うたわれるもの 偽りの仮面

【うたわれるもの いつわりのかめん】

ジャンル アドベンチャー / シミュレーションRPG


対応機種 プレイステーション3
プレイステーション4
プレイステーション・ヴィータ
メディア 【PS3/PS4】BD-ROM
【PSV】PlayStation Vitaカード
 それぞれダウンロード版あり
発売・開発元 アクアプラス
発売日 2015年9月24日
定価 パッケージ版:6,800円
ダウンロード版:6,000円
プレミアムエディション:9,000円(税別)
プレイ人数 1人
レーティング CERO:C(15才以上対象)
廉価版 【PS4/PSV】AQUAPRICE2800
 2019年3月28日/2,800円
備考 公式サイト
判定 なし
ポイント 続編ありきの物語構成
萌えを意識した作風
戦闘は発展途上でもあるが新要素が光る
Leaf/AQUAPLUS作品リンク


概要

 アクアプラス設立20周年記念として、『うたわれるもの 散りゆく者への子守唄』から13年を経て制作された続編にあたる。発売当初に前作を含めて3部作であり、本作では完結しないことは前もって知らされていたが…。

あらすじ

青年がふと目覚めると見知らぬ世界が広がっていた。彼は自らが置かれている状況を理解できず、また目覚める前の記憶もなかった。しかし彼に考える暇も与えずに、巨大な蟲や大きな赤いナメクジのような生物「タタリ」が襲い掛かる。そこに助けに入ったのは美しい少女だった。


システム

  • アドベンチャーパートについて
    • システムは前作と同じで、自由行動時間のうちにイベントを起こす場所をプレイヤーが選ぶことができる。
    • イベントの順序や取捨選択が可能だが、キャラの好感度は実装されておらず根幹部分に影響はない。
  • 戦闘パートについて
    • テキストによるアドベンチャーの合間にシミュレーションRPGによる戦闘が挿入される。
    • シナリオで挑むことになるステージ数は17。一周クリアすると「夢幻演武」と呼ばれる戦闘に挑める。こちらは難易度が高くステージ数は16。
    • 前作からの変更点
      • 難易度は常時変更可能。戦闘時に行動の巻き戻しが可能になった。一度クリアしたステージはいつでも挑戦が可能で、経験値稼ぎができる。
    • シナリオ前半は襲ってくる獣や悪さをする賊の撃退といったものが多く、難易度調整が可能だがそれでも全体的に難易度は低め。
      • 隣接した味方との協撃は廃止、代わりに連撃システムは強化、敵の攻撃軽減及び回避システムが新しく実装された。
  • その他
    • プレイステーションネットワーク(PSN)と接続することで、プレイデータを別機種で共有できるクロスセーブ機能がある。

評価点

  • シナリオ関連
    • 本作からの新規キャラが多いので、前作の知識前提となる場面は少なく新規層にもとっつきやすい。それでいて前作キャラクターやそれに関連する描写など、前作ファンへのサービスもしっかりとある。また主人公ハクは前作主人公と良い対比がなされている。
    • 主人公ハクが帝と出会い、世界の真実を知らされるまでの展開は上手に練られている。
    • 後半は非常にシリアスな展開が多いが、それまでの殆どはゆるい展開であり楽な気持ちでプレイできる。
    • 板挟みに陥ったキャラクターの心理描写は秀逸。終盤に起こるあるイベントからエンディングにかけての描写は丁寧な伏線が張られており、プレイヤーに良い意味での衝撃を与えてくれる。
  • 戦闘における新システム
    • 前作にはなかった連撃やキャラ技が追加。
    • キャラによっては飛び越えられる溝などのギミックを地形に組み込んである。
    • クリア後に高難易度マップを導入しており、前作も抱えていたSRPGのボリュームの向上に成功している。
  • 演出
    • 背景やキャラ画、BGMは前作に劣らず好評価。
    • SRPGパートは3Dマップで表現されるようになり、背景となる地形はかなり写実的に描かれている。また味方と敵のユニットを隣接させると交戦状態のモーションをとるといった細かい芸が見られる。
  • 魅力的なキャラクター
    • 個性豊かで、特に後のほうに登場するほど衝撃的なデビューを飾るヒロインはもちろん、男性キャラクターも人気が高く、怠惰だが頭が切れていざという時に頼りになる主人公ハク、公共の場での品行方正な顔と私事での気のいい兄ちゃんとしての顔を使い分けるオシュトルは人気が高く、同社の歴代作品の男性キャラクターの人気投票で2位と3位を占める快挙を成し遂げている。他にも強面の武人肌に見えて実は子供好きなミカヅチ、ハクを心の友と慕うマロロなど魅力的なキャラが多い。

