カリーンの剣
【かりーんのつるぎ】
| ジャンル | アクションRPG |  | 
| 対応機種 | ファミリーコンピュータ ディスクシステム | 
| 発売元 | DOG | 
| 開発元 | クリスタルソフト | 
| 発売日 ()は書換開始日
 | 1987年10月2日(1987年12月1日) | 
| プレイ人数 | 1人 | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | 超快適なクイックセーブ 何故か有名な「レンの世界」のBGM
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| DOGシリーズ | 
 
概要
かつてスクウェアが中心となって発足した、パソコンゲームの開発を行っていたメーカー7社の連合体『ディスク・オリジナル・グループ』(ブランド名:DOG)より発売されたアクションRPG。
開発はPCで『夢幻の心臓II』や『アドヴァンスト ファンタジアン』等を発売したクリスタルソフト。
広告のキャッチコピーは『A・R・P・G 打倒、20,000匹!』。
ストーリー
アリタニアという不思議な世界の物語。
昔、戦いの神より“カリーンの剣”を授けられ人間世界を征服した勇者“アレクサンドル”。
しかし神々は勇者の力を恐れ、“カリーンの剣”を封印してしまう。
~ 1200年後 ~
平和だったアリタニアはモンスターが徘徊し、偉大なる魔術師“グラドリフ”が行方不明となる。
国王はアレクサンドルの血を引く若者に“カリーンの剣”と魔術師“グラドリフ”を探し出し、モンスター達を倒して欲しいと言う。
こうして探究の冒険が始まった。
(スクウェア・エニックスの公式HPより)
システム
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ハイドライドやイースなどでお馴染みの、当時としてはオーソドックスなトップビュー視点のRPG。
 アリタニア王国からスタートし、フィールドの敵を倒して経験値とゴールドを入手しながら、各地に存在する町を訪ねて情報やアイテムを入手するなどイベントをこなしていき、アイテムとレベルが揃ったら魔物の本拠地である『レンの世界』へと単身乗り込んでいく。
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敵との戦闘は、フィールド上をうろつく敵アイコンに接触すると接触した地形に対応した戦闘画面に切り替わり、1~8匹の敵との戦闘になる。
 戦闘方法は上記のゲーム同様、基本的に体当たりで敵を倒す。途中で手に入るアイテムで魔法の弾を発射するなど間接攻撃も可能。
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敵と遭遇した際の戦闘時の地形は敵のいる地形、自分の立ち位置は自分の向いていた方向に応じて画面の上下左右の端に決まる。
 
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本作の特徴として2種類のセーブ方法がある。ディスクに書き込むので多少時間がかかるが電源を切っても保存される「ディスクセーブ」と、本体メモリに現状を一時的に保存しておく「クイックセーブ」。
 このクイックセーブは電源を切ると消えてしまうが、当時の広告で「0.08秒のクイックセーブ」とセールスポイントの一つとして紹介されていた通り、一瞬で簡易セーブ完了。
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ちなみに城や建物の中ではどちらの方法でもセーブ出来ない。
 
評価点
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クイックセーブ
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当時遊んだ人にはオーソドックスなARPGで「わりと簡単で遊びやすい」という印象もあるようだが、実際は問題点で記述するようにゲームオーバーになり易い。そう感じさせない最大の理由がこのクイックセーブのおかげだろう。ディスクシステムの欠点の一つと言われた「ディスクアクセスの長さ」を解消する画期的なシステムであった。
 ゲームオーバーになると最後にセーブした場所からの再開になるので、こまめにセーブしておけばやり直しがとてもスムーズに出来、スピーディなゲーム展開で遊べる。このシステムのおかげで、ゲームオーバーになる度プレイヤーの心を挫けさせプレイを放棄させることをかなり食い止めたのは間違いないだろう。
 
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評価の高いレンの世界のBGM
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本作が今も語り継がれているポイント。何故かゲーム自体は知らなくてもこの曲は知っている人も多い。
 フィールドが全体的に草原の色に囲まれたアリタニアのBGMは牧歌的でどこか気の抜けたような曲だったが、『レンの世界』に入ると雰囲気が一変する。
 見渡す限り赤茶けた土色の異世界の荒廃感にマッチしており、物悲しい雰囲気のメロディーながらとても印象に残る曲になっている。
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アレンジバージョンや30分耐久バージョンが早くからネットで公開されていて、これらが曲の人気を押し上げた理由であろうと思われる。
 
