うたわれるもの 二人の白皇
【うたわれるもの ふたりのはくおろ】
ジャンル
|
アドベンチャー / シミュレーションRPG
|



|
対応機種
|
プレイステーション3 プレイステーション4 プレイステーション・ヴィータ
|
メディア
|
【PS3/PS4】BD-ROM 【PSV】PlayStation Vitaカード それぞれダウンロード版あり
|
発売・開発元
|
アクアプラス
|
発売日
|
2016年9月21日
|
定価
|
パッケージ版:6,800円 ダウンロード版:6,000円 プレミアムエディション:9,800円(税別)
|
プレイ人数
|
1人
|
レーティング
|
CERO:C(15才以上対象)
|
備考
|
公式サイト
|
廉価版
|
【PS4/PSV】AQUAPRICE2800 2019年3月28日/2,800円
|
判定
|
良作
|
ポイント
|
3部作完結編 戦記ものに回帰した重厚な物語 第1作のキャラが使えないのは相変わらず
|
Leaf/AQUAPLUS作品リンク
|
概要
アクアプラスのシミュレーションRPGタイトル「うたわれるもの」シリーズの三部作完結編。
前作『うたわれるもの 偽りの仮面』の直接的な続編でこれ単体でのプレイは推奨されていない。ちょうど前作から1年後に発売された。
前作の時点でユーザーから不満だった部分の多くが見直されており、特にシナリオ面やシステム面には第1作目に近い要素が多々もりこまれ、シリーズの集大成に相応しい作品となっている。
あらすじ
前作で描かれた帝都の反乱から数か月。忠臣オシュトルの手引きで辺境の国エンナカムイへと逃れた皇女アンジュだったが、帝都では叛徒どもの手により皇女の身代わりがたてられ、逆に本物のアンジュが偽物だとレッテルを張られてしまう。二人のアンジュは互いに自らを正当な皇位継承者と主張し、ヤマトの国はどちらにつくかで分裂状態におちいってしまった。
そのような状況の中、オシュトルは自分が擁する側のアンジュを帝位につかせるために内政・外交・軍事まであらゆることに奮闘することとなる。軍備をととのえ、周辺の敵対する豪族を懐柔もしくは討伐し、最終的に目指すは帝都への進軍。
しかし、そんな彼には敬愛すべき皇女にさえ秘密にしていることがあった。それは、本物のオシュトルはすでに死んでいて、かつて「ハク」の名をもらった青年がその影武者を演じていることであった…。
システム
基本的には前作『偽りの仮面』と同様である。
-
アドベンチャーパートについて
-
主人公オシュトルの目線に立ち、自由行動時間のうちにイベントを起こす場所をプレイヤーが選ぶことができる。
-
前作と同じくキャラの好感度などが変わるようなギミックはない。
-
戦闘パートについて
-
テキストによるアドベンチャーの合間に、シミュレーションRPGによる戦闘が挿入される。
-
シナリオで挑めるステージ数は26。一周クリアすると「夢幻演武」と呼ばれる戦闘に挑める。こちらは難易度が高くステージ数は20。ともに『偽りの仮面』よりボリュームアップしている。
-
基本はコマンド式SLGだが、攻撃などではタイミング良くボタンを押したり、長押ししてタイミングを図って離す必要がある。これ自体はそれほど難しくはないが、非常に狭いタイミングで押すと更にダメージアップしたり、ゲージが出ない隠しポイントもあったりと、腕次第でダメージ等のさらなるアップも可能。もちろん基本的な部分ができていれば十分クリア可能であり、残りは極めがいの部分である。
-
『偽りの仮面』からの変更点
-
「協撃必殺技」の追加。
-
特定のキャラ同士が近くにいるときに必殺技をはなつとき、合体技として発動可能。
-
これは第1作『散りゆく者への子守唄』における「協撃」とほぼ同じ仕様であり、『偽りの仮面』仕様の「協撃」と『散りゆく者』仕様の「協撃」が同時に使えるようになったというわけである。
-
「ムネチカの試練」の追加。
-
ストーリー的に戦時中でないときのアドベンチャーパート中に選択できるモードで、ムネチカが出すお題(〇〇ターン以内に××せよ)を順番にクリアしていくもので、詰め将棋的なものと考えればいい。戦闘システムのチュートリアルも兼ねている。クリアによって報酬も手に入る
-
「紅白戦」の追加。
-
ムネチカの試練同様にアドベンチャーパート中に選択できるモード。仲間同士でランダムにチーム分けして、互いに戦って経験点を稼ぐ訓練モード。
