NIGHTRUTH 闇の扉

【ないとぅるーす やみのとびら】

ジャンル アドベンチャー

対応機種 プレイステーション
発売元 ソネットコンピュータエンターテインメント
開発元 バリエ
発売日 1996年11月1日
定価 6,800円
プレイ人数 1人
備考 同年8月9日に出たセガサターン版の移植
判定 クソゲー
ポイント "中二病"全開のカルトADV1作目
稚拙なテキストで顰蹙を買う
立ち絵もシステムも粗雑
輪をかけて酷いPS版追加シナリオ
ある意味バカゲー?

概要

1996年発売のADV。
元々はセガサターンで発売されていたが、本作はそのPS移植版に相当する(こちらの方が知名度は高い)。

当時は言語化されていなかった"中二病"の要素を盛り込んだホラーサスペンスだが、そのシナリオは出来が悪く、厳しい評価を受けている。

特徴

  • オーソドックスな選択式ADV。学園を舞台に、不思議な力を持つ高校生たちが超常現象に挑む。
    • 一部、CERO:B~Cに相当するショッキングな表現を含む。
    • ストーリーの分岐点はゲーム前半に集中しており、選択に応じてエンディングが分岐する。
    • バックログ、スキップ機能は未搭載。
  • エンディングは4種類あり、分岐は大まかに「召喚ルート」「棺ルート」「人体発火ルート」「旧校舎ルート」に分けられる(これらは正式名称では無いが、本記事では便宜的にこの呼称を使用する)。
    • このうち、旧校舎ルートはPS移植にあたって追加されたものである。
    • 分岐は選択肢によってのみ決定され、特別なフラグ建て等は存在しない。
    • クリア特典は無く、エンディング後にできる操作は本体リセットのみ。
  • 音声は"ほぼ"フルボイス。地の文に声は入らないが、キャラクターのセリフは声優が声を当てている。
  • 特典として、開発資料を載せたおまけディスクと、主題歌をカバーした8cmCDが付属している。

あらすじ

+ ゲーム冒頭より。長いので折りたたみ

深層心理が創り出す
現実とは異なる虚構の世界

現実とは明らかに違っていても
一歩その場に踏み込むと
すべてが現実に変化してしまう

この、深層心理が無意識のうちに
創り出す世界を人々は夢と呼んでいる

しかし、夢の中で起こる出来事が
本当に虚構の世界と言い
切る事ができるだろうか?*1

もし、言い切れるのであれば
なぜ夢の中に存在している自分は
その世界を偽りと気付かず
現実と思い込んでいるのだろうか?

もしかすると、自分では気付かないだけで
現実と思い込んでいる世界が
本当は夢なのかもしれない

それに、夢と同じように
虚構と言われている自然界における
超常的現象もはたして
偽りと言い切ることができるのだろうか?

