キングスナイト
【きんぐすないと】
ジャンル
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一般
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シューティング
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公称
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フォーメーションRPG
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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スクウェア
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開発元
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Workss
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発売日
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1986年9月18日
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定価
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4,900円
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配信
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バーチャルコンソール 【Wii】2007年11月27日/500Wiiポイント 【3DS】2014年2月5日/514円 【WiiU】2016年7月6日/514円
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判定
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なし
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ポイント
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RPGという名のSTG 全員集合の最終面が難
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概要
4人の勇者がドラゴンにさらわれたお姫様を救い出すストーリー。
ゲームの内容は縦スクロールのシューティングゲームだが、スクウェアはRPGと言い張っている。
本作はシューティングとしてはそれなりに遊べる出来である。ただかなり理不尽な仕様が多く、ゆえにクソゲー扱いされることが多い。
システム
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ゲームの流れ
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ステージ1から4は、それぞれの主人公を単体で操る。
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ミスしてもそこでゲームオーバーではなく、主人公を交代して次のステージに進む。
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4人分の個別ステージを終えると、ステージクリア=生存した主人公全員が集結するステージ5が始まる。ここは4人固まった状態で操作し、状況に応じて先頭キャラを交代して進める。
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十字キーで8方向に移動、Aボタンでショット。ステージ5のみ、Bボタンで先頭キャラに対応する魔法を使う。
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ライフ制。主人公の体力が無くなったり、スクロールで地形や障害物に挟まれたりすると、そのキャラはステージ攻略を失敗し、最終ステージに参加できなくなる。
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ステージオブジェクトは「壊せる地形」と「壊せない障害物」の2種類に大別される。
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壊せる地形の中には「古代の宝」というパワーアップアイテムが隠されている。数・位置とも固定であり、これを集めて強くなるのが個別ステージの目的と言ってもいい。
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中には、ステージ5で魔法を使用するために必要な「勇者の魔法」という特殊アイテムも存在する。各ステージに4種の魔法アイテムが1つずつ隠されていて、各魔法につき4つ揃えないと使用できないため、これらは特に重要。
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ちなみに、騎士「レイジャック」は攻撃力、老魔導師「カリバ」はジャンプ力、魔物「バルーサ」は体力、盗賊「トビー」は機動力について、それぞれ初期パラメータが若干高い。
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壊せる地形に向かって移動キーを押し続けると上に乗れる。
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この状態では現在乗っている地形にはショットが当たらず、逆に、地形の上を移動している敵や地形の向こう側にある物には当たる。
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ゲームオーバーになっても、クリアデータは保持されている。タイトル画面に移行した後にセレクトボタンを押すと、任意のステージをやり直せる。
特徴・評価点
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各キャラクターを操作して個別のステージをクリアし、最後に全員が力を合わせて悪を討つ、というRPG的に王道の構図をSTGでやった点は斬新だった。
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所定の位置に隠された成長アイテムを取る事を目的とするスタイルでSTGのステージを構成している点にも、強い独自性がある。ジャンル詐称的な意味でネタになりやすい本作ではあるが、奇をてらう内容ではないし、ただ凡庸なだけでもない。
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強化されたキャラクターの頼もしさ。アイテムを順調に回収し移動速度もショットの威力も最大になったキャラクターは、序盤はひたすら手強かった地形を全て破壊し尽くせるほどの火力を発揮する。
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最大強化された自機が強いのはSTGも似たようなものではあるが、残機制でない事も含めたゲーム的な意味での「RPGらしさ」がここにある。かもしれない。
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植松伸夫氏の手がけるBGM。
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穏やかで雄大な通常ステージ曲は、1ループが長く聞き応えがある人気曲。ゲーム開始・ステージクリア・ミス時などで流れる短めのBGMも、テキストや映像演出に容量を割くゆとりが無い中で的確に状況と雰囲気を伝える役割を担っている。
問題点
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独特のクセがある難しさ。
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理由の第一は、強制スクロールでアイテム取得がワンチャンスのステージを4回連続で続ける「覚えゲー」という点。
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まず、初期状態はどの主人公も弱く、アイテムの位置を事前に把握していないと到底全部は掘り起こしきれない。次に、魔法アイテム計16個を1つでも取りもらすとただでさえ難しいラストステージの難度が跳ね上がる上、ある魔法を使えない状態では特定ポイントで詰む。更に、地形には地下への入口も隠されていて、そこのダンジョンに眠っている重要アイテムを回収するためにはこちらも見逃せない。
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第二は、主人公が勢揃いするステージ5で「十字に陣を組んだ4人」全体に食らい判定がある事。弾幕の厚さに対する自機のデカさの比率は、一般的なSTGとは比べ物にならない。
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第三は、やはりステージ5。先頭キャラを入れ替える手段はステージに落ちている陣形変更アイテムを拾うことのみであり、任意では変えられない。どの位置でどのキャラを先頭にするべきか、罠の構成とアイテムの配置を完全に把握しなければならない。また、陣形変更中はキー入力を受け付けず大きな隙ができるので注意。
