厄 友情談疑
【やく ゆうじょうだんぎ】
ジャンル
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サウンドノベル
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対応機種
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プレイステーション
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発売元
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アイディアファクトリー
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開発元
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アイディアファクトリー アクシズアートアミューズ (プログラム)
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発売日
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1996年1月13日
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定価
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5,800円
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レーティング
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CERO:B(12歳以上対象) |
コンテンツアイコン
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恐怖、犯罪
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配信
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ゲームアーカイブス:2007年2月22日/600円
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判定
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クソゲー
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ポイント
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不気味過ぎるグラフィック PSなのにパスワード制 プレイヤーをおちょくるシナリオ
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IF TVシリーズ 厄 友情談疑 / CG昔話 じいさん2度びっくり!! / 厄痛 ~呪いのゲーム~
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概要
「買うな。俺は買うが。」というファンの金言で知られる、アイディアファクトリーのコンシューマゲーム初参入作品。
ジャンルはホラーテイストのサウンドノベルで、あまりにも不気味過ぎるグラフィックが特徴的。
5人の登場人物それぞれの視点でシナリオを切り替えられるザッピングシステムをウリとしている。
そのクオリティは(悪い意味で)挑戦的で、『スペクトラルタワー』とともに初期のアイディアファクトリーを象徴する"負"の代表作として知られている。
ネタとして見る分にもキツイ点が多く、時には「買うな。」とまで評されることも…。
あらすじ
1年前の事件がきっかけで廃校となった小学校に深夜、5人の男女が集った。
5人はこの小学校の卒業生で、立ち入り禁止となった校舎の中庭からタイムカプセルを掘り出すためにこっそり忍び込んだのだ。
事件は、カプセルを探しに校舎に入った「裕一」の悲鳴から始まった…。
問題点
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まず、異様に不気味なグラフィックが気になって仕方ない。
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ポリゴンのクオリティが低く、肌もゾンビのような土気色ばかりで見るに堪えない。
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人物のみならず、住宅地や草木、オモチャといったオブジェクト類も軒並み低品質。廃校の外観に至っては、まるでアニメ『サザエさん』のエンディングのように見えてしまう。
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ムービーも使われているが使い回しが多く、同じものを何度も見せられるはめになる(スキップはできるが頻繁に挿入されて煩わしい)。酷い時には移動ムービーだけで1パートが終わることも。
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初めに選べるのは主人公(任意で名前を決められる)と「かんな」のシナリオだけで、いずれかのエンディングを見るたびに残り3つのシナリオが解放されていく。それはいいのだが、その条件がパスワードとなっており、エンディングを見るまで表示されない。
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さらに、このパスワードは主人公の名前とシナリオの解放状態しか保存しないため、毎回最初から読み直すはめになる。
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ちなみに主人公の名前はひらがな・長音符(ー)・感嘆符(!)・スペースしか使えず、長さも4文字まで。仮にもPSゲーなのにカタカナすら使えないって…。
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そして致命的なのが、短い・不快・訳が分からないと負の三拍子がそろったシナリオである。
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シナリオの長さは平均1時間を切っており、京子・英明シナリオは特に短い。
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二択の選択肢は無駄に豊富だが、シナリオに影響するのは最終パート、つまりエンディング分岐のみ。他の選択肢はその場限りの些細な変化となっており、中には「ドアを叩くか蹴飛ばすか」という露骨な水増しや、どちらを選んでもまったく同じになるあんまりなものすら複数ある(京子シナリオに顕著)。
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ザッピングシステムも単なるシナリオ切り替えでしかなく、面白さに何一つ繋がっていない。
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芥川龍之介の『藪の中』みたいなことをしたかったのかもしれないが、ルートに応じてわかる真相などは大したものではなく、システムを活かせているとは言い難い。
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あげく、別の人物を選ぶとその人物のシナリオの途中から始まってしまうため、初見で切り替えるとシナリオが理解不能になる。
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まともに遊ぶなら、初見はそれぞれの人物に絞ってザッピングなしで遊ぶことが推奨される。
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ただでさえテキスト量が少ないうえに各パートが数ページしかなく、ぶつ切り感が凄まじい。そして、ザッピング画面の「緊張感の欠片もない間抜けなBGM」と「拡大・縮小を高速で繰り返す指差しカーソル」の合わせ技により、集中力を削がれまくる。
