【きんだいちしょうねんのじけんぼ ひほうとう あらたなるさんげき】
ジャンル | アドベンチャー | ![]() |
対応機種 | プレイステーション | |
発売元 | 講談社 | |
開発元 | デジタルフロンティア | |
発売日 | 1996年11月29日 | |
定価 | 5,800円 | |
プレイ人数 | 1人 | |
廉価版 |
PlayStation the Best 1997年11月20日/2,800円 |
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判定 | ゲームバランスが不安定 | |
ポイント |
『金田一少年』初のゲーム化(+アニメ化)作品 金田一らしい攻めた作風は健在 理不尽な詰みポイントあり キバヤシお墨付きの激ムズゲー 金田一への当たりが強すぎる一同 |
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金田一少年の事件簿シリーズリンク |
迎えに来た剣持警部が、ポツリといった。
「この島から悲しい報らせが届くのもこれで最後だ」――と。
――だが、その言葉はまちがっていた。この島で再び血まみれの惨劇が幕をあけようとは!
「『山童の使者』の正体は必ず俺が暴いてみせる。」
「ジッチャンの名にかけて!!」
週刊少年マガジンの人気漫画『金田一少年の事件簿』のゲーム化作品。
シリーズ初のゲーム化(*1)に加え、登場人物が初めてアニメで描かれた作品でもある(*2)。
パッケージ側面のタイトルは『金田一少年の事件簿』となっているが、それ以外(パッケージ表面やCD帯の表面、PS Storeのページ名など)は全てサブタイトルが併記されているため、本記事でもそちらに準ずる。
本作品は原作のエピソード『秘宝島殺人事件』(*3)の後日談となっており、その舞台となった「悲報島」にて金田一が新たな事件に立ち向かう。
ただし原作を知る必要は殆どなく、未読のプレイヤーでも楽しむ事は可能である。
説明書には原作エピソードのあらましも書かれているが、事件のネタバレは避けられており、本作を遊んでから原作の謎解きに挑む事も可能。
『金田一少年の事件簿』のメディアミックス作品は殆どの作品に天樹征丸(*4)がシナリオを提供しているが、本作は原案のみの参加でシナリオには関わっていない。
脚本を手がけたのは沢村光彦氏と桧木田正史氏。特に沢村氏は本作がデビュー作となり、のちに『.hackシリーズ』などのライターを務めている。
悲報島の惨劇から月日が経ったある日の事、金田一達は再び島へと招かれる。
島は以前のオーナー・葉月光定の手に買い戻され、更なる財宝を巡る「宝探しツアー」のためのリゾート開発が進められていた。
開発会社の木暮によれば、かつて財宝を見つけ出した金田一達の手を借りて、財宝の在り処に目星を付けたいとの事である。
しかし島には不穏な空気も漂っていた。観光開発を巡って対立する家族、光定の周囲を取り巻く女性関係、そして光定の屋敷には血塗られた呪い唄が書かれていた…。
「朱き手まりの 弾みし晩
あめの刻みを 鳥告げん
山童来たりて こうべ垂れ
皆で見あげん 古城のえにし…」
その晩、呪い唄の言葉通りに最初の犠牲者が現れる。
かくして惨劇の幕が切って落とされた。
+ | 特に…(これから遊ぶプレイヤーは閲覧非推奨) |
+ | 若干のネタバレ注意 |
+ | 核心を明かさない程度のネタバレ含む |
本作で特に評価が低い要素。 操作性の悪さに関しては細かいストレス要因が積み重なり、各所のレビューで必ずと言っていいほど批判されている。
良くも悪くも本作の象徴的な要素。
原作ほどではないものの、結構な推理力や観察力、記憶力が求められる本格ミステリーであり、ただストーリーを進めるだけではクリアできない歯応えのある難易度になってる。
また、全体的に調整不足が目立ち、攻略情報無しでのクリアは困難を極める。
ただ難しいだけではなく、ゲーム側の不親切さから来る障害も多い。
ただし「隅々まで何度も調べる」という謎解きゲームの掟を押さえつつ、ゲーム内の情報を隈なく押さえ、根気よくやり直し続ければ、一応クリアできない事も無い。
徹底的に硬派な推理ゲームを遊びたいプレイヤーにとっては、クリア後の達成感を得られる要因にもなる。
+ | 詳細(正解となる行動の記述を含む) |
+ | 詳細(軽いヒント含む) |
+ | 以下、謎解きのヒントになり得る記述を含むため、自力で解きたい人は閲覧非推奨 |
記念すべき最初の『金田一』ゲーは、とても硬派でストイック。
原作を解き慣れているからと軽はずみに挑むと、とんだ大火傷をくらってしまう。
誰でも気軽に挑めるADVでは無く、メモ帳傍に腰を据えて謎解きしたい人向けのソフトである。
詰み要素や最終局面はまさに理不尽の一言に尽きるが、そんな難題を解決に導く金田一の頭脳は計り知れない。
もしかすると『星見島』とは違った形で、彼の凄さを実感できるかもしれない…。
+ | 詳細(謎解きや結末の核心を含むため、プレイ後閲覧推奨) |
*1 実は当作より先にハドソンがニンテンドウ64で『金田一少年の事件簿』のゲーム化を予定していたが、最終的に未発売となってしまっている。当時の任天堂は発売前のニンテンドウ64を海外市場傾向の方向性を打っていた為、このニンテンドウ64版は国内初のサードパーティー製タイトルとして発表されていたので注目度は高かっただけに悔やまれる。なお、ハドソンは後にサターンで『金田一少年の事件簿 星見島 悲しみの復讐鬼』を発売した。