俺はそうは思わない

人類がこの大地に生を受け
長い歴史が刻み込まれた時の中で
現実では考えられない出来事が
様々な時代で語られている

これを虚構というほうが間違っている

それ程、現実と虚構なんて
曖昧な世界だと俺は思っている

この2つの世界は
常に背中合わせの状態で時を刻み
ふとしたきっかけで
虚構と現実の境が無になるときがある

人はこの時に起こる奇怪な事件を
超常現象と呼んでいる

果たして、夢か現か幻か
真実は闇の扉によって固く閉ざされている

しかし、俺は感じている

闇の扉が開き
真実が開放される時が近づいていることを・・・・

  • 冒頭では女子生徒が突然発火・焼死するムービーが入り、作品序盤でも物語の本筋であるかのように扱われる。*2
  • 登場人物
    • 十六夜 慎哉<いざよい しんや>(CV:上田祐司(現:うえだゆうじ))
      • 本作品の主人公。高校三年生。黒魔法や超常現象への造詣があり、霊剣セクンダディ(CV:若本規夫)が封印された指輪を所持している。危機に陥ると指輪を短刀に変形させて、呪文の詠唱により様々な魔法を使いこなす。
      • 黒魔法などの要素は物語序盤から描かれており、プレイヤーがおのずと「魔法が出てくる話」と認識する構成になっているのだが……(後述)
    • 水凪 真璃亜<みずなぎ まりあ>(CV:宮村優子)
      • 慎哉を毎朝起こしに来る同級生。格闘に長けており、人一倍正義感が強い。怪我を治す治癒能力を持っている。
    • 宮上 麗美香<くじょう れみか>(CV:氷上恭子)
      • 慎哉と同じ高校に通うお金持ちのお嬢様。朝から習い事に通うなど、常人には想像の付かない生活を行なっている。陰陽道に長けており、劇中では結界術を使って悪者を退ける。
    • 常盤 俊英<ときわ しゅんえい>(CV:緒方恵美)
      • 慎哉の1学年下の天才少年。高校生でありながら海外の大学を卒業した博士号の持ち主。特別な力は持っていないが、持ち前の頭脳でハッキングや発明を容易くこなす。マッドサイエンティスト的な一面もあり、好奇心があれば不法侵入も厭わない。
    • 姫川 藍<ひめかわ あい>(CV:かないみか)
      • 1年生の後輩。精神年齢は10歳並み。それ以外は一見普通の少女だが、一部のルートでは彼女に秘められた不思議な秘密が明かされる。

