西遊降魔録 流棒妖技ノ章

【さいゆうごうまろくりゅうぼうようぎのしょう】

ジャンル アクション
対応機種 アーケード
プレイ人数 1~2人(同時プレイ可)
発売元 テクノスジャパン
稼働開始日 1988年6月
判定 なし
ポイント 西遊記をモチーフにしたベルトアクション「風」ゲーム
見た目も強さも凶悪なラスボス


概要

テクノスジャパンが『熱血硬派くにおくん』『ダブルドラゴン』に続いて作った西遊記をモチーフとした格闘アクション。
プレイヤーは妖怪に盗まれた経典を取り戻すために、「孫悟空」「沙悟浄」「猪八戒」の三人となって、妖怪達と戦う。
全5ステージ。2人同時プレイも可能。

ゲームの下地としては「熱血硬派くにおくん」「ダブルドラゴン」をベースにしており、ライフ+残機制で、主に武器を使った接近戦で戦う。敵味方共にダメージを受けるとグロッキー状態になったり、吹き飛ばされてダウンする。
グロッキー状態の敵は掴む事が出来、近くにいる敵に投げつける事で巻き込んでダメージを与えられるのも、ベースとなった作品と同じ。

しかし、それらの作品と大きく異なるのはベルトスクロールアクション最大の特徴である「奥行き」が存在しないこと。
代わりにステージ内には多くの足場(段差)が存在し、それに飛び乗ったり降りたりしながら戦う。
似ているゲームで言えば、カプコンの『ソンソン』に少し近いイメージといえる。

操作方法

  • 8方向レバー、攻撃、ジャンプ、術の3ボタン制。
    • 方向レバーやジャンプボタンとの組み合わせで様々なバリエーションの攻撃が可能
+ 攻撃手段
ニュートラル 攻撃範囲は狭いが隙が少なく連続攻撃が可能。グロッキー中の敵はフィニッシュ攻撃で吹き飛ばす。
進行方向にレバー+攻撃 範囲や威力が大きいが隙も大きい突き攻撃。グロッキー中の雑魚敵に当てると掴む事が出来る
グロッキー状態の敵を掴んで攻撃 真後ろに投げつける
グロッキー状態の敵を掴んでジャンプ 正面に投げつける。いずれも投げた敵は別の敵を巻き込める
垂直ジャンプ+ニュートラル+攻撃 回転必殺攻撃。威力が高い
垂直ジャンプ+下+攻撃 打ち下ろし必殺攻撃。ジャンプしてくる敵の迎撃に有効。威力が高く主力となる
  • 術ボタンは敵を倒した後に手に入るアイテムを消費して発動。基本的には飛び道具だが、使用キャラ毎に効果が変わる。
    • 術は使用しなければステージクリア後にボーナスとしてスコアに還元されるのでハイスコアを狙う場合は術を使わないプレイが求められる。
  • ジャンプは比較的リアルな飛距離だったくにおくんやダブルドラゴンと違い、敵キャラや足場を軽く飛び越えるほどのジャンプが可能。
    • 前後を敵に囲まれると不利になるのは前二作と同様だが、ジャンプで簡単に抜けられる上にジャンプから繰り出せる攻撃はいずれも高威力なので重要なアクションとなっている。
    • ただし、敵のジャンプ攻撃も同様に高威力なので、敵と交差する際は先に攻撃されないように気を付けなければならない。
    • 下を押しながらジャンプする事で一段下の足場に移動する事も出来る。奥行きの概念が無くなった分、頻繁に足場を移動して敵よりも有利な位置から攻撃する事が攻略の肝となっている。
  • 吹き飛ばされてフレームアウトしてもミスにはならずに筋斗雲に乗って無敵状態なり、少しの間、好きな場所に動ける。
    • ダメージペナルティはないもののライフが無い状態でフレームアウトするとそのままミス扱いになってしまう。
    • 一部の雑魚はフレームアウトで消す事が出来るが、ボスはフレームアウトしても即座に再登場してくる。

