本記事は3DOソフト『ぼのぐらし』と、その完全版にあたるPS版『ぼのぐらし これで完璧でぃす』を扱います。
両者はゲーム性が大きく異なるためご注意ください。



ぼのぐらし

【ぼのぐらし】

ジャンル おつきあいシミュレーション
対応機種 3DO Interactive Multiplayer
発売・開発元 アミューズ
バンダイビジュアル
発売日 1995年4月21日
定価 7,800円
プレイ人数 1人
レーティング 3DO用審査:E 一般向
判定 クソゲー
ポイント どうぶつの森』を先取りした疑似交流ツール
雰囲気ゲーとしては光る部分あり
テンポが悪すぎて最後まで遊ぶのは苦行
行動を見誤ると最悪詰む
連載初期のマイナーキャラがまさかのラスボス候補

概要

竹書房漫画誌の長寿作品『ぼのぼの』のキャラゲー。
作者のいがらし氏は同作のメディアミックスに積極的で、PC98向けの会話ツールを手掛けたり、アニメ映画の製作にも深く関わったりと、アグレッシブに活動していた。
今作もまた、いがらし氏が企画・監修を務めたソフトであり、上述の会話ツールをさらに発展させた「おつきあいシミュレーション」として送り出されている。

発売はTVアニメ1話放送(1995年4月20日)の翌日で、当時のアニメ作品は他に映画版1作目のみだった。
発売元のバンダイビジュアル・アミューズは社員数名が映画版の製作に参加した縁があり、*1、このゲームのオープニングにも映画版メインテーマが採用されている。
なお声優陣は今作オリジナルのキャストで構成されており、映画版やTVアニメ版の声優は採用されていない(ただし例外的にスナドリネコさんのみTVアニメ版と同じ)。

ゲーム内容は単行本10巻までの収録話に準拠しており、原作を読んでから遊ぶ場合はその辺りまでを読んでおけば問題ない*2

「原作者監修企画」といえば聞こえは良く*3、アニメ化効果も相まってそれなりの購入者がいたのだが、その評判は決して悦ばしいものではなく……


特徴

  • 今作の目的は、ぼのぼの達が住む森での生活を疑似体験することにある。
    • プレイヤーは、森に現れた初めての人間*4。原始的な家屋を拠点に、島中をあちこちまわり、様々な動物との交流を図っていく。
      • 森はサイドビューで表現された30近くのエリアに分かれており、ほとんどのエリアには動物が一匹だけ住んでいる。
    • 気が向いたら家の横にある花壇で花を育て、鑑賞することも可能。
    • アバターとなるプレイヤーは男女の2種類があり、ゲーム開始時に選択できる。
    • この他にも生年月日や血液型を設定でき、後述の性格診断に影響する。
      • 選出される性格は全12種。
      • この性格に応じて家のデザインも変化し、ゲーム内容も微妙に変化する。
  • コミュニケーション
    • 今作のメインコンテンツ。舞台となる森にはおなじみの動物たちが生活しており、意思疎通を測る事ができる。
    • コミュニケーションはさまざまなジェスチャーを通じて行う。
      • 動物と対面し、メニューからコマンドを選択することで、主人公がそれに応じたアクションをとる。これを見た動物達は、ある程度関心を持っている場合に限り反応を返してくれる。
    • 使用できるコマンドは以下の通り。
      • 手:とる/あげる/なでる/なぐる
      • 足:ける/はねる/かえる
      • 顔:たべる/はく/YES/NO*5
      • 感情:わらう/なく/おこる/おどろく/おちこむ/むしする/あそぶ
    • 一部コマンドは特殊な効果がある。
      • 「かえる」は動物のリアクションを待たずに帰宅する。いわばファストトラベル機能。
      • 「とる」「あげる」「たべる」はアイテムに関する特殊なコマンド(後述)。
      • 一部動物の前で「むしする」と、プレイヤーの評判を話してくれる。
    • この他、3DO版ではいずれかのコマンドをランダムに実行する機能がある。
      • 何をしたらいいのかわからなくなった場合に、気まぐれで使うことが推奨されている。
      • お遊び以外の要素はなく、実用性が薄いためか、PS版では削除された。
  • 動物の感情
    • 後のPS版とは仕様が異なるので注意。
    • すべての動物には関心度仲良し度というパラメータが設定されている。*6
    • これらは内部で細かい数値が記録されており、動物に働きかけたリアクションに応じて増減する。ただしプレイヤーが確認できる情報は「低」「中」「高」のいずれかのみ。
      • ゲーム中、動物の感情を表す顔アイコンが閲覧できるのだが、関心度に応じて眉毛の形が、仲良し度に応じて口の形が3種類に変化する。プレイヤーはこれを頼りに、動物の心情を推測することとなる。
      • 関心度が低いと眉毛は困った形となるが、中くらいで平らとなり、高いときにはにっこりしたものとなる。
      • 同様に、仲良し度が低いとへの字の口となり、中くらいで真っ直ぐとした形に、高い時にはにっこりした形となる。
    • プレイヤーの目的は、動物たちにリアクションを繰り返し、全員の仲良し度を「高」状態に持っていくことである。
  • 動物の行動は、関心度や仲良し度に応じて変化する。
    • こちらの仕様もPS版と異なる。
    • 関心度が低い動物は、プレイヤーが近づいても反対側に逃げてしまう。
      • コミュニケーションをとるにはある程度の距離をとってアクションを行う必要がある。しかしここで行動を起こしても、関心度が低い動物は行動のたびに反対側へ逃げてしまう。
    • 様々なアクションを繰り返すうち、動物が関心を持ってくれると、プレイヤーのアクションに応じて多彩な仕草をみせてくれるようになる。
      • このときの動物のリアクションは、プレイヤーの行動や動物自身の仲良し度に応じて変化する。
      • 仲良し度が上がると、今まで見せなかった意外なリアクションに出会えることも。
      • 例外的に、モーション発生がランダムで行われる動物も一匹いる。
    • 3DO版では、これらのアクションに応じて変化したパラメータが開示されない。
      • プレイヤーは、動物のリアクションを観察し、喜んだか嫌がったかを推測することとなる。もし嬉しそうな態度をとっていれば、それを繰り返すことで仲良し度「高」に近づく事ができる。
      • 現在の仲良し度は3段階までざっくり表示されるので、この変化を観察するのが攻略の近道である。
  • 性格診断
    • 今作ではすべての動物との仲良し度を「高」状態にし、自宅でゲーム終了することで、プレイヤーの性格がどの登場人物に分類できるかを知ることができる。
      • このイベントは説明書の最終ページで存在がほのめかされており、今作における最大のプレイ目標となっている。
    • なお、ここで明かされる性格はゲーム内の行動によって決まるのではなく、ゲーム開始時に入力した生年月日等の時点で決定している模様(個性學自体がそういったシステム)。*7
      • つまり、あらかじめ決められた性格を最後の報酬としてようやく確認できる…というものである。行動によって診断する心理テストではないようなので注意。
      • 後のPS版では行動から判定するシステムへと変更された。
    • スタッフロールはOPで流れるようになっており、クリアすることで流れるエンディングは存在しない。
  • 登場する動物
    • 3DO版は24の動物と交流可能。
      • アリの集団やシャチなど、交流対象以外の動物もごく少数登場する。
+ クリックで表示(ネタバレ注意)
  • ぼのぼの
  • ぼのぼののおとうさん
  • シマリスくん
  • ダイねえちゃん
  • ショーねえちゃん
  • シマリスくんのおとうさん
  • アライグマくん
  • アライグマくんのおとうさん
  • アライグマくんのおかあさん
  • スナドリネコさん
  • ヒグマさん
  • コヒグマくん
  • ヒグマの大将
  • クズリくん
  • クズリくんのおとうさん
  • ビーバーさん
  • ボーズくん
  • ボーズくんのおかあさん
  • アナグマくん
  • メガネヤマネくん
  • チンチラくん
  • フェネギーくん
  • シャチの長老
  • ヤマビーバーくん
  • なお3DO版を遊ぶ際は、あらかじめ原作(当時発売されていた10巻分)をしっかり読んでおくのが吉。
    • 各リアクションは原作のエピソードに基づいているため、それぞれの動物がどんな意図で行動しているのかわかりやすくなり、攻略の手助けとなる。
  • プレイヤー側のパラメータ
    • 画面左上には砂時計のマークが表示されており、一日に出歩くことのできる制限時間が示されている。
      • この時間が限界に達すると、強制的に帰宅させられてしまう。
      • もしラブデリック系の作品を遊んだことがあるならば、大体同じものと思っておけばOK。
    • 制限時間は眠ることで回復する。
      • 基本的には帰宅して寝ることで回復することとなるが、森の西側にあるふたまたの木に行くことでも睡眠が可能。3DO版は無条件で使用できる。
    • プレイヤーには健康状態が設定されている(こちらもPS版とは仕様が異なる)。
      • このパラメータはアイテムを食べたり眠ったりすることで回復し、川を歩くと減少する。翌日も引き継がれる。
      • 現在の健康状態は顔アイコンを通じて確認が可能。調子が良ければ顔が赤く、悪ければ青色に変化する(通常時は白)。
      • ゲーム内でどのような影響があるかは不明。
  • アイテム
    • プレイヤーは最大8個までのアイテムを持ち歩く事ができる。
      • 入手したアイテムは動物に「あげる」ことができ、その内容に応じて仲良し度を上げる事が可能。
    • アイテムの入手方法は2通り。
      • 動物に対して「とる」コマンドを実行することで、「はなのたね」が手に入る。数種類あるうちのいずれかがランダムで出現する。
      • 画面内にポインタカーソルを出現させて動かし、隠されたアイテムを出現させることも可能。出現したアイテムは下キー+Aボタンで拾う事ができる。
    • アイテム入手時は「うれしい」「かなしい」「どうでもいい」のいずれかを選択し、対応したアクションを取る事ができる。
      • 近くに動物がいれば、これに対してリアクションを行うことがある。
    • アイテムを「たべる」ことで、プレイヤーの健康状態が変化する。
    • 家には庭があり、ここに「はなのたね」を植える事で育てることが可能。
    • 入手したアイテムは一定個数まで、自宅に保管することができる。

