アウトロイド
【あうとろいど】
ジャンル
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アクションRPG
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高解像度で見る
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対応機種
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MSX X1
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メディア
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カセットテープ
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発売元
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マジカルズゥ
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開発元
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ストラットフォード・コンピューターセンター
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発売日
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1985年
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定価
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4,800円
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プレイ人数
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1人
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判定
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なし
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ポイント
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『ハイドライド』を彷彿とさせる見下ろし型ARPG 簡素なグラフィックやBGMが活かされた硬派な雰囲気
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概要
1985年にマジカルズゥ(ストラットフォード・コンピューターセンター社のホビー事業部)より発売されたアクションRPG。
同社は元々は教育ソフトの開発会社だったが、後に本作や『黄金の墓』などのゲーム開発を手掛けるようになったと言う一風変わった実績を持つ。
本作はMSX版とX1版が存在するが、当ページでは特に断りのない限りMSX版について述べるものとする。
ストーリー
2108年、第二の地球クォーンは滅亡した。東西両陣営の中央管制コンピュータが、突然戦闘を開始したためだった。
5週間にわたり地上を破壊し尽くした戦争を制したのは西側の中央管制コンピュータ「C.C.C」だった。
C.C.Cはそれまで管理していたロボットによる社会「アウトロイド」を作り、まるで女王バチのように工場でロボットを作り出し、クォーンを支配していった。
そして自分にとって最も危険であろうと思われる敵――すなわち、戦争に生き残ったほんの一握りの人類を総て抹殺する指令を出したのである。
人類の生き残りの1人であるラモン・オクダイラも例にもれずロボットに追われる身となった。
彼は一人アジトに身を隠し、残された唯一の武器アーマードスーツXX-85で果敢にロボット軍団に立ち向かった。
クォーンの人類を救うにはもはやC.C.Cを破壊する以外ない。
しかし、この感情さえ持った冷酷な悪魔は隠れ潜む人類を追い、容赦なく次々と襲いかかる。
人間が勝つか機械が勝つか、それは彼の勇気と知恵にかかっているのだ……
(マニュアルより引用、抜粋)
特徴
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トップビューの2DアクションRPG
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ENG(体力)やOP(攻撃力)、DP(守備力)と言ったパラメータを確認しながらフィールドを歩き回る画面構成は、同年代に発売されているアクションRPGの始祖である『ハイドライド』に近い。画面切り替え式なのも同じ。
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攻撃手段は正面に撃つ事のできる飛び道具(単発、弾数制限なし)のみであり、これは道中に現れる敵ロボットも同じ。よって戦闘は敵の側面や背面を位置取り撃ち続けるのが基本となる。
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敵の攻撃を受けるとENGはもちろんOPやDPも減少する。ENGとOP・DPはそれぞれ回復方法が若干異なる。
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RPGと銘打たれているものの、本作には経験値やレベル、通貨の概念はない。OPやDPの強化は後述するパーツ換装により行う事となる。
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敵ロボットは地上を徘徊するもののほか、BASE(基地)より現れるものも居る。後者は倒す事でBASEの中に隠されたパーツやアイテムを入手できる。
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パーツ換装によるパワーアップ
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主人公の搭乗するアーマードスーツ「XX-85」はヘッド、ボディー、アーム、フットの4つのパーツで構成されており、BASEで見つけたパーツを換装する事でOPやDP、移動速度が強化される。
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パーツ換装のほか、特殊装置を装備して行動範囲を増やす事もできる。特殊装置は水上用ホバーやバリア防止装置、更には飛行形態への変形装置と様々。
評価点
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硬派なSF世界の雰囲気
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「ロボットに支配された世界」と言う荒廃した近未来の世界観が、簡素で無機質なタイルパターンで構成されたマップにより効果的に表現されている。
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アイテムの使用などを行うメニュー画面はCPUのディスプレイのように表示され、カーソルが高速で流れながら1文字ずつ文章を表示させていく演出もシンプルながらCPUらしさをうまく表現している。
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表示されるCPUのメッセージは全て英語であり、事務的ながら妙に人間味を感じさせる。回復アイテム(エネルギーパック)使用時にただ一言表示される「Ok」のメッセージもやけに渋い。
