CG昔話 じいさん2度びっくり!!

【しーじーむかしばなし じいさんにどびっくり】

ジャンル サウンドノベル
対応機種 プレイステーション
発売・開発元 アイディアファクトリー
発売日 1996年3月8日
定価 5,800円
プレイ人数 1人
レーティング CERO:A(全年齢対象)*1
配信 ゲームアーカイブス:
2007年4月26日/628円
判定 クソゲー
バカゲー
ポイント IF黎明期を象徴する迷作の1つ
ツッコミ不在の超低予算CG紙芝居
エンディング総数100以上(水増し無し)
バカゲー要素は賛否両論気味
セーブできないせいで遊び辛いゲーム
IF TVシリーズ
厄 友情談疑 / CG昔話 じいさん2度びっくり!! / 厄痛 ~呪いのゲーム~


概要

アイディアファクトリー(以下IF)から1996年に発売されたサウンドノベルで、『厄 友情談疑』に続くIF TVシリーズ第2弾。

この時期のIF作品といえば、チープな完成度や破天荒な作風*2で知られ、カルトな人気を博していおり、本作もまた例外ではない。


特徴

  • オーソドックスなサウンドノベル。かたりべばあさんが語る「昔話」を、盛りだくさんの不条理ギャグと共に楽しんでいく。
    • 冒頭こそ『桃太郎』として始まるが、プレイヤーの選択肢によってはあらぬ方向にお話が逸れていく。異なる昔話の人物が顔を見せる事も。
    • 本作に出てくる昔話はマイナー寄りの物も含まれる。「ネズミの相撲」「三枚のおふだ」「アカ太郎(力太郎)」「吉四六さん」あたりは、ゲームを遊ぶ前に予備知識として頭に入れておくと良いかもしれない。
      • また、「さるかに合戦」は地域によって細部が異なるため、プレイヤーの知る内容と異なる場合もある(余談参照)。
  • CGの質は、時代を鑑みても高いものではない。
    • 当時の学習教材や子供番組で見られたような、幾何図形を単純に繋ぎ合わせただけの代物。テクスチャも雑である。
  • ゲームの進行
    • ゲームを起動すると、オープニングの後に名前入力画面となり、タイトルコールを経て昔話が始まる。入力した名前は、ばあさんがプレイヤーを呼びかけるのに使用する。
      • なお、同時期のIFゲー同様に地球環境の保全を啓発するムービーも最初に流れる。
    • 物語は、「むかしむかしあるところにおじいさんとおばあさんが住んで…いたような気がしたが忘れてしまった」という語りから始まり、誰が住んでいたかをプレイヤーが決める。
      • この時の選択肢に応じて「桃太郎」「さるかに合戦」「ネズミの相撲」へとお話が分岐する。
  • エンディングまで
    • クリアにかかる時間は5~15分。1つあたりの物語は短く、さくっとエンディングが見られる。
      • ただしエンディング数はかなり多く、決してボリュームは少なくない。
    • 最後はばあさんがちょっとした総括をして話を締めくくる。昔話らしい教訓、他エンディングへの誘導、話と関係ない自分語りなど、内容はさまざま。
    • その後はスタッフロールが始まり、例によって環境保護の啓発ムービーが流れた後、ボケたばあさんがプレイヤーを初対面と勘違いし、再び最初からお話が始まる。
    • 本作のコンセプトは、短いシナリオを沢山楽しむことにあると言える。

バカゲー要素

初めに書いておくと、本作のバカゲー要素は人を選ぶ。
良く言えばシュールかつ不条理、悪く言えば安っぽくてしょうもないギャグの応酬で、人を食った言い回しも多い。
同じノリが『厄 友情談疑』で「プレイヤーにケンカを売っているだけの作風」と批判を浴びた反面、本作は初めからコメディとして書かれているため、評価点として捉える意見も多い。
本稿で扱う内容は、人によって「バカゲー要素」にも「クソゲー要素」にもなり得る事を念頭に置いてお読み頂きたい。