評価点

  • あの『どうぶつの森』よりも6年早く、今作は「かわいらしい動物とまったりコミュニケーションできるツール」を成立させていた。
    • この要素は、後のPS版より3DO版の方がより楽しめる設計となっている。
    • 動物たちはプレイヤーの行動に応じてさまざまな反応を見せてくれるが、何をしたら関心を持ってくれるのかはわからず、手探りで答えを見出さなければならない。
      • それゆえ、勝手の分からない動物相手にコミュニケーションを成功させれば、苦労の分だけ大きな達成感を味わえる。
    • 動物たちのリアクションもかわいらしく、新しい行動を見出せると「癒し」を得られるのが今作の肝。
      • たとえば、こちらが「はねる」と短い足で一生懸命マネしてくれるコヒグマくん、可愛らしい声ではしゃぐシマリスくん等は愛嬌があり、わざと同じアクションを連打して反応を楽しむのも一興。
      • 最初はそっけない態度をとっている動物も、熱心にコミュニケーションを試みることで反応が変わっていき、新しいリアクションを見つけ出せるとちょっとした感動を味わえる。
      • 中でもスナドリネコさんは今作屈指の強敵(後述)であり、通常ではそっけない態度しか取ってくれないのだが、無事に仲良し度を上げることに成功すればちょっとめんどくさそうに肉球を見せてくれたりも。*8
    • 性格診断への到達を目指す場合、仲良し度を「高」状態にしたらもう話しかける必要はないのだが、この状態でしか見られないリアクションも数多く残されているので、思わず試したくなる設計となっているのが特徴。
    • もし『どうぶつの森』を遊んだことがあり、住人にリアクションをけしかけて反応を見るのが好き……という人であれば、今作からは大きな味わいを得られる。
    • なお「ける」「なぐる」「おこる」といった、明らかに嫌われる行動も無駄に充実しており、謎の自由度も印象的である。
  • いがらし先生監修だけあり、原作再現度は極めて高い。
    • 舞台となる森は、原作の線画を忠実に起こして着色したものとなっている。
      • 全体図は単行本1巻掲載の地図*9を丸ごと使用しており、背景画像も原作の森や川辺がほぼそのまま登場する。
      • ビーバーさんが作るダムや、シャチが住む海域の島など、特定のエピソードで見覚えのある光景も。
    • キャラクターデザインはTVアニメ版以上に原作に忠実。
      • セルアニメの制約にどうしても縛られるアニメ版に対し、今作はゆるい線画のタッチを水彩タッチでそのまま落とし込んでおり、TVアニメ版の画風とは異なる良さを味わえる。
    • 就寝した主人公は夢を見るのだが、その内容は作中でぼのぼのが想起していた「わるい考え」*10がそのまま描写されるというもの。悪夢では?
    • 当時の最新刊に収録された「謎の岩を探す」というエピソードが早くも再現されており、ゲーム中にイベントが発生する。
      • 作中第二の拠点となる「ふたまたの木」も、このエピソードのお泊りシーンを意識したものとなっている。
    • 登場する動物も、これでもかと言わんばかりの充実ぶり。
+ 多少のネタバレ注意
  • おなじみのキャラを一通り押さえているのはもちろんのこと、アライグマくんのおかあさんやシマリスくんのおとうさんなど、登場から時間がたっていないキャラもきっちり網羅している。
  • 基本的にただグルグル回るだけのチンチラくん、すぐ隠れてしまうメガネヤマネくんなど、原作で1巻しか出てこないようなキャラクターまで徹底的に抑えており、意外な動物に出会う楽しみがある。
  • ムードの良さ
    • 今作のBGMは、TV出演も多いアコースティックギタリスト・ゴンチチが担当。映画一作目(1993年公開)で使用したものと同じ楽曲が使用されている。
      • 自宅周辺の静かな雰囲気に癒され、草原の壮大なBGMに情緒を感じたりと、ゲームの雰囲気とほどよく合致している。映画のために作られた楽曲でありながら、違和感は全くと言っていいほど感じさせない。
      • 動物たちの可愛いリアクションと併せ、今作の「癒し」を強める要因となっている。

賛否両論点

  • 原作譲りにしてもやりすぎなシュールさ
    • 3DO版はアイテム・コマンド選択以外で文字表示がほとんど無く、動物たちが妙なリアクションばかりを繰り返すため、極めてシュールな絵面となっている。
      • 原作の不思議な空気作りが徹底されている一方で、悪く言えば意味不明な雰囲気もあり、ゲームの仕様を理解する前に脱落する人もいるかもしれない……
  • そのシュールさを更に加速させているのが、奇行に走りまくる主人公。
    • その様相たるや、プレイヤーの分身とは思えないほど自由奔放である。
    • 口からアイテムを吐き出す「はく」を筆頭に、「あぴょ〜ん」と言いながら「はねる」し、歩行時に至っては常時「てくてくてくてく」と言いながら歩く。
    • コマンドによっては突然声を上げ、笑ったり泣いたりする。
    • とはいえ、元々原作からして動物たちの不思議なリアクションを愛でる側面があるため、こちらもまた世界観に即している。人間が同じことをやるとここまでシュールになるというのか……
      • 「てくてく……」は流石にくどすぎたか、PS版では残念ながら(?)カットされてしまった。
    • 発するセリフも「~だよ」「~だなあ」といった、まるで子供に絵本を読み聞かせるような口調となっており、よく言えばほのぼのしている。悪く言えば少し不気味。
    • 性別問わずボイスが同じなのも突っ込みどころ。