*2 声優は後のテレビアニメ版や本作発売直後の劇場版、本作と同年に出たCDブック版のいずれとも異なる。
*3 原作タイトルは「秘宝島」、作中の島の名称は「悲報島」で、本作のタイトルは「悲報島」である。ややこしいので注意。
*4 『金田一少年』の原作者の一人。数々のヒット作を生んだマガジン編集者・キバヤシこと樹林伸氏の別名義でもある。90年末までは金成陽三郎氏が原作者としてクレジットされていたが、天樹はその裏で初期から原作に大きくかかわっており、連載途中からは原作者の名義も変更されている。
*5 原作『秘宝島殺人事件』の登場人物。終盤で土砂崩れに巻き込まれ、原作では死亡したものと思われていた。
*6 作画担当のさとう氏は『金田一少年の殺人』の時期の画風に近いと評している(公式ガイドブックより)。
*7 この設定は原作の『秘宝島殺人事件』において1コマだけ示されていたもの。「人間が瞳の色を変える方法は存在しない」という話が出てきた矢先に描写され、「クリスがカラーコンタクトを使用して瞳の色をごまかしている」と誤認させるミスリードとなっている(その後は作中で全く触れられる事は無く、引っ掛けのためだけに用意されたシーンである)。
*8 この展開は本作発売時点ではマンネリ化しつつあったためか、今作が発売した辺りから封印されるようになった。その後は自殺を試みても何らかの形で阻止される事が多い。
*9 ゲーム上では真犯人ともども行方不明として描かれるのだが、バッドエンドでの自殺方法やその場所の構造、真犯人との関係性を考えると、全く同じ方法で絶命したことが読み取れる。
*10 あくまでミステリーの中での話で、現実の刑事事件は状況証拠だけでも容疑者とみなすには十分である。
*11 原作の準レギュラー。常にビデオカメラを持ち歩いており、映像が無ければ証拠が成立しない事件のために登場させられる事が多い。
*12 そもそも金田一は自分から名探偵を名乗っている訳ではなく、解けなかったからと言ってこんな事を言われる筋合いは全く無い。大抵は事件に巻き込まれて仕方なく推理している場合が殆どであり、本作も同様である。いつきも剣持も美雪も、謎が解けなかったからと言って責めたりするようなシーンは原作に存在せず、むしろ殺伐とした状況の中で気遣ってくれる事が殆どである。
*13 実際、本作を遊んだ原作作画担当のさとうふみや氏も公式ガイドブックの中で「原作の剣持警部だったら絶対言わない」と本作にツッコミを入れている。
*14 宮村氏の演技もあからさまにバカにしたようなもので結構キツい。ちなみに氏は公式ガイドブックのインタビューまで使用シーンを伝えられていなかったようで、同書のインタビューでは「失敗してあんな事言われたら悔しいですね」と自ら語っている。
*15 『金田一少年』を知らない人にわかりやすく説明すると、剣持警部の推理力は『名探偵コナン』における毛利小五郎と似た立ち位置にある。
*16 その前に図書室など別の部屋を先に訪ねると、美雪が金田一に合流する描写が挿入され、イベントが発生しなくなる。
*17 そもそも「絵」という表現も雑。これはゲーム内CGを指しているのだが、作中の登場人物が使う単語としては不自然であり、屋敷内に飾ってある絵画をヒントと勘違いする原因にもなる。
*18 「人物のいた部屋は鍵が開けられた形跡が無いから外には出ていない」というもの(その人物が部屋にいたのを見た者はいない)。この時点で密室トリックやら隠し通路の存在やらが出てきているのに、鍵が閉まっていただけで外に出ていないと断定するのは無理がある。
*19 目撃者がアリバイを失った後、事件発見までに描かれているのは「長くても1分程度で終わりそうな会話」→「間をおかず部屋にいた一同が外に出る」というシーンのみ。目撃者はこの間、現場の露天風呂まで数十メートルほど歩き、脱衣所で服も脱いでいる。もし目撃者が犯人であれば、その上で被害者Aを襲い、返り血を洗い落とした後、後から入ってきた被害者Bを(Aが目撃される前に)襲撃し、それを入り口の右あたりに運び、被害者Aを湯船に運んだ後、入り口に戻って発見したフリをするという行程を一瞬で済ませなければならない。
*20 別の事件では、何らかのトリックのために死体が用意された時刻を死亡推定時刻として指摘すると、「そんな早く行動できるはずがない」と言われ、例によって無能扱いされてゲームオーバーとなる。まるで一貫性が無い。
*21 その人物が証言した行動をクリスが「自分も見た」と証言した事でアリバイとして扱われるのだが、逆にクリスがその場所にいたのを見た人間はおらず、単に話を合わせた可能性もあるので、クリスにアリバイがあるとは言えない。これにより、目撃された人物のアリバイも成立しなくなる。
*22 ゲームオーバー後の美雪のヒントも「話をきちんと聞いた?」という物のみ。テキスト自体に問題があるため、きちんと読んだところで解決しない。
*23 この場合は数ある正解の一つを仮定して話を進めており、何より読者視点では「探偵役がそう言うならそうなんだろう」「読者に見えない情報も踏まえているに違いない」と受け入れた上で納得ができる。まして本編のゲームオーバーが生み出す「これ以外の答えをする奴はおかしい」などといった概念は最初から存在しない。
*24 同様の例として同時期に公開さた劇場用の単発アニメでは金田一一役は山口勝平氏になっている。
*25 一方、本作に登場しておらず地獄遊園殺人事件からの登場になった明智健悟はアニメと同じ声優になっている。