問題点
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戦闘システムに難あり
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フィールド上で敵と接触すると戦闘モードに切り替わるが、画面構成はそのままで自分や敵のサイズもそのままなのでパッと見で見分けが付けにくい。また接触してすぐに戦闘が始まるのでちょっと油断しているとすぐに攻撃を受けてしまう。
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敵の数はランダムで最大8匹同時に出現するが、戦闘モードに入るまで何匹いるかは分からない。もし大量の敵がいたら途端にピンチになりかねない。
 自分も敵も攻撃判定は正面にしかないがダメージ判定は全身(全方向)にあり、自分が敵一匹とぶつかっている間に横や後ろから他の敵が攻撃してきてタコ殴りになるからである。
 しかも数が多いと戦闘開始時の自分との距離も必然的に近くなり、素早く行動しないとすぐ囲まれてしまう。
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自身と敵は被ダメージ中は動けないため、複数の敵から攻撃されるとその場から動けず、文字通り袋叩きに遭いやすい。
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他のゲームでは、敵とぶつかると反動でどちらかが弾き飛ばされたりして距離が開くものもあるが、それもないので敵との距離が離れない。
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また、敵が二匹並んで向かってくる事もあり、正面からぶつかれば「半キャラずらし」のつもりが「二匹同時攻撃」になってしまい、1対2で戦う状況になる。1匹を相手にしていても、それが足止めを喰らっている状態になりその隙に横から攻められる事も。
 
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そして一番の問題点は、戦闘画面から逃げる手段はない事。敵の全滅か自分がやられるしか戦闘画面を抜ける手段はない。もし自分より強い敵と戦闘に入ったら諦めてゲームオーバーになるしかない。そのためにもこまめなセーブが必須である。
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ポ―ションや「白いアイドル」があれば戦闘中でも少し体力を回復出来るが、敵に囲まれていると敵の攻撃判定が連続してしまい、自分の攻撃やアイテムを使う判定がかき消されてなす術もなくやられるケースも起こり得る。正にタコ殴り。
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遭遇した地形によっては木や岩が障害物となり、敵に一斉に囲まれるのを防いでくれたり、物陰から1匹ずつ襲い掛かる事も出来る。上手く使えば有利になれるが、先述の通り地形と自分の向きによっては目の前に壁がある状態だったりほぼ何もなく敵がどんどん向かって来たりする。地形を利用して戦いたいなら「この地形ならどっち向きが有利か」を覚えて戦う必要がある。
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ただし城の中などは普通の床なので障害物は無い。セーブも出来ないので、やられたら城に入る前(の最後にセーブしたポイント)からやり直しになる。
 
 
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大量の敵を倒しても割に合わない
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経験値とゴールドは敵を全滅させるとまとめて入る。経験値は敵の種類と数によって固定されており、画面にいた敵の数に応じて係数が掛かっている。
 2匹の場合で1匹を倒した場合のおよそ1.1倍、8匹でおよそ1.7倍。普通のゲームの様に8匹なら8匹分の経験値がそのまま入るわけではない。ゲームシステム的にこの様な仕様になったのであろうが不満を感じる人もいた。
 
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「白いアイドル」を入手しないと話にならない
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アイテムには5色のアイドル(偶像)があり、それぞれMPを消費して魔法が使える。その中でも体力回復の「白いアイドル」が命綱になる。
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序盤の体力回復はレベル×10ゴールドで全回復してくれる医者か、回復量は多くない上に割高になるヒールポ―ションを使うしかなく、戦闘で獲得出来るゴールドも少な目なので治療費にお金を使わざるを得ない状況が続き、装備を買い替える事もままならない。
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幸い白いアイドルは割と早めに入手出来る。それにMPは自動で回復するので、入手してしまえば文字通り医者いらずになる。これはこれでバランスが良くないと言えるが。
 
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アイテム選択がやや面倒臭い
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セレクトボタンを押すと画面がゆっくり左にスライドしてアイテム画面が右側に現れる。アイテムを選択するとまた画面が右側にスライドして元の画面に戻る。演出的には凝っているが、この画面スライドがいちいちあるのが地味に面倒臭い。
 戦闘中に「まず黒いアイドルで敵を鈍らせて、次に赤いアイドルで自分の攻撃力を上げて、念のために白いアイドルに持ち替えて」とやろうとすると画面を3往復スライドさせる事になる。
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また使用頻度の高いアイドル類はアイテム欄で下の方に並ぶが、ソートもカーソルの上下ワープも出来ないので、いちいち一番下の方まで移動させなければいけない。後半で所持アイテムが増える程手間もかかるようになる。
 
