英雄伝説III もうひとつの英雄たちの物語 ~白き魔女~
【えいゆうでんせつすりー もうひとつのえいゆうたちのものがたり しろきまじょ】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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PC-9801以降
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メディア
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フロッピーディスク CD-ROM
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発売・開発元
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日本ファルコム
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発売日
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1994年3月18日 リニューアル版:1994年12月16日
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定価
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12,800円(税3%込)
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配信
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プロジェクトEGG/900円(税別) 2007年3月13日 Win10対応版:2018年9月25日
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判定
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なし
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ポイント
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完成度の高いシナリオ シリーズの作風を決定づけた システムは賛否両論
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ドラゴンスレイヤー&英雄伝説シリーズ
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概要
『英雄伝説』シリーズの第3作。前2作は『ドラゴンスレイヤー』シリーズの一作としてリリースされたが、今作からは独立し独自の道を歩む事となった。
前2作とは異なる世界観を舞台とし、「ガガーブ」と呼ばれる亀裂と「大蛇の背骨」と呼ばれる山脈で遮られた大陸を舞台とする「ガガーブトリロジー」3部作の第1弾となっている。
また、シリーズがストーリー重視に転換した最初の作品であり、全9章から成る物語や自動戦闘が特徴。
オリジナル版発売の半年後にはゲームバランスなどに調整の入ったリニューアル版が発売され、以降様々な機種に移植されている。
ストーリー
この物語は、ガガーブの先に世界はなく、大蛇の背骨の果てにも世界はないと信じられていた時代の最後の物語である。
その頃、この地方はティラスイールと呼ばれ、フォルティア、メナート、チャノム、アンビッシュ、ウドル、オルドス、フュエンテ、ギドナという、8つの国があった。
いくつかの国は問題の種を抱えていたが、人々は各々の地で、ささやかな繁栄を築き、日々の生活に勤しんでいた。
神話、英雄伝、寓話…。人々の暮らしがあれば、時代の裏に霞そうな伝承もいくつかある。
20年前に諸国を巡礼したと伝えられる白き魔女の物語も、そんな伝承のひとつだった。
(オープニングより)
フォルティア国のラグピック村に住む少年ジュリオは幼馴染の少女クリスと共に成人の儀式として巡礼の旅に出る。
やがて二人は白き魔女の予言と世界の真実を知っていく。
特徴
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操作はキーボード以外にジョイスティックが使用可能。
ディレクションバトル
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本作の特徴的な戦闘システム。一言で言えば『ファイナルファンタジーXII』のガンビットの先駆けのようなシステム。
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フィールドがそのまま戦闘フィールドとなり、リアルタイムで移動や攻撃を繰り返して進むシミュレーション的な要素を持つオートバトルを採用している。
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キャラクターはあらかじめ設定した作戦行動に従って戦闘を行う。プレイヤーが出来るのは作戦行動の変更と退却の指示のみ。
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作戦行動はHPの割合に応じて4つのパターンを設定可能で、最大8種類の作戦行動を登録しておく事が出来る。
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キャラクターには登録した作戦行動のうち1種類をセットしておき、それに従って行動する。戦闘中に作戦を切り替える事も可能だが、パターンの登録や隊列の設定は非戦闘時にしか行えない。
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仲間やモンスターにはVPというステータスがあり、行動を行うたびに減っていく。VPがゼロになると強制的に待機状態になり、VPは待機状態になる事で回復する。
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キャラによってはたまに特殊な攻撃を使うこともある。
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特徴的な戦闘システム 左の画面で行動パターンを登録する。画面下のステータスの四角で囲まれた数字が設定されている行動パターン 右側の15種類の行動パターンの中から選んで各HP割合の行動を組む。
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+
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行動パターン詳細
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右の列は回復魔法のマーク (回復魔法を使えないキャラにとっては全て後方待機の行動パターン扱い)
