桃太郎電鉄2017 たちあがれ日本!!
【ももたろうでんてつにせんじゅうなな たちあがれにっぽん】
| ジャンル | ボードゲーム |  | 
| 対応機種 | ニンテンドー3DS | 
| 発売元 | 任天堂 | 
| 開発元 | ヴァルハラゲームスタジオ | 
| 発売日 | 2016年12月22日 | 
| 定価 | 4,980円(税別) | 
| セーブデータ | 5個 | 
| レーティング | CERO:A(全年齢対象) | 
| 判定 | 1.0 | シリーズファンから不評 | 
| 1.1 | 改善 | 
| ポイント | 初期版はバグあり 日本の復興をモチーフにした新要素
 ボンビー大量リストラ
 | 
| 桃太郎シリーズ | 
 
概要
2010年の『WORLD』以来6年ぶりとなる桃太郎電鉄の新作。当時ニンテンドーダイレクトで紹介され、発売元を任天堂に移しての発売となった。
内容としてはほぼいつもの桃鉄なのだが、マップが非常に広くなったり、キャラクターデザインが変更になったりと変更点も少なからずある。
お蔵入りになった『東北復興編(仮称)』の要素を引き継いで「たちあがれ日本!!」のサブタイトルが付され、東日本大震災といった2010年代の災害をテーマにしたイベントも追加された。
過去作からの変更点
- 
桃太郎と貧乏神(とスリの銀次)を除き、キャラクターのデザインのほとんどが土居孝幸氏から変更された。
- 
1人ではなく複数のデザイナーが関わっており、総勢10名が手掛けている。
- 
京都周辺の駅に止まると出現する「おせきはん」のデザインは麒麟の川島明が担当。
 
 
- 
ハリケーンボンビーがキングボンビーに統合された。これによりキングボンビーが出る確率が異様に高くなっている。
- 
一度出現したキングボンビーが途中でハリケーン型からキング型に、もしくはその逆に変化することはない。
- 
区別する方法はBGMのみ。最終結果でのボンビー悪行回数カウントでは通常タイプが「キング」、ハリケーンタイプが「キング物件とばし」と呼称されている。
- 
なおゲストボンビーとして「ナイトメアボンビー」が登場。1ターンごとに特定のカードをすべて消し、さらには1年間そのカードを手に入れてもすぐ消えてしまうようになる。
 
- 
マップが『2010』『タッグマッチ』からさらに拡大された。
- 
釧路-竹芝-宮崎-佐世保の航路が廃止され、代わりに帯広空港と宮崎空港が追加。
- 
グアム、サイパン、亀山の物件駅が廃止され、多数の物件駅が追加された。
 
- 
電車伝助、カードの神様が廃止された代わりに「テッテケテー」「ともちゃわわ~ん」「きのこガール」が出現するようになった。
- 
サイコロを振って一定の目を出すことで「目的地から十数マスの位置へワープ」「サイコロを複数個振って再び移動」「カードが少ない時にカードが空きの分貰える」が発生する。
 
「たちあがれ日本!!」をテーマとした復興イベント
- 
本作のプレイ開始時には必ず東日本大震災の演出が挟まれ(文字のみ・スキップ可能)、東北の太平洋沿岸の線路が不通になった状態でスタートする。
- 
一定の年数を過ぎると線路が少しずつ復旧していき、被災地域にある駅は「震災駅」として黒いマスになる。
- 
震災駅に止まるとその駅は復興し、青マスや物件駅等に変化する。なお震災駅として止まった月には復興後のマスの効果は受けない。
 その駅に止まった社長には地元の人々から急行系カードが贈られる。多くは新幹線周遊カードなどの強力なものである。
- 
震災駅が目的地となることもあるが、復興後に物件駅となる駅に限定される。目的地になった場合であっても駅の物件をその月に買うことはできない。
 
- 
本作では復興曲としてボーカル曲「ささやかな明日」が収録されており、復興イベント内で条件を満たすことでゲーム中で流れるようになっている。
 
- 
この他熊本地震イベント、箱根の火山性地震イベントがある。
- 
これはプレイの途中で突如発生し、熊本/箱根に通じる線路が不通になる。さらに熊本/箱根の物件を所有していた社長には莫大な被害が出る。
 
- 
DX-888というキャラクターがランダムに現れる。出現時は1回サイコロを振ることになり、1さえ出なければお金がもらえる。
- 
最初は4億円だが、年数が進むにつれて8億、12億…と増額していく。
 
- 
『2010』『タッグマッチ』と同じく、一定期間一定額以上の借金を抱えているプレイヤーに対しては国からの公的資金投入が行われ、借金がなくなるどころか年数に応じて結構な額のお金がもらえる。
評価点
- 
据置機と同程度のボリュームを確保
- 
『2010』と『タッグマッチ』の仕様が継承され、本作も携帯機ながら最大プレイ年数は100年である。
 
