金田一少年の事件簿 ~悲報島 新たなる惨劇~

【きんだいちしょうねんのじけんぼ ひほうとう あらたなるさんげき】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 プレイステーション
発売元 講談社
開発元 デジタルフロンティア
発売日 1996年11月29日
定価 5,800円
プレイ人数 1人
廉価版 PlayStation the Best
1997年11月20日/2,800円
判定 ゲームバランスが不安定
ポイント 『金田一少年』初のゲーム化(+アニメ化)作品
金田一らしい攻めた作風は健在
理不尽な詰みポイントあり
キバヤシお墨付きの激ムズゲー
金田一への当たりが強すぎる一同
金田一少年の事件簿シリーズリンク


迎えに来た剣持警部が、ポツリといった。

「この島から悲しい報らせが届くのもこれで最後だ」――と。

――だが、その言葉はまちがっていた。この島で再び血まみれの惨劇が幕をあけようとは!


「『山童の使者』の正体は必ず俺が暴いてみせる。」

「ジッチャンの名にかけて!!」


概要

週刊少年マガジンの人気漫画『金田一少年の事件簿』のゲーム化作品。
シリーズ初のゲーム化*1に加え、登場人物が初めてアニメで描かれた作品でもある*2
パッケージ側面のタイトルは『金田一少年の事件簿』となっているが、それ以外(パッケージ表面やCD帯の表面、PS Storeのページ名など)は全てサブタイトルが併記されているため、本記事でもそちらに準ずる。

本作品は原作のエピソード『秘宝島殺人事件』*3の後日談となっており、その舞台となった「悲報島」にて金田一が新たな事件に立ち向かう。
ただし原作を知る必要は殆どなく、未読のプレイヤーでも楽しむ事は可能である。
説明書には原作エピソードのあらましも書かれているが、事件のネタバレは避けられており、本作を遊んでから原作の謎解きに挑む事も可能。

『金田一少年の事件簿』のメディアミックス作品は殆どの作品に天樹征丸*4がシナリオを提供しているが、本作は原案のみの参加でシナリオには関わっていない。
脚本を手がけたのは沢村光彦氏と桧木田正史氏。特に沢村氏は本作がデビュー作となり、のちに『.hackシリーズ』などのライターを務めている。


あらすじ

悲報島の惨劇から月日が経ったある日の事、金田一達は再び島へと招かれる。

島は以前のオーナー・葉月光定の手に買い戻され、更なる財宝を巡る「宝探しツアー」のためのリゾート開発が進められていた。
開発会社の木暮によれば、かつて財宝を見つけ出した金田一達の手を借りて、財宝の在り処に目星を付けたいとの事である。

しかし島には不穏な空気も漂っていた。観光開発を巡って対立する家族、光定の周囲を取り巻く女性関係、そして光定の屋敷には血塗られた呪い唄が書かれていた…。

「朱き手まりの 弾みし晩
あめの刻みを 鳥告げん
山童来たりて こうべ垂れ
皆で見あげん 古城のえにし…」

その晩、呪い唄の言葉通りに最初の犠牲者が現れる。
かくして惨劇の幕が切って落とされた。


登場人物

  • 金田一 一(CV:岩永哲哉)
    • 本作の主人公。またしても殺人事件に遭遇してしまった名探偵の孫。今作でもIQ180の鋭い推理力で事件を解決に導く……事になるかどうかはプレイヤーの力量しだい。
  • 七瀬 美雪(CV:宮村優子)
    • 金田一の幼馴染。今作では殆どの時間を金田一と共に行動し、事件解決の鍵を探し回る。オープニングは帽子を落とし、それが意外な形で事件を変える事に。
  • 剣持 勇(CV:高橋功)
    • どこか抜けているけれど義理堅いオッサン刑事。今作では「何故か生存して原人と化した岩田*5の捜索」という妙な役回りで悲報島に向かう。原作ではラストしか出番が無かったが、今作はガッツリ事件に関わって捜査の指揮を執る。
  • いつき 陽介(CV:二又一成)
    • 『悲恋湖伝説殺人事件』で金田一と知り合った、面倒見のいいルポライター。今作では大企業「葉月コンツェルン」の闇を暴くべく悲報島へと向かう。大スクープを嗅ぎつけたためか、いつになく本気を見せており、部屋にはメモがわりのテープレコーダーが隠してある。
  • クリス・アインシュタイン(CV:ならはしみき)
    • 原作の『秘宝島殺人事件』にも登場した、IQ180の天才少年。自称・ソロモン王の末裔。原作ではその後出番が無かったが、本作は久しぶりの再登場を果たす。今作でも金田一にライバル意識を燃やしており、物語の要所要所で対立する事になる。