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かなりの連打を要求される。連射パッドが無いときつい。
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普段はアイテム探しのために大量の地形を破壊しなければならないので、終始打ちっ放し。
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ダンジョンやステージ5といったシーンでは、非常に硬い敵が多く登場。避けるか壊すかの選択を迫られる訳だが、素手ではほぼ壊しきれない。
総評
どう見てもSTGである。しかし、4人の勇者がそれぞれの戦いを経て集結するという物語構造や独自の成長システムを持つゲーム性は、RPGと言われればなるほどそうかと強引に解釈できない事もない。
あまり細かい事にこだわらず接してみれば、本作の持つオリジナリティは意外と人受けの良いタイプのもので、ゆったりとしながらも勇ましいBGMも人気がある。
ただし、ボリュームを反復プレイで補う覚えゲースタイルのゲームなので、難易度はそれなりに高い。またステージ5における隊列の任意変更不可など、生死に直結するにもかかわらずいささか不自然な難しさをも持ち合わせている。それらを抵抗なく受け入れられるかどうかが本作の評価の分かれ目となるだろう。
余談
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坂口博信氏が関わっている事で有名。音楽担当の植松伸夫氏との「FFの黄金コンビ」が早くもこの作品で見られている。
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攻略本やゲームブックがあり、特に攻略本の漫画は本編より面白いともいわれる。
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【攻略本】今であれば『マップや攻略ポイントの説明の間に漫画』であるが、『各ステージごとの漫画の間にマップ』という、今とは全く逆の攻略本である。キャラクターの設定と攻略方法を元に描かれた、ステージごとの読み切りになっている。一冊で普通にコミックとしても読める代物。
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実は開発初期段階では、ダンジョン探索などのちゃんとしたRPG要素が存在していた模様。開発が進むうちにボツになって、RPG要素が消滅したらしい。
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ただ、初期の開発段階ではレイジャック以外のプレイヤーキャラは確認できないため、「ファンタジー風シューティングゲーム」というコンセプトは同じでも、ゲーム内容としてはかなり別物だった可能性が高い。
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Workssはビッツラボラトリーの前身。
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スクウェア作品では、本作の前に『テグザー』のFC移植を請け負っている。本作の次に田中弘道が企画したFC用ソフト『聖剣伝説』を開発していたが開発中止になり、その後『半熟英雄』の開発に携わっている。
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本作開発時期にWorkssは並行して『ゴーストバスターズ (FC)』の開発も行っていた。
キングスナイト(MSX)
【きんぐすないと】
ジャンル
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STG
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対応機種
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MSX
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開発・発売元
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スクウェア
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発売日
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1986年10月31日
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定価
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5,900円
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判定
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クソゲー
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劣化ゲー
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概要(MSX)
FC版のMSX移植版。開発したのは原作と同じくスクウェア。
グラフィックやマップの一部配置、画面右側にステータスが追加された点以外はFC版とほぼ同一。そのためなのか、パッケージ版もFC版と同じデザインが採用されている。
MSXではハードウェアの制約上スムーズなスクロールができなかったのだが、本作ではそれを実現。
広告ではスムーズスクロールをウリにするほど自信があった。
しかしいざ販売されると、とんでもない代償が判明することとなる……。
問題点(MSX)
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スクロールするごとに処理落ちが発生する。
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本作最大の問題点。スクロールしている間はゲームの処理が停止する仕様となっている。
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元々MSXにはハードウェアスクロール機能がなく、1キャラクター分である8ドットで移動させるゲームが主流だった。
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本作では擬似的にその半分である4ドットスクロールを採用し、スムーズな移動を実現……したまでは良かったのだが、あまりにも無謀な仕様だったのか代償として本現象を発生させることとなった。
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スクロール処理を行っている間は敵の動きはもちろんのこと、プレイヤーの動きも止まるので非常に操作し辛い。
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その動きはまるでポーズ連打による疑似スローモーション状態で遊ぶゲームそのもの。
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(一応RPGではあるが)瞬発力を求められるシューティングゲームにおいてこの処理はもはや致命的以外の何者でもない。
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任意スクロールで移動するシステムであればまだよかったものの、本作は強制スクロールのため常にこの現象が付きまとうので何をするにしてもプレイ中はストレスを感じやすくなっている。
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皮肉なことにマップの終点やボス戦ではこの現象が発生せず、非常に快適な操作が楽しめる。
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そのため、ボス戦の方が難易度を低く感じやすい。
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この操作感がスクロール中でもできていたら評価は大きく変わっていたかもしれない。
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SEがショット以外鳴らない。
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本作で鳴るSEはなぜかショットのみとなっており、ショット以外のSEは一切鳴らない。
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FC版ではアイテム取得時や敵を倒した際、ダメージを受けた際に様々なSEが鳴っていたが、本作ではそれらが一切鳴らなくなってしまった。
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しかもFC版にあった「ダメージを受けた演出はSEのみ」という仕様をそのまま受け継いでいるため、ダメージを受けたかどうかすらわからない。
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HPゲージを注視していないといつの間にか死んでしまうことも。
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移植に伴うハードウェアの制約の関係とはいえ、この仕様はあまりにも寂しい。
