はちゃめちゃファイター
【はちゃめちゃふぁいたー】
ジャンル
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シューティング
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対応機種
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アーケード
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発売・開発元
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NMK
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稼働開始日
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1991年11月
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判定
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ゲームバランスが不安定
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ポイント
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可愛らしく楽しい世界観 (悪い意味で)はちゃめちゃな難易度 のどかですね
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概要
動物達による可愛らしい世界観が特徴の横スクロールSTG。
あらすじは「北の地方のうさぎが遊園地で悪さをするようになったので、村の代表であるかわうそとツチブタが海の幸、山の幸をもってやっつけにいく」というもの。
NMKが開発・販売の両方を自社で行った初めての作品である。
なお、本作はタイトル画面とインストカード及びポスターとでタイトルの表記ゆれが激しいため、本稿では当時の時点で一般的に多い表記であり、後述のアーケードアーカイブス公式ページでも採用された「はちゃめちゃファイター」でタイトル名を記載している。
システム
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レバー+2ボタン。各種ボタンの役割は「攻げき(ショット)」と「びっぐ」。全8ステージの周回制。
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1P側はかわうそ、2P側はツチブタを操作。性能差はないがショットのグラフィックが異なる。
ショットは「つおい」アイテムで強化する。最大で7段階目まで上がり、プレイヤーミスの場合は1段階だけ下がる。
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「びっぐ」はボンバーにあたるストック制の特殊攻撃。発動時に画面内の敵全てにダメージ+敵弾消去された後一定時間自機が巨大化して無敵状態になり、巨大化解除も少しの間無敵が続く。
巨大化している間はショットレベルが最大に固定され、体当たりでも敵にダメージを与えられる。ストックは最大で8回分。
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「びっぐ」アイテムはスコアアイテムの「ふらわあ」(後述)を5個獲得する毎に出現。出現量は他のNMK作品と同じく多め。
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プレイヤーミスをした際、「びっぐ」を3個以上ストックしていた場合はそのまま持ち越され、2個以下では3個に補充されて復帰となる。これはコンティニューした時も同様。
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「おぷしょん」アイテムを取ると、自機を追従して自機と同じショットを撃つ子機が1匹追加で装備される。初期状態で1匹装備されており、各自機最大4匹まで装備可能。プレイヤーミスをすると1匹だけ引かれる。
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コンティニュー時は専用アイテムとしてショットとオプションがフルパワーになる「すぺしゃるつおい」が出てくる。
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スコアアイテム「ふらわあ」は連続して取ると1,000点→2,000点→3,000点・・・と獲得できるスコアが増加し、最終的に1万点となる。ミスをするとまた1,000点からの育て直しとなる。
また、前述のように5個獲得する事で「びっぐ」アイテムが出現する。「びっぐ」アイテム出現に必要な残り個数についてはミスをしてもリセットされない。
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「ふらわあ」以外に各所で出現する「フルーツ」があり、回収するとスコアが得られるだけでなく、ステージクリア時にフルーツ獲得数×1万点のボーナスが得られる。
こちらも途中でミスをしても獲得数はリセットされずに維持される。
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なお、逆にステージ内のフルーツを全て無視(一切取らない)してステージクリアすると100万点の隠しボーナスが得られる。
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スコアシステム(俗に言う「点稼せ技」)として画面右端に自機を移動させてからレバーを右に入れ続ける(1フレーム毎に100点)か、最終面以外の地面があるステージでレバーを下に入れて歩くと走行点(1フレーム毎に10点)が入る。