問題点

  • テキストが商業作品の水準に達していない
    • 無駄に長くて凝った言い回しや、上滑りした比喩表現が多用されていて読み辛い。
      • ゲーム開始後は先のあらすじに続いて慎哉(主人公)の寝起きが冗長に書かれ、倦怠感が強い(該当箇所は長いので割愛)。
    • シリアスな展開になっても拙い文章のせいで緊張感が無く、推敲されていない文章や誤字脱字が多く見られる。
      + 顕著なものを抜粋
      作中のテキスト 解説
      ファイルの設定がされました。 ゲーム開始時に見せられるシステムメッセージ。雑なテキストで早速不安にさせられる。
      みんなが真剣に話している横では、話しに飽きた藍が地面をはっている小さな黒い虫の行列にパンのかけらをばらまいている。 "蟻の行列"と言わない回りくどさもさる事ながら、このゲームでは全編に渡り「話」を「話し」と誤記している。
      俺が声を掛けると、美樹ちゃんは準の彼女でもある設楽奈美が廊下で倒れて保健室に運ばれたと説明すると、その場で去ってしまった。 奈美は選択肢によっては主要キャラになるのだが、初登場をこの一文で片付けられてしまう事がある。物語の理解に支障をきたすのは言うまでも無い。ちなみに"美樹ちゃん"というのは保健室の先生なのだが、慎哉がタメ口で呼ぶのでプレイヤーの混乱を招く。*3
      1時間目の授業が終わると、その後2時間目、3時間目、4時間目と授業が進み、昼休みをはさんで、5時間目の授業が終わり、6時間目の授業が始まった。 本作のテキストを語る上で必ずと言っていいほど引き合いに出される迷文。もはや何も言うまい。
      空を見上げながらつぶやくと同時に、漆黒の天空に閃光の竜が走り鼓膜を突刺すほどの雄叫びを上げ 天気が悪くて雷が鳴っただけ。本作では暗がりを表現するためだけにやたらと"漆黒"が用いられる。
      彼女の憎しみという心の隙間に住み着くほんの小さな闇の力が、今回のような事件を引き起こしたのかもしれない。最後に孤独と悲しみしだけを残して・・・・・・・・。 誤植自体は作中いくつも見られるが、これに至ってはED直前の最後の一文である。せっかくの悲劇的なムードがぶち壊しにされており、かの「確かみてみろ!」を彷彿とさせる。
      俺は真璃亜に近づくとセクンダディを開放し真璃亜に向かってセクンダディを向けた。 敵の手に落ちたヒロインと対面するシリアスなシーン。一瞬混乱する。
      そんな奴お前意外いねーよ いずれもPS版追加ルートより。他のルートと比べて誤字や文法ミスが非常に多く、すぐ気付くような物まで放置されている。推敲する時間がよほど無かったのだろうか……。
      だけどこんなにいつまでしょうがない。
      何ともいえない無気味
      だけど美樹ちゃんがそんこと
      とりあえず、この校内に英司とがいることが確かなんだから、取りあえず死因の原因より英司を探すのを先決にしようぜ
      しかし、思い当たる所、生きる場所を全て探しても英司の姿は見つからず、俺達は職員室にきていた。*4
      俊英は俺達を置いて先に進んでしまいう。
      俺達が美樹ちゃん達をつれて戻ってきたころには総ての元凶の元と原因が判明していた。
  • 演出が手抜きで盛り上がらない
    • 一部のルートは後半から物静かなBGMに切り替わるのだが、ゲーム終了時まで人が死のうが何が起きようが一切BGMが変わらず、SEも殆ど発生しない。テキストの上では緊張感ある展開が繰り広げられるのだが、登場人物の感情が殆ど伝わってこない。
      • 特に人体発火ルートは顕著で、シナリオの凄惨さに全く噛み合っていない。
    • 殆どのゲストキャラは立ち絵が一枚しか用意されておらず、どんな事があっても常に棒立ちである。
      • 人体発火ルートの関係者が追い詰められて狼狽するシーンや、血まみれのクラスメイトが慌てふためくシーンなど、喜怒哀楽が際立つ場面は全て台無しにされている。
  • 文章や演出を抜きにしても、シナリオの出来は総じて悪い。
    • 伏線のない超展開の連発
      • 「ヒロインが裏人格を露わにしてピンチを切り抜ける」「学校の地下にドラキュラ伯爵が眠っていて封印が解かれてしまう」といった唐突な展開が、何の脈絡も無しに出てくる。*5
    • ルート分岐を考慮しないシナリオ構成
      • 進行中のシナリオと関係ない伏線や登場人物であっても、ゲーム序盤に全ルート分まとめて見せられる。
      • この伏線要素だけで毎プレイごとに20分近く消費する。
      • ゲーム冒頭に出てくる黒魔法要素は4つのうち2つのルートにしか殆ど登場せず、物語冒頭で思わせぶりに描かれる人体発火はたった1つのルートでしか扱われない。初見プレイでは、どのルートを引き当てても「え、終わり?」となってしまう。
