本記事は3DOソフト『ぼのぐらし』と、その完全版にあたるPS版『ぼのぐらし これで完璧でぃす』を扱います。
両者はゲーム性が大きく異なるためご注意ください。
【ぼのぐらし】
| ジャンル | おつきあいシミュレーション | ![]() |
| 対応機種 | 3DO Interactive Multiplayer | |
| 発売・開発元 |
アミューズ バンダイビジュアル |
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| 発売日 |
1995年4月21日 |
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| 定価 | 7,800円 | |
| プレイ人数 | 1人 | |
| レーティング | 3DO用審査:E 一般向 | |
| 判定 | クソゲー | |
| ポイント |
『どうぶつの森』を先取りした疑似交流ツール 雰囲気ゲーとしては光る部分あり テンポが悪すぎて最後まで遊ぶのは苦行 行動を見誤ると最悪詰む 連載初期のマイナーキャラがまさかのラスボス候補 |
竹書房漫画誌の長寿作品『ぼのぼの』のキャラゲー。
作者のいがらし氏は同作のメディアミックスに積極的で、PC98向けの会話ツールを手掛けたり、アニメ映画の製作にも深く関わったりと、アグレッシブに活動していた。
今作もまた、いがらし氏が企画・監修を務めたソフトであり、上述の会話ツールをさらに発展させた「おつきあいシミュレーション」として送り出されている。
発売はTVアニメ1話放送(1995年4月20日)の翌日で、当時のアニメ作品は他に映画版1作目のみだった。
発売元のバンダイビジュアル・アミューズは社員数名が映画版の製作に参加した縁があり、(*1)、このゲームのオープニングにも映画版メインテーマが採用されている。
なお声優陣は今作オリジナルのキャストで構成されており、映画版やTVアニメ版の声優は採用されていない(ただし例外的にスナドリネコさんのみTVアニメ版と同じ)。
ゲーム内容は単行本10巻までの収録話に準拠しており、原作を読んでから遊ぶ場合はその辺りまでを読んでおけば問題ない(*2)。
「原作者監修企画」といえば聞こえは良く(*3)、アニメ化効果も相まってそれなりの購入者がいたのだが、その評判は決して悦ばしいものではなく……
| + | クリックで表示(ネタバレ注意) |
| + | 多少のネタバレ注意 |
部分的に改善されたものも含めて記述。
| + | ネタバレ注意 |
| + | 詳しい仕様に踏み込んだ解説(攻略のネタバレ注意) |
| + | ネタバレ注意 |
『ぼのぼの』の世界観を活かし、コミュニケーションに重きを置いた今作には、独特の味わいが詰まっている。
かわいく、そしてどこかシュールな動物のリアクションを愛でる要素には癒しが感じられ、おなじみのキャラと心を通じ合えた暁には嬉しくなれる。
アイデアに関して言えば、画期的な魅力の隠された一作である。
しかしゲームシステムの未熟さは度をすぎており、最後まで遊ぶには根気のいるゲームになってしまった。
とにかくゲーム進行が遅く、30分〜1時間につき数人の動物と仲良くなるのがやっとという、極めてダレやすいゲームに仕上がっている。
仮にその苦労を乗り越えてやり込みに徹したとしても、プレイ手順を間違えると詰む恐れがあり、相当な『ぼのぼの』愛があっても遊び切るのは困難。
最後の性格診断へ無事辿り着けた人は、果たしてどのくらいいるのだろうか……?