  • 全力で悪ふざけに振り切ったシナリオ
    • 語りの途中、ばあさんはさまざまな選択肢をプレイヤーに突きつける。その中には明らかにおかしい物も含まれており、物語は意味不明な方向へとブレていく。悪ふざけし過ぎて軸がブレるリレー小説を想像してもらえるとわかりやすいだろうか。
      • 例えば、桃太郎の代わりに桃からイヌやアカ太郎が出てきたり、犬猿キジの代わりに三年寝太郎を仲間にしたり…など。
      • もっと大胆にお話が変わる場面も存在する。例えばおばあさんが一寸法師に「おわんと箸」を持ってくるシーンがあるのだが、ここで代わりに「包丁」を持ってきて一寸法師に襲いかかる…といったプロットに変える事ができる。
      • なお桃太郎ルートの序盤では、真面目な選択肢を選ぶとばあさんがガッカリしたような反応を見せる。そういうゲームである。
+ ツッコミ所・超展開の例(一部)
  • やせネズミが金持ちネズミにダンゴを持っていく際、選択肢次第では少年漫画風のトーナメント展開に突入し、金持ちネズミの存在が完全に放置される。
    • この大会、優勝候補として持ち上げられるキャラがいるのだが、試合シーンをすっ飛ばした挙句、敗北した扱いで話が進む。こういう噛ませ描写も少年漫画っぽい。
    • 本記事で後述する「謎の覆面」「隠しED」も全てこのトーナメント展開に仕込まれている。
  • サルとカニの喧嘩を前にした栗が「自分には前世を見る力があるから、それでどちらに原因があるか白黒付けよう」と言い出す。
  • 桃太郎ルートの最中にある選択肢を選ぶと、突然天の声が現れて現実改変を行い、一寸法師が主人公だった事にされて物語が進む。
    • 文章だけだと意味不明だが、実際に遊んでも意味不明であり、なんなら一寸法師自身にとっても意味不明のままお話が続く。
  • アカ太郎のデザインが「アンパンマン」に酷似しているのだが、それを見たじいさんが"アンポンタン"と名付けようとしてばあさんに殴られる。
  • アカ太郎が窮地に追い込まれると、「フロアカ太郎」「耳アカ太郎」なるオリキャラが唐突に登場する。
    • 原作にはミドウコ太郎・石子太郎という仲間がおり、本作でも別ルートにも登場する。 じゃあ何でこんな奴ら出した。
    • そもそも、形を持たないフロアカで人形を作る事自体狂っているが、一切突っ込まれない*3
    • 耳アカ太郎に至っては、アカ太郎の両耳に耳掻きをぶっ刺しただけという、物凄く投げやりなデザイン。
  • 「桃太郎(人)」なるパワーワードが飛び出す。
  • かなぐり捨てられた整合性
    • 本作はあくまで「プレイヤーが振った選択肢に応じてばあさんが語るゲーム」として描かれている。アドリブでテキトーに物語を紡ぐ様はツッコミ必至。
    • 敵討ちをするカニに対し、あるルートでは復讐を肯定したのに別のルートでは普通に否定する。清々しいほどに一貫性無し。
    • 分岐後の後付け設定により、家の持ち主やキャラの性格などが平気でブレる。さながら「シュレディンガーの猫」のような状態。
      • 例えばサルの家にたどり着くと、その後の分岐によって実は金太郎の家だった事にされたり、浦島太郎の家だった事にされたりする。
      • あるEDだと金太郎が出来た人間として描かれるが、その直前に別の選択肢を選ぶと、助けた報酬に金銭を要求する畜生キャラになる。
  • 節々で垣間見える低予算ぶりもネタの1つ。
    • 場面転換の際、変な顔のモブキャラが現れ、安っぽい電子音声で「そ れ か ら」と読み上げる。
      • 背景に映る大きな「それから」の文字、気の抜けた言い方も相まって、シュール極まりない。
    • 背景やキャラクターが節操なく別のシナリオに使い回される。使い回し方も煩雑すぎて笑いを誘う。
      • 家のデザインは2種類しか無く、同じデザインの家が複数回使われる。例えばさるかに合戦ルートでは、サルの家とカニの家が全く同じ。プレイヤーの混乱を誘う。
      • あるルートでは笠地蔵が宝箱をくれるのだが、デザインがどう見ても浦島太郎の玉手箱。
      • 様々なルートに登場するいたずらタヌキが、あるルートでは食糧として登場する。
      • わらしべ長者と吉四六に至っては全く同じグラフィックを使い回した挙句、隠しエンディングにて「わらしべ長者(吉四六)」として紹介する始末。
      • 画像を使い回すためだけに改変された昔話も。山姥が豆じゃなくおにぎり(※さるかに合戦の流用)に変身したり、ネズミに出される食べ物が餅じゃなくダンゴ(※桃太郎のきびだんごの流用)になったり…。
      • とりあえず、展開に困ると事あるごとにクマか貧乏神が登場する。
      • あるルートで桃太郎が出まかせで考えた「ウクレレ法師」が、別ルートで本当に登場する。しかも驚いた時の画像が用意されておらず、他のキャラが絶望する中で一人だけ笑顔でウクレレを弾き続ける投げやりな絵面に。
      • その他、桃太郎のキジを「街を荒らす巨大な怪鳥」として使ったり、さるかに合戦のカニを「なぜかカニの形をしている宇宙船」として使ったり…開き直りが凄い。
    • ちなみに、アイディアファクトリーは後年のゲーム開発において、素材流用の上手さがユーザーから高く評価されている。こんなゲームでその片鱗を発揮しなくても…。
    • 低予算ぶりの極め付けが、突然始まって突然終わるスタッフロール。システム上、何度も見る事になるが、その長さは18秒。
      • 名前のあるスタッフは6人のみ。