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なお、ショットを一切出さないとドラムパートが聞こえるようになる。
賛否両論点(MSX)
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グラフィックが移植元と比べると見劣りしている。
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MSX版はFC版の色数制限の仕様が違うのが主な原因とされる。
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FCは画面は52色が使用可能なのに対し、MSX版では16色しか使う事ができない。
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更に画面には8ドットごとに2色しか使えず、キャラクターを動かすスプライトデータに至っては1色しか使えない。
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そのため、アイテムや敵キャラの書き込みがFC版と比べるとかなり見劣りしてしまっている。
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機種固有の問題ではあるため、この辺りは仕方ないともいえる。ただ、フィールドの描き込みはFC版に匹敵するほどのクオリティになっており、全てが見劣りしているわけではない。
評価点(MSX)
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ステータス画面の追加により進行度がわかりやすくなった。
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FC版では体力ゲージ以外の情報は表示されていなかったため、最終ステージの攻略に必要な「勇者の魔法」の取得状況がクリアまでわからない状態となっていた。
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本作では体力ゲージの他に「古代の宝」によるプレイヤーステータスや「勇者の魔法」アイテムの取得情報が追加され、わかりやすくなった。
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ゲームの移植度自体は概ね良好。
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前述のスクロールとSEの問題さえ目をつむればゲーム自体はちゃんと遊べる内容になっている。
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バグはあるものの
というかもはやスクロールの仕様がバグみたいなものだが、進行不可能になるような致命的なバグは存在していない。
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非常にプレイし辛いものの、ゲーム性自体は損なわず移植されているためある程度遊ぶことはできる。
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ただし、FC版をそのまま受け継いでいるため高難易度かつノーヒントなのはそのまま。
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それどころか、スクロール問題も絡むのでプレイ難易度自体は更に上がっているが……。
総評(MSX)
FC版から数ヶ月足らずでの移植版の販売となった本作だが、「スクロール処理落ち」というとてつもない問題点が劣化移植どころか品質を疑いたくなる作品まで成り下がってしまった。ある意味本作は「無理に移植した結果クソゲー化してしまった」作品の典型例とも言えるだろう。
内容はFC版と同じのため、ゲーム自体を遊ぶのであればまず本作はお勧めしない。
キングスナイト・スペシャル
【きんぐすないと すぺしゃる】
ジャンル
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STG
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対応機種
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PC-8801mkIISR以降、X1
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開発・発売元
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スクウェア
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発売日
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1987年6月
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定価
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6,900円
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判定
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劣化ゲー
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概要・原作との違い
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FC版のPC移植版。開発したのは原作と同じくスクウェア。
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FC版でのワープゾーンの入り口は、本作では別世界へ行くのではなく迷宮への入り口となっている。
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入るとRPGのダンジョンのような構造になっている。
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ダンジョンに入るとき等に、デモシーンが追加された。
問題点(スペシャル)
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対応機種にはハードウェアスクロールがないので、動きはカクカク。しかも動きの単位が大きい。画面もチラつく。
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大きいのは動きの単位だけではなく判定も大きい。このためギリギリかわした程度ではヒットしてしまう。
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画面中を自在に動ける訳ではない本作では、これは厳しい。
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この動きの単位の大きさは敵弾も同様なため、原作より弾速が速い。
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結果的に対策としては撃たれる前に撃つしかない。
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X1では同時キー押し不可というハード上の制約がかかるので、さらに難易度が上がる。X1Turboでは問題ない。
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ダンジョンの敵は弾を撃ってこないが、プレイヤーの弾も効果なし。直接攻撃でしか倒せない。
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目前の敵しか倒せないので無傷で倒すのはかなり厳しい。かと言って、全く戦わずに突破できるような配置にもなっていない。
評価点(スペシャル)
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連射速度が速いので、敵の出現パターン、アイテムの配置などを覚えていれば遊べなくはない。
総評(スペシャル)
STGが不向きなPCに無理やり移植した結果は推して知るべし。かなり動きの悪いゲームと化してしまった。
特に敵の弾が避けにくい。ダンジョンステージの独自の仕様も辛いだけ。もし連射性能が高くなかったら、ゲームにならなかっただろう。
問題は多々あるが、辛うじて遊ぶ事はできるものにはなっている。
その他の移植
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本作発売から30年を経た2016年、スマホアプリ『キングスナイト -Wrath of the Dark Dragon-』として復活した。
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ビジュアル強化、新たな仲間やマルチプレイなど新要素を追加し、アクションRPGとしてブラッシュアップされている。
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『ファイナルファンタジーXV』の世界内で流行っているという設定だったのだが、それも大して活かし切れぬままサービス終了となった。
最終更新:2024年06月03日 21:02