仮に最後まで遊んだとしても、ぼのぼの親子の様におっとりした性格か、イライラしながらも最後まで続けるアライグマくん親子で概ね当たるのではないだろうか……
このように本サイトのクソゲー判定の定義「最後まで遊ぶのが苦痛」にバッチリ当てはまる一方、世界観作りやリアクションの模索、コミュニケーション成功時の達成感には底知れぬ魅力もある。「延々と遊んでいた」という3DO所持者の声はSNSで散見される他、雑誌『3DOマガジン』では今作を好きなゲーム10本のうちの1つに挙げた編集者もいる。決して全否定できない魅力もあるのも確かである。
変わったゲームに癒されたい原作ファン・そうでなくても動物好きのゲーマーであれば、意外な癒しに出会えるかもしれない。
【ぼのぐらし これでかんぺきでぃす】
| 対応機種 | PlayStation | ![]() |
| 発売元 | バンダイビジュアル | |
| 開発元 |
アミューズ 明日夢(プログラム) サテライト |
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| 発売日 | 1996年6月7日 | |
| 定価 | 5,800円 | |
| 判定 | クソゲー | |
| ポイント |
広く知られているのはこちらのバージョン 性格診断の詳細化が大きな特色 易しくしすぎてコミュニケーション要素皆無の虚無ゲー化 改善点もあるが、それを帳消しにする改悪・劣化多数 「なにが完璧だ バッキャロー!!」 |
「ぼのぐらし」は、“おつきあいシミュレーションソフト”です。
あなたは「ぼのぼのワールド」へやって来た初めての人間としてさまざまな動物とのコミュニケーションを通じて、
“自分がどんな個性を持った人間なのか”をしっていくのです。(パッケージ裏より引用)
3DO版から内容を一新した移植版。
ネット上のプレイ感想やレビュー動画の大半はこのPS版であり、『ぼのぐらし』と言えば基本的にこちらを指すことが多い。
今作はテレビCMが放送されており、トップシェアのハードで出されたことも加わって、完全版という名目でありながら無印よりも普及したようである。
しかしながら仕様について大幅な変更が加わっており、ゲーム性や味わえるコンセプトは3DO版と比べて別物レベルに変わっている。
このため、両バージョンは必ずしも同一視できるタイトルではない点に注意。別機種で遊んだプレイヤー同士では話が噛み合わない可能性もあるので、ネット上でレビューを調べる際は気をつけた方が良い。
3DO版発売前日からPS版発売までの間にはテレビアニメ1作目が放送され、製作陣の予想を超えるヒット作となった背景がある。(*17)
これにより、PS版では一部テレビアニメ版を意識したと見られる改変要素も存在する。
ただしキャストは3DO版据え置きなので注意。
タイトルの『完璧でぃす』からもわかるように、今作は完全版という触れ込みのタイトルである。
これによりゲーム内容は大幅に改善された……ということはなく、プレイヤーによっては3DO版の方がマシだと思えるような、改良とも改悪ともつかない仕上がりになってしまった。
3DO版の評価点・賛否両論点は、コミュニケーション要素を除いてPS版にも概ね引き継がれているので、そちらの記述も参照のこと。
雰囲気重視のファングッズとして黙々と遊んでいたという感想は、こちらも同様に存在する。
| + | 石探し編(単行本9〜11巻)のネタバレ注意 |
改善点は決して少なくないのだが、ユーザーからはPS版もまた酷評の嵐となっている。
総合すると、そもそも3DO版の諸要素が酷すぎたせいで、せっかく改善してもそれが十分足りえていない有様である。結果的に3DO版から改善された部分の多くは、PS版を遊んだユーザーからも同様に非難されている。
しかもPS版はPS版で、新たな問題が無視できないほど増えている。
ネット上で多数のプレイ感想が見つかるのはPS版だが、その評価はすこぶる悪い。
何を隠そうこの完全版、遊びやすさと引き換えに一番大事なコミュニケーション要素をぶち壊しにした問題作となっている。
『ぼのぼの』の動物と触れ合える魅力は3DO版据え置きだが、ゲーム性は余計に単調な作業の繰り返しとなってしまい、「キャラクターゲームだから」で想定される範囲を超えてゲーム性に乏しいものとなってしまった。
原作でウケていた「かわいらしい見た目に反した意外とディープな中身」を味わおうにも、ここまでゲーム内容がスカスカだとキャラゲーとしても物足りない。