評価点

  • エンディングが豊富
    • 本作は実に100種類以上*4ものエンディングが用意されている。ボリュームは充分。
    • 水増しは避けられており、バリエーションも豊か。どうしようもないオチが付くギャグEDだけでなく、正史と違った形で童話らしい結末を迎えるEDや、真っ当なハッピーエンド、救いの無いバッドエンド、投げやりな爆破オチ(ばあさん曰く「最悪のオチ」)など、バリエーションは豊富で飽きさせない。
      • 似たような結末でもばあさんの総括が差別化されており、違いを存分に楽しめる。
  • なんだかんだ熱い夢の共演
    • 異なる昔話の人物が意外な形で活躍するという、クロスオーバーの要素もさりげない魅力である。
    • カニの子に「復讐なんかより家族を大切にしろ」という浦島太郎、変身能力で鬼に応戦する「鶴の恩返し」のツルなど。見所は多い。
  • 色濃い登場人物
    • ばあさんの語り口は巧みでユーモラス。
      • 時々どうしようもない発言をしてプレイヤーの苦笑いを誘うが、エンディングによっては真面目でイイ事を言って締めてくれる。一言多いけど憎めない、味のあるキャラクターとなっている。
    • 最初の主人公となる桃太郎は、熊に出会って修行を受けると真面目なヒーローとして冒険に赴く。受けなかった場合、ナチュラルな畜生キャラとして傍若無人な振る舞いを繰り返す。
      + 詳細(ネタバレ注意)
    • 以下に挙げる行動は、一切悪びれる事なく平然と行われる点がポイント。正規ルートの後で見るとギャップが酷い。
      • 中を空っぽにして大きく見せたきびだんごを高額で売りつける。
      • 困っていた町人から前金と称して小判をスる。
      • 金太郎・浦島太郎と共に、鬼ヶ島をほっぽり出してガールハントに精を出す*5。挙句、ただのきびだんごを先祖代々のアイテムと騙して口説こうとする。
      • 仲間になるかどうかをかけてサルに昔話クイズを出題するが、「ウクレレ法師」なる架空のキャラを作って正解だと言い張り、強引に仲間にする。
      • 鬼ヶ島を前に帰ろうとする。
      • 子供に賞味期限切れのきびだんごを食べさせる。
      • 大入道に襲われると、通りがかりのウサギを犠牲にして自分だけ助かる。
    • 中でも、「ネズミの相撲」ルートに登場するネズミの父はかなりキャラが濃い。
      • 元ネタの昔話にネズミの家族は登場しない。つまり本作オリジナルキャラクターなのだが、原作クラッシャーと言っていいほどの暴走もとい活躍を見せてくれる。
        + 詳細(ネタバレ注意)
      • 一言で言えば少年漫画の父親風味のキャラなのだが、どこかズレている。
        • 事あるごとに意味もなくちゃぶ台をひっくり返す。
        • 情に厚く、夕焼けの水平線を見ながら涙を流す専用ムービーが時々差し込まれる。
          • 何かと使いまわしの多い本作において、こういうところに力を入れるのは謎すぎる。
        • 息子が相撲に負けているのを見ると、露骨に同情を誘う手紙を家に置いて助けを求める。
        • 原作同様じいさんが金持ちの家のネズミ用に団子を多く用意した後、勝手につまみ食いしてしまう。
          • 危うく物語の腰が折れるところだったが、母が息子に団子を分けたことで事なきを得る。
          • この時、息子がウソを付くとユーモラスな展開に。
        • 相撲対決に向かう息子の後をつけ、後ろ姿を見ながら涙を流す。成長を見て感傷に浸っているのかと思いきや、自分を大切にしてもらえなくて泣いていることが直後に判明する。
        • 息子の元にクマがやってくるが、怖くて助けに行けず死んだフリをする。
        • 相撲大会に参戦した息子を追い、「謎の覆面戦士」として立ち塞がる。
          • 最後は息子と合体して協力技を繰り出す熱い(?)展開も。
        • 金持ちネズミとの相撲の際、息子が回転式エルボーを相手に繰り出すと、「それは反則技だ」と息子を叱咤する。その後、息子を解らせるために相撲対決を行い、ドロップキックで勝利する。この下りの勢いは必見。
        • スタッフも彼の濃さは認知している模様。終盤、ネズミの家に貧乏神が訪れた際、この父親に助けを求めようとすると語り部のばあさんに正気を疑われる。
          • そして、父は期待を裏切らない。「小判の金持ちエネルギーを貧乏神に吸収させてパンクさせる」「貧乏神の組合に話を付けて仕事をさせなくする」と言った唐突な後付け設定を持ち出し、貧乏神を追い出すことに成功する。
    • この他、いちいち余計な事を言ってばあさんに殴られるじいさん、何が何でも恩返ししようとする鶴、強キャラとして存在感を放つネコ、赤鬼と青鬼のハーフである紫鬼(※どう見てもハーフというよりニューハーフ)など、滅茶苦茶なキャラは多数。
  • バトルシーンのBGMが良曲。
    • 鬼ヶ島などで頻繁に使われる。迫真の曲調で、プレイヤーの印象に残りやすい。
    • 登場人物がしょうもない仲間割れをした際など、ギャグシーンにおいてもポテンシャルを秘めている。
  • 『厄』ではシナリオの途中で環境問題啓発ムービーが差し込まれていたが、本作はOPとEDにのみ入るようになった。