問題点

PS版と共通の問題点

部分的に改善されたものも含めて記述。

  • 著しいゲームテンポの悪さ
    • 今作最大の問題。ゲーム展開は遅々として進まず、せっかくのコンセプトが台無しになるレベルで進行に支障をきたす。
      • 物語がスローテンポなのは原作からの特色で、ムードの再現度は高いのだが、それにしても過剰。
    • まず移動が遅く、ファストトラベルも存在しない。
      • 大半の各エリアを通過するのにかかる時間は、およそ30秒~50秒。その間プレイヤーはボタンの左右を押しっぱなしにするだけである。
      • 遠くのエリアに足を運ぼうとすると数分はかかるし、島中の全エリアを見て回ろうとすると30分近くかかる。
      • この所要時間は、後述のマッピングをきちんと行う前提の話である。あてもなく歩き回ればもっと時間がかかる。
    • エリア出入り時に歩行モーションが再生されている間は、10秒近く操作不能となる。
      • これが終わってから方向パッドを押さないと移動再開できないので、地味にじれったい。
    • プレイヤーも動物も、リアクションにかかる時間が長く、その間は一切の操作ができない*11
      • 一つのリアクションには数秒〜10秒ほどかかり、いずれもスキップ不可である。
      • 中でも、おどりを長々と見せつけてくるフェネギーくん*12、長距離の往復をわざわざ見せつけてくるダイねーちゃん、いちいちその場で座り込むスナドリネコさんあたりは、特にフラストレーションのたまる相手となっている。
    • 「かえる」コマンドを入力すると、わざわざ10秒ほどかけて屋内に入る過程を見せられる。
    • これらの事情により、3DO版は性格診断到達までに約20時間はかかるボリュームとなっている。
      • 動物ひとりと仲良くなるには、一部の難敵を除いて10分〜30分もあれば十分だが、移動時間や各種不備のせいで、1時間あたり1〜2人しか仲良くなれないペースとなっている。移動等のせいで2倍の時間を要するという、なんともプレイバリューの薄いゲームに……
    • PS版では歩行速度や帰宅シーンが改善されたのだが、進行テンポに関してはまた別の問題が増えている(後述)。
  • 攻略を突き詰めると作業ゲーに
    • 同じ行動を取り続けてもペナルティが無いため、最適解を求めると特定アクションの連打に落ち着いてしまう。
      • コミュニケーションを主体としたSLGはこのあたりを対策していることが多いが*13、今作にはそれがない。
      • ここで上述したテンポの悪さが加わるので、一層退屈さを助長している。
    • 仲良し度を「高」にするための行動量も多すぎる。
      • 特に酷いものだと、十数秒かかるリアクションを10〜20回見る必要が生まれる。
      • アクション数回では動物の仲良し度があまり変化しないため、そもそも何をするゲームなのかわからずに断念したプレイヤーもいるのではないだろうか……
    • 幸い、3DO版においては「どのアクションが最適解なのか」「どのくらい繰り返せばよいのか」を特定するのが簡単ではないため、主体的に遊べる点は後述のPS版よりはマシである。
  • ゲーム中は時々イベントが発生するのだが、ストーリーが薄いうえにノーヒントなものばかりで、発生頻度も少ないため、面白みが薄い。
    • ものによっては目的地ノーヒントのお使いを強要され、いたずらに時間がかかる。
    • 目的地に着いたり所定のアイテムを手に入れたりすると、あっけなくイベント終了。それ以上特に何が起こるわけでもなく、淡々と日常は続いていく。
    • 特定のキャラクターと友達になった時、「一緒に遠くへ出かけよう」というイベントが始まる事がある。しかしイベント中もキャラクターは大した存在感を示す事もなくプレイヤーの後ろをついてくるだけ。
      • しかもこの連れ歩きイベント、3DO版とPS版それぞれについて、異なる大きな問題を抱えている(いずれも後述)。
  • グラフィックがところどころ未完成気味。
    • 主人公の立ち絵が微妙にピンボケしている。
      • PS版では修正済み。
    • 主人公のアニメーション枚数が極端に少ない。一挙手一投足がまるでロボットのようにギクシャクしている。
      • 川を飛び越える際は棒立ちに近い姿勢のまま高速で飛んでいく。「普段からこの速度で歩けよ……」と思ったプレイヤーも多いはず。なおPS版にはこの操作が存在しない。
    • 落ちているアイテム等は一律して水色の玉で表現されており、なんとも雑。
    • 就寝時に表示される夢も紙芝居レベルのアニメーションとなっており、原作の元エピソードを知らないと意味不明な仕上がりとなっている。

3DO版固有の問題点

  • 動物を連れ歩くイベントが発生した場合、他の動物に話しかけることが出来なくなり、ノーヒントの目的地探しを長時間強要される。
    • これは今作の攻略において、最大の挫折要因の一つと言っても過言ではない。
    • この間プレイヤーは、全部回るのに30分近くかかる島をあてもなく彷徨い歩くことになる。問題の方向性としては、後のKOTY次点作品『大奥記』に近い。
    • 動物のコミュニケーションは今作のメインコンテンツであり、ゲームクリアにも直結する要素なので、これが出来なくなるのは何も残らなくなるも同然。
      • イベントは強制的に始まり、中断することはできないため、今作の楽しみを理不尽に奪われて迷惑極まりない(PS版は改善済み)。
    • また目的地も妙に凝っていて厄介である。
+ ネタバレ注意
  • たとえば「ぼのぼのと一緒にナントカ岩を探す」というイベントがあるのだが、その在処はそれまで何故か到達できなかったエリアの先にある。
    • 今作では、砂漠エリアの左側に何故か進む事ができないのだが、それもそのはず「イベント発生時のみ通過できるようにする」という変わった仕様となっている。既存のエリアを探し続けても永遠に見つからない始末である。
  • ちなみにPS版は場所が変わったが、こちらも同様に、それまで行けなかった場所の先にある。
  • 仲良し度の理不尽仕様を理解しないと、「高」に達成できなくなって詰む。
    • これにより、攻略情報なしで性格診断に到達するのは困難を極める。
      • 各種不便さや上記のイベント周りにより、そもそも性格診断を目指して遊ぶ人は限られてくると思われるが……
    • 今作を漫然と遊んでいると、「どんなアクションを行っても動物の仲良し度が変化しなくなり、何をしたらいいのかわからなくなる」といった状況に陥る場合がある。
    • その原因は、仲良し度の仕様によるもの。このパラメータは下限値が極端に低いため、際限なく数字が下がり続けるようになっている。
    • 今作の進行は「動物のリアクションから仲良し度が上がる動作を推測し、それを繰り返して親睦を深める」といった流れだが、もし繰り返した行動が嫌われる内容で、プレイヤーがそれに気付かなかった場合、仲良し度のリカバリーが困難に陥る。
      • 例えば「なでる」を嫌う動物に対し、そうと知らずに「なでる」を連発してしまうと、際限なく仲良し度が落ちていく*14。しかしプレイヤーが判別できるのは「仲良し度が低い」という大雑把な情報だけ。
      • これにより仲良し度が極端に下がってしまったが最後、動物の感情表示は何をしても変化しづらくなるため、最善の行動を推測する余地が無くなってしまう。
      • そもそもこの状況に陥るということは、リアクションから好意的な反応を推測しづらい動物ということになるので、なおさらリカバリーが困難である。
+ 詳しい仕様に踏み込んだ解説(攻略のネタバレ注意)

