塔の下のエクセルキトゥス

【とうのしたのえくせるきとぅす】

ジャンル 異世界召還ファンタジーRPG
対応機種 Windows Vista/7/8
発売・開発元 アストロノーツ・コメット
発売日 2015年8月28日
定価 8,800円(税別)
レーティング アダルトゲーム
配信 2015年11月20日/7,436円(税別)
判定 なし
ポイント プレイヤーが圧倒的に有利なゲームバランス
先攻1ターンキルが多発
良くも悪くも手軽な異世界モノ


概要

「アストロノーツ・コメット」ブランドの3作目。
このブランドとしては初のRPGだが、姉妹ブランドの「アストロノーツ・シリウス」で既に『ウルスラグナ ~征戦のデュエリスト~』等が販売されていたため、それらと比較されやすい。

タイトル画面の表記は「塔ノ下ノエクセルキトゥス」だが、公式サイトの表記を優先している。

ストーリー

はるかな昔、この世界は優れた技術を持った文明が繁栄していた。
その古代文明は行き過ぎた発展の果てに自らの世界を破壊してしまった。
それが『災厄』――そのせいで世界は一度滅びかけたが、
『黎明の一族』が作った塔『ヴェルヴァレム』により長い時間をかけて徐々に立ち直りつつあるが、
塔の周囲以外は動植物が生きるには厳しい環境が広がっている。
……だが、新たな問題が発生した。
『人口の増加』がもたらした循環機能の低下、バランスが大きく崩れ始めた。
『塔』の庇護下で安定した環境を得た人々は『増えすぎてしまった』のである。
当時の政治のトップたちは悩んだ結果……狂気のシステムを作り出し、見事なまでに成功するが、
そのシステムに対抗するため戦士たちを作り出すメルクリティ学園を設立し冒険者を育てたことにより再び人口は増加し、
不安定になる『ヴェルヴァレム』。確実に近付いている崩壊へのカウントダウンが始まった。
そんな世界に突然にも、クロエが授業の課題で発動した召喚術で、誤って召喚された主人公『立花裕樹』。
一癖も二癖もあるヒロインたちと共に課題をクリアし冒険者となれるか!?
そして、生き残るのは『塔』が創造する『魔物』か? 『人類』か? 『共存』か?
 (公式サイトより抜粋)

特徴

  • ノベルゲームのようにテキストを読み進めるパートと、ダンジョンを攻略するパートに分かれている。
    • ストーリーを進行させるほか、カードの購入やデッキ編成、仲間との会話によるサブイベントなどの選択肢もある。日数制限等はない。
    • 道中のサブイベントを回収していけば1周でCGとシーン回想を100%埋められる一本道仕様。
    • エンディング後はタイトル画面にEXTRAの項目が追加される。カードやレベルを引き継いでエピローグをプレイできる。引き継いで最初からプレイすることも可能。
  • 戦闘はカードバトル
    • 勝利するとデッキに入っているカードの経験値が溜まり、ランダムでカードやアイテムを入手できる。

カードバトルのルール

  • リーダー1枚と3枚のパーティメンバー(デュミナス)で戦闘し、リーダーのHPが0になると敗北する。
    • パーティメンバーは6枚まで入れられる。1~3枚目は初期に配置され、4~6枚目は初期位置のキャラが倒された際の補欠要員。順番は事前に固定できる。
    • 各カードにHPが設定されている。リーダー以外にはシールド値も設定されている。
      • パーティメンバーが3枚場に存在する場合、リーダーは直接攻撃を受けない。ただし、パーティメンバーのシールド値が0になると、HPが残っていてもリーダーへの直接攻撃が可能になる。
      • そのため、HPやシールド値が低いパーティメンバーを狙いうち、リーダーへの直接攻撃を試みるのが基本戦略となる。
  • 毎ターンマナが補充される
    • 4枚のカードは1ターンに一度行動可能。各カードは種類のスキルを有しており、場に応じて使い分ける。
    • スペル・トラップの発動にも使うため、使用する順番を考慮する必要がある。
  • キャラクターカードはストーリーで仲間になるキャラとドロップアイテム等で入手できるデュミナスの2種類。
    • 前者はリーダーとしても使用可能。パーティメンバーとして使用するときとは違うスキルとなる。
    • 後者はスライムのようなファンタジー系のモンスターや、ALICE SOFTの女の子モンスターのような美少女イラストが使われている。なお色違いも多い。
  • 手札デッキ(原文ママ)
    • スペル・トラップを0~30枚まで入れられる。
    • スペルはマナを消費してダメージを与えたり回復に使える。トラップは場にセットして相手の攻撃やスペルの効果を減少させるのに使う。
    • 初手は3枚(プレイヤーが先攻固定のため事実上4枚)のため、少数にしておけば狙ったカードを初手に準備できる。
  • 正面以外の敵への攻撃は威力が下がる、同属性のキャラ2体を使用した追撃、被弾等で溜まるゲージを使用する必殺技システムなどの要素もあるが、後述の難易度の低さのためほぼ機能していない。