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レベル30にならないと入手できないアイテムがある
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ある宝物庫にある攻略上必須アイテムは、レベルが30に達していないと宝物庫の番兵に「お前のレベルではここを通すわけにはいかぬ」と言われ扉を開けてもらえない。
 攻略チャートを理解していればレベル20台前半あたりでアリタニアでやる事を終えていてもおかしくない。早く解き過ぎてもレベル上げの作業をする事になる。
 番兵も「レベル30にしろ」と教えてくれるわけではないのも不親切ではある。
 ただしレンの世界へ行くためのアイテムも先に入手出来るので、行くだけなら行けるが。
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この後はレンの世界に冒険の舞台が移るので、そちらのレベルとの調整を考えた上での制限だと思われる。
 
総評
バランスやUIなど調整不足感が否めないものの、RPGに定評のあったクリスタルソフトだけにゲームの作りは上手く纏まっている。
逆に言えばゲームとしてクイックセーブ以外にこれと言うセールスポイントも無い。当時のゲームとしても及第点といったところである。
ディスクシステム専用ゲームで知名度も低く、他機種への移植もされていないので知る人ぞ知るゲームである。
クイックセーブはとても素晴らしかったが、ROMが大容量化、バックアップメモリでの高速セーブに対応していき、ディスクシステムの優位性と共にクイックセーブも本作のみで消えてしまった。
余談
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裏技でスタート時のキャラクター名を「クリスタルソフト」にすると、通常5個までしか持てないポ―ションが8個まで持てるようになる。
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本作の広告は一部のユーザーからは誇大広告と言われていた。検索すれば今でも見る事は可能。
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『ゲームに登場する数々の迫りくるモンスターはそれぞれに違ったパターンで攻めてくる。』とある。
 しかし実際はただ歩き回って自分に近づいてくるか、飛び道具を撃つ敵が歩きながらむやみに弾を飛ばす程度のパターンしかない。54種類いると広告に書かれている敵が全てこの状態である。
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『対する君にも6本の剣と10のアイテムを駆使した60の攻撃パターンが用意されている。』とあるが、単純に武器とアイテムの総数を掛け合わせた水増しでしかない。
 武器が違うから1パターンと勘定しているが、特殊能力も無い普通の武器でそれをわざわざ1パターンとしているゲームは恐らく他には無い。普通に攻撃パターンは体当たりと飛び道具の2パターンしかないと言える。
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「10のアイテム」も戦闘中に使えるアイテムはいわゆる魔法が使える5本のアイドルと飛び道具が撃てる2本のロッド、2種類のポ―ションで9しかない。持っているだけでMPの回復速度が速くなる「天使の像」を入れたとしてやっと10種類。
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ただし本作程大げさなものは珍しいとしても、この当時はとにかく数を多くして、ゲームのスケール感を壮大に感じさせようとする宣伝は常套手段であった。
 RPGなら武器やアイテムの数、敵の種類の数、町や洞窟の数などを挙げたり、アクションゲームならステージ数、アドベンチャーなら登場人物数など、『大きい事はいい事だ』的な発想は決して珍しいものではなかった。
 著名作品の『ドラゴンクエスト(I)』でも箱の裏に「登場人物はなんと100人以上」と、一言しか言わないようなモブの村人も合計した数字を乗せていたり、フィールドマップが約700画面という点をアピールしているゲームもあった。
 
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本作はあまり売れなかったようで、DOGの音頭を取っていたスクウェアに不信感を抱いたという話もあり、クリスタルソフトがファミコンに出したゲームはこれ1本のみで終ってしまった。
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DOGとしてスクウェアは計4本のゲームを発売したが、他社は『ディープダンジョン』をIIまで出したハミングバードのみ2本、残りの5社は各1本のみである。
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クリスタルソフトは数年後に経営難に陥り、T&Eソフトに吸収されて大阪開発部になった。
 吸収前から開発していた『ソード・ワールドPC』は無事T&Eソフトから発売されている。
 
最終更新:2024年11月28日 23:08