけの飾りになってしまう。目指さない場合には、いくつか取り逃がしてもその先で集めてMAXにできるチャンスがあるという点では、助かるかもしれないが…。
総評
リメイク版を作って欲しいという要望の中でよく聞かれる「オリジナル版そのままに絵だけ綺麗にして欲しい」という要望を本当に実現したらこうなったというゲーム。
アーシャの可憐さはそのままに2Dアクション部分に関しても元の出来の良さもあって(やや難易度が低い部分はあるが)現代の観点で見ても十分合格点と言える。
ただ、せっかくオリジナル版スタッフが再集結というまたとない機会に出てきた物としては、「原作を生かした進化」よりも「そのまま」を選んでしまったことにいささか嬉しさよりも惜しさを感じる部分はある。
原作が遊びにくい状況ならば忠実さへの需要はより大きかったかもしれないが、過去に幾度か移植・配信されておりメガドライブミニにも収録されているため、ゲーム性のアレンジを加えないという方向性が「本作ならではのセールスポイントを見いだせない」という真逆の評価を招く結果となってしまった。
とはいえ、ゲームの根本そのものはオリジナル版から大きく損ねておらず、良リメイクと評して差し支えない出来を保っている。
オリジナル版経験者、気軽に楽しめる2Dアクションゲームがやりたい新規ユーザー双方、十分楽しめるだろう。
最終更新:2024年08月18日 20:14