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この2つは併用が可能。つまり、「地面があるステージにて画面右下でレバーを右下に入れっぱなしにするとモリモリ点稼ぎができる」ということである。
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最終面(8面)以外のステージ中盤で「ひとやすみ」として、敵が出現せず大量の「ふらわあ」を獲得できる休憩ポイントが存在する。
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この時出現する「ふらわあ」の数は腕前に応じて難易度が変動する「難易度自動調整機能」(いわゆるランクシステム)に依存しており、ランクが高い状態ほど多く出現する(最大8個)。
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原則的に画面上の敵弾とザコ敵は「ひとやすみ」に入ったと同時に消滅するが、6面の「猿が乗ってる汽車」のみ消えずに残り、触れると当然ミスになるので注意。
評価点
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可愛らしさ全開の世界観
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登場するキャラは全て可愛らしくデフォルメされた動物達で、STGでも珍しい独特のほのぼのとした雰囲気を醸し出している。
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自機であるかわうそとツチブタはレシプロ機に乗って戦うのだが、機体下部から足が出ており、飛行中はその足をブラブラと揺らしている。
地面のあるステージでは地面に自機を近づけると足で歩くモーションに切り替わったりと芸が細かい。
また、レシプロ機に乗り込み助走をつけて飛び立つ様子はゲーム開始時のデモで描かれており必見。
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アイテムやハイスコア、インサートコイン等の画面上の表記、スタッフロールの役職名も全てひらがなで表現されており、いい意味でゆるい。
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質の高いグラフィック
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グラフィックに定評のあるNMKらしく今回も高品質。きめ細かく書き込まれている絵柄ではないが、代わりにキャラのアニメーションが滑らかで見ているだけでも楽しめる。
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上記の歩きモーションだけでなく、「びっぐ」使用時は単に自機をそのまま拡大するのはでなく専用のグラフィックを用意している、ミスすると装備していたオプションが落下していく演出があり、地面があるステージでは着地後に一目散に走りながら退場していく、海上のステージでは派手に水しぶきを上げる等、作り込みが細かい。
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かわいい見た目で滑らかなアニメという方向性は、キャラデザインを本作と同じ人が担当した同社のACT『サボテンボンバーズ』でも受け継がれている。
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楽しいBGM
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作曲は元ミュージシャンで当時NMKに所属していたぱぱさん(H,水嶋)氏。FM音色の製作をHIDE-KAZ(秀谷和則)氏が担当。
軽快で楽しげな曲が多く、本作のキャッチーな雰囲気にマッチしている。
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移植版と共に長らくサントラが発売されていなかったが、2018年に『サボテンボンバーズ』『ラピッドヒーロー』とのオムニバス収録で初のサントラが発売された。
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シンプルなシステム
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武器選択等といった複雑なシステムはなく、やることは基本的に「アイテムを取りつつ撃って避けて倒す」だけとシンプル。そのため、初心者にも取っ付き易い。
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ミス後のパワーダウンはショットとオプションのレベルが1段階下がるだけでその場で復帰となる。
当時は問答無用で初期装備に戻されて復帰が困難という作品も多かったため、この点はかなり良心的といえる。
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「びっぐ」のストックの仕様も同じく良心的。「ボンバーを多く溜めた状態でミスをしてしまい大量ロストしてしまう」といういわゆる「抱え落ち」が存在しない点はプレイヤーの精神にとても優しい。
ほぼ同じボンバーのストック仕様を採用していた『USAAFムスタング』ではミス後もストックが回復しなかったが、本作では「2個以下でミスした場合は3個まで補充」されるように改良され、遠慮なく使えるように配慮されている。
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全編通して触れるとミスになる地形ギミックはある一カ所を除き存在しない。思う存分敵の撃破や弾避けに専念できる。
唯一の例外がラスボス戦だが、自分から故意にぶつかりに行かない限りは当たることのない配置であり、その地形が原因でミスになることはほぼないだろう。