    • 特に、ゲーム冒頭から主要な話として描かれる人体発火ルートと、PS版向けに追加された旧校舎ルートについては難点が顕著。以下ネタバレ注意。
      • なお上述した分岐絡みの調整不足による都合上、プレイヤーの受け取り方は経由するルートの順序に応じて多少異なる可能性がある。
        + 人体発火ルート
      • ゲーム序盤から描かれる焼死事件の謎を追うエピソード。悪天候で校舎に閉じ込められた慎哉たちの前で、クラスメイトが人体発火により死亡する。一同はその原因を突き止めるべく、命がけで謎を追求する事となる。いわゆるクローズドサークルものだが、構成に問題がありすぎてとにかく退屈。
        • クリアまでにかかる約一時間半のうち、4~50分近く経つまで本筋の事件が発生しない。
          • 参考に、同じ長さの映画は最初の20分あたりで登場人物が主要な問題と向き合うのが一般的である*6
        • その原因として、登場人物がやたら多い点が挙げられる。このルートはレギュラー5人に加え、ゲストキャラが10人近く登場し、前半はこれらの描写に時間が割かれる。
          • しかもその半分は物語の展開に殆ど影響を与えない。
        • ようやく事件が発生した後も、発火の原因や黒幕の行動がわからず、慎哉たちがやるべき事もわからないまま話が続くので盛り上がりに欠ける。
        • 退屈の原因は文章やBGMの問題だけではない。本ルートでは死亡シーンを始めとする重要なイベントCGが一切表示されない。
          • 同級生がショッキングな死に方をして周りが絶望する中、その様子は文章でしか語られず、プレイヤーは置いてけぼりにさせられる。
          • 誰が退場したかもわかりづらいので、必然的に没入感を削がれてしまう。
        • 結末は「地球外からの物質の干渉で突然変異したと思われる寄生虫が原因だと判明する」という突拍子も無いもの。伏線が一切無い上に、突然変異云々はわずか数行で投げやりに説明される。
          • おまけに「寄生虫がやって来た原因は不明」と語られる。
          • ついでに同級生の恋人も取ってつけたように死亡した事が数行で語られる。物語の必然性が無く、これもプレイヤーを置いてけぼりにさせる。
        • あまつさえ、本作のメインシナリオのように出しておきながら冒頭から出てくる魔法要素が全く真相に関わってこない。
          • 神秘的な展開を期待させておいて、科学的なオチを付けるのは肩透かしである。
          • この作品はオカルトホラーとゴシックホラーを一緒くたにしている節があり、下記の旧校舎ルートはその傾向が顕著となる。
      • + 旧校舎ルート
      • ひょんなことから旧校舎に閉じ込められた慎哉たち。そこでは同級生の血塗れ死体が発見され、共に来た藍(おバカなヒロイン)も倒れてしまう。閉じた空間の中、真相究明のために一同は奔走する。
        • このルートのみPS版の書き下ろしだが、はっきり言って一番問題が多い。先述の通り誤植が多く、最初から最後まで超展開の連続で、ツッコミどころしか無い。
        • まず俊英(天才の後輩)が何の脈絡もなく「隕石を探そう」と慎哉を誘う所から始まる。
          • 例によって、それまでのシーンに天体などの要素は一切無い*7。なおこの隕石要素は以降のストーリーで一切関わってこない。
        • 旧校舎に入った一同は扉の構造によって校舎に閉じ込められ、同級生が血まみれで死んでいるところを発見する。こうして閉鎖された空間の中で事件解決に奔走するのがこのルートの筋書きなのだが……
        • 血を出して倒れていたことについて、俊英は「近くの研究所から持ち出された前例のないウイルスのせい」と推測し始める。
          • プレイヤーは人体発火や黒魔法がどう関わってくるのか期待しているのに、伏線も一切無く『バイオハザード』が始まって困惑する羽目になる。*8
        • 固定BGMや死体描写無しと言った問題はこちらのシナリオも同様。
          • それどころか一部のキャラは立ち絵やCGが全く用意されていないので、過剰な登場人物紹介も相まって誰が誰だかわからなくなる。
        • ストーリーは何から何まで雑。
          • 感染した仲間を隔離したり死体から離れたりするなどの対策は一切行わず、それどころか生身で近づいて看病したりと、ウイルスを前にした人物とは思えない行動が続く。