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1.右列の一番上は、全域で回復魔法を使用。
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2.右列の上から2番目は、中域まで距離をとって回復魔法を使用。
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3.右列の上から3番目は、通常は中域で回復魔法を使用して、VPが少なくなれば後方に下がって回復魔法を使用。
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4.右列の上から4番目は、後方で回復魔法を使用。
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5.右下の緑色の四角マークは、何もせず後方待機。
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左の列の赤い矢印は攻撃行動のマーク
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1.左列の一番上は、全域で攻撃行動。
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2.左列の上から2番目は、通常は全域で攻撃行動をとって、VPが少なくなれば中域まで距離をとって向かってきた敵を攻撃。
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3.左列の上から3番目は、中域まで距離をとって向かってきた敵を攻撃。
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4.左列の上から4番目は、通常は中域で攻撃行動をとって、VPが少なくなれば後方で向かってきた敵を攻撃。
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5.左列の上から5番目は、後方で向かってきた敵を攻撃。
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真ん中の列は攻撃と回復両方 (回復魔法を使えないキャラにとっては全て後方待機の行動パターン扱い)
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1.真ん中の一番上は、通常は全域で攻撃行動をとり、VPが少なくなれば攻撃行動にVPを使うのをやめて全域での回復魔法に専念。
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2.真ん中の上から2番目は、通常は全域で攻撃行動をとり、VPが少なくなれば攻撃行動にVPを使うのをやめて中域に距離をとって回復魔法に専念。
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3.真ん中の上から3番目は、通常は中域まで距離をとって向かってきた敵を攻撃、VPが少なくなれば中域で回復魔法を使う。
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4.真ん中の上から4番目は、通常は中域まで距離をとって向かってきた敵を攻撃、VPが少なくなれば後方で回復魔法を使う。
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5.真ん中の上から5番目は、後方で向かってきた敵を攻撃、VPが少なくなれば後方で回復魔法を使う。
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魔法
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本作の魔法はチャッペル系とカンド系に分かれており、キャラクターによって習得できる系統が変わる。
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魔法はレベルアップ時に得たMPを町にある施設で消費することで習得する。
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本作のMPは魔法を覚えるためのステータスであって使用する際には消費されない。よって、覚えた魔法は無制限に使えるが、どの魔法を使うかは指定できずキャラクターが自動的に判断する。
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なお、前述のように戦闘終了時に全回復するため、魔法メニューは使用可能な魔法の一覧を見るだけの機能となっている。
評価点
ストーリー
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これまで以上にストーリーを重視しており、初期の広告でも「序章と1章だけで前作のデータ量を超えるボリューム」と銘打たれているように、大ボリュームで展開される。
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素朴な少年少女が村の決まりで旅立ち、様々な人々と知り合い、やがて世界の真実を知って世界を救うという非常に王道な作風だが、その旅の過程が丁寧に描写される。
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登場人物も魅力的なキャラクターが多く、愛着が湧きやすい。序盤から親切な人々との触れ合いにより、ほのぼのとした温かい雰囲気が醸し出されており、壮大なストーリーながらも地に足の着いた世界観が描き出されている。
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サブイベントも豊富に用意されており、旅をしている雰囲気を盛り上げてくれる。
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これにより寄り道をするのが楽しく、プレイヤーもジュリオ達と共に旅をしている感覚を共有できる。
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中にはスタッフからのメッセージが語られる開発室という遊び心に溢れた隠しマップも。
グラフィック
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グラフィックは前作からさらなる進化を遂げ、草むらのひとつひとつまで細かく丁寧に描写されており非常に美しい。
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前作までは家庭用RPGでよくある町や山などを省略したフィールドになっていたが、今作ではそういった区切りはなくなり、今でいう街道形式に変更された。舞台となるのは大陸の一部に過ぎないのだが、これによって広大な世界を感じられ、旅の雰囲気を盛り上げてくれる。