賛否両論点

  • 『厄 友情談疑』同様、攻め過ぎたメタ発言がある。
    • 本作はばあさんの語りとして話が進むため、大半のメタ発言はそこまで問題では無い。だとしてもやり過ぎな部分がいくつかある。
    • 例えば、あるルートでは登場人物が唐突に『厄 友情談疑』を宣伝してひっぱたかれる。
    • これはまだマシな方で、問題は「ネズミの相撲」ルートでの一幕。
      + 一応ネタバレ注意
    • 強敵との相撲中、目の前が真っ暗になったネズミは選択肢次第で意識を失い、夢を見る。だが、その内容は本作のスタッフ*6がネズミの前に出てきて語りかけるというもの。
      • セリフから察するに、こういうゲームでも作るのは大変だったらしい。
    • その後、選択肢によってはスタッフから助けを得て敵に勝利する事になる。
      • そして、他エンディング同様に完結…かと思いきや、ばあさんの語り中にスタッフが乱入。プレイヤーへのコメントを残した後、全キャラクター紹介が入る。よりにもよって真エンド的な扱いである。

問題点

  • セーブ不可
    • 本作最悪の問題点。1996年のゲームなのに、一切セーブができない。
    • 『厄 友情談疑』ではパスワード制を採用していたが、本作はパスワードすら実装されていない。そもそもメモカ非対応の時点でおかしいけど。
    • この仕様のせいで「分岐点の手前に戻って別のストーリーを楽しむ」といったことができない。分岐後の差分を確かめるにはいちいち最初からゲームを始めければならず、色々見て回ろうとすると苦痛な作業ゲーと化す。
      • ちなみに、ゲーム開始時の名前入力も起動のたびにやらされる。
    • 幸い、ボタンを押すごとに一行ずつメッセージ送りを飛ばせるが、焼け石に水。
    • すぐクリアできるゲームだが、エンディングが多いせいで浪費する時間もバカにならない。
      • 例えばさるかに合戦ルートでは、カニの子がウス達と出会うまでに3分半ほどかかる。しかし、その後用意されているエンディングは10個以上ある。つまり、その後の各エンディングを見るには総計30分以上に渡り退屈なボタン連打を強いられることになる。
      • これは序の口で、一番酷いのは桃太郎ルート。評価点で述べた畜生ルートを選ぶとラストの選択肢が7通り*7存在し、そこに至るまで15分近くかかる。つまり、これを全部見るには1時間半近い時間を捨てなければならない。
      • もちろん全エンディングを見る必要は無いが、値段に見合ったボリュームを遊ぶだけでも退屈するには十分。
    • 結局のところ、本作はシナリオを楽しむ時間より、ボタン連打でテキスト送りする時間の方が圧倒的に多い。
      • 本作のノリが好みに合ってもキツいのは同じ。「新しいルートを見たい」という好奇心より全部回ることへのダルさが先行し、心が折れてしまう。全EDを踏破したプレイヤーはかなり稀だろう。
      • また本作のエンディングは当たり外れが大きく、投げやりかつ唐突に終わる物も含まれている。これを一発目に引き当ててしまうと、面白さを理解する前にやる気を削がれてしまう。