ゲストキャラクター

  • 葉月 光定(CV:佐藤治)
    • 悲報島のオーナー。この島は元々彼が『秘宝島殺人事件』の美作大介に売却していたものだったが、美作が死んでから再び買い戻している。大企業「葉月コンツェルン」の社長だが、その裏では複雑な女性関係などの醜聞が絶えない。
  • 葉月 マユラ(CV:天野由梨)
    • 光定の長女。進学や就職をせず、巫女としての道を選んだ18歳。光定とは険悪な関係で、島の開発を巡って対立している。
  • 竹内 灯妙(CV:二又一成)
    • マユラが島に建てようとしている神社の神主。いつも酔っ払っている呑兵衛で、劇中では美雪に敬遠されるシーンも。語尾に「ニョ」と付けて喋る。神主の割には俗物で、島の宝を見つけるために自室の周りを掘り起こしている。
  • 木暮 栄一郎(CV:佐藤治)
    • 木暮開発の社長。葉月の依頼により、島の観光リゾート開発を推し進めている。
  • 遠藤 信(CV:二又一成)
    • 木暮の部下。胃が非常に弱く、いつも胃痛の話ばかりをしている気弱な男。木暮の知らないところで、何かを企んでいる様子を覗かせる。
  • 栗原 真奈美(CV:手塚ちはる)
    • 葉月家のメイド。元は遠縁の親戚で、身寄りが無くなってから葉月家に引き取られている。幼少のころからこき使われていて、家庭内の扱いはよろしくない。人見知りで、物事を最後まで話さないクセがある。
  • 相田 ヨネ(CV:山田美穂)
    • 葉月家の使用人。光定が幼少の頃から仕えている。口数が少なく、いつきをして「喰えんババア」と言わしめるが、時折家族想いな一面を覗かせることも。
  • 三村 翔子(CV:山田美穂)
    • 葉月家の侍医。様々な企みを隠していて、いつきにも危険人物としてマークされている。巨万の富を得るためにあらゆる陰謀をゲーム感覚で押し進めていて、社会的な大物との怪しい噂も絶えないらしい。
  • 東堂 小百合(CV:手塚ちはる)
    • 考古学を研究する大学院生。悲報島には縄文時代の遺跡が眠っており、その調査のため訪問したという。劇中では人に言えない秘密を抱えており、金田一に不安な気持ちを少しずつ打ち明けていく。

特徴

  • 構成
    • 物語は全4日間。悲報島の巨大な屋敷を舞台に、連続殺人事件が繰り広げられる。
    • プレイヤーの目的は真犯人「山童の使者」を見つけ出し、惨劇に終止符を打つことである。
    • 事件と並行して、暗号を解いて島に眠る財宝を探す要素も存在する。
      • エンディングを見るにはこちらもクリア必須。
    • 事件が発生すると、金田一が自身の推理を披露する推理パートが開始する。ここで選択肢を間違えるか、正しくフラグを建てられていなければ即ゲームオーバーとなる。
    • ゲーム中は「探偵ポイント」なるものが測定されている。これはどれだけイベントを回収できたかどうかを示すクリア達成度で、点数に応じてエンディングが分岐する。100点満点。
      • 探偵ポイントはゲームオーバー時や、エンディングを見た場合のみ閲覧可能。
  • システム
    • 調査パートでは3D空間を探索し、他の人物から証言などを集めていく。
      • 移動は3Dダンジョンのように1マスずつ動く形式。
    • 場所によってはポインタを表示させる事ができ、現場にあるものを調べることが可能。
    • 最低限の情報を調べ終わってから金田一の部屋に戻ると、任意で物語を次のパートに進められる。
  • セーブデータ数は8つ。
    • メモリーカードのブロック数が増える事は無いので、躊躇せずすべてのセーブ枠を活用して遊ぶことが推奨される。
    • 後述するが、本作は致命的な「取り返しのつかない要素」を多数含むため、リカバリーのためには再開地点を多めに確保した方が良い。