          • さもクローズドサークルのように話が展開されるが、閉じ込められたのは入口の扉の構造だけが原因で、適当な窓を蹴破るなどの対処を登場人物が一切行わない。*9
          • 俊英による超常的な発明(どんな鍵も開ける装置など)で解決するシーンが多く、万能すぎて緊張感が無い。人体発火ルートに負けず劣らずダレる展開になっている。
        • 最終的には研究所が学校にある事を導き出しそちらに急行するのだが、その後の展開も唐突。
          • ウイルスの原因がゲーム序盤に出てきた狼のせいだとわかったあと、「原因がわかればワクチンが作れる」という雑な理論により、ワクチンの作成に成功する。*10この間約数行。
        • その後は仲間が治った事が解説され、物語の背景が明かされる。狼は海外から密輸されたのが逃げ出したもので、それがウイルスの宿主だったという。最後は「動物が住む場所を追われた事で、人間自身に報いが来ているのかもしれない」と、強引な教訓オチで締めくくられる。密輸が原因であって環境破壊の話はしていないのだが。
          • そもそも「研究所がウイルスの出所」という話だったのに、結論が二転三転している有様。
        • そしてプレイヤーが期待した人体発火や黒魔法は放置され、何事もなかったかのようにスタッフロールが始まる。最初の3~40分に出てきた登場人物や事件の殆どはこのシナリオに一切登場せず、完全な時間の無駄遣いとなる。
          • このルートは3人に1人が初プレイで突入することになるのだが、初見だと「このゲームは何がしたいんだ」と唖然とする羽目に。
      • ちなみに、初見プレイだと単純計算で44%のプレイヤーが人体発火ルート、33%が旧校舎ルートに突入する。残りはいずれも11%で取りこぼしやすく、よりにもよって比較的まともな2ルートが遭遇し辛くなっている。
  • 分岐に関するその他の問題点
    • 選択肢の出現タイミングが少な過ぎる。
      • それもゲーム前半に固まっており、後半の数十分はどのルートも全く選択の余地が無い。
      • ルートによっては序盤に3回選択をしたあと、1時間近くテキスト垂れ流しとなる。いくらADVとは言え、ゲーム性が薄過ぎである。
    • ルートが変わる選択肢は3つ存在するが、位置がわかりづらく、そこにたどり着くまでの時間も長くて不親切。
      • たとえば先生の髪に見とれるか、尻や脚に見とれるかによってルートが分岐するシーンが存在する。攻略情報に頼らず分岐点を特定するのは困難を極める。
    • 分岐に応じた整合性が取れていない。
      • 先述の"美樹ちゃん"など、ルートによっては説明不足に陥る登場人物が散見される。
      • 序盤の選択肢によっては、いきなり抱きつかれて胸に顔を埋められたヒロインが「そんな事で怒っても仕方がない」と相手を許してしまう事も。
  • 立ち絵のクオリティに難あり。
    • イベントCGやアニメシーンはその道のプロが描いているが、立ち絵は別のスタッフが担当した模様。
    • 全体的にデッサンが崩れていて、明らかに素人の所業である。
      • 俊英(天才の後輩)は手の形が崩れていて、麗美香(お金持ちのお嬢様)は腕の向きがエッシャーの騙し絵のように破綻している。
      • テキストでは「ふくよかな胸」であると語られているのに、どう見ても貧乳なキャラクターも。
    • 中でも真璃亜(メインヒロイン)の立ち絵は輪をかけて酷い。
      • 頭が極端に小さく、体のバランスが何もかも破綻している。
      • 絵描き初心者がやらかしがちな、意図のよくわからない謎ポーズをしている。
      • よく見ると、セーラー服の襟が間違えて肌色で塗られている。
    • 立ち絵以外は基本的に問題が無いものの、慎哉(主人公)が新聞とコーヒーカップを持ちながらトーストを口に咥える妙なアートワークがゲーム序盤に出てくる。*11
  • セーブ周りの仕様
    • 本作はオートセーブを採用しているのだが、どこでセーブされているのかは全く表示されない。
      • ゲームを中断してから再開すると、かなり前まで戻される事がある。
    • オートセーブなので「選択肢の直前でセーブを行い差分を楽しむ」といった遊び方が出来ず、全てのルートを消化するにはいちいち最初から遊び直さなければならない。
      • にもかかわらず、ひたすらボタン連打しても40分かかるようなタイミングにエンディングの分岐点が用意されている。
  • 本作は途中までフルボイスだが、どのルートも途中から全く声が入らなくなる。
    • 旧校舎ルートに至っては固有のシーンに全くボイスが無い。破綻した展開や誤植の多さを見るに、急ごしらえで作ったシナリオだったのかもしれない。