下記解説の仕様は3DO公式セーブデータ解析ツール『3DO Game Guru』を通じて推定したものとなる*15。公式情報ではないため注意。

  • 仲良し度の初期値は-33〜-3となっており、一回のアクションで変化する仲良し度は1〜3ほど。-12未満なら「低」、-12〜12で「中」、12を超えると「高」であることがプレイヤーに開示される。
  • そして最小値は-100(ちなみに最大値は40)。
  • これは初期値-33の動物に対して仲良し度を「中」にしようとして、知らずに逆の行動をおこなってしまうと、仲良し度が-54あたりになってしまうということ。そこから仲良し度「中」に持っていくには、本来の2倍の良行動を取らなければならないわけだが、ここでまた逆効果なことをやってしまうと、今度は本来の4倍の良行動を取らなければ戻れない状態に陥ってしまう。
  • こうして最低値に到達したが最後、最悪の場合は10秒くらいかかるアクションを88回取らないと仲良し度が戻らない状態に陥る。
    • しかもこの時点でプレイヤーは、どの行動を取ったら仲良し度が上がるのか全くの情報を知らない状態にある。「もしかすると嫌われる行動をしているかもしれない……」と日和って、正しい行動だと気づかずに途中で諦める可能性も出てしまう。
  • 厄介なことに、今作はオートセーブを採用しているので、一度でもエリアを離れた時点で仲良し度の極低状態が保存されてしまう。しかもオートセーブの存在は説明書に記載されていない。
    • 説明書には「家に帰って終了すると保存される」といった説明があり、これに基づいて遊ぶと「制限時間が尽きるまで森を廻り、そのあと家に帰って終了する」というプレイが効率的となる。
    • しかし実際はエリア移動のたびにセーブが行われており、屋外で電源を切ると次回はそのエリアから再開するようになっている。つまりゲーム終了に当たって家に帰る意味は全くない。
    • ノーヒントで性格診断を目指す場合、動物とのコミュニケーションを試みて仲良し度を上げられなかった場合は絶対にそのエリアを出ず、一度電源を切るのが最適解となる。最適な行動がわからないまま低仲良し度状態でセーブが行われると、推理の余地が無くなって詰む恐れがある。
  • この仕様により、原作で森の最強ポジションに君臨していたスナドリネコさん・ヒグマの大将はこのゲームでも強敵。
    • 原作同様、2人は本心をこちらに見せてくれず、どっちつかずのそっけない態度ばかりを取ってくる。そのため何をすれば正解になるのかわからず、地雷アクションの連発に陥りやすい。
    • ヒグマの大将に至っては、「いかんぜよ」と言いながら首を横に振るというリアクション(ネタバレ防止のため白塗り)で仲良し度が上がる有様で、とても攻略情報なしで気付けるものではない。
    • 作中のツートップを最難関に設定し、性格描写も原作になぞらえた点は再現として完璧なだけに、何とも複雑である……
  • そして彼らと並ぶ最大の難敵は、まさかのメガネヤマネくんである。
    • 彼はいがらし先生が別途描いた絵本でメインキャラになったことがあるものの、本編では1巻に数回出たっきりその後はほとんど出てこない*16。極めてマニアックな部類の脇役であり、一見して強敵になるとは誰もが思わないだろう。
    • 何を隠そう、彼は穴に隠れる以外のモーションを一切取らない(しかも彼のみ行動発生がランダム)。態度から心情を推測してコミュニケーションする余地が一切ないという、このゲームのコンセプトを真っ向から否定するキャラである。
    • 彼は本編や先述の絵本において「すぐ隠れるのでよくわからない、謎めいた知り合い」といった立ち位置で描かれており、これまた忠実な原作再現ではあるのだが、一体こんなのどうしろと……?
  • なおここまでの記述はあくまで、常識的な攻略法を考えて遊んだ場合の話である。
    • 今作には「なぐる」「ける」と言った明らかな地雷コマンドが用意されているが、ほんの悪戯心からこうした地雷コマンドを連打すると、その場で詰みデータの出来上がりである。
    • 特に今作は雰囲気ゲーとしての側面があり、クリアそっちのけでなんとなく選ぶ人もいるかもしれないが、ふざけて連打するのは完全な罠。
    • 低年齢のユーザーも遊べるゲームとなっている以上、ルールをよく理解していない子供がこの操作に走って詰む……という危険性はありえなくもない。
  • 2025年夏現在、「どの動物にどのアクションを行えば仲良し度が上がるのか」といった攻略情報は無いため、万が一詰みデータが出来てしまった場合にリカバリーするには結構な荒業が必要。
    • 特別なツールなしにリカバリーするのであれば、仲良し度が上がりそうな各アクションをそれぞれ88回試してみるのが確実。こうすればどんな状況だったとしても、正解アクションを引き当てた場合に必ず仲良し度「中」へとリカバリーできるので、そこからリアクション推測が可能となる。
    • なお後のPS版(パラメータ変動を確認可能)は内部仕様が異なっているため、そちらで得点計算を検証し、3DO版で試すといった攻略法は不可能である。
    • 理想としては、誰かが攻略サイトを作成し、リアクションごとの上下値を解析して網羅してくれれば助かるのだが、そんな酔狂な人物は今後現れるのだろうか……
  • 園芸要素が虚無。
    • 庭先に植えた花は約10分で枯れる。花を咲かせてくれる時間はわずか100秒。
      • この時間経過はゲーム中に常時カウントされる。普通こういうのは鑑賞要素になりそうな物だが、今作の場合は花を植えて外出してから帰ると茎ごと消滅する始末。何のために植えたのかわからない。
      • 先述の通り、今作のテンポは「島全部回るのに約30分かかる」「エリア移動に数十秒かかる」というものである。わざわざ遠出をしているのに、偶然成長したタイミングで通りかかることはほぼない。成長した花を楽しむ機会は皆無である。
      • あえて家にとどまって成長を見守るにしても、流石に10分も何もしないでいるのは苦行に等しい。
    • 花を育てた後は種が残るのだが、これも一定時間で消える。よほど気を付けなければ回収は困難である。
    • PS版では改善が図られたが……(後述)
  • マップ周りのUIが低品質で、道に迷いやすい。今作はスローライフ系のゲームにもかかわらず、円滑に遊ぼうと思ったら紙と鉛筆を用意し、マッピングするのがほぼ必須となる。
    • メニューからマップを確認できるものの、把握できるのは現在地のみ。
      • 具体的な道の位置ははっきり示されておらず、どのエリアがどう繋がっているのかわかりづらくなっている。
      • このため、どこに行けば誰と会えるか、既に誰と出会ったかなどの確認は不可能。
    • ちなみにPS版は東側のマップ構造が別物レベルに変わっているため、各種プレイ動画を見ながら攻略に流用することはできないので注意。
  • 操作性の悪さ
    • アイテム回収は極めてテンポが悪い。
      • カーソルを動かしてアイテムを見つけた際、見つけたことを示すボイスを再生するために若干読み込みが入り、操作感が悪い。
      • ボタンを押して出現したアイテムも、場合によっては拾いづらいところに落ちることがある(水の中など)。
    • 今作は方向パッドを押すと一定距離ずつ歩くようになっており、その途中でBボタンを押して停止しないと微妙な距離調整ができない。
      • ゲーム中、物を拾うために距離を細かく合わせる場面があり、そのためにこの操作が必要となる。
      • この拾う操作も判定が狭く、アイテムの回収もままならない。
  • その他、細かい問題点
    • 説明書には「温泉で下キーを押すと休める」とあるのだが、そのような機能はない。
      • 温泉自体は確かに登場するのだが、下キーを入力しても何も起こらない。何らかの不具合だろうか……
      • PS版では修正済み。
    • 世界観に合わないSE
      • 今作はコマンド選択を行うと、何故かボクシングのゴングを鳴らした音が「カーン!」と響き渡る。むろん原作にそういう要素は無く、なぜこのような効果音が鳴るのかは不明。シュールすぎてこれはこれで面白いが。
    • コマンドの一つ「とる」のわかりづらさ
      • これは一見して「落ちているアイテムを取る」というコマンドに見えるのだが、実際は対峙している動物が持っている物を取り上げるというもの。
      • 当然、嫌われてしかるべき行為なのだが、何から取っているのかが絵面からは分かりづらく、気付かないうちに仲良し度を下げられてしまう。
      • PS版は動物から取っていることが説明書で明文化され、動物に近づかないと使えなくなったため、効果が分かりやすくなった。
    • 特定の条件下でアライグマくんのおとうさんに「むしする」を行うと、会話が読み込めずにエラー落ちするバグがある。
  • 難儀でクリア困難なゲームシステムに反し、肝心の性格診断は拍子抜けするくらい薄い。
    • このためか、PS版ではテコ入れが入っている。
+ ネタバレ注意
  • この性格診断では、プレイヤーが『ぼのぼの』のどの登場人物のタイプに相当するかを教えてくれるが、本当にそれ以上のことを言わない。
    • こうした心理テストは「○○に似ている」という観点から掘り下げを行ったりするものだが、この性格診断は誰に似ているかをナレーションするだけで、それ以上の説明は一切ない。
  • パッケージ裏には、「遊んでいくうちに個性がわかっていく」(大意)と説明があるのだが、3DO版は最後にいきなり診断されるだけなので、そのような要素はない。
    • この説明文はPS版の方がより当てはまる内容となっており、本来想定されていたコンセプトをなぞったのがPS版なのかもしれない。
  • 苦労した末に見せられる内容としてはあんまりだが、ゲームの難易度や遊びづらさを考えた場合、そもそも性格診断にたどり着けるだけでも感動できるのが救いだろうか……