賛否両論点

  • 偏ったシナリオ構成
    • 前作もそうだったが、前半中盤はキャラ紹介に重点を置いたノベルアドベンチャーのようなつくり。本作のSRPGの比率はさらに前作以上に低下している。SRPGもテコ入れがなされているのでやりこめる場面は多々あるのだが、シナリオの印象がゲームの評価に大きく影響している。
    • ところがその肝心のシナリオは、細かい区切りで見れば決して出来が悪くはないのだが、前半はいわゆる「日常系」のようなほんわかとした空気で進む一方で、終盤になると一気にシリアスな方向に物語が動きだして謎を多く残したまま続編へ…という流れであり、3部作であることを考慮しても非常に異質。
      • 継続・新規プレイヤー問わず、鬱な雰囲気が苦手な人にとっては終盤までの空気はかなり楽しめるとは思われるが、この幕切れに対して、いい余韻を残したという肯定的な見方もあれば話を不完全にしたまま続編に投げたとする否定的な見方に分かれている。
      • おそらくこの日常パートは、2部に限らず続編の3部で活躍するであろう人物紹介の役目を兼ねていると考えられるのだが、ここのパートが冗長で蛇足感の否めない展開で水増ししているといった批判も多い。またサブキャラクターが重大なシナリオに絡まないことはSRPGでも珍しい事ではないが、中盤は散々出番があったにもかかわらず、終盤では蚊帳の外になっているキャラもいる。一方、日常パートが殆ど終わった終盤に仲間になるヤクトワルトというキャラは、日常パートに参加する機会がほとんど無く非常に影が薄くなってしまっている。一応戦争パートではクロウ戦でハクとの連携攻撃で突破口を開くなど若干優遇気味ではあるが影の薄さを払拭するには至っていない。
  • 新規層への配慮
    • 基本的には前作とは殆ど関係のないキャラが話を展開しており、前作をやっていなくても大筋の理解には支障はないのだが、それでも前作をやっていないと分からない描写はそれなりに多い。
      • クオンの生い立ち(特にエピローグ時の展開)や、それに関連する人物の説明はかなり不足している。
  • SRPGがメインシナリオを占める率が少ない。
    • 戦闘の合間に会話パートが30分ほど間に挟まる事もある。
      • 特に長いのがステージ6~7の間とステージ11~12の間で、音声をしっかり再生してプレイした場合、約5時間に渡って会話パートが続く。
    • テンポの良さには貢献しているかもしれないが、SRPGとしては非常に難易度が低く、ADVパートにおけるプレイヤーの速読スキル次第では24時間以内にひととおりクリアできてしまう。
    • SRPG好きなプレイヤーへ配慮した結果として本編クリア後に夢幻演武というやりこみ要素があるため、一概にボリュームそのものは少ないわけではない。
  • SRPGのゲームバランス
    • 前作の時点で易しめのバランスだったが、本作では経験値稼ぎやターン巻き戻しが導入されたため難易度が大幅に易化した。
      • 一応、ターン巻き戻しを使用しなければ前作よりは幾分か難しい程度の難易度はある。また、ターン巻き戻しは元々同社の『ティアーズ・トゥ・ティアラII』から輸入されたシステムであり、あちらはターン巻き戻しを使用しても非常に難易度が高かった(それはそれで問題だが)のだが、元々の難易度があまり高くない本作では使用する機会自体があまり無いかも知れない。
    • ダメージ計算式がパラメータに大きく依存しており、結果としてレベルアップすればするほど戦いが有利になる。この仕様を考慮してか、シナリオ初回クリア時のボーナス経験値以外ではレベルアップ自体が起こりにくい。
      • またシナリオ終盤に差し掛かると、連撃というシステムを上手に活かすことで敵味方ともに相手ユニットをワンパン可能。出撃キャラの位置は固定されていたり、1フェイズで敵味方が接触するケースも珍しくなく、「やられる前にやれ」というスタンスを後押ししている。また、後半のほとんどのステージは味方の方が出撃数が多いため、一人につき一人撃破すればプレイヤーの勝利となるため、この高火力バランスもプレイヤーに有利になってしまっている。
      • 一応、それぞれ戦略性を楽しみたいプレイヤーは稼ぎを封印し、シナリオを楽しみたいプレイヤーはレベルを上げてごり押しという楽しみ方が可能。
    • 地形や天候の効果、キャラによってはZOCを無視するといったSRPGとしての奥深さがあるゆえ、特に本編でのこうしたバランス調整には勿体ないという意見も。
  • ネットスラング
    • 前作はどちらかといえば登場人物が原始的な生活を営んでいる世界観であったが、本作にはそこに似つかわしくないネットスラングが所々に登場する。
    • ただし本作の主な舞台となる「ヤマト」は前作と比べるとかなり近代化した生活水準となっており、詳細は避けるもののある程度現代文化が浸透していてもおかしくない理由は存在する。
      • そのため、完全に世界観を壊しているかと言われるとそうでもないのだが、そもそもそういったネットスラングは好みの分かれるものであるし、作風に合っていないというのは否めない。
  • キャラクターのクセ
    • クオンとネコネはハクに対して暴力を振るう事が多い。大抵はハク自身の怠け癖やデリカシーに欠ける発言が原因だが、中には明らかに理不尽な理由で暴力を振るっている事もある*1。クオンに関しては愛情の裏返しや保護者目線でのお仕置きという面も強いが、ネコネに関しては純粋にハクを見下すような言動が多いため人によっては不快な思いをする可能性がある。
    • アトゥイは普段は天然気味で恋に恋する少女といった性格だが、戦闘になると豹変し、特に戦争が始まると楽しいなぁとと笑いながら敵兵を殺しだすという非常に尖ったキャラとなっており賛否が分かれている。