評価点

  • 原作者不在でありながら、随所に盛り込まれた『金田一』らしさは健在。
    • 犯人の動機や背景はきちんと作り込まれており、ストーリーの評価は概ね高い。
    • 原作は少年誌の作品でありながら、過激な描写も存在していた。それは本作も例外では無く、ソニーが許してくれた事に驚くような描写も存在する。
      • 現在のレーティングの判定で言えば、おそらくCERO:Z(18歳以上のみ対象)に相当すると思われる。
      • 例えば葉月家のメイドである真奈美は光定の"性奴隷"にされている事が示唆されており、言動はところどころ異常な部分が垣間見える。光定のもとには別の女が夜の時間を過ごしに来るなど、ドロドロした描写も(オブラートに包みながら)表現されている。
        + 特に…(これから遊ぶプレイヤーは閲覧非推奨)
      • 最初の事件は金田一たちの頭上から被害者の生首が降ってくるという凄惨な内容。原作でもこのような惨殺事件はいくつかあるが、プレイステーションで実現できたのは中々の衝撃である。
        • 前情報無しで見た際のインパクトは非常に強く、本作最大の見所の一つである。
  • ゲームを進めると出てくる新たな家族の存在など、じっちゃんの事件を彷彿とさせるお家騒動も印象的。
  • ビジュアル面も、当時の原作の画風*6を忠実に再現しており、違和感が無い。
  • 原作ネタも細かく拾っている。
    • 金田一のスケベっぷりは本作でも健在で、選択肢次第では風呂を覗くことも。
    • いつきの水恐怖症設定は本作でも触れられている。「恐怖症をおしてまで船に乗り、闇の深い事件の真相を追いに来た」という表現がなされていて、魅力の掘り下げに一役買っている。
    • 中には「クリスが普段からコンタクトレンズを使用している」という、かなり細かいネタも。*7
    • 原作で軽く触れられただけの「島に縄文時代の遺跡がある」という設定から人物設定を掘り下げたり、原作序盤の何気ないシーンを伏線として回収したりと、いい意味での後付け設定も練られている。
  • エンディングの分岐内容について
    + 若干のネタバレ注意
    • 本作のエンディングは探偵ポイントによって分岐する。バッドエンドだと原作らしく真犯人が自殺するのだが、グッドエンドでは自殺を阻止する事が出来る。
    • 当時の原作でのお約束*8を回避できるのは、作品に慣れ親しんだファンなら胸が熱くなる。
    • バッドエンドは真犯人だけでなく別の人物も心中するため、その人物の命も救うことになる。
      • またある条件でゲームオーバーになると更に別の人物も後追い自殺する*9ので、結果的にはその人物の命も助けられる。
  • 3Dポリゴンとサスペンスの相性の良さ
    • 舞台となる巨大な洋館は3Dポリゴンで描画されている。当時の粗い造形は怖さを盛り上げてくれていて、雰囲気は申し分無し。
    • BGMは静かに奏でられ、いずれ起こるであろう惨劇に不安を抱きつつ、緊張感たっぷりに散策できる。
  • アニメシーンはクオリティが高く、使い所も上手い。
    • オープニングムービーに登場するレギュラー陣は、原作のプロローグと比べても遜色無い雰囲気。金田一や美雪たちのコメディタッチな様子が自然に描かれている。
    • アニメシーンの使い所は『金田一』ゲーの模範解答を押さえてくれている。
      • ショッキングな死体発見シーンは原作の象徴的な要素だが、本作では全ての事件シーンにきちんとムービーが挿入される。
      • 特に『ジッチャンの名にかけて!』『謎はすべて解けた!』は単独でムービーが用意された。原作の名セリフが、揃って初のアニメ化となっている。
  • 個性派揃いな登場人物たち
    • 事件ごとに個性豊かな人物が多数登場する原作であるが、本作でも潔癖な巫女マユラや狡猾な美人女医三村、酔っ払いの神主灯妙といった、原作にも劣らぬ濃い登場人物たちが事件を彩る。一見地味に見える遠藤や真奈美といったキャラも面白い個性付けがされており、登場人物の多い作品にありがちな空気キャラはいないといっても良い。
    • 人物の立ち絵の種類もかなり多い。単純な喜怒哀楽の表情の変化は勿論、ベッドに腰かける、部屋を通せんぼする、書類を破るといった限定的なシチュエーションにすら専用の立ち絵が用意されていたりする。

賛否両論点

  • ミステリー面
    • ロジックは丁寧に作られており、後述するアリバイの下りを除けば概ね問題なく楽しめる。
      • 特に終盤において、数々の根拠から犯人を消去法で割り出すシーンは論理パズルのように緻密で、とても鮮やかな作り。
      • ゲームの都合、犯人や関係者が露骨に証拠を残してしまう展開が多いのだが、解決編ではその理由付けがきちんと示されており、作りの細かさがうかがえる。
    • ただし原作と比べるとイレギュラーな点もちらほらあり、人によっては気になるかもしれない。
      + 核心を明かさない程度のネタバレ含む
    • 今作は見立て殺人が行われるのだが、真犯人がわざわざそうした理由が描かれていない。
      • 原作だとこの手のエピソードは「ミスリードを誘うため」「怪奇現象の仕業にするため」などの理由が必ず説明されるのだが、本作は全く理由が存在せず、ただ回りくどいだけとなっている。
    • 今作の犯人は状況証拠によって割り出されてしまう。
      • 犯人特定に物的証拠が必要なのは多くのミステリーの不文律*10であり、『金田一少年の事件簿』も例外では無いため、プレイヤーによっては気になるところ。
      • 原作だと佐木竜二*11が同行していなければ成立しないタイプの証拠なのに、本作は登場しない。
    • 真犯人の敗因があからさまな自滅。
      • 他の人が知り得ない情報を、そうと知っていながら堂々とバラして特定されており、思いがけない証拠から犯人を突き止めたいプレイヤーにとっては肩透かし気味。
      • ただしその背景はエピローグできちんと掘り下げられるため、一概に肩透かしとは言えない。
      • もっとも金田一の異常な観察力があってこそ特定できる要因なので、まさか犯人もバレるとは思わなかったのだろう。これが『犯人たちの事件簿』なら、間違いなく真犯人が「えぇ……」とドン引きするポイント。

