シリアルクリーナー ジョージの裏シゴト
【しりあるくりーなー じょーじのうらしごと】
ジャンル
|
アクションパズル、ストラテジー
|
|
対応機種
|
Nintendo Switch
|
発売元
|
テヨンジャパン
|
開発元
|
iFun4All(現:Draw Distance)
|
発売日
|
2018年6月28日
|
定価
|
1,000 円
|
プレイ人数
|
1人
|
レーティング
|
CERO:D (17歳以上)
|
判定
|
なし
|
ポイント
|
サクサク遊べるステルスアクション ライトなインディゲーと思いきや意外にやりこめる隠れた佳作
|
概要
-
元はWindows/XboxOne/PS4でDL販売されている『Serial Cleaner』のSwitch版。
ストーリー
ジョージは金に困っていた。
年老いた母親の面倒を見なきゃいけないし、悪友との賭けポーカーの負債も積み重なる一方だ。
そこでジョージは裏の仕事、すなわち、殺人現場から誰にも気づかれずに証拠を消し去る「清掃業」を始めた。
殺人事件の多発する1970年代のアメリカ。ジョージの仕事によって現場から遺体・血痕・証拠品が姿を消し、警察の捜査は難航していた。
そんなある時、彼の噂を聞きつけた新たな依頼人から電話が入る。
軽い気持ちで引き受けるジョージだったが、彼には知る由もなかった。それが、世間を騒がせる連続猟奇殺人事件の始まりであることなど……
特徴
-
ステージクリア制の見下ろし型2Dパズルアクション。
-
ジョージの目的(クリア条件)は「現場にあるすべての死体を運んで処理する」「すべての証拠品を回収する」「血痕を一定割合以上拭き取る」「前述の3点を達成後、脱出ポイントに到達する」こと。
-
ステージによって死体と証拠品の数や、消す必要のある血痕の量が異なる。また、いずれかの条件が存在しないこともある。
-
現場には警官がうろついている。警官には視野の概念があり、常に色づけられた扇状の視野が表示されている。
-
この視野内に入るとジョージを軽く凌駕するスピードで追いかけてきて、触れられるとミス→ステージ最初からやりなおしとなる。
-
マップ内にはゴミ箱、ロッカー、観葉植物など姿を隠せる箇所が幾つかあり、警官の目をやり過ごすことができる。
-
なんと警官の目の前で隠れても有効。発見されて追いかけられることにペナルティはないため、隠れ場所が見えているならあえて飛び出すのも有効なテクニック。
-
死体はマップ内に1~2個用意された廃棄ポイントまで運ぶ必要がある。廃棄ポイントとなるのは「ジョージの車の荷台」「獰猛な魚のいる水槽」「肉のミンチ機」などステージによってさまざま。
-
他、ギミックとして「音を鳴らして警官を引き付けるオブジェクト」や「一定レーン上を動かせる壁」、「マップ内の2点間を瞬時に移動するショートカットポイント」があり、そうした仕掛けを駆使しながら仕事をこなしていく。
-
アートコンセプトは色数と丸みを抑え直線を活かしたモダンアートのような風合い。フォトショップなどにおける「カットアウト」フィルターに近いかもしれない。
-
そのためマップや各キャラクターはかなりデフォルメが効いており、死体だらけの凄惨な現場ながらそれほどショッキングな絵面ではない。グロが苦手なプレイヤーでも(もちろん苦手の程度によるが)大きな問題はないと思われる。
評価点
-
快適なリプレイ性
-
本作の難度は意外に高く、ミスが多発する。その度にリスタートとなり、死体も証拠品もイチから集め直しとなってしまうのだが、そのミスからリスタートして操作可能になるまでが1秒程度と極短である。
-
演出もその場で「捕まった!」とフキダシが出るのみであり、モチベーションを奪うようなジングルやおかしな間はいっさい無し。
-
ステルスゲーという性質上どうしても敵の振り向きを待つ無操作時間が発生するため、リトライにはストレスがつきものとなるが、この仕様のおかげでそれが最小限まで抑えられている。
-
更にリトライの度に、死体、証拠品、血痕、隠れ場所の位置がランダムで変わるというおまけつき。といってもせいぜい2~3パターンのわずかな差でしかないのだが、突然戦術の変更を迫られるためちょっとしたメリハリになっている。
-
「敵を倒せない」という王道のスリル
-
ジョージの仕事は「証拠を消し去る」以上のものではないため、警官に対する攻撃手段がいっさいない。このため、最後に脱出ポイントに到達するまで緊張感を保つことができる。
-
動く壁を使って警官を閉じ込められる(無力化できる)ステージも存在するが、ごく一部であり、また、閉じ込めること自体にある程度の戦略性を要するようになっている(ギミックを用いたり、わざと発見させたりして誘き出すなど)。
-
シリアスな裏稼業を彩るシブいBGM
-
全体的にBGMはブルース調の落ち着いた雰囲気で、ジョージの業務内容に合致したものとなっている。
-
ストーリーの展開に応じて不穏な調子の曲も出てくるようになりつつ、ラストステージでは一転爽やかで勢いのあるギターサウンドと、巧みに盛り上げてきてくれる。
-
母親思いなジョージのキャラクター
-
ステージ開始時と終了時にはジョージの母親との短い会話が発生する。そこでのジョージはごく普通の「母親思いの好青年」であり、仕事のことは勿論、経済的にも母親の負担にならないよう気を遣う様子が見てとれる。
-
ジョージというキャラクターの掘り下げにもなっている一方、「裏世界の人間の日常」を見せることによる雰囲気の緩急付けの効果をもたらしている。
-
意外なボリュームの多さ