総評

『ぼのぼの』の世界観を活かし、コミュニケーションに重きを置いた今作には、独特の味わいが詰まっている。
かわいく、そしてどこかシュールな動物のリアクションを愛でる要素には癒しが感じられ、おなじみのキャラと心を通じ合えた暁には嬉しくなれる。
アイデアに関して言えば、画期的な魅力の隠された一作である。

しかしゲームシステムの未熟さは度をすぎており、最後まで遊ぶには根気のいるゲームになってしまった。
とにかくゲーム進行が遅く、30分〜1時間につき数人の動物と仲良くなるのがやっとという、極めてダレやすいゲームに仕上がっている。
仮にその苦労を乗り越えてやり込みに徹したとしても、プレイ手順を間違えると詰む恐れがあり、相当な『ぼのぼの』愛があっても遊び切るのは困難。
最後の性格診断へ無事辿り着けた人は、果たしてどのくらいいるのだろうか……?
仮に最後まで遊んだとしても、ぼのぼの親子の様におっとりした性格か、イライラしながらも最後まで続けるアライグマくん親子で概ね当たるのではないだろうか……

このように本サイトのクソゲー判定の定義「最後まで遊ぶのが苦痛」にバッチリ当てはまる一方、世界観作りやリアクションの模索、コミュニケーション成功時の達成感には底知れぬ魅力もある。「延々と遊んでいた」という3DO所持者の声はSNSで散見される他、雑誌『3DOマガジン』では今作を好きなゲーム10本のうちの1つに挙げた編集者もいる。決して全否定できない魅力もあるのも確かである。
変わったゲームに癒されたい原作ファン・そうでなくても動物好きのゲーマーであれば、意外な癒しに出会えるかもしれない。


余談

  • 元々3DOはただでさえソフト不足の状況にあったが、その中で今作は人気アニメのキャラゲーだったこともあり、数少ない3DOソフトとして所持していたユーザーの声はSNSで意外と確認できる。
    • そうして遊んでみて、あまりに"高度"すぎる内容に打ちのめされた……というプレイヤーの声も同様。
  • 説明書では「最初は右回りに進むと仲良くなりやすい」というアドバイスがあるのだが、3DO版説明書は「時計回り」と表現すべきところを「右」と表現しており、本当に右に進むとアドバイスの想定と真逆になるので注意。
    • 根拠となるのはPS版の説明書。こちらには「家から出て左方向」「地図の上では右」とある。
    • 右に行くと出てくるチンチラくんはリアクション数が少ない難敵で、ダメなリアクションを下手に繰り返すと例によって詰む可能性があるため、このアドバイスはわりと間違っていない。
  • 説明書に書かれている画面の一つは製品版と異なっているのだが、コマンドの一つに「あるく」が存在していた。
    • どうやら開発段階ではいちいちウィンドウを開いてコマンドを選択しないと歩けなかったらしい。操作性に相当問題がありそうである。
  • モーション決定直後にキャンセルボタンを押すと、行動中でもメニューが開かれたままとなり、そのまま別の行動を割り込ませることができてしまう。
    • 入力受付の猶予は長く、わりと簡単に気付けてしまうバグ技。
    • 「はねる」と組み合わせるとプレイヤーが本来と異なる高さに固定される場合があり、何ともシュールな絵面になってしまう。
    • メニュー画面を開きながら操作できるバグは、大体のゲームにおいて悪用されがちである。もし熱心なプレイヤーが「ぼのぐらし学会」でも生み出せば、相当画期的なバグを発明できるかもしれない……
    • このバグ技の良いところは、パラメータ上げを大幅に時短できることにある。
      • 本来、プレイヤーや動物がアクションしている間はコマンド選択が一切できなくなるのだが、その問題が解消される。
    • なお3DOはエラー落ちすると強制ハードリセットがかかるようになっており、行動次第ではゲームが強制終了してしまう。裏を返すと、この裏技を使えば本体に手を伸ばさなくてもゲームをリセットできる。
      • コミュニケーションに失敗してやり直したい場合に有用となるが、もちろんデータが消えても責任は負えないので自己責任で。

ぼのぐらし これで完璧でぃす

【ぼのぐらし これでかんぺきでぃす】

対応機種 PlayStation
発売元 バンダイビジュアル
開発元 アミューズ
明日夢(プログラム)
サテライト
発売日 1996年6月7日
定価 5,800円
判定 クソゲー
ポイント 広く知られているのはこちらのバージョン
性格診断の詳細化が大きな特色
易しくしすぎてコミュニケーション要素皆無の虚無ゲー化
改善点もあるが、それを帳消しにする改悪・劣化多数
「なにが完璧だ バッキャロー!!」

概要(PS)

「ぼのぐらし」は、“おつきあいシミュレーションソフト”です。
あなたは「ぼのぼのワールド」へやって来た初めての人間としてさまざまな動物とのコミュニケーションを通じて、
“自分がどんな個性を持った人間なのか”をしっていくのです。

(パッケージ裏より引用)

3DO版から内容を一新した移植版。

ネット上のプレイ感想やレビュー動画の大半はこのPS版であり、『ぼのぐらし』と言えば基本的にこちらを指すことが多い。
今作はテレビCMが放送されており、トップシェアのハードで出されたことも加わって、完全版という名目でありながら無印よりも普及したようである。
しかしながら仕様について大幅な変更が加わっており、ゲーム性や味わえるコンセプトは3DO版と比べて別物レベルに変わっている。
このため、両バージョンは必ずしも同一視できるタイトルではない点に注意。別機種で遊んだプレイヤー同士では話が噛み合わない可能性もあるので、ネット上でレビューを調べる際は気をつけた方が良い。