問題点

  • わかりにくい仕様
    • 技の射程範囲を確認するにはいちいち技のリストを見る必要があるので、キャラ性能を覚えないうちは非常に面倒くさい。
    • 連撃システムが発動することで、この射程範囲が変化することもよくあるが、上記リストでその変化がどのように起こるのか説明されていない。
  • Vita版の場合、字幕が小さくて見にくい。
  • ムービー中にセーブするとそのデータをロードできなくなるバグが存在する。

総評

 前作のADVとSRPGを組み合わせたゲームシステムと和を取り入れた世界観を引き継ぎ、うたわれるもの3部作の中継点として登場した本作。
 SRPG面にて新しい要素もひっさげて正当進化しながらも、シナリオの要所要所における絶妙な心理描写は健在であり、全体的にシリアスな雰囲気が目立っていた前作とは打って変わって、本作は適度にユーモラスな日常話も多く含まれるといった独自の立ち位置を確立している。しかしこのユーモアと世界観との間にあるギャップや続編に大部分を委ねた打ち切りともいえる物語構成のために作品として未完成という厳しい評価もなされている。


余談

  • 2015年10月に、シナリオをやや改変してアニメ化された。アニメ化されるゲームは数多く存在するが、本作はゲーム版の発売からかなり早い段階で行われている。
  • 2018年9月27日に『うたわれるもの 斬』が発売。主に本作のストーリーをなぞりながら敵を倒していくアクションゲームとなっている。
  • 2019年3月28日に、PS4/Vita版のベスト版が発売。二人の白皇も同様。
  • 2025年2月27日に、Nintendo Switchで3本をセットにした『うたわれるもの トリロジーセット』が発売された。後日に単体販売もされる。
  • 発売当時、新宿駅に「ゲームをスマホからとりもどす。」というキャッチコピーで本作の巨大な広告が掲出され話題になった。
    • 2019年にシリーズ最新作となる『うたわれるもの ロストフラグ』が発表されたのだが、対応機種がスマートフォンである事が後から明かされ、上記の広告が再度話題になった。
最終更新:2025年02月27日 00:07

*1 温泉を見つけた途端にクオンが我を忘れて自分から服を脱いだのに、ハクを覗き扱いして暴力を振るうなど。