キャラクター

  • 孫悟空
    • お馴染みの主人公。バランス型。
    • 術は円輪の術(悟空を中心に上下左右に発射後、戻ってくる円輪)、チビ悟空の術(当たるとスタンするチビ悟空を前に飛ばす)
  • 猪八戒
    • パワー型で攻撃速度が遅め。
    • 術はおもりの術(猪八戒の目の前に落下していくおもりを発生させる。おもりは下にいる敵に連続でヒットする)、火炎球の術(当たると燃え上がる火炎球を前に飛ばす)
  • 沙悟浄
    • スピード型で攻撃力が低め
    • 術は稲妻の術(画面全体の敵に即座にダメージを与える)青火球の術(当たると感電する火球を前に飛ばす)

評価点

  • 爽快感は高い
    • キャラクターはデフォルメされた2頭身に近いが、敵味方共に軽快に動き回る。
      • ベルトスクロールアクションを得意とするテクノスだけあって攻撃アクションのこだわりが見事。単純にボタンを連打するだけでも派手なアクションと効果音で敵を叩き伏せられる他、様々なアクションを組み合わせる事が出来る。
      • 敵味方共に全員が武器持ちであり、こん棒、弓矢、斧などアニメーションのバリエーションも豊か。
    • くにおくんやダブルドラゴンで感じられた所々の動きの硬さが改善されており、次々と雑魚を蹴散らしていける。
      • 役に立たないアクションが減り、雑魚敵のAIも前2作ほどシビアではないので戦いやすく、ステージ2くらいまでならば初心者でも十分に遊べるカジュアルな作りになっている。
    • 一方で、くにおくんやダブルドラゴン伝統の背後に回り込んでくる敵も健在。当然挟まれると非常に不利になったり、ステップで攻撃を回避される等、人間味のある動きをしてくる。
      • ボタン連打で突破できるような簡単な難易度ではないが、それゆえに敵の隙をついて連続攻撃をたたき込む爽快感があると言える。
  • サウンドの質も高い
    • サウンド面でも、攻撃を打ち込んだ音の爽快感は高め。棒による殴打音、槍で吹き飛ばした時の斬撃音等の豊富な攻撃音でゲームを盛り上げてくれる。
    • 敵味方共に攻撃を受けた時の悲鳴や気合の声といったボイスが多め。
    • BGMは最初こそ軽快だが、ステージが進むごとに不気味さが増していくメリハリのある作り。
  • 子供達をターゲットにしたモチーフ
    • 子供達に人気の西遊記をモチーフにしている事からプレイをする敷居が低く、やり込んだという声も多く聞かれる。
    • キャラクターデザインは当時人気の ビックリマンシールを意識しており、敵キャラも「ヤリ魔戦鬼」「刀煩ジャン」といった駄洒落ネームを持つ。

賛否両論点

  • 全体的に怖い
    • キャラクターデザインは評価点に書いた通りビックリマンシール風の愛嬌を感じられるものであるが、愛嬌が感じられるのはインストカードのみ、一部を除いてキャラはすべて2頭身にデフォルメされているにもかかわらず全体的に怖いグラフィックになってしまっている。
    • そもそも孫悟空をはじめとする主人公達がとても主人公とは思えないぐらいに凶悪な面構えをしているのを皮切りに、敵味方が全て悪人面である。子供向けの可愛さやウケを狙おうというキャラが一切存在しない。
    • 紅一点である敵の双刀使いもインストカードではまだかわいらしさが感じられるのだが、ゲーム内ではナイスバディではあるものの全く色気を感じさせない悪人顔になっている。
    • 主人公たちは倒されるとダウンした状態から点滅して消滅…する際にけたたましい断末魔と共に体が破裂する。流血演出はないもののかなりグロめ。
      • 死ぬと主人公が破裂する以外は割と普通のアクションゲームと同じだが…このゲームを不気味さを上げているのは間違いなくラスボスの存在である。
+ ラスボスに至っては…
  • このゲームのラスボスはインド神話に登場するラーヴァナとなっている。見た目は顔と手をたくさん持つ阿修羅のような姿。
    • ラーヴァナはステージ3とステージ5でボスとして登場し、ステージ3ではダメージを与えると傷を負いながら画面外に逃げていくだけで終わる。
    • ステージ5で再登場した際は、ダメージを与えるとだんだんと腕がもげていき、全ての腕が無くなると首だけになり、さらに怒り狂いながら接近してくる首にダメージを与えると脳髄になり、やがては最終形態として脳髄から目と牙が生えるという非常にグロテスクな外見となってプレイヤーに迫ってくる。
    • 脳髄の状態になると攻撃を当てる度に緑の液体を飛ばしてくるが、これに当たると問答無用で即死。心臓音のようなMEにBGMのおどおどしさも合わせて、子供たちにトラウマを植え付けたキャラとなっている。
      • 緑の液体に当たって即死する場合はキャラの断末魔と共に消滅するだけなのだが、液に触れたキャラが跡形もなく消える為に余計に怖くなっている。
  • 全体的に怖いものの、その世界観に不気味が気持ちいいと言わんばかりに魅入られたファンもいる。