評価点

  • 分かりやすいストーリー
    • 弱小パーティを率いながら勢力を強め、気がつけば大人数の強大なパーティとなり、世界の存続を賭けた戦いに挑む。ありがちな題材ではあるが、その分話の流れを理解しやすい。
    • 仲間を救うためのピンチ時の覚醒や、特技でピンチを切り抜ける場面等、盛り上がりは各所にある。
    • ダンジョンを攻略してエッチシーンや小話という構成。程よく気分転換になりダンジョン攻略のモチベーションに繋がる。
  • エロシーンの多さ
    • 15人のヒロインに対し、61シーンある。
    • ヒロイン側が積極的で、共に戦う仲間との親愛を感じられるシーンが多い。
    • パーティに加入しないサブヒロインとのエッチは他とは差別化されたシチュエーションでマンネリを感じにくい。
  • 手軽
    • ダンジョンは浅く、レベリングをほぼ必要としない。
    • ボス以外の戦闘は100%逃走可能、基本的にダンジョン内でセーブ可能、負けてもその場で再戦可能等、プレイヤーに有利な仕様が多い。
      • レベリングが無駄になったりやり直しのために時間を取られることがない。

賛否両論点

  • 難易度が非常に低い
    • 「序盤のペンギン*1が最難関」と称されやすい。
      • 基本的にヌルいからと言って雑魚戦を怠ると苦戦させられる。とはいえ、このタイミングで稼ぎ用のダンジョンが解禁されており、十数分のレベリングで対等に戦えるようになる。
    • ここさえ超えてしまえば、残る難所は体力の高いラスボスくらいである。他は全力で勝ちに行くデッキを組めばほぼ初手1ターンキルの作業と化す。
  • イベント・店売りで確実に手に入るカードが強力
    • 救済処置とも捉えられるが、他のカードの出番を奪っている。
+ 強力なカード紹介
  • 《シャノン》
    • パッシブスキル「業火の浄罪」。自分以外の味方火力を10%アップ。強化後は25%アップ。
    • 自身が攻撃スキルを使えることもあり、汎用性が非常に高い。攻撃的なゲーム性のため、勝利を狙うならリーダーはほぼ《シャノン》で確定する。
    • 他のリーダーは被ダメージ軽減や条件を満たすとドロー等、ゲーム性と噛み合っていない。
  • 《魔法姫シンデレラ》《魔法狼赤ずきん》《魔法娘白雪姫》
    • いずれもコスト0でシールドを2pt削れるため、2体で攻撃すればほぼ全ての敵のシールドを割れる。
    • そもそも素の火力も高いため、1~2回の攻撃でHPを削りきることも多い。
    • コスト2で威力130%の攻撃もできるため、余ったマナも活用できる。
  • 《魔力の補給》上限は4枚。
    • 0コストで2マナ増やす。
    • 手札1枚と引き換えに2マナ増やせるのが強力。1ターンキルに繋げられるため、手札コストは大して痛くない。
  • 《再行動》上限は1枚。
    • 4コストで、全味方を再行動可能にする。
    • 《魔力の補給》で4マナ確保は容易なため、全てのキャラが2回行動できるようなもの。
  • 《墓地回収》上限は1枚。
    • トラッシュされたスペル・トラップをランダムで3枚回収する。
    • 上述の《再行動》の再利用に活用できるのが強み。
  • 戦略性が低い
    • デッキに下限がないため、上記の強力なカードを確実に初手に準備できてしまう。
    • HPかシールド値の低いカードを破壊してリーダーに総攻撃し、倒せなければ《再行動》で再度攻撃。これだけでほぼ1ターンキルが成立する。
    • 脱衣麻雀のように、ある程度気楽に勝てる難易度が望ましいとはいえ、ヌルすぎるという意見も多い。
  • 極少数だが、ヒロインへの陵辱シーンがある
    • さほど過激ではないため、塔の危険さを示すシーンとしてあっても良いとも言えるが、浮いているのでいらないとも言われる。

問題点

ストーリーの問題点

  • 評価点の裏返しだが、キャラ・ストーリー共に薄めなのは否めない。
    • 仲間になったキャラとエッチするまでの間が少ないので、心情の変化や日常の積み重ねを大切にしたいプレイヤーからは否定的に見られがち。
    • 人間関係もシンプルではあるが、安直さも感じさせる。
  • 詰め込みすぎな終盤
    • 終盤に仲間になるキャラは5人以上いるが、最終決戦直前にまとめて初エッチを消化するため、ありがたみが薄い。
      • そのため、遅く仲間になるキャラは魅力を薄く感じやすい。エピローグや周回プレイで活用はできるが。
    • 終盤とエピローグが短く、エピローグは浅いダンジョンをクリアしてエッチシーンを5回見たらタイトルに戻されるため余韻を感じにくい。
  • 一部のエロシーン・小話
    • 終盤に「塔で行方不明者が出た」という緊急事態にもかかわらず、呑気なエッチシーンや雑談パートが挟まれる。
      • 魔力供給などの要素はなくエッチは快楽目的でしかないため、ストーリーと噛み合っていない。
  • ストーリーとバトルが噛み合っていない。以下、通常の文章がノベルパートで太字がバトルパート
    • 物理攻撃が効かないモンスターが登場。物理/魔法の概念はない。
    • 連戦で疲労が溜まる。一戦ごとに体力が完全回復する。
    • 大量の魔物が登場。敵味方共に4体しか場に出せない。
  • 効果音が悪い
    • 迫力がない咆哮や銃声等が緊迫した空気を乱している。
    • 射精時の効果音も洗面所で水を流すような音であり、しょっちゅう聞くため非難が多い。

