ウォーリーをさがせ! 絵本の国の大冒険

【うぉーりーをさがせ えほんのくにのだいぼうけん】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 スーパーファミコン
メディア 8MbitROMカートリッジ
発売元 トミー
開発元 オーパス、夏システム
発売日 1993年2月19日
定価 9,500円(税別)
判定 良作
ポイント もしもウォーリーの絵本の世界に入ったら…?
上手く表現された原作の雰囲気
ウォーリーを探すのは終盤


概要

大量の人物が描かれた一枚絵の中から主人公ウォーリーやその他の指定された人物・アイテムを探し出す絵本シリーズ『ウォーリーをさがせ!』を原作とするアドベンチャー。
プレイヤーはウォーリー親衛隊の100人目の仲間となり、絵本の世界に閉じ込められてしまったウォーリー達を助けるため奔走する。

ストーリー

やあ ぼくは ウォーリー!
まほうのステッキで どんなところへも ひとっとびで たびをする ぼうけんかだよ!

ところが こんどの ぼうけんばっかりはだいピンチ!
あたらしい えほんのせかいにウェンダの たんじょうびプレゼントをさがしに いったんだ。
でも ぼうけんのとちゅうで いたずらもののオドローに ぼくの たいせつなステッキを うばわれてしまったから たいへん!
ステッキの まほうのちからがないと もとのせかいにかえることができない。
いっしょにやってきた 99にんの「ウォーリーしんえいたい」たちも えほんのページに とりのこされたままなんだ……

さあ そこで きみのかつやくだ!
きみが えほんのそとにのこっていた たったひとりの なかまなんだ。
マーチンがくれた ぼくとおなじ まほうのステッキで みんなを つれもどしてくれ!
きみの たすけを まっているからね!

※説明書より引用

登場人物

主人公
  • ウォーリー親衛隊の100人目の新入りとして参加。デフォルトネームはなく、ひらがな・数字4文字以内で任意の名前を入力する。
ウォーリー
  • 言わずと知れた原作シリーズの顔。本作では主人公にチュートリアルを施した後、終盤まで退場する。
ウェンダ
  • 原作に登場するウォーリーのガールフレンド*1。誕生日を目前に控えており、ウォーリーや親衛隊と協力してプレゼントを用意するのが本作の目的のひとつである。
オドロー
  • こちらも原作シリーズに登場する悪役*2。ウォーリーから魔法のステッキを奪い、親衛隊もろとも絵本の世界に閉じ込めてしまう。
99人のウォーリー親衛隊
  • 主人公にとっての先輩メンバー達。彼らを絵本の世界から助け出すのも主人公の目的となる。
  • 全員容姿が異なる凝りっぷりであり、99人分の名前も固有に設定されている。
マーチン
  • 『ウォーリーをさがせ!』シリーズの原作を手掛ける絵本作家、マーティン・ハンドフォード氏本人*3。彼の書斎が主人公達の本拠地となる。
  • ウェンダの誕生日に先駆けて新しい絵本を描き上げており、本来ウォーリー達はその絵本の中からウェンダ宛てのプレゼントを探してくる予定となっていた。
  • ウォーリーをはじめとする絵本の登場人物達はマーチンから見るとデッサン人形程度のサイズであり、書斎ではそれぞれ机上の端に立っていたり、本棚のへりに固まって座っていたりしている。