問題点

UI面

本作で特に評価が低い要素。 操作性の悪さに関しては細かいストレス要因が積み重なり、各所のレビューで必ずと言っていいほど批判されている。

  • 移動システム
    • まず、3Dダンジョンのような移動形式が推理ADVと噛み合っていない。
      • 様々な場所を調べるためにわざわざ歩いて移動しなければならず、テンポが悪い。
      • 屋敷が広いため、移動にも結構時間がかかる。実は□ボタンでダッシュできるのだが、本作にはチュートリアルが無く、気づかないままクリアしてしまう人も。
    • 基本は90度単位でしか向きを変えられないのだが、大広間のみ斜めも向けるようになっていて、間違えて移動してしまう事がある。
    • 金田一やいつきの部屋にある引き出しはゲーム内で何度もお世話になるのだが、そこに行くには部屋に入った後、いちいちベッドを迂回して進む必要があり、やや面倒。
    • 屋外では地図上の目的地をカーソルで選択して移動するのだが、その際に金田一のアイコンが移動するアニメーションを長々と見せられる。
      • 移動ルートによってはかなり遠回りするのでじれったい。
  • 指カーソルの操作性が劣悪。
    • 極端に加速度運動する仕様になっており、思ったところに動かすのもままならない。短く押せばろくに動かず、長く押せば遠くに進んでしまう。
      • 後述する詰みポイントに引っかかる原因にもなっている。
    • 決定ボタンを押して調べた後はポインタが非表示に切り替わり、再度ポインタを出すと真ん中に移動してしまう。画面内の物をくまなく調べたいときにはとても不便。
    • 調べられる場所をアラートしてくれるなどの便利機能は無い。
    • PS用マウスにも対応していない。
  • 探索も色々と不親切。
    • ゲーム序盤で訪問する時計台が非常に暗く、証拠を探すのもままならない。
      • ポインタの精度も悪く、証拠を指して決定ボタンを押しても反応しない事がある。
      • それでいて、一つでも証拠を取り逃すとゲームオーバーが確定するので質が悪い。
    • 特定の方向から歩いて行かないと調べられない場所が存在する。
    • 探索中は屋敷内の地図を表示できるが、見られるのは俯瞰図だけ。プレイヤーの現在地を見ることは出来ない。
      • プレイヤーの位置に関係無く北が上で固定されているので、道に迷う原因にもなる。
    • 部屋に入って中の様子がイラストで表示された場合、部屋から出るとドアに背を向けた状態になる。この時部屋に背を向ける描写が無く、いつのまにかプレイヤーの向きが180度反転していて混乱をきたす。
      • 意味もわからず、間違えて同じ部屋にもう一度入ってしまう事故が頻繁に発生する。
  • セーブ回り
    • 本作にはメニュー画面の類が一切存在しない。セーブするには金田一の部屋までわざわざ歩き、奥の机に置いてある手帳まで向かわなければならない。
      • ゲーム序盤で小百合と同行している時は部屋に入れず、ゲームオーバーになるとかなり前まで戻される。
    • 全部のイベントを調べてセーブしようと部屋に戻ると、美雪がゲームを次に進めるかどうかいちいち聞いてくるのでテンポが悪い。
      • セーブを終えて次に進めようとすると、今度はわざわざ部屋を出て再度美雪の質問を発生させる必要がある。
    • セーブ時に開く手帳はアリバイや暗号なども表示されるようになっており、いちいち全て見てからで無いとセーブ出来ない。
      • 暗号を解いていない場合は毎回設問を解かされ、セーブまでに数十秒かかるハメになる。
    • ファイル管理画面ではセーブ回数が表示されるが、正しく計算されていない。
      • 本来は「今遊んでいるファイルのセーブ回数+1」と計算されるべきなのに、「保存先ファイルのセーブ回数+1」という計算式になっている。ニューデータを既存ファイルに上書きすれば既に何度もセーブした扱いになり、何度もセーブしたデータを新しい枠にセーブすれば回数が1と扱われる。やり直しを要求されるシステムの都合、目に付きやすい。
    • セーブファイルのデフォルト位置が必ず1番目で、上書き確認も行われない。
      • 異なるデータを身内で共有する場合、データを誤削除してしまう原因になる(この仕様は『聖剣伝説3』でも問題視された前例がある)。
      • 一人で遊ぶ場合でも、序盤のセーブデータを消してしまうリスクは本作の仕様においてかなり問題がある。
    • ゲームオーバー時にコンティニュー用とおぼしきパスワードが表示されるのだが、ゲーム内で使う機会は無い。おそらく消し忘れと思われる。
      • 何度もやり直させる都合、パスワード制の方が遊びやすいゲームになっていたはずなのだが、なぜ没にしたのかは不明。
      • 手帳を開くたびにアリバイや暗号を見せられる仕様や、部屋で美雪が話しかけてくる仕様も、セーブ機能が存在しなかった頃の名残と思われる。