賛否両論点

  • "中二病"要素
    • 本作の象徴的な要素だが、必ずしも全否定できるものでは無い。
    • 悪く言えば痛々しくて人を選ぶが、良く言えば年頃の男の子をそそる作風として許容する事もできる。
      • 「中二病」という概念が無い時代に作られているので、決して媚びることなく素直な要素として描かれている。
      • 戦闘中だろうが目の前で女の子が燃えていようが、命に関わる状況なのに数十秒近く呪文を詠唱するぶっ飛びぶりはツッコミ承知と言わんばかりに清々しく、良くも悪くもムードが全開。
        + 例えば、主人公が戦闘中にこんなことを口走ったりする。

        「不滅、永遠、口にすべからざる創造されざる万物の父よ、止むことを知らぬ世界の戦車に乗りたる者よ。
        エーテルのぼう漢を支配する者よ、汝の座はそのうちに建てられたり。
        その頂より汝の目は万物を眺め、汝の純粋にして聖なる耳は万物を聞く。
        汝の子供たるわれらを助けよ、汝われらを時の生まれし時より愛せしものなり」

        「われらは汝への永遠なる熱望をふんだんに燃やさん、おお父よ!おお、母のなかの母よ!おお、母性と愛の永遠の祖型よ!おお、息子よ、すべての息子のなかの華よ!すべての形のなかの形よ!万物の塊よ、霊よ、調和よ、数よ!アーメン!」

        (棺ルート終盤より)

  • キャラ設定はやたら濃く、「黒魔法使い」「治癒能力の持ち主」「陰陽使い」「博士号持ちの高校生」「多重人格の少女」と、"熱量の凄さ"は確かなものがある。
  • 可もなく不可もないキャラクター
    • 殆どの登場人物はどこかで見たことのある性格ばかりで、本作ならではの個性は薄い。
      • 極端なおバカキャラである藍は例外だが、その言動も高校生とは思えないものばかりな上に一人称が「藍ちゃん」であったりと、人を選ぶキャラクターになっている。
    • キャラクターに秀でた魅力があればシナリオの粗さをカバーできた可能性があるので、この点は惜しい。
    • 一方で、プレイヤーが不快になるようなキャラクター描写は無く、その点は安心。
      • 主人公の慎哉はルートによっては地味だが、時には主人公らしい勇敢さや頼もしさを見せてくれる。
      • メインヒロインの真璃亜は一歩間違えると"理不尽暴力ヒロイン"になりかねないキャラ付けをしているが、安直な暴力描写は無く、一線を超えない範疇にとどまっている。加減を間違える作品が多い中で、この点は間違いなく評価点である。

評価点

  • 当時の人気声優を押さえている。
    • その顔触れも、この当時絶大な人気を誇っていた宮村優子氏や緒方恵美氏らアイドル声優から、若本規夫氏といった渋いチョイス*12と印象的な人選となっている。
  • ボイスの再生仕様
    • 本作はテキストを送るだけではボイスが中断されず、他キャラのセリフが割り込むまで再生が継続される。「声を最後まで聞くのが面倒」という理由でフルボイスを敬遠する人でも、ゲームテンポをそがれる事なく声優の演技を味わう事ができる。
      • ただし長文をキャンセルできないのは難点で、呪文詠唱シーンの後はちょっとうるさい。
  • 消極的な評価になってしまうが、問題点で触れなかった2ルートは起承転結が比較的整っている。
    • 展開も文章も無茶苦茶だが、黒魔法要素はしっかり出てくるのでテーマがブレていない。
    • 特に召喚ルートは怪奇ものとして王道的な構成になっている。
  • 特典ディスクの資料価値が高い。
    • このディスクでは参加声優による顔出しのインタビューが行われているのだが、ヒロイン3人のキャストは声優になった経緯まで語ってくれる。いちゲームの枠を超えて声優の出自が聞けるのは貴重である。

総評

中二心をそそるノベルゲーム……と言えば聴こえは良いが、本作の問題はそこでは無い。
商業作品にあるまじき文章、煩雑な構成、一貫性の無いテーマに突飛な展開と、物語でやってはいけない要素がとことん詰め込まれている。
これをプレイヤー個人がどう感じるかは別にしても、好意的に評価する声はあまり無く、本作は概ねクソゲーの烙印を押されている。