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一方上級者にも画面右端&地面歩きによる走行点、フルーツ0隠しボーナスとやりがいのあるスコアシステムを完備。
何も考えずに右端へ張り付くとあっという間にやられてしまうのがオチなので、よく考えて張り付く必要があり、非常にスリリング。
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本作のランキングには上位トップ10だけでなく下位ワースト10の項目もある。この仕様は珍しい。
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もっとも、実際に初心者を取り込めたかというとかなり怪しいのだが…。(問題点へ)
問題点
可愛らしさを微塵も感じさせない超難易度
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本作最大の問題点。NMKの作品は大味な調整で高難易度な作品が見られるが、その中でも特に酷い作品の1つとされている。
1面は流石に攻撃が緩やかで遊ばせてくれる難易度だが、いざノーミスで2面へ到達すると自機狙い3way等が高速で飛び交う地獄絵図と化す。
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上記の通り「難易度自動調整機能」が搭載されている本作だが、ランクの変動条件がノーミス生存時間(タイマーランク)のみであり、意図的にパワーアップを抑える、スコア稼ぎを控えるといったランク上昇を抑える為によく取られる行動は無意味。その上ノーミス状態を一定時間維持すると急激に上昇してしまう。
一応ミスすると実感できるレベルでランクが下がるのだが、すぐに元のランクに戻ってしまうので気休め程度にしかならない。更にエクステンド回数が少ない(後述)ため「ミスをしてランクを落とす」方法は使えない…とどう足掻いても高ランク状態が避けられない恐ろしいバランス調整である。
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序盤面でこんな調子なのだが、先の面では当然難易度が更に上昇していき、ランク云々を抜きにしても厳しい場面も散見されるようになる。本作で最難関とされるのは6面。
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序盤の破壊すると撃ち返し弾を発生する毬栗と大量のキツネザルが現れる森地帯は「敵弾が速く多い、キツネザルの耐久値が高く終始押される、敵との距離が近い」と苦しい要素だらけで、命からがら6面に到達したプレイヤーに容赦ない洗礼を浴びせてくる。
そこを抜けても、後半の強化されたモグラ戦車と生み出す子機から大量の弾をまき散らすイノシシのコンビネーションやただでさえ強いのに更に強化されたボスのアルマジロと「びっぐ」なしでは突破困難な難所は続き、上級者でもここまでに溜めた「びっぐ」でゴリ押しをしなければとても生き残れない凶悪なステージとなっている。ボンバーゴリ押しで難所突破はNMKではいつものことではあるが。
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次の7面は6面ほどではないが、破壊すると分裂するザコからの猛攻や自機狙い5wayを撃つザコの存在等やはり難しいステージである。
一方最終面は道中が短い上に「びっぐ」を大量に補給できるためそれまでと比べると明らかに楽。ラスボスも道中で溜まった「びっぐ」でゴリ押しできてしまうだけでなく、ボスの攻撃がほぼ飛んでこない安全な場所もある(ただしその場所に行くには「びっぐ」が1個必要)ため、ここまでノーコンティニューで到達できる腕がある人にはほぼウイニングラン同然とどこかアンバランスな調整である。
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横スクロールにもかかわらず自機の外見が縦に長い。念のために言うと
下半身(足の部分)には当たり判定はないが、機体と上半身の部分はほぼ見た目そのままの当たり判定。
更に敵弾も大きく、前述の当たり判定の仕様が絡んでいるためか、ただでさえ攻撃が激しいのに余計に避けづらい。弾速も速いため状況次第では弾を撃たれた時点でミスが確定という事も起こりうる。
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自機の移動速度も遅いため、自機狙い弾の誘導が難しく切り返しする時はかなりの神経を使う。
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中型機以上の敵の耐久が高く、物量で攻めてくる場面ではフルパワー状態であっても押される事が多い。
当然ながら外部連射装置がない環境では、指への負担が激しい。
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エクステンドはスコアエクステンドがあるものの、100万点と7777万7770点の2回のみ。7777万7770点は高次周に挑める超上級者でなければ届かないため、事実上1回のエクステンドのみで攻略しなければならない。
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キャッチーな見た目で上記の地獄の難易度のため『パロディウス』シリーズと並んで「見た目と難易度のギャップが激しすぎるゲーム」として知られることに。
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苦労して全ステージをクリアすると…ネタバレ注意。
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敵側が降参の白旗を上げて、その後自機が着陸、帰還するデモが流れる中「おめでとう!あんたは えらい!」と褒められる。ここまではいいのだが、
スタッフロールが終わった後「のどかですね でも つづきます」と表示されて次の周回が始まる。 ここまでに「のどか」とは程遠い光景を目のあたりにすることもあって、色々とツッコミを入れたくなる事必至の演出である。