演出面

  • 中途半端に無口主人公制を採用
    • 『金田一少年』の魅力の一つに、主人公・金田一一のキャラの濃さがある。普段軽薄な彼がここぞと言う時に鋭い明察力を発揮するのがシリーズの魅力でもあるのだが、今作では『ドラゴンクエスト』よろしく、探索パートでは一切喋らない。
      • 代わりに、同伴している美雪や小百合の語りで状況が説明される。
    • 元来ゲームの無口主人公は、プレイヤーの分身に対して感情移入させる意図があって行われるものである。今作の場合は原作が存在し、それも濃いキャラクターの持ち主であり、無口にする意味が全く無い。
    • それでいて、推理シーンでは普通に喋るシーンが用意されている。意図を汲まずにゲームのお約束をなぞっているようにも見えてしまう。
    • 後年の『星見島 悲しみの復讐鬼』が彼の濃さを存分に引き出したのとは対極にあるかもしれない。
  • 失敗に対して厳しすぎる原作キャラ達
    • 本作ではゲームオーバーになると、原作の面々がかなり厳しい態度で接してくる。
    • いつきは金田一を迷探偵呼ばわりした挙句それを元に新作ルポを書くと言い出し、クリスは横でそれに同調。メインキャラに至っては、剣持が「お前との付き合い方を考え直さなくてはならん」とまで言い出し、美雪ですら「学校で会っても私に話しかけないでね」とまで吐き捨てる始末。
      • 敢えて原作を無視した*12一種のギャグと言えなくもない*13が、ギャグなら何でも許されるかどうかはまた別の話である。
      • いつきは原作初期ならこのような態度でも違和感はないが、このゲームが発売された頃には原作では既に金田一との親交も深まっているので、やはりキャラ崩壊していると言わざるを得ない。
      • 後述の通りこのシーンは難易度の高さも加わって何度も見せられるため、プレイヤーによっては非常に不愉快に感じられるだろう。
  • ゲームオーバー以外も、特に剣持や美雪の"当たり"が強すぎる。
    • 剣持は推理を頼んでいる側にもかかわらず、選択ミスする度に「そんなこともわからないのか」「お前にはあてにできない」などといった態度を取ってくる。
    • 美雪に至ってはゲームオーバー後にいちいちボイス付きで煽ってくる。
      • メッセージは探偵ポイントに応じて変わる。攻略法がよくわからないうちにゲームオーバーになると、会話シーンとほぼ同じ台詞を復唱したり、「あれ~そんなもんなの~?」「私が期待し過ぎたのかしら」と発したりなど、明らかに見下したような発言が多い。*14
      • プレイヤーに求める達成度はやたら厳しく、3日目までに全てのフラグを回収してゲームオーバーになった場合(大体70点程度)でも「剣持警部でも頑張ればそれくらいいける」と煽りを入れる。なお本作は緻密な情報取集に長けたADV上級者でも無ければ、4日目を拝むことすらままならない(後述)。このメッセージに従うなら「一部のゲーマーを除くほぼ全人類が剣持以下のポンコツ*15」という事になるのだが、実装したスタッフは本当にこのゲームを遊んだのだろうか?
    • ちなみに、選択ミスした際の反応はやたらと種類が多い。金田一が推理を披露し周りが絶賛するが、美雪が推理ミスを指摘した途端に手のひら返しされる「上げて落とす」パターンなどもあったりする。
  • エピローグの演出
    • ムービーを入れる容量が無かったらしく、終盤は殆ど紙芝居でエピローグが展開される。
      • このエピローグはフルボイスなのだが、そのぶん動かない画面が目についてしまい、雰囲気が台無し。
    • その反省か、次回作はディスク2枚組で発売されている。

難易度の高さ

良くも悪くも本作の象徴的な要素。
原作ほどではないものの、結構な推理力や観察力、記憶力が求められる本格ミステリーであり、ただストーリーを進めるだけではクリアできない歯応えのある難易度になってる。
また、全体的に調整不足が目立ち、攻略情報無しでのクリアは困難を極める。
ただ難しいだけではなく、ゲーム側の不親切さから来る障害も多い。

ただし「隅々まで何度も調べる」という謎解きゲームの掟を押さえつつ、ゲーム内の情報を隈なく押さえ、根気よくやり直し続ければ、一応クリアできない事も無い。
徹底的に硬派な推理ゲームを遊びたいプレイヤーにとっては、クリア後の達成感を得られる要因にもなる。