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メインの話は一応のつじつま合わせをしているが、シュールな展開と登場人物の(陰鬱な方向に)ぶっ飛んだ言動、不気味なグラフィックが相乗して、邪悪な怪電波を発している。
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シナリオ中には「1年前のある事件」「金庫の怪談」といった意味ありげな話題が多く出てくるが、どれもこれもメインの話にはまったく関係がなく、中途半端な説明のままエンディングになってしまう。
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また、とてもホラー物とは思えない意図不明の演出も複数見られる。主人公シナリオを例に挙げると、サイケデリックなデザインの腕時計、いちいち挟まれる説明口調、深夜の廃校に忍び込んでヘアーカットの修行をする地縛霊「シゲル」など。
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本作に満ち溢れた怪電波の最たるものは、最後に解放される5つ目のシナリオだろう。このシナリオでは事件の黒幕の視点で一部始終が描かれていくのだが…。
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事件を起こした動機にはまだ同情の余地があるが、プレイヤーをしらけさせるメタ発言の連発に加え、いちいちプレイヤーに同意を求めてくるので非常に鬱陶しい。
しかも「いいえ」を選んだ場合、「君って気にいらないよね。何か悪いこと起こらなきゃいいけど…」とプレイヤーを脅してくる事もある。
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たとえばシナリオ冒頭に続いてプレイヤーを「このゲームをお楽しみ中の君」呼ばわりしたうえ、
「もし…もしもだよ。君がこのゲームを手放しても当然何も起らないよ。本当に気にしないでね。」
「もしもだよ。今までにとか、これからなんだけど。君がこのゲームの悪口を言ったりしても平気。本当に気にしないでね。悪い評判を人に言ったり、書いたりしても、絶対に大丈夫!あたりまえだよね。うひょひょひょ」と念入りに脅してくる。
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ゲームの出来も相まって、「クソゲー呼ばわりされないようプレイヤーに脅しをかけている」という構図にしか見えないのが皮肉である。
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苦労に似合わない、投げっぱなしなエンディング
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エンディングは複数あり、最後に「終?」と表示される。いかにも何かありそうだが、「?」が付かないエンディングは存在しない。探した人は時間の無駄である。
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この責任の一端は「このゲームにはある登場人物が狂った理由がわかる真のエンディングがある」というガセ記事を書いた『電撃スーパーファミコン』にある。おそらくはライターが意味ありげな紙片の文字(後述)から推測し、確認もせずに記事を書いたのだろう。
もっとも、一番の問題がアイディアファクトリーにある事は間違いないが…。
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エンディングの内容はどれも極薄で、それどころか、ネタに走ったものが大半を占めるという有様。
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ネタバレ注意
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今回の事件は「他の4人にいじめられていた裕一が、タイムカプセルの話題を機に復讐を企てた」というもの。京子はブタ人間、英明はのっぺらぼうに改造されてしまうが、実は催眠術と特殊メイクを使った思い込みである。
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しかし、エンディングによっては「かんなが共犯だった」「主人公が真犯人だった」「英明は2メートル近くもある黒い蛾のさなぎになった」「裕一が機械を起動、3秒後に爆発する」「裕一は宇宙人が化けた偽物だった」など、伏線皆無のメチャクチャなオチが待っている。
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さらには「人間の心が失われていく… ⇒ 放火して裕一に復讐してやる! ⇒ 危ないので少し遠くから火をつけよう ⇒ なんだか人間らしい考え。もしかして… ⇒ 人間に戻ってる!」「放火して(略) ⇒ 疲れた。今は眠り、明日また考えよう」といった滑りまくりの3流ギャグエンドや、
「夢から覚めたかんなが見たものは…(終?)」「裕一に "看病" されたかんなは体に違和感を感じ、ガラスに映った姿を見ると…(終?)」「火事から助かった京子は医者に鏡を手渡され…(終?)」「英明・裕一によるドッキリだった」「英明の夢だった」「京子先生の書きかけホラー小説だった」「結末ははっきりしない。はっきりと言えるのは、好ましくない方向に話が流されてしまったということだ」などのぶん投げエンドが山ほどある始末。
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祐一のセリフでは「今まで君の見てきたエンディングはただの偽り。全くの大嘘。」と言われている。
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一応、真エンドに相当する「ゲームの謎」は存在するのだが、何周もしてヒントを回収してから大真面目に解くと、脱力ものの結末が待っている。
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ネタバレ注意
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裕一(黒幕)の願いごとは「みんな ○○○」であり、破れた紙片に答えがある(とプレイヤーは考えるだろう)。そして、紙片は英明のエンディングの内3つで見つかり、それぞれ「1-の」「2-ろ」「3-う」と書かれている。
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しかし、「ぼくの願いごとは『みんな 呪う』だと思うよ。そうだよね!」と言う裕一に同意した場合、「みんな 呪う ねぇ…。ごくろうさん。でも君、それは考えすぎだね。ぼくはそんな事考えたことないもの。だってすでにみんな呪われているじゃない。ゲームオーバー!」と言われて終わり。
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ちなみに、正解は「みんな ウソ」であり、ゲームの謎は「○○いは○そ」となる。つまり「呪いは嘘」である。どこまでプレイヤーをコケにすれば気が済むのだろうか。
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しかも本作は特別なフラグ管理などが一切無いため、謎を解いていなくてもこのエンディングに到達できてしまう。真面目に遊んだ人はご愁傷様である…。
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作中で何の脈絡もなく、唐突に環境・資源保護を訴えるCMが挿入される。
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本作には「『厄』というテレビ番組を放送している」という設定があり、番組の途中でCMが放送されることを再現した(CMの前後で同じシーンが挿入される演出もある)のだと思われる。
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時代を考えると仕方がないことかもしれないが、文字送りの速度変更・オートモード・スキップ・バックログ・しおり(中断機能)などは未搭載。また、事あるごとに画面とBGMが一瞬止まる。