システム

  • 絵本の世界は2D見下ろし型のアクションアドベンチャーで、十字キーで主人公を動かし、Bボタンで気になる箇所を調べることができる。
    • 1つのビューごとに画面が固定されており、画面端に到達すると次のビューにスクロールする(『ゼルダの伝説』と同様の仕様)。
  • 都度、マーチンや絵本内のキャラクターから探して欲しいもの(人物や特定の物品)のグラフィックを見せてもらい、それと同じ人・物を実際に歩き回って見つけ出す、というのが基本的な流れとなる。
    • Yボタンで魔法のステッキを出し、正しい対象を指し示せばその設問はクリアとなる。
      • つまり原作の「巻末チェックシートで探す対象の特徴を確認」→「該当ページから探す」というフローが、本作では「探す対象のグラフィックを目視」→「複数のビューで構成されたマップを歩き回って見つける」→「対象を指し示して判定」として落とし込まれている。
  • 主人公には「チャンス」というHP代わりの値が設定されており、誤った対象を指してしまったり、トゲによるダメージを受けたりすることで減少する。0になるとマーチンの書斎へ戻されてしまうが、コンティニューは無制限なので詰むことはない。
  • 絵本には石器時代、エジプト、バイキング、十字軍、中世の5つのページが用意されている。
    • やること自体はいずれも探し物だが、個別にストーリーが用意されており、「絵本の世界の恋人同士を手助けする」「戦争を止める」などそれなりに見どころのあるシナリオが展開される。
    • 各地には親衛隊が散らばっており、彼らを助けることによって書斎へと帰すことができる。物語は全員助けないと進行できないので、見落としによる手戻りは発生しないようになっている。

評価点

  • 原作の風合いを再現したアートコンセプト&システム
    • 登場するキャラクター達はいずれも原作通りの画風であり、素朴でどこかとぼけた風合いがしっかりドットで書き起こされている。
    • あらゆるモブが数コマ程度ながらアニメーションしており、ポージングも「腰に両手を当てて胸を張っている」「手のひらを目の上にかざして周囲を見回している」「大口を開けて仰向けに寝転んでいる」など、これまで原作絵本の中で見つけてきた人々をそのまま抜き出してきたような出来。
      • エジプトには「複数人で石材を運ぶ男達」、十字軍には「ハシゴのそれぞれ両端を持って反対方向に進もうとしている兵士達」といった「原作あるある」なモブもおり、オリジナルへのリスペクトが感じられる。
    • またそれゆえに「絵本の世界へ飛び込んで探索する」というシステムが活きており、『ウォーリーをさがせ!』のゲーム化としてはこれ以上ない程実直なものとなっている。
  • 生き生きとした主人公のモーション
    • 100人目の親衛隊となった主人公もしっかり「ウォーリー世界の住人」らしい動きを見せる。
    • マーチンの書斎で見せる「顎に手をやって、もう一歩の手をポケットに突っ込んだ立ち姿」や、フィールド上での過剰なまでに脚を前方に蹴り出す歩き方、魔法のステッキを用いた際の腰のひねりなど、動かすだけでも楽しい面がある。
  • 明示的なチュートリアルが用意されている。
    • 1993年当時のゲームでは珍しく、ウォーリーの指示によるチュートリアルステージが完備されている。
      • ここでは2ビューのみのマップにワープし、特定の「花」を選べばクリア。ストーリーに沿ってウォーリー達が絵本に閉じ込められるのはその後であり、初心者の操作への慣れを意識した作りとなっている。
  • 親衛隊を助けるごとに賑やかになるマーチンの書斎
    • ゲーム中に助け出した親衛隊メンバーはマーチンの書斎上に表示されるようになる。さすがに99人全員ではないが、徐々に書斎が賑やかになっていくため助けた甲斐を感じさせる効果をもたらしている。
    • また、彼らはいずれも2コマでアニメーションしており、複数人で肩を組んでいる者やマーチンの腕に乗る者、本棚から落ちそうになって他の親衛隊に助けられている者と大変個性豊かな動きを見せてくれる。
  • BGMの出来が良い
    • 特別光る名曲があるという程ではないが、幅広い世界観を持つ本作において曲調が卒なく場面に合っている。
    • 中でもマーチンの書斎で流れる落ち着いたボサノバや、最終ステージで流れるホラーチックなBGMなどは比較的印象に残りやすいだろう。