  • まともにエンディングを見るには「探偵ポイント」を徹底的に集める必要があるのだが、この事はゲーム内でも説明書でも一切説明されない。
    • グッドエンドにならなかった場合、あらゆる伏線や登場人物の動機が全く明かされないまま終わってしまう。このためプレイヤーは可能な限りすべての会話を消化しなければならない。
    • それだけ重要な要素でありながら、説明書にはポイントの存在すら書かれていない。
      • 一見すると単なるやりこみ要素にも見えてしまうので、クリアに必須の要素とは気付き辛い。
    • ただ全員に話しかけるだけではダメで、中には複数回話しかけないといけない場面も存在する。これも一切説明されない。
      • RPGのお約束に「イベントが進行しなくなったら村人に何度も話しかけろ」という鉄則がある。しかし90年代からはそこまでしなくてもクリアできるゲームが増えたため、昔のゲームに慣れていないとこの仕様には気付きづらい。
    • それどころか、話しかけると減点されるシーンまで存在する。
      • その条件も「とある女性キャラを夜に訪ねると減点」「夜中に外に出ようとする行動を2回行わなければポイントが加算されず、3回やると減点」「1日目に全部の部屋を2回調べると減点」など、緻密に調べようとするプレイヤーを嵌める仕様になっており、難しさと理不尽さをはき違えている節がある。
      • これはセーブ時のテンポの悪さと相性が悪く、「減点されたと判断したらやり直す」と言ったプレイングだけでも手間がかかってしまう。
    • 減点されたことはプレイ中に明示されない。会話の雰囲気から推測するか、ゲームオーバーになるなどして探偵ポイントを確認する以外で判断できない。
    • ある種の罠として、後述する詰みポイントの攻略方法を付け焼き刃で入手すると痛い目を見る。
      • さっさと3日目まで戻ろうとするあまり、それまでの会話を全部放置して進もうものなら、今度はバッドエンドしか見られなくなって詰みが確定する。
  • ある場面でゲームの展開に従って行動すると、探偵ポイントを取りこぼしてしまう。
    • ここで指示に従わない道理は全く無く、調整不足の可能性が高い。
    • エンディングでは100%クリアでしか見られないシーンも存在するため、攻略無しで遊ぶ際にはかなり問題がある。
      + 詳細(正解となる行動の記述を含む)
    • 2日目に光定の部屋を訪ねると、小百合が何かに傷ついたような態度で部屋を飛び出し、美雪に「追いかけてあげて」と言われる。雰囲気的にもテキストの上でも小百合を追いかけなければアウトに見えるが、実は小百合を放置してもう一度光定の部屋に入らなければイベントを消化できない。
      • 先に小百合を追いかけてしまうと、部屋に入れなくなってしまう。
    • 調整不足の根拠として、このイベントを消化した場合には若干の矛盾が生じている。
      • 再度光定の部屋に入る際には美雪も同行しているのだが、内部的には美雪と別行動している扱いになっていて、その状態でしか回収できないイベントが通常通り発生する。*16
  • 何より「一つでも間違えたら即ゲームオーバー」という仕様があまりにも厳しすぎる。
    • どれだけ注意深くプレイしても間違える時は間違えるし、入念にメモを取っていても見落とすような知識まで要求される。
    • しかも複数の選択肢を全問正解しなければ通過できない箇所がいくつか存在する。ミスしてもどこに問題があったか分かりづらく、同じ場所で何度も行き詰まる。
    • 結果、当たりの強いゲームオーバーを見せられては5~20分ほど前のセーブ地点まで戻されるので、ストレスが大きい。
  • 詰みポイントの存在
    • 本作は、1日目と2日目にある事をしないと3日目に正解ルートが出現しなくなり、詰みが確定する。
    • 新聞沙汰になった例もあるように、時間差で発生する詰みは非常に厄介である。進行不能に気付いた時はもう手遅れで、無関係な場所を延々と探し続けた挙句、最初からやり直しを余儀なくされる。というか、初見だと詰んだことに気づくことすらできない。
      • 当然、例のゲームオーバーを不可抗力で何度も見せられる。
        + 詳細(軽いヒント含む)
      • 「ある事」とは屋外の"ある場所"を訪問する事なのだが、そこには移動可能を示すアイコンが表示されず、前情報無しで見つけるのは困難。
        • ここで詰んだ場合、美雪がくれるヒントは「絵をちゃんと見た?」というもの。厄介なことに、このヒントに従っても永久に解決しない。*17詰みの原因に気付く導線は全く無いため、意を決してゲームをやり直したプレイヤーにしか打開は不可能である。
  • 誤解を招く映像の存在
    • あるシーンでは死体の血痕が放射状に広がって見えるのだが、テキスト上では異なる描かれ方がされており、映像の通りに推理を行うとゲームオーバーになる。
    • 映像の元となったアニメシーンではテキストと同様に描かれているのだが、調査シーンでは一部分しか映していないせいで誤解を招きやすい。
  • ゲーム終盤のアリバイ指摘シーンにやたらと粗が多い。
    • 該当箇所では終盤起きた事件について、8人いる容疑者の中からアリバイの無い人間を全員挙げなければならない。しかし謎解きの不備があまりにも多く、正解としてはかなり怪しい(それでいて、これが事件解決の根拠とされてしまう)。
    • まずアリバイといえば「事件発生時の不在証明」のはずである。しかしこの事件はそもそも発生時刻が明らかになっていない。
      • 被害者が現場に向かった時間もハッキリしないため、「事件が発生した可能性のある時刻」さえも曖昧である。
      • このためプレイヤーは「物語の流れとして自然な"アリバイのない人物"」をテキストから推測し、「目撃の直前が事件発生時刻」と仮定した上で答えるしかない。まるで国語のテストのよう。
    • 上記の仮定をもってしても、アリバイの定義がめちゃくちゃである。
      • 容疑者の中には状況証拠*18でしかアリバイが成立していない人物が存在し、判別が曖昧なのだが、アリバイがあるものとして扱わなければならない。
      • 第一発見者はアリバイの無い時間で事件を起こすのが困難*19なのだが、アリバイ無しとして扱わなければならない。*20
      • クリスと、クリスに目撃された人物にはアリバイが無い*21のだが、後者にアリバイが無いと答えれば不正解となり、クリスに至っては全く触れる事が出来ない。
    • これだけ杜撰な出題でありながら、1人でも間違えると「話を聞いてないのか」「お前の記憶力はどうかしてる」と剣持に言われ、その場でゲームオーバー。作り込みの甘さが原因でバカにされるのはちょっと…*22
    • フォローしておくと、本作のシナリオは制作に1年半かけており、理由もなく大きな粗を見落とすことは考えづらい。
      • 実はこのシーン、金田一が自分の意思で「状況から見て容疑者はこの○人として良いだろう」と推理を進める分には破綻していない*23。完成済みのシナリオに後からゲーム性を加えた結果、齟齬が生じたものと思われる。
  • 最後の真相究明がかなり凶悪。
    • 最大で45問にわたる選択肢を用意され、これに全問正解しなければならない。
      • 間違えてもその場でゲームオーバーにはならず、残りの選択肢も一部答え続けなければならない。このため間違えた場所が分かりづらく、ゲームオーバー後に美雪が一つずつ教えてくれるのみなので、根気よくやり直す必要がある。
    • 特に「犯人が特定できる要素の指摘」「宝の在り処の指摘」は揃いも揃って鬼畜きわまりない。
      + 以下、謎解きのヒントになり得る記述を含むため、自力で解きたい人は閲覧非推奨
    • 犯人特定の肝となる証拠は8つの中から選ぶ。総当たりで誤魔化そうとするプレイヤーを殺す気満々。
      • しかも、こちらも3日目まできちんとフラグを立てていなければ詰みが確定する代物。
    • 何より、この1/8の正解の根拠を見つけるのが恐ろしく難しい。
      • 核心に触れない程度に説明すると、ゲーム内の諸要素を隅々まで注目しなければ絶対にわからないレベルの物である。
      • 本作以前に描かれた原作エピソードでも、ほぼ数コマしか描かれていないヒントを元に犯人を断定しなければならない事件は『 首吊り学園殺人事件 』『 金田一少年の殺人 』『 墓場島殺人事件 』などが存在した。しかし今作は漫画と違って該当シーンを見返す手段が存在せず、プレイヤーの記憶だけを頼りに解かなければならない。原作の謎解きに挑んだ読者であれば、上記のエピソードで事件パートを一切読み返さずに謎を解く難しさがわかるはず。
    • その上で最後は宝の在り処に向かう必要があるのだが、場所と暗号の答えを結び付ける要素もまたゲーム序盤でちらっと出てくるのみ。
      • これに至っては選択肢が12個存在する上、セーブ地点から選択シーンに映るまでに30分近く浪費する。またしても総当たりを許さない鬼畜仕様であり、攻略情報無しでクリアできたら自慢できるレベル。