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このスケール感を生かし、超巨大な魔獣が登場するなど演出面も大幅にパワーアップを遂げている。
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キャラクターの描写も非常に細かく、豊富なアクションも用意されており、賑やかなイベントシーンが描かれる。
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章の幕間にはチビキャラによるデモも用意されている。
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オープニングやエンディングで描写されるビジュアルシーンも非常に美麗。
音楽
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ファルコムらしくBGMの評価も高い。シナリオに合わせて序盤はほのぼのとした曲が多いが、後半になるにつれて重厚な曲、激しい曲も増えていきストーリーを盛り上げてくれる。
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静かな曲調から盛り上がっていくオープニング曲、ボス戦BGM「強敵!!」、エピローグで流れる「デュルゼルの手紙」などはユーザー投票でも人気を獲得している。
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販促用VHS「イーススペシャルコレクション」で本作が扱われた際には幕間のチビキャラデモで使用される「小さな英雄-ジュリオとクリスの大冒険-」と共に本作の映像が流されている。非常に明るい曲で本作の雰囲気を伝えるにはピッタリだった。
賛否両論点
戦闘システム
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RPGにおいてRTSのような戦闘システムを採用したのは当時としては非常に斬新だった。これ自体は評価点と言える。
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しかしながらプレイヤーの介入できる余地が戦闘前の準備がほとんどで、実際の戦闘中は見守る時間の方が多く、AIの頭の悪さなどもあり出来が良いとは言えない。
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何もないところでウロウロしたり、敵に挟まれたり、突然攻撃目標を変えてトドメ寸前の敵を放置したり…とAIには問題だらけ。
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高低差のある場所で高い崖などから敵を突き落とせば一撃死になるので利用できれば強いのだが、当然AIはこれらを考慮して動いてくれない。逆にこちらが一撃死させられる事もままあり、後半は復活魔法のオンパレードで一戦闘が長くなりやすい。
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VP回復は素早さが影響するため、終盤は「素早さの指輪III」を複数買って装備させているかどうかの影響が大きい。数時間放置しても延々と敵が復活と回復を繰り返していることが多いラスボス戦も、素早さが高ければ手数も多くなりわりとあっさり勝てたりする。
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ゆえに行動設定や隊列が重要になり、上手くはまった時はなかなか快感で独自の面白さがあるが、システム自体を苦手とするプレイヤーも多く、評価は賛否両論と言える。
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ただし基本的には、低HPになれば後退する設定にして、さらに魔法使いは低HPでは回復を優先する設定だけで攻略可能。
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前作までが普通のコマンド戦闘だったのも影響している。本作の戦闘システムが雑誌で公表された際に購入を控えたという声も多く、いわゆるコレジャナイ感が強かった。
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覚えた魔法を忘れさせたり使用不可設定したりすることができない。
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魔法の中にはあまり役に立たない物も多く自動戦闘なので、魔法を全て覚えさせようとしないほうが戦闘は楽になる。
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ゲームバランスは普通のRPGなら平均くらいのバランスだが、自動戦闘ゆえに無駄に難易度が上がっている。下手をすると最初の敵であるイノシシに敗北してしまうほど。
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エンカウントは固定地点でのランダムエンカウントなので、レベル上げは楽。その一方で退却しても敵はそのまま居座るので、強敵を回避して進むといった事はできない。
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リニューアル版ではAIの思考が若干改善され、難易度も下がって遊びやすくなっているので、今からあえてPC98版をプレイするならリニューアル版一択。サブイベントを除く難所の進め方やボス戦で有効な作戦を解説したネタバレ攻略冊子も付属していた(EGG版でもしっかり収録されている)。
問題点
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ゲーム的には完全な一本道。後戻り出来ず、期間限定のイベントやアイテムを取り逃すと挽回できない。
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最初の村で売られている「剣士教本その1」を買い逃した時点で後々達成できなくなるイベントが存在する。
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一見何もないところにアイテムが落ちている事もあるので、コンプリートしたい人は隅々まで歩き回る事になる。
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一部、進行が分かりにくい部分が見られる。
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序章からはぐれたクリスを探すイベントで、なかなか居場所がわからなかったり…町の人全員に話しかけてとある人物と話せば良いのだが、これが本当にわかりにくい。