3DO版同様、癒し系の方向性としてはアリかもしれないが、ハッキリ断言できるほど完成度が低く、広く普及した家庭用テレビゲームで遊べる『ぼのぼの』ゲーがこれしかないという現実に、打ちのめされるばかりである。
どんな診断結果であれ、こちらを最後まで遊べるということはおおらかでのんびりした性格だろうが、そんな遠まわしな性格診断はしなくていい。
どの機種版にしろ、大元の企画性には『どうぶつの森』の走りとなる先見の明が垣間見えるのだが、それを実現するための開発力やノウハウが追いついていなかったことが窺える。
「次世代ハード」黎明期にはゲーム畑でない企業が参入して失敗するケースが多々あったが、今作もそんなケースのひとつと言えるだろうか。
いずれも世界観は評価されているため、もし『ぼのぐらし』を手にするとすれば「『ぼのぼの』世界の魅力を味わいたいので評判は悪くても入手したい」という熱烈なファン向けとなる。
各バージョンをシンプルにまとめるなら
といった真逆の二者択一なので、遊びたい人は参考にしてみてほしい。
雰囲気と難易度のどちらを優先すべきか、きっとそれはプレイヤーの"性格"によって変わるのだろう。
*1 映画のスタッフロールで確認可能。
*2 ただし、その最後に描かれる石探しのエピソードは11巻で完結する。コミックスの最初の方で終わるため、電子配信の試し読みで読破することも可能。
*3 特にPS版のテレビCMでは「鬼才・いがらしみきおがプレイステーションの世界を変える」とまで豪語されていた。
*4 PS版の説明書に記載された設定。
*5 PS版は、YES/NOがうなずく/くびをふるに改名されている。
*6 3DO版の説明書に名称の記載は無いが、本記事では便宜的にPS版の名称を使用する。
*7 3DO版とPS版で同じステータスを入力すると、全く同じ動物が診断に登場する。
*8 このやりとりは原作第一話の再現なので、『ぼのぼの』を知っているほど感慨深いものになる。
*9 この地図は電子書籍の試し読みでも確認可能なので、現在だとその気になればすぐ見られる。なお動物たちの生息地は流石にゲームで再現されていない。
*10 今作で出てくるのは「石の裏が変なウロコまみれになっている」「おとうさんの中にバケモノが入っている」「シマリスくんのシッポがダボダボになっている」など。
*11 アクション中にメニューを操作できるようになるバグ(余談参照)を使用した場合は多少マシになる。
*12 おどり自体は大変可愛らしい。
*13 例えば本記事で引き合いに出している『どうぶつの森』では、しつこく話し続けると拒否されるなどの工夫がある。
*14 この「なでる」はそのイメージ通り、多くの動物に対して有効なので、うっかり選んでしまいがち。
*15 同ツールでは、3DOのセーブデータを16進数に変換して可視化することが可能。
*16 いちおう9巻でアライグマくんに言及されるシーンがある。このときもすぐ隠れてしまったため、直接顔を出す機会はなかった。
*17 元々は日本初のCGテレビアニメ『ビット・ザ・キューピッド』のために作られた放送枠があったのだが、当時の技術では15分アニメにするのがやっとだったため、30分枠のうち余った15分を埋めるのに作られたのがアニメ版『ぼのぼの』(1作目)である。このアニメは皮肉にも、『ビット』より高い人気を得るに至った。
*18 実際の動物は「プレーリードッグ」が正しいのだが、かつては各種メディア展開でも一貫して「プレーリードックくん」が正式名称とされていた。現在では「グ」表記になっている。
*19 当初はアフレコまで完了していたのだが、アニメで見せる際の面白みが薄いという理由により原作者判断で没にされた。この登場シーンは後の映像ソフトにおいて日の目を見ている。Dアニメなどのサブスク配信ではカットされたままなので注意。
*20 確認するには、セレクトボタンを押してチュートリアル用の画面を開く必要がある。
*21 このゲームは「右に進むと反時計回りの方向に進む」といったマップ構造となっており、地図の北側のエリアを歩いている場合は進行方向と逆向きに進むことになる。
*22 一応原作でもフェネギーくんの横に感情メーターが出るなどのギャグはあったが、それを全編に渡ってやられるのは……
*23 このうち1件は3DO版に登場しないオオサンショウウオさんに関するイベントなので、PS版限定であることが確実。
*24 1巻85ページに一度だけ登場した超マイナーキャラ。原作よりもかなり大きく描かれている。
*25 原作でも、迷子になったボーズくんを両親が探すエピソードが存在した。
*26 原作は、原由子氏(サザンの桑田佳祐氏の妻)が手掛けたメディアミックス作品。『ポンキッキーズ』でアニメが放送されていた。