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辛うじて、背景を暗くして読みやすくする「シャドウ」とムービースキップがある程度。しかも、前者はL1かR1を押し続ける必要があるうえに使用中はテキスト送りができない欠陥があり、後者はムービーの挿入頻度が高すぎて根本的な解決になっていない。
評価点
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その尖りっぷりにより、人によってはZ級ホラームービーとして楽しめない事もない。
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京子ルートや英明ルートで主人公が理性を失っていく様子など、作り手のやりたかった事がなんとなく伝わってくるシーンも存在する。
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それらをCGの拙さでぶち壊しにしているのが本作の難点であるが。
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他キャラクターの視点で始めてわかる伏線が隠されていたりと、アイデア自体は惜しいところもある。
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後述の公式紹介にもある通り、当時のIFゲーの例に漏れず本作を支持するカルトな層もいる。
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事実、次回作に参加した日野日出志氏は本作に対し「何かひらめくものを感じた」「新しいマンガの可能性のようなものを見いだした」と、挑戦的な姿勢に対して関心を見せていた。
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絵面のインパクトが飛び抜けていることは評価できる。ただし、これも不快感を催させる類いの代物だが。
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ザッピングシステムは、マッピングした上で周回する場合には有効活用できる。
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分岐回収済みの人物を放置して他のルートに突入できるので、全ダイアログを見て回るうえでは便利である。
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惜しむらくは、先述したように意味のある選択肢が皆無な事、初見プレイヤーの理解を妨げる事が難点である。はっきり言ってメリットよりもデメリットの方が大きい。
総評
以上のように、本作はサウンドノベルとして欠点だらけとなっている。
加えて、クソ要素のほとんどが「つまらない」「怒りを覚える」という悪い方向に作用してしまっている。
プレイヤーにケンカを売っているとしか思えない作品であり、ネタとして手に取るうえでも非常に人を選ぶ作品である。
余談
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日野日出志氏が本作のキャラクターデザインに関わっているという話もあるが、これはガセ。
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氏が関わっているのは次回作『厄痛』の方で、そちらと混同されたとみられる。
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その説明書では氏のインタビューが掲載されているが、口ぶりからして前作のキャラデザに参加していないことが確認できる)。
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『痛』発売時には週刊ファミ通で日野氏へのインタビューが行われているが、「前作のデザインに感銘を受けたので参加を決めた」「スタッフは自分の作品を意識して作っていた」という旨の発言をしている。この点からも、1作目に関与していないのは確実である。
僕はゲームに限らず恐怖を演出するのにもっとも重要なものは絵だと思うんですよ。ところが、最近のポリゴンで描かれたゲームは、カクカクして絵柄に個性がないんですよね。でも、この作品の前作『厄(YAKU)〜友情談疑〜』は、いままでのゲームにない絵柄だったんでビックリしたんです。これだけの絵が表現できるんならやってみようと思いました。
(中略)
キャラクターデザイン担当のかたが、前作からかなり僕の絵柄を意識して描いてくれてるんですよ。おかげで僕が描いたモンスターも全体のイメージにピッタリはまって、一発オーケーでしたね。
(ファミ通97年2月7日号「FAMITSU EXPRESS FACE」より、日野氏の発言部分)
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ウィキペディアには「日野氏が担当した」という情報が出典無しで掲載されており、それがデマの発信源になったと見られる。
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件の追記より後に書かれた書籍『プレイステーション クソゲー番付』(2017年発行)では、事実であるかのように書かれてしまった。そして日野氏の記事ではそのクソゲー番付の記述が出典になってしまっている。正に鶏が先か、卵が先か…。
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デマが訂正されなかった要因の一つに、本作のスタッフが殆ど明かされていない事も大きい。
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スタッフロールでは監督と参加企業しか表示されない。
その後の展開
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本作に端を発する『IF TVシリーズ』は、その後も2つの作品が作られている。
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黎明期のアイディアファクトリーは、こうしたCGを使った静止画ADVを何かと発売していた。
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『IF TVシリーズ』以降はフォトCDに媒体を移し、良く言えば意欲的、悪く言えばチープな作品を多数作り上げ、いずれもカルトな評価を受けている。
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ゲームでやる意味があまり無い題材だったので、媒体を移したのは一応筋が通っている。
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一方で、セガサターンや3DOといったフォトCD対応ゲーム機で再生できる点は宣伝の際にアピールしていた。
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この時に作られた一部のゲームは、後のIF作品に固有名詞が流用されている。
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PS3/PSVのゲームアーカイブスで『痛』と一緒に配信されている。興味があるなら購入してみるのもいいだろう。
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ちなみに、ストアでの宣伝文句は「…まだ間に合います…決して安易なプレイをお勧めしません!カルトゲームとして評価された『厄』…あなた(の)感情を逆撫でする危険な作品です!」である。
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『IF TVシリーズ』の内、本作はクソゲーとしての需要で中古価格が高騰しており、他2作はネット通販でも入手が困難である。いずれも実機で遊ぶハードルが高いので、手に取りたい
物好きな方はGAのサービスが続いているうちの早めの購入を推奨する。
最終更新:2024年12月31日 11:02