賛否両論点

  • 難易度が低め
    • ほぼ徹頭徹尾、「探す対象の特徴を覚えてマップ中から探してくる」というのみで成り立っているため、全体を通した難易度は低め。
      • 一応パズル要素を含むダンジョンもあるのだが、「スイッチを踏んで扉を開閉させて進む」といった総当たりで済む程度のものであり、またトゲなどトラップも判定が甘めでダメージを食らいにくい。
    • ただ、原作を考えれば本作のメインターゲットは小学生あたりと想定されるため、レベル設計が合っているとはいえる。
      • 加えてマップにショートカットが用意されているなど気の利いた面もあり。
  • 漢字が使われていない
    • メインターゲット層、及びこのゲームの雰囲気には合っているので大きな問題ではないが、どうしても読みにくさが生じる。

問題点

  • 歩行速度が遅い
    • ダッシュをすることも出来ないため1ビューを横断するのに5秒程度かかる。探し物がメイン目的である以上、同じ所を何度も往来させられる事が多く、もどかしさを感じやすい。
    • 特にバイキングページでは複数のビューを丸ごと使った間違い探しがあり、1往復で20秒はかかる2つの村を行き来させられるハメになる。
  • 徹頭徹尾「おつかいゲー」
    • やる事が最初から最後まで「提示された人・物を探す」であるため、(それ自体は原作再現ではあるものの)飽きる可能性がある。
    • 一応上記で触れたような「村丸ごと間違い探し」であったり、探す対象の情報がいい加減なパターンがあったりと変化はあるのだが、さすがにメリハリは感じにくいかもしれない。
  • セーブファイルを見ても進行状況が解らない
    • ロード画面上で表示されるのが主人公の名前のみであり、現在地や助けた親衛隊の数が解らないため、データの内容がわかりにくい。
  • 一度クリアしたページに戻れない
    • クリアしてしまったページは以降入ることができず、強制的に次のページへと進んでしまうため、せっかくの世界観を楽しみ直すことができない。
    • アドベンチャーゲームとしてはよくある仕様だが、こと「雰囲気が全く異なる5つの絵本の世界」という舞台では勿体なさがある。
  • 決定ボタンがBボタンである
    • デフォルトの決定ボタンがBボタンのため、スーパーファミコンで多かった「Aボタンで決定」に慣れていると操作を誤りやすい。
    • 一応、コンフィグでAボタン決定に変える事はできるし、キャラクター達も「赤ボタン」と言うようになるなど細かい配慮はされている。
      • 但しそれでも、ロード画面ではBボタン決定のままなのでやや不便。
    • こういう仕様はあまりないところであるが同じくオーパスが開発を担当した『ブレインロード』でも同じ問題があったりする。

総評

原作の雰囲気をしっかりゲーム上に落とし込んだ一作。
それゆえに若干メリハリのないおつかいゲーとなってしまっている面はあるが、その分ストーリーには見せ所があり、進行に合わせて増えていく親衛隊の雰囲気など、演出面でのこだわりを感じさせてくれる。
原作つきのキャラゲーとしては良質なつくりであるため、ファングッズとしては勿論、お手軽な脳トレアドベンチャーとしても楽しめる一品である。 ファンなら手に取ってみて損はないだろう。

余談

  • 『ウォーリーをさがせ!』を原作とするゲームは他にもNESで『Where's Waldo?』があり、セガからもアーケードでリリースされている。
    • 現在は中古、箱説なしでも数千円の値で取引されているが、ウォーリーのファンならば選択肢に入るであろう。
  • ちなみに既に触れた通り、ウォーリーを探すのは終盤に入ってからである。
    • 『ウォーリーをさがせ!』と言っておきながら、序盤でオドローに閉じ込められてしまったウォーリーに出会うのはかなり後であり、それまではストーリーに絡むモブキャラや親衛隊を探し続けることとなるため、タイトル通りとはいかない。
    • とはいえ「ウォーリー以外は探したくない」というプレイヤーは恐らくいないと思われるため特に問題はないのだが、少し変わった特徴ではある。
最終更新:2022年01月14日 14:21

*1 シリーズによっては「ウィルマ」名義の場合あり

*2 シリーズによっては「オズロー」名義の場合あり

*3 「マーチン」「マーティン」の表記ゆれは仕様。原作絵本ではマーティン表記だが本作ではマーチン表記となっている