-
これは第1作『散りゆく者への子守唄』でのレベルアップ用の訓練ステージと同じような機能のものである。
-
その他
-
『偽りの仮面』クリアデータから一部のアイテムを引き継ぐことができる。
-
プレイステーションネットワーク(PSN)と接続することで、プレイデータを別機種で共有できるクロスセーブ機能がある。
評価点
-
シナリオ関連
-
雰囲気がユルいと言われた『偽りの仮面』とうってかわって、最初から最後までシリアスで緊張感ある展開が連続し、第1作『散りゆく者への子守唄』に近い、いやそれ以上の壮大な戦記ものとして完成されている。
-
シナリオ構成的には第1作を強く意識しているようで、辺境の自国を発展させる内政からはじまり、周辺諸国との同盟、そして大陸統一のための遠征という流れになっている。
-
また、後半は第1作のストーリーとも強く絡んでいくようになり、うたわれるもの三部作というつながりがちゃんと意されている。
-
『偽りの仮面』からのキャラの精神的成長も見どころ。特に主人公の「ハク」が死んだことになっている(オシュトルを演じていることに辻褄をあわせるための情報操作)ため、その事実を各キャラたちがどう乗り越えていくかが一人ひとり丁寧にえがかれており、「大切なものが失われたことにより生まれる絆」はプレイヤーの胸を打つ。
-
前作からプレイしている人にとって「まさかマロロで泣かされるとは…」は共通した感想ではないだろうか。それだけ前作のユルさも意味あるものとなっている。
-
敵軍率いる「ライコウ」は、曲がりなりにも自身の信念を貫き通し、またその知略でオシュトル達を何度も苦しめたため評価が高く、おそらく本作で最も株を上げたキャラクターである。
-
なお一部キャラの性格やエピソードは、前作版ではなくアニメ版準拠となっている。物語としては改善されている点だが、ゲームだけだと違和感あるだろう。
-
見直された戦闘バランス
-
キャラ全体のバランスがとられるようになり、『偽りの仮面』のようにこいつ一人いればいいんじゃないかな、という偏った強キャラはいなくなった。
-
特にチートキャラとされたウルゥル&サラァナとキウルには弱体化補正が目立つ。
-
他にも味方キャラの差別化が明確になっており、前線キャラでも体力型と防御型があったり、アンジュのデメリットあるがメリットも大きいスキル構成など、編成や好みも取りやすくなり、SRPGとしての完成度が高くなっている。
-
敵の攻撃バリエーションが増え、位置取りや状態異常などを駆使してこちらを苦しめるようになったため、前作に比べて力押しの攻略よりも戦術的な思考が必要とされるようになった。
-
物語の進め方の見直し
-
重要なイベントをアドベンチャーパートのみで進行させることは『偽りの仮面』より減り、戦闘ステージ中の演出で物語が進むことが多くなった。シナリオ進行の冗長さはかなり改善されている。
-
もっとも、それでも通常のSRPGよりもノベルゲームに近い構図なのは変わらないが、少なくとも第1作『散りゆく者への子守唄』と同等以上のテンポにはなっている。
賛否両論点
-
『偽りの仮面』との雰囲気の違い
-
本作は最初から最後までシリアスな展開が続き、前作の日常系の軽いノリとはまったくの真逆である。そして、それを取り戻すために戦う物語ではなく、もはや幸せだったモラトリアムな時期は終わったとして、前に進んでいくという物語である。子供が大人になってしまったといえるだろう。
-
前作では日常系のユルいノリが強すぎることはむしろ批判されがちだったが、それが失われるとやはり寂しいものとしてこのあたりは様々な意見がある。
-
なお、ストーリー的には前作と終盤のような鬱展開というわけではなく、「緊張感ある戦場の中でも明るさを忘れない」みたいな意味でキャラたちの持つ軽妙酒悦な雰囲気は協調されている。
-
また前作『偽りの仮面』のように雰囲気が急転することなく、基本的に最後まで戦記ものとして一貫したノリを維持している。
-
第1作のキャラが仲間にならない
-
第1作『散りゆく者への子守唄』のキャラはシナリオ上では重要な役どころで登場はするが仲間にはならない。この点については前作『偽りの仮面』と同じなのだが、前作が続編ありきの作り方をしていた反動で「続編で登場させるから今回は仲間にしないのだろう」という期待をしているファンが結構いたため、この点でガッカリしたという意見も多い。
-