- 
一部のカードの復活
- 
「場所がえカード」「デビル派遣カード」「最寄りの駅でカード」など前作で登場しなかったカードが復活した。
 
- 
駆け引きの大きい震災駅関連
- 
「社長が被災地を訪れて復興させる」という設定のため、カードをもらってもやましさや罪悪感といったものがない。利益も大きく、ただただ気持ちがいいイベントである。
- 
あまり駅を復興させないと目的地が震災駅になることもある。そうなると否が応でも復興が進む。
 
- 
復興した駅はそこそこ強力だったりする。
 
- 
歴史ヒーローが『20周年』に比べて大きなバランスブレイカーではない。
- 
依然として歴史ヒーローは凶悪なものの、強力なヒーローは当該駅の独占が非常に高額になったことで、仲間にしづらくなっている。これは最大プレイ年数が50年→100年と倍になったことも影響しているだろう。
- 
例えば相手の貧乏神を確定でキングボンビーにするなどの凶悪キャラである織田信長は、対象駅が岐阜から名古屋になったことで独占金額が7億→2311億と激増している。
 
- 
仲間にした後も全体的に出現率が下がっており、際限なく嫌がらせを続けることは少なくなった。
 
賛否両論点
- 
キャラクターのデザイン変更
- 
桃太郎と貧乏神以外のキャラデザインはほぼ完全に一新されており、過去作とは大きく異なるものとなっている。
 とにかくあらゆるキャラが徹底的に変更されており、記念仙人や各種歴史キャラ、虎につばさカードのトラまでもが律儀に差し替えられた。
- 
桃太郎と貧乏神が旧作のままであるため違和感もあり、新規イラストの作風そのものについても否定的な声も多い。しかしキングボンビーのつり目の意匠が残されているなど、可能な限り従来の雰囲気を維持しようとする気概は感じられる。
 
- 
次作『令和』では桃太郎と貧乏神も変更されたため、この組み合わせは本作が唯一となる。
 
- 
現実の震災をテーマにした作風への賛否
- 
「震災復興を応援したい」という作者の志自体は否定されるべきものではないが、地震災害によるマイナス効果自体は過去にも存在しているとはいえ、現実に起きた災害をゲーム内にイベントとして取り入れたことについては否定的な声もないわけではない。
- 
特に、熊本や箱根の地震イベントは純粋なマイナスイベントも同然の扱いであるため、「同じ被災地なのにこの扱いはどうなのか」という批判や疑問の声も少なからず存在している。
 
 
問題点
- 
ボンビーの種類が極端に少ない
- 
本作のボンビーはミニボンビー・ナイトメアボンビー・キングボンビーの3種類だけ。他の変身形態は一切登場せず、ボンビーモンキーまでもがリストラされた。
- 
このため本作ではキングボンビーそのものは出やすいのだが、ハリケーンボンビーがキングボンビーに統合された関係で(従来の)キングボンビーの出現率はほぼ変わらない。このため多くの物件を持つ上位層にはハリケーン型のキングボンビーばかり当たり、さほど物件を持たない下位層には従来のキングボンビーばかり当たることになる。
- 
もちろんハリケーン型も大迷惑なのだが、あくまで失うのは物件だけで出現期間も短く、復活は容易。対して従来のキングボンビーは金も物件もごっそり持っていくため下位のプレイヤーばかりがひたすら虐げられる事態になりやすい。
 
 
- 
広大すぎるマップ
- 
本作のマップはとにかく広く、南北の最長距離は100マス近い。
 これにより、高速移動はほぼ空路に依存することになりがち。内陸の一部路線などは狙って通るようにしないと、なかなか行く機会に恵まれない。
- 
結果として急行系カードの有無によってプレイヤー間の有利不利が左右されてしまう事態にも繋がっており、場合によっては急行系カードをたくさん持っている相手に手も足も出ない状況になってしまう。
 
- 
九州地方ホノルル
- 
ホノルル(ハワイ)が九州地方に分類されているという地味に迷惑な不具合が存在する。
- 
特に、「地方へ!カード」を使用して九州へ飛ぶときにホノルルへ飛んでしまうことがある点が問題。
 
- 
汽車の速度をマッハにしてもやや遅い。
- 
正確には、駅に着いてから発車するまでの間が長い。スライドパッドを入れっぱなしにしても動きがもっさりしていて、やきもきさせられる。
- 
過去作では60FPSだったが、今作では30FPSに引き下げられている。
 
- 
上級COMでの相変わらずの運補正。
- 
プレイヤー以外全員が絶好調になる、物件駅に到着する確率が上昇しているなど、確率の補正が強すぎる。技量で差をつけるべきところを、プレイヤー自身が把握できない部分で捜査しているのは納得しがたいだろう。
 
- 
オンライン対戦が再び非対応になってしまった。
- 
ローカル通信も対戦用ソフトをインストールしなければならないなど面倒な仕様。しかも3年決戦しか遊ぶことができない。
 
- 
セーブが煩わしい
- 
「セーブする年月の確認」「上書き保存の確認」「セーブするファイルの選択」「システムファイル更新の確認」「セーブ実行確認」「セーブ実行」と、6回もAボタンを押す必要がある。むろん減らすことはできない。
 