総評

記念すべき最初の『金田一』ゲーは、とても硬派でストイック。
原作を解き慣れているからと軽はずみに挑むと、とんだ大火傷をくらってしまう。
誰でも気軽に挑めるADVでは無く、メモ帳傍に腰を据えて謎解きしたい人向けのソフトである。

詰み要素や最終局面はまさに理不尽の一言に尽きるが、そんな難題を解決に導く金田一の頭脳は計り知れない。
もしかすると『星見島』とは違った形で、彼の凄さを実感できるかもしれない…。


余談

  • 2年後にWindows版が発売された。
    • 発売元はシステムソフト。講談社のデジタル版権を所持する企業との契約によりPCへの移植が許諾され、発売へと至った模様。(詳細)
  • 講談社から公式ガイドブックが発売されている。
    • しかし内部仕様などは細かく記されておらず、肝心の最後の謎解きは自力で解くように要求される。その上、3日目探索解禁以降に探偵ポイントが増減する条件や、エンディングの分岐条件などが全く記されていない。
    • あくまでガイドブックでしかなく、攻略本としての有用性は低いため、完全クリアを目指すプレイヤーはネットの攻略サイトを頼るのが吉である。
      • ただし犯人を決定づける要素と最低限の回収イベントについてはしっかりヒントを与えてくれるので、クリアを目指すだけなら全く使えないわけではない。
    • 特典として、原作者3人と宮村氏によるインタビューが収録されているのが見どころの一つ。
      • その中で樹林氏は編集者の立場からレビューを寄せている。テンポの悪さやゲームの難しさについて難があることを指摘しつつも「全体的にいい」と絶賛し、特にアニメーションで金田一が動いた事については「大満足」と評していた。
  • 本作のいつきは並々ならぬ執念で"葉月"家の謎を追っているが、後の『天草財宝伝説殺人事件』に登場する彼と関わりの深い人物も名前が"葉月"である。
    • 今作とは何の関係もないが、後者を読んでから作中のボイスシーンを聞くとちょっと不思議な気持ちになるかもしれない。
  • ゲーム終盤、現場に落ちていた証拠品の持ち主を探すシーンにおいて、原作のとある事件の真相に真っ向から反する推理を行う場面がある。熱心な原作ファンはツッコミ必至。
    • この事件は本作の発売直前に完結しており、食い違いが生じたのは全くの偶然である。
  • 劇中の歴史考証・科学考証に関する小ネタ
    + 詳細(謎解きや結末の核心を含むため、プレイ後閲覧推奨)
    • 暗号の鍵として手話が使われるシーンがある。豊臣秀吉の時代に手話があったのは不自然にも思えるが、実は手話の発祥年代は分かっておらず、当時から存在した可能性は充分ありうる。
      • ただし手話の詳細な記録は最も古くて19世紀末の物しか残っていない。文献のない時代の物が現代のそれと一致する保証は無く、暗号のヒントとしては反則気味なところもある。
    • 終盤では、永い時を経ても腐らなかった死体が登場する。劇中では特に説明が無いが、現実でも腐らない死体の事例は数多く存在し、科学的にも裏付けがなされている。(詳細)
      • この現象は滅多に起こるものでは無く、必ずしも情緒が否定されるわけではない。真犯人に呼応するかのように死体が形を留めたのは、いずれにしても大きな奇跡である。
  • 翌年の4月にアニメがスタートし、以降金田一一役は松野太紀氏、七瀬美雪役は中川亜紀子氏で定着した。
    • この当時はそんなキャスティングが固まっていない時代らしく現在から見ると一風変わって感じられる*24
    • なおアニメ放送開始以降にPSで発売された「金田一少年の事件簿 地獄遊園殺人事件」と「金田一少年の事件簿 青龍伝説殺人事件」でも、アニメ版ではなく本作と同じ声優となっている*25
最終更新:2025年01月19日 10:37

*1 実は当作より先にハドソンがニンテンドウ64で『金田一少年の事件簿』のゲーム化を予定していたが、最終的に未発売となってしまっている。当時の任天堂は発売前のニンテンドウ64を海外市場傾向の方向性を打っていた為、このニンテンドウ64版は国内初のサードパーティー製タイトルとして発表されていたので注目度は高かっただけに悔やまれる。なお、ハドソンは後にサターンで『金田一少年の事件簿 星見島 悲しみの復讐鬼』を発売した。