-
メインストーリーは全20ステージで、難度は少々高いものの3~4時間あればクリアできる程度である。
-
しかしマップ中には証拠品以外に隠しアイテムが仕込まれており、取得によって着せ替え衣装や追加ステージが開放される。追加ステージは当然難関ばかりであり、しっかりやりこみ要素となっている。
-
また、クリア済みステージに追加ルールを設けてプレイするチャレンジモードがある。例えばタイムアタック、警官の視野非表示、見つかっただけでアウトといった定番メニューのほか、エンドレスで死体が湧いてくるモード、画面が酔っ払い仕様になるものなど。ステージ使いまわしとはいえなかなかの大盤振る舞いといえる。
-
加えて、本ゲームはアクションパズルとしては珍しく本体時間を参照しており、夜間にプレイすると各ステージも夜仕様になる。
-
夜になるとマップは全体的に薄暗くなり、一部がスポットライト照明で照らされるため、やや難度が高くなる。なんだそのこだわりは、と思わずにいられない。
賛否両論点
-
とにかく性能のいい敵
-
本作の敵キャラ(警官)は2Dステルスゲームとしては比較的目が良く、画面横幅の半分ほどまで到達する視界を持っている。更に視野が扇状であるため、曲がり角などでは思った以上に奥まで捉えてくる。
-
また、警官同士の巡回ルートが近く、視野同士が重複する場面も多い。そのため一方の警官だけを気にかけていると思わぬところで発見されることがしばしばある。
-
足も異常に速く、ジョージのスピードで振り切ることは不可能。見つかったら最後、2秒先に隠れ場所がなければミスすると思った方が良い。
-
と、以上のようなイヤらしい仕様を持ち合わせたうえで、「通常時の移動速度からして速い」「一か所で停止している時間が短い」「ランダムなルートで巡回する奴がいる」という次第。当然そこまで含めたうえでのゲームバランスなのだが、単純なゲームと思いきや予想以上にリトライを強いられることになる。
-
「死んで覚える」前提のつくり
-
主人公の基本操作こそゲーム中に教えてくれるものの、警官の性質についてはいっさい説明がなく、実際にピンチに陥ってみないとわからないことが多い。
-
例えば序盤こそシンプルなルート巡回しかしないが、ステージの進行に連れ「自分自身はジョージを追いかけないが笛を吹いて周囲の警官を呼び集める」「拳銃を持っておりジョージを発見次第即射殺してくる(逃げる間もなくミス扱い)」といったバリエーション警官が登場する。これらの性質は外見ごとに決まっているものの、初見時は見つかってみるまでその行動パターンを知る術がない。
問題点
-
ロード時の開始地点が若干面倒
-
本作はステージごとのオートセーブ制なのだが、ゲームをロードすると「前ステージをクリアした後の挿話」から再開される。
-
ステージ間は「①クリア→②クリア後挿話→③ステージ前挿話→④ステージ名表示→⑤ステージ開始」といった進行となっているのに②から始まるため、正直まどろっこしい。
-
敵の視野が見づらい一部ステージ
-
各敵の視野はオレンジ色で示されるが、ごく一部、地形が同系色のステージがあり、かなり視認しづらい。
-
前述の通り警官の視野は広め、且つ複数が重なることもあるため、「視野が見えている」こと前提のゲームデザインである(何なら前述の通り「視野オフ」がチャレンジモード扱いである)。それが見えないせいでミスに繋がるのは少々アンフェアな気分になるかもしれない。
-
夜モードがプレイしにくい
-
評価点でも触れた通り、リアルタイム制自体は面白い試みなのだが、なぜか台詞のフキダシまでもがマップにあわせて暗くなるため文字が読みにくくなる。
-
オプションで「リアルタイム」項目をオフにすれば常に昼になるため、まずは変更をおすすめしたい。
-
「隠れる」が効かない時がある
-
前述の隠れ場所には隣接してAボタンを押すことで隠れられるのだが、これが警官に捕まる直前だと効かないことが多い。あと一歩どころか既に隠れ場所に到達しているのにも拘らずミスとなってしまい、「いまA押したじゃん!」となることもしばしば。
-
それならと反対にAを連射していると、隠れた瞬間に飛び出してしまい捕まってしまう。
-
もう少々判定が甘くてもよかったのでは、とも思うが、或いは「見つかること」自体にペナルティが存在しないためのバランス調整なのかもしれない。
-
やや多めな誤字脱字
-
ジョージと母親の掛け合いも雰囲気の一端を担っている本作だが、多すぎるとまでは言わないものの、日本人ならすぐ気づくレベルの誤字脱字が見られる。
-
といっても凡百のローカライズゲームと比べれば十分読解に問題はなく、何よりシリアスなムードは押さえているし、キャラクターのブレもほぼない。ゲームの評価を落とすほどではないが「惜しい」ポイントである。
総評
基本的には値段相応の小品ではあるが、「敵から隠れてコトを成せ!」というシンプルかつ緊張感のあるルールに、アーティスティックな見た目と場面に合ったBGMが用意された佳作。
サクっと遊び始められて気づけばハマる、ゲームのキモをしっかり押さえた作品といえよう。
その後の展開
-
2020年6月14日のオンラインオベント「Future Games Show 2020」にて続編となる『Sereal Cleaners』を2021年内に発売することが発表された。現時点でのリリース予定となるプラットフォームはWindows(Steam、Epic Games Store、GOG)/XBOX One/PS4/Switch。
最終更新:2021年07月12日 15:10