第1作のキャラを仲間にしてしまうと、『偽りの仮面』のキャラたちより強くても弱くても揉めやすいので、きっぱりと一人も仲間にしないことで不要な派閥対立を避けたのだとは思われる。
-
主人公の扱い
-
上述したように、本作は主人公の「ハク」が「オシュトル」に成り代わる形で影武者を演じているという状況になっている。前作でハクというキャラの軽いノリが好きだった人にとってはそれがほとんど消え失せたこととなる。この点をどうしても受け入れられないという声もある。
-
なお「ハクはすでに失われた」と聞かされた仲間たちの痛みをプレイヤーにも感じさせるという意図があるのか、会話時の名前もユニット名もすべて「オシュトル」に統一されている。
-
プレイアブルキャラクターの男女比の偏りが激しい
-
前作の時点でも女性キャラクターの割合が多めだったのだが、本作では女性キャラクターの追加が3名に対し、男性キャラクターの追加2名は何れもスポット参戦であるため、本編の男女比が男4:女9と偏りが激しい。
-
もっとも、初作が元々成人向けのアダルトゲームであり、一般向けとなった現在でも美少女ゲームとしての側面もあるシリーズである事を考えれば、ある意味この状態が正常であるとも言えるのだが。
難点
-
UIが変わっていない
-
戦闘バランスが改善されている一方、前作でわかりにくいとされたUI周辺は一向に改善されていない。
-
それどころか、装備の変更が個別ステータス画面からできなくなったなど改悪に近い変更まである。
総評
「続編ありきの作り方」と批判された『偽りの仮面』の続編という、ある意味で高いハードルが設けられていた本作。
しかしそのシナリオは、前編が別にあってこその変化が重要な構成になっており、「続編ありき」で二作連続でやることで心を震わせる物語体験を提供できたことはさすがである。
戦闘バランスも大幅な改善が見られ、第1作とのつながりも盛り込み、シリーズの集大成と言える大作となった。
余談
-
なんと発売初週で『偽りの仮面』のそれまでの総数を超える売り上げを達成しており、「続編ありき」のゲームでは不可解だと話題となった。前作をプレイしてない人は一切お断りの出来である以上、普通に考えれば前作を超える売り上げになることはないはずだからだ。
-
この点についてははっきりした原因がわからないが、「前作を中古でプレイしていた人」や「アニメから入ってきた人」が意外に多かったとは推測できる。
-
また、PS3版とPS4版はアニメ放送前にランキングから姿を消したため、アニメから入ったユーザー層が全く売り上げの数字に反映されておらず、実際の売り上げと確認可能な売り上げの数字にズレがある事が推測できる。
-
2019年10月18日にスマホアプリ『うたわれるもの ロストフラグ』のキャンペーンの一環として、「散りゆく者への子守唄」「偽りの仮面」「二人の白皇」の三部作をSLGパートのないAVG化して完全無料のiOS/Androidアプリとして配信された。
-
SLGパートがないので、「偽りの仮面」でハクが「しかしこりゃ、追加労働手当を貰わんと割に合わん」とたびたび言っていたという情報は抜け落ちてしまう。(ハクの必殺技使用後ボイス)
-
続く2019年10月19日には、アクアプラス代表取締役・下川直哉氏のTwitterアカウントにて本作のアニメ化が発表。2022年7月に放映された。2006年に第1作、2015年に第2作偽りの仮面が放送されているが、実に16年越しの完結編となる。
-
2020年にハク役の声優・藤原啓治氏が死去しており、2021年の『うたわれるもの斬2』以降ハク役はオシュトルを演じていた利根健太朗氏が引き継いでいる。
-
2020年1月23日にはSteamにてWindows10移植版が、前作の『偽りの仮面』と同時に販売開始された。英語と繁体中文字幕に対応している。
-
本編三部作は本作で完結したが、オシュトルを主人公に据えて過去の話を描いた『モノクロームメビウス 刻ノ代償』が2022年11月17日にPS4/PS5/Windows(Steam)で発売された。
-
2022年12月22日、ノスリを主人公にした外伝『義賊探偵ノスリ』が発売。対応機種はPS4/Switch(ダウンロード専売)。
-
2025年2月27日に、Nintendo Switchで3本をセットにした『うたわれるもの トリロジーセット』が発売された。後日に単体販売もされる。
最終更新:2025年02月27日 00:07