*2 声優は後のテレビアニメ版や本作発売直後の劇場版、本作と同年に出たCDブック版のいずれとも異なる。

*3 原作タイトルは「秘宝島」、作中の島の名称は「悲報島」で、本作のタイトルは「悲報島」である。ややこしいので注意。

*4 『金田一少年』の原作者の一人。数々のヒット作を生んだマガジン編集者・キバヤシこと樹林伸氏の別名義でもある。90年末までは金成陽三郎氏が原作者としてクレジットされていたが、天樹はその裏で初期から原作に大きくかかわっており、連載途中からは原作者の名義も変更されている。

*5 原作『秘宝島殺人事件』の登場人物。終盤で土砂崩れに巻き込まれ、原作では死亡したものと思われていた。

*6 作画担当のさとう氏は『金田一少年の殺人』の時期の画風に近いと評している(公式ガイドブックより)。

*7 この設定は原作の『秘宝島殺人事件』において1コマだけ示されていたもの。「人間が瞳の色を変える方法は存在しない」という話が出てきた矢先に描写され、「クリスがカラーコンタクトを使用して瞳の色をごまかしている」と誤認させるミスリードとなっている(その後は作中で全く触れられる事は無く、引っ掛けのためだけに用意されたシーンである)。

*8 この展開は本作発売時点ではマンネリ化しつつあったためか、今作が発売した辺りから封印されるようになった。その後は自殺を試みても何らかの形で阻止される事が多い。

*9 ゲーム上では真犯人ともども行方不明として描かれるのだが、バッドエンドでの自殺方法やその場所の構造、真犯人との関係性を考えると、全く同じ方法で絶命したことが読み取れる。

*10 あくまでミステリーの中での話で、現実の刑事事件は状況証拠だけでも容疑者とみなすには十分である。

*11 原作の準レギュラー。常にビデオカメラを持ち歩いており、映像が無ければ証拠が成立しない事件のために登場させられる事が多い。

*12 そもそも金田一は自分から名探偵を名乗っている訳ではなく、解けなかったからと言ってこんな事を言われる筋合いは全く無い。大抵は事件に巻き込まれて仕方なく推理している場合が殆どであり、本作も同様である。いつきも剣持も美雪も、謎が解けなかったからと言って責めたりするようなシーンは原作に存在せず、むしろ殺伐とした状況の中で気遣ってくれる事が殆どである。

*13 実際、本作を遊んだ原作作画担当のさとうふみや氏も公式ガイドブックの中で「原作の剣持警部だったら絶対言わない」と本作にツッコミを入れている。

*14 宮村氏の演技もあからさまにバカにしたようなもので結構キツい。ちなみに氏は公式ガイドブックのインタビューまで使用シーンを伝えられていなかったようで、同書のインタビューでは「失敗してあんな事言われたら悔しいですね」と自ら語っている。

*15 『金田一少年』を知らない人にわかりやすく説明すると、剣持警部の推理力は『名探偵コナン』における毛利小五郎と似た立ち位置にある。

*16 その前に図書室など別の部屋を先に訪ねると、美雪が金田一に合流する描写が挿入され、イベントが発生しなくなる。

*17 そもそも「絵」という表現も雑。これはゲーム内CGを指しているのだが、作中の登場人物が使う単語としては不自然であり、屋敷内に飾ってある絵画をヒントと勘違いする原因にもなる。

*18 「人物のいた部屋は鍵が開けられた形跡が無いから外には出ていない」というもの(その人物が部屋にいたのを見た者はいない)。この時点で密室トリックやら隠し通路の存在やらが出てきているのに、鍵が閉まっていただけで外に出ていないと断定するのは無理がある。

*19 目撃者がアリバイを失った後、事件発見までに描かれているのは「長くても1分程度で終わりそうな会話」→「間をおかず部屋にいた一同が外に出る」というシーンのみ。目撃者はこの間、現場の露天風呂まで数十メートルほど歩き、脱衣所で服も脱いでいる。もし目撃者が犯人であれば、その上で被害者Aを襲い、返り血を洗い落とした後、後から入ってきた被害者Bを(Aが目撃される前に)襲撃し、それを入り口の右あたりに運び、被害者Aを湯船に運んだ後、入り口に戻って発見したフリをするという行程を一瞬で済ませなければならない。

*20 別の事件では、何らかのトリックのために死体が用意された時刻を死亡推定時刻として指摘すると、「そんな早く行動できるはずがない」と言われ、例によって無能扱いされてゲームオーバーとなる。まるで一貫性が無い。

*21 その人物が証言した行動をクリスが「自分も見た」と証言した事でアリバイとして扱われるのだが、逆にクリスがその場所にいたのを見た人間はおらず、単に話を合わせた可能性もあるので、クリスにアリバイがあるとは言えない。これにより、目撃された人物のアリバイも成立しなくなる。

*22 ゲームオーバー後の美雪のヒントも「話をきちんと聞いた?」という物のみ。テキスト自体に問題があるため、きちんと読んだところで解決しない。

*23 この場合は数ある正解の一つを仮定して話を進めており、何より読者視点では「探偵役がそう言うならそうなんだろう」「読者に見えない情報も踏まえているに違いない」と受け入れた上で納得ができる。まして本編のゲームオーバーが生み出す「これ以外の答えをする奴はおかしい」などといった概念は最初から存在しない。

*24 同様の例として同時期に公開さた劇場用の単発アニメでは金田一一役は山口勝平氏になっている。

*25 一方、本作に登場しておらず地獄遊園殺人事件からの登場になった明智健悟はアニメと同じ声優になっている。