三幕構成*13を守らないシナリオは読者の目にどう映るか、創作のいちケースとしては参考になるかもしれない。

余談

  • 棺ルートでは敵キャラの声優に味方キャラ担当の若本氏が使いまわされており、若本と若本が張り合うシュールな様相を見せている。若本ボイスを堪能したいファンは必見。
  • 本作のシナリオを書いたスタッフの名前は一切公表されていない。
    • 執筆した方も思う所があったのだろうか。
  • その後の展開
    • PS版は本作限りとなったが、移植元のSSでは1996年12月に発売された2作目『NIGHTRUTH MARIA』、1997年7月に発売された3作目の『NIGHTRUTH 二つだけの真実』までシリーズが継続した*14
      • 当初は5作完結の予定だったらしく、打ち切りという結果に終わっている。
  • 特典ディスクを見ると、開発段階から変更された要素がいくつか確認できる。
    • 製品版のサブタイトルは「#01 闇の扉」だが、絵コンテには「#01 炎」と記されている。どうやら当初は人体発火ルートを軸に物語が展開される予定だったらしい。
      • 殆どのルートで扱われない人体発火が思わせぶりに出てくるのは、初期設定の名残かもしれない。
      • ゲーム内で流れる人体発火シーンは本編の内容と食い違っており*15、アニメ作成後に何らかの方向転換があった可能性がある。
    • 劇中で使われなかった背景CGがかなり多い。
      • 屋上、プール、職員室など。
      • また講堂の床に魔法陣が描かれた画像もある。本編では同じものが礼拝堂に描かれるのだが、開発段階では異なるシナリオだったと思われる。
    • 設定資料の中には、劇中に出てこない狼男の姿もある。

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ADV バリエ
最終更新:2023年12月03日 00:29

*1 改行位置は原文ママ。

*2 主要人物が噂をしたり、クラス中がその話で持ちきりになったりするなど。

*3 あるルートのみ先生から窘められる描写があるのだが、この文章が出てくるルートにはその描写が無く、同級生と誤認しやすくなっている。

*4 文脈を見る限り、おそらく「行ける場所」の誤植。

*5 いちおう多重人格についてはパッケージやOPで伏線が張られている。

*6 適当な映画をいくつか見て、話が動き出したところの再生時間を確かめてみるとわかりやすい。ハリウッドの脚本術でも、大まかにその辺りを事件発生の目安としている。

*7 ルートによっては俊英が同じセリフを言うので、先にそちらを遊んだプレイヤーは受け入れやすいと思われる。しかし全てのプレイヤーが別ルートから遊ぶわけでは無い。

*8 登場人物も「そんなの初耳」「突拍子も無い話」という反応をしており、ライター自身無理のある展開を自覚している節がある。

*9 ただし途中からはウイルスの存在により出るに出られない状況になったとも解釈できる。

*10 そもそもワクチンは発症前に打たなければ意味が無いのだが……。

*11 一部の選択肢を選んだ時のみ登場。場合によってはその状況でさらにトーストを焼いている事も。

*12 当時の若本氏はTVアニメで起用される機会がまだ少なく、アニメはOVAでの活躍が多かった。

*13 脚本の方法論。物語を3つのパート(事件開始前の第1幕、事件と向き合う第2幕、事件を解決する第3幕)に分け、各段階に応じて的確な執筆を行うもの。理論は色々あるが、「第1幕は最初の1/4程度」「主要人物は第1幕までに出しておき、事件解決のきっかけは第2幕までに入れておく」「第1幕で提示した問題を第3幕できちんと解決する」といった要素は大まかに共通している。

*14 同年にソネットコンピュータエンターテインメントとバリエがレイアップに吸収合併されたため、3作目だけ発売元がレイアップに変わっている。

*15 劇中では「焼死した生徒の身元は不明」という扱いなのだが、アニメシーンではその生徒がバッチリ目撃されている。