USAAF MUSTANG
【ゆーえすえーえーえふ むすたんぐ】
ジャンル
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横スクロールシューティング
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対応機種
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アーケード
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発売元
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UPL
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開発元
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NMK
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稼働年
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1990年
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プレイ人数
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1~2人
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移植版
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『ファイアームスタング』 【MD】1991年5月31日
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配信
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アーケードアーカイブス 【PS4】2021年9月2日/837円(税10%込) 【Switch】2021年9月2日/838円(税10%込)
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判定
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なし
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概要
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NMK開発、UPL発売の第二次世界大戦を舞台とする横スクロールシューティング。プレイヤーはUSAAF(アメリカ陸軍航空軍)のパイロットとなりP-51ムスタング戦闘機を操縦し、枢軸国のドイツ・日本軍を相手に戦うという内容。全8ステージのループ制。
ストーリー
第二次大戦中…当初おされ気味だったアメリカ軍は、世界最強の戦闘機を作りあげた。その名は、P-51Dファイアームスタング。
君は、アメリカ空軍のエースパイロットとして指令により世界各地に飛び、ファイアームスタングでドイツ軍と日本軍の侵攻を防ぎ、叩きつぶすのだ!!
(MD版説明書より)
システム
操作・アイテム等
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操作は1レバー2ボタン式。レバーで8方向移動、Aボタン連打でショット・爆弾、Bボタンでストライクフォーサー(いわゆるボム)を発動。後述のアイテムを獲得することでパワーアップや残弾の追加ができる。
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メインショットは最初は正面のみ攻撃可能だが、強化することで斜め上と斜め下を攻撃可能な3WAYショットになる。最高段階は3、ミスをすると初期状態に戻る。
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爆弾は初期状態から使用可能。ショットの発射と共に前方に投下され、着弾した際の爆風で敵を攻撃する。また「画面内に存在する爆弾が規定数を下回ったら次の爆弾が投下される」という仕様上、耐久力の高い敵に接近して撃ち込むことで爆弾投下の効率が跳ね上がり、ショットレベルが高ければ短時間でボスを撃破することも可能。
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ストライクフォーサーは発動と同時に画面中の敵弾を消滅させ、さらに画面内の敵全てにダメージを与える。これに加えて発動から暫くの間自機は無敵状態になるため、ボスに重なり撃ち込みを行うことで大ダメージを与えたり、敵機によって画面端に追い込まれた際の脱出手段になったりと攻守両面で重宝する。ゲーム開始時に3発分支給され、最大8発までストック可能。ミスした際は直前に所持していた数が引き継がれる。
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アイテムは特定の敵を撃破すると出現する。種類は爆弾(メインショットの強化および爆弾の投下数増加)、機銃(ストライクフォーサーのストックを1つ追加)、飛行機(残機を1つ追加)の3種類。ショットレベルやストライクフォーサーのストックが最大の状態でアイテムを獲得すると1万点のボーナス。なお、エクステンドアイテムは1周目の偶数ステージでのみ出現する。
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敵機や敵弾に接触するとミスとなり、残機が全て無くなるとゲームオーバー。
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ミスとなった際は自機が炎上しながら墜落していき、地面や海面に激突して爆発する。このとき機体の破片が付近に飛散するのだが、これにも攻撃判定があり敵に当たるとダメージを与えられる。なお、ミスによる墜落以外で機体が地表に接触することはないためレバーを下に入力し続けても問題ないが、地上の敵と接触するとミスになるため注意が必要。
進行
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ステージは全部で8つあり、ノルマンディー→トラック島→サイパン→アルジェリア→ビルマ→アルプス→大和→ベルリン、の順で枢軸国の軍隊と戦う。ベルリンステージを攻略するとノルマンディーステージに戻り以降ループする。ステージ開始前には地図が表示され、舞台となる場所と敵の勢力下にあることを示す国旗が描かれており、ステージをクリアすると以降のステージではこの国旗が星条旗に変わる。