    • 対策としては「片手でボタン連打しつつ、傍に本でも置きながら時間を潰す*8」「そもそも全エンディングを回ろうとしない」などが考えられる。
      • セーブ不可というのは、裏を返せばクリア特典がないとも言える。必ずしも全ルート回る必要は無い。それでも十分きついが…。
      • 片手間に作業する場合、迂闊に連打し過ぎて分岐点を通り過ぎないよう注意。本体のリセットボタンを押して名前入力からやり直し…というのは何度も通る道。
    • 参考に、全ED到達にかかるプレイ時間は20時間超。ADV一本のボリュームとしては多め。
  • その他、『厄』の様々な問題点は据え置き。
    • 名前入力欄に「っ」とカタカナが出てこない。
    • 一部選択肢の際にカットインが入り、テンポが悪い。
  • 本作のシナリオは「桃太郎」→「さるかに合戦」→「ネズミの相撲」の順で遊ぶ前提で作られている。別の順序で遊ぶと不都合が生じるが、このことはゲームで一切説明されない。
    • 特に問題なのが「ネズミの相撲」ルート。こちらにはキャラクターロール付きの隠しEDが用意されており、他ルートより先に遊ぶと登場人物のネタバレを喰らう。
      • 意外な使い回しクロスオーバーも本作の魅力なので、登場作品を先にバラされてしまうのは手痛い。
    • 「桃太郎」のみチュートリアルを兼ねた内容となっており、最初に遊ぶことを前提としたテキストが多い。後回しにすると今更感が強くなる。
      • 真面目な選択肢を選んだ際のばあさんのリアクションは、ゲームの方向性を示す役目を果たしている。それが後回しにされると意味をなさなくなってしまうので勿体ない。
  • そもそも、対象とする購買層が不明
    • いかにも子供向けのような題材なのに、テキストも内容もそこまで子供向けでは無い。
    • フリガナが無く、小さい子供が遊ぶのは難しい面もある。

総評

「刺さる人にはとことん刺さるが、決して万人にお勧めできない」
そんなIFゲーの特徴をこれでもかと言うほど体現したゲーム。

まず、劣悪なCGとチープなギャグの時点で好みが大きく分かれる。
発売時期を考えてもクオリティは高くないが、マイナス要素一辺倒というわけでもない。チープなりに好き放題やっているからこその味がある。
バカバカしさがツボにハマれば最高の一作で、ファンも決して少なくない。一言多いばあさんに振り回されながら、ツッコミ所の数々を堪能できる。

そこにふるいにかけてしまったのが、セーブ不能という欠点である。シナリオを楽しむ時間よりテキスト送りの時間が上回るのは、流石に擁護できない。
たとえノリが合致した人でも、そこそこ遊んだ程度で投げ出してしまいかねない。せっかくのバカゲー要素がゲーム面でスポイルされている。
『厄』に比べてほとんど内容が語られないのは、完走の苦しさもあると思われる。軽く見る分には楽しめても、本格的に遊ぶと苦行と化す。
まるで、本サイトのスルメゲー判定の真逆を突っ走っているような有様である。