- 
蛇足的な熊本・箱根地震イベント
- 
失礼な言い方ではあるが、東日本大震災イベントと比べ、熊本・箱根の地震イベントはデメリットの方が大きく蛇足感が強い。
- 
東日本大震災は初期状態で被災後なのに対し、熊本・箱根地震は開始から数年で突如発生し、該当地域の物件所有者に甚大な損害を及ぼす。賛否両論点で述べた通り通常の災害イベントと同様の純粋なマイナスイベント扱いになっているのである。
 一定年数を超えるとイベントは確定で発生し被害によるダメージも大きいため、結果的に該当地域の物件の買い控えに繋がってしまう…と、被災地の扱いの格差も含め、好ましいとは言えない内容になっている。
- 
「被災から数年後に該当地域の物件を所有していた社長に支援金が支払われる」というフォローはあるものの、戦局に影響を与えるほどの額ではない。
 
 
- 
イベントバリエーションの少なさ
- 
地方創生を謳う割にはイベント一枚絵が非常に少なく、地域性を感じにくい。
- 
ショッカーO野のイベントは過去作に登場した「ペーロン競争」「杜子春レース」「目的地バトルロイヤル」のみである。
- 
土居の降板に伴いペペペマンはリストラされた。
 
- 
復興テーマソングの開放条件が厳しすぎる
- 
復興テーマソングが収録されているのは前述の通りだが、その条件が「震災駅をすべて一人で復興させ、且つその全ての物件を購入する」というかなりの厳しさ。対象となる物件に1兆円の桃太郎復興ランドを含むうえ、一度でも他のプレイヤーが先に震災駅に止まって復興をした時点で達成不可となってしまう。
- 
作者自身「ちょっと厳しすぎる」と反省の弁を述べているほどである。
 
 
Ver1.1で改善された問題点
以下の問題点は、バージョンアップにより改善済みである。
- 
強さに関わらず、CPUの思考が調整不足。
- 
カードバンクに預けたカードを永久に引き出さなかったり、ボンビーがついてもなすりつけようとしなかったり、挙句同じところをぐるぐる回り続けて試合放棄することまであった。
- 
特に阿寒の名産怪獣「マリモーン」を執拗に狙って北海道に居座り続ける現象(通称「マリモバグ」)はプレイヤーを困惑させた。
 
 
- 
一度「絶不調」または「省エネサイコロ」になると、通常状態になってもBGMがそのまま変わらないことがある。
- 
絶不調かどうかの見分け方はBGMしかないため、急行系カードを使いたい時などに非常に判断が難しくなってしまっていた。
 一応絶不調が切れた際に簡単なメッセージは出るが、効果音があるわけでもないので見落としたら分からずじまいである。
 
総評
ハドソンが消滅し、一時はシリーズ終了まで公言された中にあってどうにかシリーズ存続・新作発売にこぎつけたことは評価されるべき点だろう。
東日本大震災のシステムはゲームに戦略性を与える新要素になったが、それ以外の面は大きな追加要素も存在しない。ボンビーの変化バリエーションも少なく、ある意味では初期に回帰したような作品でもある。
しかし一方ではイベントバリエーションの少なさ、広すぎるマップ、キャラデザの変更等があり、以前の桃鉄と同程度に評価されたとは言い難い。
特にマップの広さについては、もう少し練り込まれていればまた評価は違ったのかもしれない。
余談
- 
実は震災復興をテーマにした桃鉄については被災地からも要望があった(参考)ことを、さくまあきら氏は自身のブログで明かしている。
- 
元々「作りづらくなった」として新作を白紙にした中、さくま氏は「被災地の方に言われてしまうと、うれしいやら、つらいやら…」と漏らしている。
 
- 
キャラクターデザインの変更理由については、さくま氏は「土居氏が競合他社の作品となる類似作品『ビリオンロード』のキャラデザインを担当したために他作品のキャラのようになったから」としている。
- 
ゲーム中では東日本大震災から16年で全線復旧となるが、現実では気仙沼線の柳津~気仙沼と大船渡線の気仙沼~盛はBRT(バス高速輸送システム)での運行となった。一時期「仮復旧」という表現も使われていたものの、当該区間は2020年に鉄道路線として正式に廃止となり、鉄道での被災区間復旧が実現することはなかった。
- 
なおゲーム中で16年目に最後に復旧する区間となる常磐線(福島原発付近の区間)は、ゲームより大幅に早い9年後(2020年)に鉄路での復旧を成し遂げている。
 
- 
本作にあわせて「持っている人と対戦版」がDLソフトとして配信された。あらかじめダウンロードしておくと、持っていないプレイヤーでも3年決戦モードをその本体でプレイできるようになる。
- 
通信用ダウンロードソフトは『マリオパーティ スターラッシュ』にもあるが、あちらとは異なって通信無しでプレイできる要素はなく完全な通信用ソフトとなっている。
 
最終更新:2024年01月01日 21:48