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敵機として登場する機体はBf109やMe262、零戦や一式陸攻といった史実で活躍した機体だけでなく、Do335プファイルや震電のように実戦投入されなかった機体も存在する。中盤以降のドイツ戦線ではこの流れに拍車がかかり、Ba349ナッターやBv141、Ho229といった航空機が大量に出現する他、アルジェリアでは多砲塔戦車、アルプスでは超重戦車マウスと戦うことになる。
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これに劣らず本作の日本軍も意外な兵器をボスとして戦線投入しており、トラック島の潜水艦はともかく、ビルマではMe264長距離爆撃機が、そしてサイパンではどういうわけかランカスター重爆撃機が登場する。Me264に関しては同盟の誼でドイツから供与されたとも考えられるが、太平洋戦線に投入されなかったイギリスのランカスターをどうやって入手したのだろう…。
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ステージ7は沖縄近海を航行する戦艦大和と一騎討ちを行う、いわば1ステージを丸ごと利用したボス戦である。主砲よりも副砲による攻撃をいかに乗り越えるかが攻略のカギになる。
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艱難辛苦の果てに到達できる最後のベルリンステージだが、後述の理由でかなりの高難度となっている。
評価点
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自機の性能にクセが少ない
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レベルアップで3WAYになるメインショットに加え初期状態から使用できる爆弾、エフェクトの見かけによらず画面全体を攻撃するストライクフォーサー、と攻撃範囲はかなり広い。さらに最高レベルまで必要なアイテムが2つと少なめなことに加え、アイテムは割と頻繁に出現するためショットレベルの持ち直しは比較的簡単。
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初期状態のショットでは正面しか攻撃できないが、ある程度高度を保って立ち回ることで爆弾が自機より低高度にいる敵への対抗手段となる。さらにショットと爆弾を敵に接近して撃ち込んだ際のダメージがかなり高く、火力も申し分ないものとなっている。
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ストライクフォーサーは攻撃範囲・即効性・持続性いずれの面にも優れ、緊急回避のみならず敵に重なり撃ち込みを行う際にも利用できるため、攻守の要として大いに重宝する。
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精緻なグラフィック
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自機や敵は勿論、背景や地形、爆風に至るまでかなり細かく描かれている。
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トラック島では爆弾を海に投下すると水柱が上がるようになっており、そのアニメーションもかなり滑らかに動く。
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背景に関してはノルマンディーやビルマの木々、アルプス山脈等、後半面では眺めるのは中々難しいが非常に細かく描写されている。
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サイパンステージでは地形のスクロールが無い代わりに、途中で夜が明けて空が青くなるという演出が入る。やや暗めのメロディーで始まる音楽と合わせていた前半の夜空、音楽が盛り上がってきた辺りで一気に明るくなる後半の青空、と音楽と合わせた 見事な演出となっている。
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但し、後述するように一部のステージではこの背景が悩みの種ともなるのだが…。
賛否両論点
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ストライクフォーサーの残弾数
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先述の通り、ストライクフォーサーはミスをしても残弾数に変化は無い。良く言えば「抱え落ちの心配が無い」ということなのだが、言い換えれば「ミスをする直前でストライクフォーサーを撃ち尽くしてしまうと、アイテムを獲得するまで初期状態かつ緊急回避手段の無い状態で戦わねばならない」ということである。特に中盤以降は敵の攻撃が激しくなるだけでなく広い範囲から敵が出現するようになるため、初期状態だとあっという間に画面中が敵だらけになり、ストライクフォーサーを使用できないとそのまま押し負けてしまう。
問題点
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敵弾が見えにくい
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恐らく本作最大の問題点。本作の敵弾は白黒に明滅するものなのだが、これがかなり見えにくく、気がついたら被弾していたという事態が多くある。被弾前にストライクフォーサーを発動しようにも、気づく前にやられてしまってはどうしようもない。
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さらにまずいことに、この敵弾は背景によってさらに視認性が下がることがある。人によると思われるがサイパンステージ後半、アルジェリアステージ、アルプスステージのように背景が白っぽい場所だと普段以上に見えにくくなる。
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通常の敵弾のほか、主に対空砲から放たれるロケット弾もあるのだが、こちらも白っぽい見た目であり背景によっては見えにくくなることがある。
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初見殺しが多い