問題点

  • 難易度が非常に高い
    • ボスの大技を食らうと一撃でライフの大半が奪われるなど、適当に遊んでいてクリアできる難易度ではない。
    • テクノスのベルトスクロールゲーは最終面が鬼畜難易度である事で有名だが、本作では輪にかけて酷い事になっている。
+ 最終面の難易度
  • まず、最終面では絶対にアイテムが出ないため、術を使えない。術はそんなに強いわけではないので大きな問題ではないが、術が緊急回避として優れる沙悟浄には痛手。
  • 雑魚代わりにステージ1のボス「銅角仙鬼」が大量に登場する前哨戦。色が違う個体を除いては動きは雑魚と共用なのでボスの時よりは弱いものの強烈な一撃は健在。この前哨戦をくぐり抜けてラスボスのラーヴァナと戦える。
    • 賛否両論点にもあるようにラーヴァナは途中から攻撃を当てると反撃で非常によけづらい即死攻撃の液体を発射してくる。連打などしようものなら確実に餌食になってしまいゴリ押しが許されない。加えて耐久力が非常に高く、体当たりされると大きく吹き飛ばされて時間のロスとなり、長期戦を強いられる。
  • 即死攻撃を避けれるようになるとわかる事だが、制限時間が全然足りない。前哨戦からボスに至るまでかなりの長丁場で、ボス戦になろうがタイムが加算されることはない為、どんなに頑張っても制限時間切れでミスになってしまう。やり込んだプレイヤーからも「ラスボス戦でタイムオーバーによる1ミス」はこのゲームでは常識と言われるぐらいだった。
  • 幸い、最終面でも連コインによるパワープレイは可能。エンディングを見たプレイヤーからは連コイン前提のバランスと称されることに。
    • ノーミスクリアは長年不可能とされたものの、現在では達成したプレイヤーの動画も上がっている。
  • ミスになった後に制限時間が復活しないので、制限時間ギリギリで倒されると復活直後にタイムオーバーで死亡し、強制的に2機減らされるのは実に理不尽。
  • スコアによるエクステンドはないので2機設定になっている場合、タイムオーバーから一気にゲームオーバーに直行する事になる。
    • 加えて、最終面では長丁場からほぼ確実にタイムオーバーになってしまうので、制限時間が近くなるとタイムオーバーで死ぬ為に敵の攻撃を避け続けるという変なプレイングが求められる。
    • コンティニューや途中参加で制限時間はリセットされる。
  • コンティニュー時に一部のキャラが選べない
    • コンティニュー時は悟空を使っていると沙悟浄が選べないなど、何故か選べるキャラが1人少なくなっている。

総評

西遊記、ビックリマンシール風のキャラクター、テクノスお得意の格闘アクションと、ユーザーを取り込む魅力は備えているものの、コンティニューを前提としたラスボスの鬼畜難易度と制限時間の仕様でその魅力をスポイルさせてしまった。後の『コンバットライブス』にも通ずる惜しい点である。
語り継がれる悪人面の主人公達やラスボスのグロさ等、アンダーグラウンドな魅力も持ち合わせていたものの、その後テクノスはくにおくんシリーズに注力するようになってしまったため、本作は長らく移植されなかった。


余談

  • ファミコン版への移植が予定されていたが開発中止になったらしい。
  • 「ハイスコアガールDASH」の13話に本作が登場しており、登場人物がラスボスのグロさにドン引きするシーンが存在する。
  • 2025年4月24日発売の『テクノス ザ・ワールド くにおくん & アーケードコレクション』に本作が収録されており、AC版から実に約37年の時を経て初移植が実現した。対応ハードはNintendo Switch/PlayStation 5/Windows(Steam)。
最終更新:2025年04月24日 09:39