IFゲーを象徴する名文句「買うな。俺は買うが。」は本作にも当てはまる。
それを踏まえた上で、度胸試しをしたい人、節操の無い不条理ギャグに関心を持った人ならば、是非触ってみてほしい。


余談

  • バカゲーとして愛する声はIFにも届いており、かつては商品紹介ページに「隠れファンも多い」と紹介されていた事がある。
    • ただしIFは次回作の説明書で露骨な誇大広告をかましているため、どこまで信用していいのかは不明。
    • 2005年末には「じいさんも2度びっくり! アイエフDVD福袋」と題したプレゼントキャンペーンが行われていた。
      • キャンペーン内容と本作は全く関係ないが、古くからのIFユーザーに対するファンサービスが窺える。
  • タイトルの由来は、「ネズミの相撲」ルートのとある結末で見られるラストの語り。
    • しかし、作品全体を総括するフレーズとは言いがたく、作中で強い意味を持つわけでもない。なぜこれをタイトルに引用したのかは謎である。インパクトは強いが…。
    • スタッフが想定する順番で遊んだ場合、プレイヤーによっては本作最後のエンディングになる。
  • さるかに合戦について
    • 本ゲームでは、カニが柿の苗を脅して育てるシーンが存在する。これはおふざけ展開ではなく、れっきとした原典の内容。
      • 教育上良くないのに加え、この描写が無くても話が成立することから、現代の絵本では削除される傾向にある。
    • また、カニの仲間としてコンニャクが登場するが、これも絵本によって採用されている正しい内容。
      • まず、原典ではウス・ハチ・クリに加えて牛糞が登場する。元々は彼が玄関で待機し、ハチから逃げた猿が踏んづけて転んだ所をウスが襲撃する…という筋書きであった。
      • 現代の絵本ではカットされる傾向にあるが理由は言うまでもないだろう。ウ〇コが登場するならそれはそれで喜ぶ子供も居るだろうが。
      • 一方、絵本によっては抹消せず上品な物へ差し替える場合もあり、コンニャクがその立場を担っているというわけである。
  • エンディング数の偏り
    • 本作は最初に3つのルートへと分岐するが、その先のエンディング数はバラバラで、桃太郎ルートが全体の2/3を占めている。
    • 桃太郎から先に始めると異様な多さに戸惑うが、これさえ全クリアできてしまえばゴールは近い(それでも相当な量だが)。
    • 逆に桃太郎を後回しにした場合、前2ルートと比較にならないエンディング量で苦しむ事になるので注意。
  • やりこみ要素の充実度に反し、本作を全ルート踏破した報告や攻略情報といったものはネット上にほぼ存在しない(2020年現在)。
    • 実況動画もいくつか投稿されているが、全EDを完走した実況者は確認されていない。
      • 中には人気の高いアイドル実況者もいたが、part2で最終回と銘打っている。
      • 最長では、10数時間ほど生配信で実況したプレイヤーがいる。先述の通り、これでも全ボリュームの半分にしか達していない。
  • ストーリーの節操の無さに関しては『人造甲虫カブトボーグV×V*9』を彷彿とさせる。またチープさを売りにした作品としては『勇者ヨシヒコ』シリーズ*10のような例がある。
最終更新:2023年11月07日 16:16

*1 ゲームアーカイブスで付与されたレーティングを記載。

*2 ゲーム内に環境問題啓発ムービーを入れるなど。

*3 垢で人形を作る元ネタからして常軌を逸しているので、突っ込むのは野暮かもしれないが。

*4 全部の選択肢を見ようとすると、複数回見ることになるエンディングも数種類ある。

*5 ちなみにこのルートに突入すると、どう進めても鬼を討伐できなくなる。

*6 全部で4人。名前はABCDで表現されるため、誰が誰だかは不明。

*7 そのうち2つは、途中の経路によって変わる。

*8 もちろん、2020年代の現在であればスマートフォンを使うのもアリ。

*9 2006年放送のホビーアニメ。元グッズの販売終了を良いことに整合性などをガン無視し、全力で悪ふざけした脚本をコンセプトに作られた。

*10 2010年代にテレビ東京系列で放送されたコメディドラマ。「予算の少ない冒険活劇」という謳い文句のもと、ロケ地もセットも脚本も安く作り上げたが、そのシュールさが大受けし、3シーズン続くほど好評を博した。