ダンジョンの問題点

  • 洞窟風のダンジョンしか存在しない
    • 溶岩や海を模したダンジョンといったものが一切存在せず、最初から最後まで終始同じ見た目のため、視覚的な楽しみが薄い。
  • ギミックも乏しい
    • 「クリックで開く扉」「スイッチを押した後に開く扉」「横から開ける隠し扉」「トラップ宝箱」しかない。
      • そのため片っ端から扉を開けて階段を探し、入れなさそうな部屋は隠し扉を探すという作業になりがち。
      • 後半になるにつれ、スイッチがやたら多くなる。スイッチで入れるようになった部屋でスイッチを押し、また別の部屋に入りスイッチ……となるためマンネリ化する。
    • トラップ宝箱は開けると戦闘ではなく、周りに敵が出現するだけのため、中身が入手できない宝箱と捉えて差し支えない。
      • 敵に触れても逃走率100%のうえ、毎回体力が全回復するためピンチ時に遭遇というケースもない、そのため一般的なRPGと違いトラップとして機能していない。
  • 戦闘勝利後のドロップや宝箱から「ゾルマ」というアイテムが手に入るが、換金専用
    • サブイベントで使うようなことも一切ない。そのため換金の手間がかかる金でしかない。
    • さらに、上述したように店売りの有用なカードが限られており、トラップ宝箱もある。クリアだけを目的とするなら宝箱は全無視でも構わない。
  • AIが馬鹿
    • 「おまかせ」をクリックすることで、オート戦闘となるが悪手が多く時間がかかる。
    • 例として、上限まで1マナという状況で先に《魔力の補給》を使うため溢れた1マナが無駄となる。

総評

先攻1ターンキルでほぼ勝てるため、中盤以降はヌルゲーとなる。ダンジョンの作りこみも浅く、RPGとしては粗い出来である。
ただし、本作はエロゲーであるため、「気持ちよく勝てればそれでいい」「ヌルい分には自分で縛ればいい」といった擁護意見もある。幸いにも一つ一つのダンジョンが浅く、戦闘は1分かからずに終わるため、レベリングや迷路ダンジョンといった面倒さとはほぼ無縁である。

シンプルなストーリーや、主人公にベタ惚れのヒロインといった要素も相まってお手軽なエロゲーである。
RPG要素をアクセント程度と捉え、エロやキャラに魅力を感じたプレイヤーからは好意的に見られている。

余談

  • 序盤に主人公が自分のバイクを「彼女」と呼ぶ、ちょっと変わった一面が見られる。
    • 変わった点はこれくらいで、後は極普通の男子である。フレーバーテキストのようなものと思われる。
  • パーティの平均レベルが20程度のタイミングで入手できる《東方の使者ファン》はレベルが40。
    • バランス調整ミスが疑われたが、後半に連れ使いにくくなるためそこまでバランスには影響していない。序盤では使いやすい救済処置のような扱いである。
  • 逃走後に無敵時間が発生する
    • これを生かして一本道に敵がいる場合に、戦闘せずに突破できる。
    • 宝箱のある小部屋の入り口に敵がいる場合でも、戦闘せずに宝箱を回収できる。
    • ただし敵は弱く、宝箱の中身も不要なためゲームバランスにはほぼ影響がない。
  • エロゲー(作品別)の本作のスレッドでは、発売から3日もしないうちに強力なカードや戦法が発見されていた。
    • 研究が進んでヌルゲー化したわけではなく、普通にプレイしていても気がつきやすいということである。
  • 公式サイトでオープニング曲が公開されているが、ゲーム内には収録されていない。
  • FANZAではジャンルが「異世界召ファンタジーRPG」となっているが、「異世界召ファンタジーRPG」が公式表記である。
  • ブランドの次作となる『アリスティア・リメイン』は本作ED後の遥か未来を舞台としている。
    • 世界観を引き継いでいるだけであり、本作の要素は一部キャラが過去の人物として言及される程度に留まる。
  • 移植など
    • DVD-PG版も販売されている。
    • サブスクリプション「GAME 遊び放題 プラス」対象作品の一つである。
    • アダルトゲーム雑誌「メガストア 2021年7月号」の付録に本作が収録されている。
最終更新:2024年11月11日 22:02

*1 正式名称は《アイメル》。ペンギンのモンスター。