3DO版発売前日からPS版発売までの間にはテレビアニメ1作目が放送され、製作陣の予想を超えるヒット作となった背景がある。*17
これにより、PS版では一部テレビアニメ版を意識したと見られる改変要素も存在する。
ただしキャストは3DO版据え置きなので注意。

タイトルの『完璧でぃす』からもわかるように、今作は完全版という触れ込みのタイトルである。
これによりゲーム内容は大幅に改善された……ということはなく、プレイヤーによっては3DO版の方がマシだと思えるような、改良とも改悪ともつかない仕上がりになってしまった。


主な変更点

  • オープニングが一新。
    • 3DO版はハードの特性を活かし、映画版のダイジェストがオープニングムービーとして使われていた。PS版はシマリスくんがモード案内を行う寸劇となっている。
    • 3DO版のスタッフロールはオープニングで流れていたが、PS版はゲーム終了時にエンディングとして流れるようになった。
  • 体力システムが変更。
    • 3DO版の健康状態は滅多に減る事がなく、日を跨いで持続していたが、PS版の健康度は1日の行動でグッと減るようになり、睡眠をとることで全回復するものとなった。
      • 3DO版だと常態的なステータスだったのに対し、PS版は1日限りの揮発的なステータスとなっている。
    • PS版の健康度は、その多寡によってパラメータの上昇量に大きな影響を与える。
  • コミュニケーション関連のパラメータが3DO版から変更された。
    • 3DO版は「仲良し度」が一元的に管理されていたが、PS版はより細分化され、動物とプレイヤーそれぞれに対して個別に好意が設定されるようになった。
      • 好意は横向きの棒グラフで表現され、動物は左から、プレイヤーは右から伸びていく。このグラフが重なった面積の大きさが、PS版における仲良し度となる。
      • 例え動物の好意を上げ続けても、プレイヤーの好意も上げなければ距離感は縮まらないようになっており、3DO版よりもリアリティのあるステータスとなっている。
    • 関心度は従来通りだが、用いられる数値の大きさや下限は3DO版と異なっている。
  • PS版最大の特徴として、マスクデータが完全撤廃され、動物の感情に関するパラメータがすべて見えるようになった。
    • 関心度や仲良し度は棒グラフで画面右に表示され、詳細な値が完全に開示されている。
      • リアクションを取った際、好意や関心度の変化値も画面に表示されるようになった。
      • 低・中・高の概念はほぼ撤廃され、目標値としては「関心度が一定のボーダーに達しているか」のみ明かされている。
    • この仕様変更により、3DO版の最難関3人は詰まる要素がなくなったため、攻略が大きく易化している。
      • 今作で仲良くなるのが最も難しい動物は、互いの好意を確実に近づける方法が限られているアライグマくん親子である。
  • UIは3DO版と別物になった。
    • 上記のパラメータ表示に加え、時刻表示が大きくなり、マップが画面下に大きく表示されるようになった。
    • 「何回就寝したか」を示す値として、新たに日数が追加されている。
  • 動物の共通モーションが変更。
    • 3DO版は一部を除いて「興味がないときは距離を置く」「それ以外の時はプレイヤーを追従する」という仕様だったが、PS版は関心度が低い場合、周辺を無造作に歩き回るようになった。
      • 関心度が上昇すると、動物の立ち位置が奥から手前へ変化するようになっている。
    • 3DO版は動物にアクションを働き掛けない限りリアクションを返さなかったが、PS版は何もしていない場合でも、たまに動物が喋ったりアクションを行ったりする。
  • 河を飛び越えるモーションが撤廃され、代わりにいつでもジャンプ移動できるようになった。
    • 通常より速く移動できるが、体力を消耗するので乱発は禁物。
  • マップ構成が微妙に変更された。
    • 3DO版では、見るからに分かれ道なのに入れない場所があったのだが、PS版では新たに入れるようになっている。
    • あるイベントで探すことになる「ナントカ岩」の場所も変更。
      • ただし3DO版プレイヤーであれば察しが付く場所になっている。
  • ランダムなモーション選択、アイテムを手に入れた際のリアクション選択が廃止された。
  • ゲームの最終目的となる性格診断システムが大幅に変更された。
    • 3DO版は全員と仲良くなることでゲーム終了時に確認できるようになっていたが、今作はプレイヤーのアイコンをクリックすることでいつでも確認でき、動物との交流を深めるにつれて少しずつ更新される。
    • まず3DO版で公表される「プレイヤーがどの動物にあてはまるか」は、1日目を終了すると即座に表示されるようになった。
      • もし両機種版を遊び比べたい場合、PS版を先に遊ぶと3DO版をやりこむ意義が薄れてしまうので注意。そんな物好きなプレイヤーはほぼいないと思うが。
    • 診断の最後は「これからさきの部分は、まだわかりません」と結ばれており、プレイヤーの行動に応じて詳細な内容が追記されていく。診断が最後まで進むとこの表示は消え、晴れて完了ということになる。
      • 更新が行われると、睡眠時にクズリくんが夢枕に立ち、診断を確認するよう促してくれる。
    • ちなみに3DO版と異なり、すべての動物と仲良しになる必要はない。様々な行動を行うことが情報更新のトリガーになっているようである。

評価点(PS)

3DO版の評価点・賛否両論点は、コミュニケーション要素を除いてPS版にも概ね引き継がれているので、そちらの記述も参照のこと。
雰囲気重視のファングッズとして黙々と遊んでいたという感想は、こちらも同様に存在する。