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ちなみに2周目以降はランク周りは1周目と変わらないものの一部のザコ敵やボスの耐久値が大幅に上昇する。外部連射装置を使っても敵を倒しきれずに押されまくる有様で、迂闊に攻撃せず避けに避けてから「びっぐ」で凌いだり、ボスで自爆まで耐えるパターンを取らざるを得なくなる程。
本作のスコアは9999万9999点でカウンターストップになるが、初のスコアカンスト達成が報告されたのが稼働から12年後ということからもその壮絶さを物語っている。
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人によっては単調さを感じるゲーム展開
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凝ったステージギミック等によるゲーム展開の変化が少ないため、人によっては悪い意味で単調さを感じてしまうところも。
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滑らかなアニメーションの代償か、登場するザコ敵の種類が全体的に少なめであること。後半面のボスはラスボスを除いていずれも前半面ボスの強化版であるのだが、その強化の方法がザコが乱入したり単に弾数を増やしただけで新たな攻撃方法が設けられていない事も単調さを後押ししている感が否めない。
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一部きつい点滅演出がある
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「びっぐ」発動時や5面の背景で激しく白黒点滅する演出があり、目に優しくない。
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上記のゲームバランスの関係上「びっぐ」を多用することになるので、尚厳しい。
総評
まさに「かわいいは正義」を体現した世界観。
動物達による可愛い仕草や光景の数々はシューティングなのに癒されるという中々珍しい体験を味わえる。
可愛い世界観だけでなくシンプルなシステム、ミス後のパワーダウンが控え目、親切な「びっぐ」のストック仕様と初心者を取り込む下地は十分。
しかし、その初心者どころか上級者すら振り落としかねないはちゃめちゃな難易度調整が台無しにしてしまった。
その場復帰かつ上記「びっぐ」のストック仕様と専用アイテムで復帰が容易のため、コンティニューを重ねればクリア可能…とはいえ少々やりすぎてしまった感は否めない。
せめて1周目の難易度調整がまともであれば良作になれるポテンシャルはあっただけに、非常に惜しい作品である。
現在は移植版が出ているため、興味が持った方はゲームバランスの悪さは一旦目をつぶってコンティニューをしてでも可愛い世界観を存分に味わってもらいたい。
移植
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アーケードアーカイブス(ハムスター)PlayStation 4、Switch版(2021年6月3日配信)
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稼働開始30年目で念願の初移植。日本語版のほか、英語版も収録。表現規制により上記のフラッシュ演出がマイルドになっている。
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恒例のキャラバンモードでは「1面開始」だけでなく「6面開始」も実装されており、上記の地獄っぷりが気軽に味わえる。
余談
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このような高難易度にもかかわらず業者向けカタログには「
誰
でも遊べる親切設計が盛り沢山」と書かれており、本作をよく知るプレイヤーからよく突っ込まれる。
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一応ミス後のフォローが手厚くコンティニューを重ねれば「誰でも」クリアできるのである意味間違いではないのだが…。
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NMKの過去作品のパロディ要素が含まれている。
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具体的には1面が『P-47』の2面のセルフパロディ、2面が『USAAFムスタング』2面のセルフパロディ、干しているパンツや爆弾攻撃が『ぶたさん』を彷彿とさせる1面&7面ボスなど。
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冒頭でも触れた通りNMK作品で初めて開発と販売の両方を自社で行った本作だが、元々はUPLから販売される予定だった。
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UPLとNMKの両社併記の形でリリースされるはずだったが、稼働直前になってUPLからの販売が取り止めとなり、NMK単独でのリリースとなった経緯を経ている。
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タイトルロゴがゲーム内やインストカードでは英語表記のため、「はちゃめちゃ」の日本語表記がひらがなとカタカナどちらが正しいのかはっきりとしない状況が長らく続いていた。
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2017年にハムスターがNMK作品の全権利を取得した際、その記事に「はちゃめちゃファイター」と書かれており、正式な日本語表記が判明した。
最終更新:2024年03月03日 22:37