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本作で使われているBGMはタイトルBGM及びメインBGMの2曲のみであり、メインBGMは「ベース1音で単調なパターンの旋律をただひたすら繰り返す」と言う思い切ったもの。このストイックなBGMも世界観の構築に一役買っており、意外なほど飽きが来ない。
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「統一規格で製造された換装可能なパーツ」「世界を支配する管制コンピュータへの叛逆」「状況を逐一報告するヘッドパーツ」などの共通点もあり、本作の雰囲気が『アーマード・コア』と比較される事もしばしばある。
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成長するにつれて広がっていく世界
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前述のとおり本作ではBASEから手に入る特殊装置を発見する事によって水上などを進めるようになり、行動範囲が広がっていく。
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この「成長と共に行動範囲が少しずつ広がっていく」と言う要素は当時のRPGでは(限られた容量の中で物語性を増すと言う意味でも)欠かす事のできない要素であり、それは本作においてもきちんと踏襲されている。
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中でも飛行用の全パーツと変形装置を集め、それまで無意味なマップパーツだと思われていた離着陸場に踏み込んだ瞬間に自機が突如飛行形態に変形、そのまま敵基地の中核へと乗り込んでいく局面は本作随一の盛り上がりどころと言えるだろう。
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歯応えがありつつも決して理不尽でもない、適度なゲームバランス
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やや不親切な面があるものの、本作は当時のゲームにしては理不尽さは無く、慣れれば十分にクリア可能なバランスとなっている。
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スタート時点であるMAIN BASEではENG、OP、DPを何度でも全快させる事ができる。付近には強力な敵も居ないため、操作に慣れない間もそうそうやられる事はない。
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しかし無理して遠出するとたちまち敵や罠が苛烈となって撤退を余儀なくされる。無理せず行動できる範囲で少しずつパーツを集めパワーアップする事が求められるため、決してヌルゲーと言うわけでもない。
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ゲーム終盤は行動範囲が広がると共に、多いとは言えない所持制限の中でパーツやアイテムを管理する事が求められていく。使い捨てで有限な回復アイテムをどこで使っていくかも悩みどころ。
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ゲームデータはテープに保存可能なほか、ハード本体のメモリにも一時的に保存可能。
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後述する問題点を理由として「死んで覚える」と言う側面も見られるため、こまめにセーブできるのは有難い。
問題点
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戦闘が単調
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BASEより現れる敵ロボットは正面に弾を撃ちながら一定のルートを周り続けるため、「敵がこちらに対して正面を向けて来ない安全地帯」を見つけてそこから撃ち続ける事で簡単に完封できる。
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操作性があまり良いゲームとは言えず、更に地面にはENGが吸い取られる床や落ちたら即死する穴が張り巡らされている事が多いため、なおさら下手に動き回らず安全地帯を見つける事に注力した方が効率が良い。
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各種パーツの説明不足
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道中で手に入るパーツや特殊装置についてゲーム内で詳しい説明が為されず、装備しても英文で「○○を入手した」としか表示されない。
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パーツは装備すればOPやDP、移動速度が変化するので効果の検証は可能だが、特殊装置についてはどんな効果があるのか装備しただけでは一切分からないため、装置名から何となく効果を推測して実際に試すしかない。
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例えば「バリア防止装置」は一部のバリアにのみ有効なのだが、ゲーム内はもちろんマニュアルでもその事は明確には述べられていない為、あらゆるバリアが突破できると勘違いして有効外のバリアに突っ込んでしまう事も。
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「水上用ホバー」や「空中レール乗降装置」など一部の装置はゲーム内では「W H E」「S R A」などの略称でしか表示されないため、装置名から効果を推測する事すらままならない。ただしこれらの装置はマニュアルに正式名と明確な効果が書かれてあるため、マニュアルさえあれば大きな問題はない。
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反陽子爆弾の仕様
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ゲーム終盤に使用する事になる反陽子爆弾。入手時には「設置後30秒後に爆発する」と説明が為されるが、実際は設置後3秒足らずで爆発する。
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その威力は仰々しい名前に恥じないものであり、もちろん爆発に巻き込まれると問答無用で即死する。設置したら大急ぎで隣の画面に避難しなければならない。
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余談だがX1版ではきちんと約30秒の猶予期間が設けられている。こちらはこちらで猶予が長過ぎて時間を持て余してしまうのだが。
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エンディングが黒背景に白文字(英文)でプレイヤーの栄誉を称えるだけと非常に簡素である。BGMもストイックなメインBGMのまま。
総評
一言で言えば『ハイドライド』と『アーマード・コア』を足して2で割ったような雰囲気のARPG。
たった一人で荒廃した世界を彷徨い巨大な敵に挑んでいく孤独な戦いが無機質なグラフィックやBGMによって効果的に演出されており、特に『アーマード・コア』の雰囲気が好きな人であれば本作の雰囲気も気に入ってくれるだろう。
2020年6月時点において配信などは一切行われておらず、実機でプレイするためにはMSX本体とソフトだけでなくカセットテープの再生装置や変換ケーブルが必要となる、と言う状況。
最終更新:2023年12月01日 19:18