  • まずマスクデータ撤廃により、きちんとクリアできるゲームになったことが評価できる。
    • 3DO版は何をしたらいいか分かりづらい上、下手すると詰むような設計になっていたが、PS版は性格診断を最後まで消化するのも容易い。
      • 性格診断までに20時間近くかかる3DO版に対し、PS版のボリュームは5時間程度。サクっと終わるタイプのゲームに仕上がっている。
    • 3DO版と異なり、仲良し度が変わらないまま「何をするゲームなのかわからずに投げ出す」といったリスクも避けられている。
    • ただしこの変更はメリット以上にデメリットが大きい。詳しくは問題点で後述。
  • それ以外にも、いくつかのUIが3DO版から改善された。
    • 全体的なアニメーションが高速化。
      • 歩行速度は3DO版の2倍近くになり、比較的スピーディにプレイできる。
      • 特に「あそぶ」のアニメーションは目に見えてテンポが良くなった。
      • アイテムを見つけた際、3DO版はいちいちボイスがロードされてテンポが悪かったのだが、PS版はカーソルが点滅するだけになり、ロードが入らなくなった。
    • エリア移動時のロード時間が短くなった。
    • 「かえる」選択時、プレイヤーが家の中に瞬間移動するようになった。10秒近くかかっていた3DO版に比べ、大幅な改善である。
    • 全体的な画質が向上。ピンボケ気味だった主人公の解像度が修正され、違和感のないものになっている。
    • マップが画面下に常時表示されるようになったのもありがたい。
      • ここには動物ごとの仲良し度が色で示されるので、誰と関係を結んだかどうかが分かりやすい。
    • 行動コマンドはLRボタンからダイレクトに開けるようになり、ほとんどの行動についてボタンを押す回数が減った。
      • ソートも整理されており、3DO版で多用しがちだったコマンド(「なでる」など)は上の方に表示されている。
    • UI説明を見られるガイド機能が搭載されており、その内容も充実している。
      • 画面下の各表示それぞれに対して説明が見られるようになり、説明書に頼らなくてもゲームを遊びやすくなった。
      • 特に有用性が高いのは、出会った動物のプロフィールを見られるようになったこと。原作を読んでない(もしくはあまり知識が深くない)場合でも、ぼのぼのの世界を深く知られるようになっている。
      • これにより、ぼのぼのやアライグマくんのように親子で見た目の違いがわかりづらいキャラも容易に判別できる。
    • セーブを好きなタイミングでできるようになった。
      • 尤もPS版の仕様だとセーブ地点からやり直す意義は薄いため、あまり恩恵は無いかもしれない。
    • アイテムの判定が広くなり、拾いやすくなった。
    • 落ちているアイテムがきちんと描き分けられるようになった。
      • 見た目が改善されたのはもちろんのこと、外れアイテムをスルーできるようになったことで捨てる手間が省けたのもありがたい。
    • 出現させたアイテムはプレイヤーの足元に落ちるようになり、拾いやすくなっている。
    • 持ち歩けるアイテムの数が増え、家に預けられる量も増加した。
    • メニュー画面より、アイテムの具体的な効果がパラメータ単位で見られるようになった。
      • 説明文も追加されており、その多くはゲーム攻略のヒントが別個に見られるため、マイナスアイテムも回収する意義がある。
    • 道を曲がる場合の操作がスムーズになった。
      • 3DO版では丁度良い位置でキーを押す必要があったが、PS版は道の端に到達した時点でどちらに行くかを尋ねられ、その選択で進めるようになっている。いちいち特定の位置で立ち止まる必要がなく、直感的で動かしやすい。
    • 他の動物を連れ歩くイベントが発生しても、各エリアの動物に対してアクションができるようになった。
    • イベントが一律して強制開始だった3DO版と異なり、一部は選択肢でスルー可能となっている。
    • 花が枯れた後に残る種が、時間経過で消滅しなくなった。
  • 追加要素の実装
    • 動物が新たに3体追加された。
      • 登場するのは、プレーリードックくん、オオサンショウウオさん、フェネギーくんのおとうさん。いずれも強い個性の持ち主で、ユニークなリアクションを取ってくれる。
      • ゲーム内できちんと「プレーリードッくん」と表記されている*18のもミソ。彼は映画版1作目で没にされた*19悲運のキャラクターだったのだが、3DO版の前日から始まったTVアニメで出番を与えられたためか、念願の登場を果たすこととなった。
      • オオサンショウウオさんは一部アクションで画面に俳句を表示するというこだわりっぷり。
    • 動物のアクション・セリフが増えた。
      • 何を感じているのかわかりづらかったダイねえちゃん等はセリフが追加され、感情豊かになっている。
      • 一部動物は、仲良くなると隣のエリアまで少しだけついてくるようになった。かわいい。
    • テレビアニメ版1作目で一躍人気キャラとなったしまっちゃうおじさんが、ある場面でチョイ役ながら登場するようになった。
      • 3DO版はテレビアニメの前に作られた都合、意外にも出番が無いのだが、PS版では満を辞しての出演となる。
      • ここで"しまっちゃう"のはプレイヤーである。有名なトラウマシーンに自ら立ち会えるのは、キャラゲーならではのお楽しみである。
    • アイテムが多数追加された。
      • レアアイテムがいくつか存在し、探す楽しみが増えている。
      • 3DO版では「はなのたね」しか得られなかった「とる」コマンドだが、PS版では動物によってレアアイテムを回収できるようになっている。
      • 追加アイテムの中には、キャラゲーらしいファンサービスを実現したものもある。
+ 石探し編(単行本9〜11巻)のネタバレ注意
  • PS版では、原作でぼのぼの達が手に入れられなかった「色の変わる石」を入手できる。
  • 漫画では苦労に反して未入手に終わっていたが、意外なところで悲願を果たすことに。
  • 温泉に浸ける必要があった原作と異なり、今作では放置しているだけでも色が変わるようになっている。その鮮やかさから、ゲーム内では家や庭に飾ることを推奨されている。
  • 動物を引き連れているイベント中に他の動物と出会うと、ちょっとした掛け合いが発生するようになった。
    • この掛け合いには攻略のヒントも含むため、3DO版より誘導が親切になっている。
    • 1つのイベントは1回しか発生しないので、たとえ些細でもセリフの変化を知りたかったら、イベントを起こす前に他の動物とも仲良くなっておくこと。
  • イベントクリア時、報酬としてアイテムがもらえるようになった。
    • ものによっては、庭先に花を植えてもらえる場合も。
  • 3DO版で死にイベントだった園芸要素が強化。育てた花を摘んで、アイテムとして持ち歩けるようになった。
  • 性格診断が3DO版より細やかになったため、楽しみがいのあるものになった。
    • 特に3DO版はゲームクリアまで結果が一切開示されなかったのに対し、PS版は節目節目で中身が更新されるため、クリアへの動機付けが比較的増している。
      • クズリくんの誘導も親切で、いちいち診断結果を見直さなくて良いのはありがたい。

問題点(PS)

改善点は決して少なくないのだが、ユーザーからはPS版もまた酷評の嵐となっている。

3DO版から十分に改善されていない問題点

  • 移動速度が改善されたと書いたが、そもそも3DO版が酷すぎたせいで、改善されたPS版も十分顰蹙を買うレベルに遅い。
    • 3DO版の項目で「エリア移動に30秒~50秒かかる」と書いたが、移動速度が約2倍になったPS版も15~25秒かかるので、相変わらず冗長なことには変わりない。
    • 3DO版同様、自宅に帰る以外のファストトラベルは一切ない。
    • それどころか、時々ゲームが数秒ほど停止し、操作を受け付けなくなる。
      • このような不具合は3DO版には無く、せっかく改善されたゲームテンポを別方向から台無しにしている。
  • イベントの薄さも3DO版同様。
    • 掛け合いが生じるようになったことや、報酬アイテムがもらえるようになった点は3DO版より大分マシなのだが、根本的に中身が無い点、発生頻度の少なさは変わっておらず、「退屈」「意味不明」といった評価を逸していない。
    • 他の動物を連れ歩くイベントでは、各エリアでアクションができるよう改善された。だが代わりに激しい処理落ちが発生し、歩行速度が酷く鈍化するようになった。
      • しかも普通に歩いているだけでプレイヤーの体力が著しく減る。移動が遅いのに歩行時間辺りの体力減少率は変わっていないためとみられる。
      • 体力が減ると仲良し度がほとんど上がらなくなるため、これもまた厄介である。
  • グラフィックの質も相変わらず難あり。
    • 主人公の劣悪なアニメーション、夢シーンの雑な描写はそのまま。
      • ただし夢の方は、少しSEが入るだけマシになっている。
    • 新規追加のグラフィックはいくつか透過処理を間違えており、グチャグチャなドット絵を見せられる場面も。
      • 中でも、ゲーム進行で夢枕に立つクズリくんに至っては、全身真っ黒な状態で現れるのでグロい。
  • 園芸ではアイテムを回収できるようになったが、摘んだ花は短時間で枯れる。結局ほぼ意味をなしていない。
    • そもそも3DO版における園芸要素一番の問題は「枯れるまでの時間が早すぎる」ということだったのだが、なぜそこを改善せず、同じ轍を踏んだのだろうか……?
  • マップが見やすくはなったが、「どこにどの動物がいるか」といった一覧表示はない*20し、北側にいる場合は進行方向と地図の向きが一致しない*21など、相変わらず使いづらい。
  • この他、「仲良しになるには同じ作業を繰り返す羽目になる」「リアクションが飛ばせない」といった3DO版の問題点はPS版でも据え置き。