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古いゲームでありがちな要素ではあるが、とにかく進めなくなったら町の人全員と話したり、直前の会話で言われたことを忘れないことが重要。
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一部サブイベントの発生する場所もわかりにくい場面も。一見何もない場所(しかも1マスしか判定がない)に立つと突然会話がはじまったりする。サブイベントを全て見たい人は根気が必要。
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行動作成はアイコン表示だけで説明がないので最初は少々分かりにくい。
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ちなみに矢印が攻撃/防御、光が回復魔法、背景のオレンジが攻撃範囲で白が防御範囲を表し、アイコンはこれらの組み合わせ。そして緑色の四角だけのアイコンは後方待機となっている。覚えるまではマニュアルと睨めっこになるだろう。
総評
シリーズの大きな転換点であり、続編となる『ガガーブトリロジー』や、さらに先に位置する『軌跡』シリーズなど、後々の作品へと繋がる作風が決定づけられた一作。
ストーリー面での評価は非常に高いが、賛否を呼んだ戦闘システムにより好みの分かれる作品となった。
余談
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現在、ファルコムの社長を務めている近藤季洋氏は、かつて本作のファンサイトを作成しており、氏がファルコムに入社したのはこのゲームの影響もあるという。
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それ以外にも、現在進行している『軌跡』シリーズのスタッフには本作のファンが非常に多く、特に『空の軌跡』は、本作の影響が強いとされている。
移植・リメイク
移植の度にタイトルがいろいろと違う。
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PC98『英雄伝説III 白き魔女 リニューアル』(1994年12月16日発売)
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前述のようにゲームバランスやAIに調整が入った新パッケージ。エンディングの曲が変更されている。CD-ROM版やDOSプロンプト対応版など複数のバージョンが発売された。
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現在の基準となっているバージョンであり、プロジェクトEGGで配信されているのもこのバージョン。
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SS『白き魔女 -もうひとつの英雄伝説-』(1998年2月26日発売 開発・発売:ハドソン)
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グラフィックやシステムを大幅に変更した最初のフルリメイク。画面構成がクォータービューになり、戦闘も一般的なコマンドバトルになっている。
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豪華声優陣によるアニメも魅力。キャラクターデザインも一新されている。
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移植開発はPCエンジンやPC-FXで発売された『スタートリング オデッセイ』『スターブレイカー』『ミラークルム ザ・ラストレベレーション』で知られているレイ・フォース。
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PS『The Legend of Heroes III 白き魔女 もうひとつの英雄たちの物語』(1998年3月19日発売 開発:GMF、発売:亜土電子工業)
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グラフィックなどはPC98版準拠。ただし解像度の関係でPC98版の画面をトリミングして中央部を抜き出したようになっている。
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戦闘は1キャラずつ行動する形。キャラ毎に「自動」と「手動」を選択でき、自動戦闘に戦闘方針などはない。
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Win『新・英雄伝説III 白き魔女』(1999年4月23日発売)
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ファルコム自身によるリメイク版で、戦闘時に出せる指示が細かく行えるようになり、改良が行われている。ダウンロード版あり。
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ガガーブトリロジーという「枠組み」のほうを基準に考えると、これがスタンダード。これ以降は『もうひとつの~』が付かない。
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S!アプリ『英雄伝説III 白き魔女』(開発:ScriptArts、発売:タイトー)
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PSP『英雄伝説 ガガーブトリロジー 白き魔女』(2004年12月16日発売 開発:マイクロビジョン、発売:バンダイ)
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PSP最初のRPG。グラフィックや戦闘システムが一新されたリメイク。この後『IV』『V』も続いて移植され、セーブデータ連動も用意されている。
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Win版同様、オートバトルはそのままに細かい指示が可能になり、新たな要素としてゲージが溜まると使える必殺技が用意されている。VPの概念はなくなり、魔法もMP消費制に変更された。
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魔法の名前を一新、チャッペル系の魔法から「ハチよせ」を削除、カンド系の魔法に『朱紅い雫』の最強の黒魔法である「リ・カルナシオン」追加など、魔法の内容も変更。
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PSP初期作品の常で頻繁に長いロードが挟まるのが欠点。
最終更新:2023年12月15日 18:01