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敵が自機後方及びその付近から出現することが多々あるのだが、出現前に何かしら警告が出るわけではないため敵の出現パターンを知らないと突然出現した敵機と接触しミスになる、という理不尽に見舞われる。
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特に厄介なのはMe264で、突然急降下して出現することに加え出現場所が自機が位置していることの多い画面左側であるため、見えてから回避に移るまでに許される時間がかなり短い。その上ビルマステージではこの急降下を回避した少し後に自機の後方から新手が出現するため、敵を回避したと思い油断していると新手の方に接触するという事故が起きることがある。
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ミスからの復帰が難しい
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ショットレベルは最高3でありアイテムの出現頻度も比較的高いため自機状態の復旧にはあまり手間がかからないのだが、中盤以降敵の増加・攻撃の激化が進むとそもそもアイテムを獲得するまで生存することが難しくなる。この傾向はアルジェリアステージ以降顕著になり、場所にもよるが一度ミスをすると立て直しがきかずそのままゲームオーバーになりやすい。
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大和との戦いでは艦橋付近の副砲にショットが当てにくく爆弾が主な攻撃手段となるため、初期状態に戻されると中々ダメージが通らず長時間激しい対空砲火にさらされる。一応ストライクフォーサー数発でこれらの副砲をまとめて破壊できるため、時間はかかるが安全に倒すことも可能。
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高難度のベルリンステージ
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最後のベルリンステージではこれまで登場した戦車・航空機系のボスたちと連戦を行うのだが、どのボスがいつ出現するかはランダムとなっている。しかも今までのように1対1で戦うのではなく、戦っている途中で新たなボスが出現するというまさかの複数のボスを同時に相手取る形式である。一度出現したボスも複数回出現する作中一番の長丁場である上に、Me323ギガントやランカスターのように画面内を大きく動き回るボスが出現すると、動ける範囲が大きく制限されるためストライクフォーサーに頼らざるを得ない場面が多くなる。先の大和との戦いでストライクフォーサーを消費し残弾が少なくなっていると、ここぞという場面で弾切れに陥っているということも。
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当然ながら先述したMe264もこちらに出現する。ただでさえ狭い中で回避もままならないというのに、左上付近はいつ敵が出現するかわからない危険地帯という移動範囲にさらなる制限をかけてくる厄介さが際立つ。
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スコア関係のバグ
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1P側でプレイすると多砲塔戦車を撃破した際のスコアが加算されない。これはベルリンステージに出現するものを撃破した際も同様。本作はループ制のため残機の続く限りスコアを稼ぎ続けられるとはいえ、スコアアタックの際は2P側が有利になる。
総評
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システムのシンプルさ故複雑な操作を覚える必要がなく、「撃って避ける」というシューティングの基本部分をそのまま味わう、といったような作品。メインショットや必殺のストライクフォーサーによる沢山の敵をまとめて倒す爽快感もあるのだが、惜しいことに敵弾の見えにくさと中盤以降の難易度の高さから誰にでも薦められる作品とまでは言えず、また堅実で奇を衒わない作風は悪く言えば地味ということであり、難易度の高さによるとっつきにくさと相まってあまり目立たない作品となってしまった。
移植
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メガドライブ版:1991年5月31日タイトーより発売
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タイトルが『FIRE MUSTANG』に改題されているほか、内容もAC版から大きく変更されている。
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自機性能はそのままだが、「一人プレイ専用でコンティニューは2回まで」、「ゲーム開始時のオープニングが削除」、「ステージ開始時に地図と共に作戦概要が表示」、「一部航空機系および全ての戦車・艦船系のボスが差し替えられ航空機系で統一」、「アルジェリアステージ以降の道中BGMの変更」、「ベルリンステージの削除、大和との一騎討ちがG5N深山との決戦に差し替え」、「全7ステージ攻略でゲームクリアとなりエンディング」といった変更がされている。
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他にもAC版の問題点だった敵弾は全て赤橙色の丸弾に統一されたが、今度は自機のショットと色味が近くなっており、特に敵の攻撃が激化する中盤からは見間違いのないよう更なる集中力が求められるようになる。
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PS4・Switch版:2021年9月2日ハムスターより配信
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アーケードアーカイブスの1タイトルとしてAC版が配信されている。
余談
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ゲーム開始時のオープニングで味方のB-17フライングフォートレス3機が敵の攻撃を受け撃墜されてしまうのだが、実行したのは最初のボスであるギガント。詳しい人ならご存じの通り、ギガントは輸送機である。後年の作品でも爆撃機として登場したり、撃墜すると積載していたらしい謎のロボットが出撃したり、といったことがあったが、本作でもそれらに先駆けて輸送機とは思えない戦果を挙げているあたり、制作側もただ第二次大戦を舞台にするだけで終わらせるつもりはなかったのかもしれない。
最終更新:2024年03月03日 23:10