総合すると、そもそも3DO版の諸要素が酷すぎたせいで、せっかく改善してもそれが十分足りえていない有様である。結果的に3DO版から改善された部分の多くは、PS版を遊んだユーザーからも同様に非難されている。
しかもPS版はPS版で、新たな問題が無視できないほど増えている。

PS版固有の問題点

  • ゲーム内の全マスクデータを確認可能にしてしまったことで、コミュニケーションの要素が一切無くなり、ゲーム性皆無の作業ゲーになってしまった。
    • 間違いなくPS版最大の問題点。
      • コミュニケーション要素は3DO版の主たる評価点であり、今作が標榜している「おつきあい」を体現した要素だったのだが、PS版はこれを台無しにしてしまっている。
    • 3DO版は意思疎通を手探りで行うゲームとなっており、苦労の末に仲良し度「高」が表示されることで、大きな達成感を味わえるゲームとなっていた。
    • しかしPS版はスコアの変化が常に表示されているため、単に大きい数字が表示されるアクションを黙々と連打するだけのゲームに成り下がっている。
      • しかも具体的な仲良し度まで表示されるため、突然成功を認知できた時の達成感も皆無。
      • 明確にどこまでパラメータを上げればいいのか示される3DO版と違い、PS版の仲良し度は具体的な目標も提示されないため、そういう点でも達成感が薄い。
      • 3DO版からして「突き詰めれば同じ行動を繰り返せばOKになる」という問題があったが、PS版もそれは同様。成功だとわかる状態で延々とやらされるため、退屈さは3DO版より悪化しているまである。
    • 言うなれば、「難しすぎてクリアできない推理アドベンチャー」を作ってしまったスタッフが、その評価を重く受け止め、正解となる選択肢が常に全部見える状態にして出してきたような代物が今作である。直して欲しかったのはそこじゃない……
    • これによりPS版からは本来のゲームの趣旨が消失しており、遊んだプレイヤーからは「何がコミュニケーションなのかわからない」「この意味不明なやりとりをコミュニケーションと言い張るのか」「虚無」といった評価が相次いでいる。
      • 3DO版の名誉のために強調しておくと、元はちゃんとコミュニケーション要素があるゲームだったのである……。重ね重ねになるが、今作のレビューを調べる際は機種ごとの違いにも注意した方が良い。
    • いちおう、モーションの変化が楽しめるのは3DO版同様だが、3DO版と異なりランダム性が強くなり、コミュニケーションの成功度合いとの関連が薄くなったため、その嬉しさも薄い。
  • 何より、行動のたびに無機質なSEと共にパラメータ上下が表示されるという仕様は興醒め極まりなく、ムード面も3DO版に比べてぶちこわしにされている。
    • 今作はいちいち「ピッ」という機械音とともに数字が出現し、画面右のグラフも『ぼのぼの』世界に不釣り合い*22なので、世界観が台無しである。
      • たとえば本記事でも引き合いに出している『どうぶつの森』において、リアクション時の仕様が同じになったらどう感じるだろうか……
  • 仲良し度上げに関するUIが色々と改悪されており、3DO版より面倒になった側面がある。
    • PS版は親密でない動物が無駄に歩き回るようになり、いちいち追いかける必要が生まれた。
      • 3DO版は一度仲良くなった動物がプレイヤーの前で止まるようになり、コマンド連打だけでゲーム進行が済んでいた。
      • こちらに関心を示すまでに必要なリアクションも、3DO版に比べて2倍程度は行わなければならない。
    • 「なでる」「あげる」といった一部モーションは、動物に近づかないと実行できなくなった。
      • これらが遠くからでもできた3DO版は確かに不自然だったのだが、問題点としては軽微でしかなく、廃止したPS版は純粋に遊びづらい。
    • 一部動物はアニメーションのテンポが悪化。モーション中は操作できず、スキップできないのは相変わらずなのでこれも厄介。
      • ただでさえ遅かったスナドリネコさんのモーションは、余計に長くなっている。
  • 島中の動物全員の関心度・仲良し度が、時間経過に伴って下がるよう改悪された。
    • これにより、島中の動物の好意を上げても次から次へと元通りになっていく。せっかく苦労して仲良くなっても水泡に帰されるため、ストレスがたまりやすい。
    • 先述した達成感の薄さも、この変更が大きくかかわっている。
    • しかも減少ペースは割と速い。今作はクリアまでにゲーム内時間で10日前後かかるのだが、ゲーム内で数日経過しただけで仲良し度が半分程度にまで落ちる。
      • 頑張ってゲーム内マップの色を赤く染めても、数日後には青くなり始めてしまう。全部を点灯させるのはあまりにも不毛となる。
    • リプレイ性を高める観点からしても、今作のコミュニケーションは退屈な作業の繰り返しであり、何度も遊ばせて面白くなる要素はない。むしろ「また話しかけなければいけないのか……」とゲンナリすること請け合いである。
    • 説明書を見る限りリアリティを感じてもらうための仕様、言いかえれば没入感を強めるための機能であることが窺えるのだが、せめて減少ペースをもっとマシにできなかったのだろうか……?
    • 幸い3DO版と異なり、PS版は必ずしも全員と仲良くなる必要が無いのが救いだろうか。
  • 自宅と反対側にある第二の拠点「ふたまたの木」に大きな制約が追加。これにより、島の西側(ふたまたの木周辺)は3DO版に比べて探索しづらくなった。
    • 今作は一度に散策できる時間に制限があり、その時間を無条件でリセットできるこの施設は3DO版で重宝する施設となっていた。
    • しかしPS版はめったに手に入らないレアアイテムを入手した後、それから1日以内でなければ使用することができない。
      • 使いたいタイミングでレアアイテムを持っている保証など無いので、この施設はまるで使い物にならなくなった。
    • ちなみに、同様の施設である温泉も似たような制約があるのだが、こちらは3DO版だとそもそも使用できないうえ、木と違ってアイテムの時間制限がないため、順当な改良となっている。
  • 大半のBGMが一部欠損している。
    • 3DO版よりループが短くなっており、単調な内容になってしまった。
      • こちらもまた3DO版の大きな評価点だったため、何とも残念である。
    • 原曲を知らない分にはさほど問題ないのが救いか。
  • その他の問題点
    • 一新された健康状態システムは調整不足気味。
      • 健康状態最大値でも爆発的にパラメータ上昇は増えないし、むしろ不健康な場合に上げづらくなるデメリットの方が大きい。3DO版に比べて行動の制約が増えただけにすぎず、遊びの幅を狭めている。
      • アイテムを食べることでの回復量も時間によってはろくな量が増えず、恩恵を感じづらい。
    • 発売時期もあいまって、声優がTVアニメ版と異なることを批判する意見もある。
      • TVCMではアニメ版のシマリスくん声優がタイトルを読み上げていたため、やや広告詐欺に近い状況となっていた。
    • ゲーム開始時の設定画面は異様に操作性が悪い。ボタンを少し押しただけで連続で反応してしまい、誤操作の原因となる(PS3で確認、実機は不明)。
    • メモリーカードを無駄に2ブロック消費する。
      • そうしたゲーム自体はPSソフトにいくらでもあるのだが、問題はセーブの仕様。なぜか今作は8枠分のセーブデータを確保するためだけにこの容量を使うハメになる。
      • 個別のデータを保存しないプレイヤーにとっては容量の無駄遣いでしかない。ブロック数を可変式にすることはできなかったのだろうか……
      • 余談だが、3DO版の保存容量は224バイトとかなり少なく、これはPSメモリーカードに換算して約0.027ブロックとなる。PS版は性格診断の都合で容量が増えたと見られる。

総評(PS)

ネット上で多数のプレイ感想が見つかるのはPS版だが、その評価はすこぶる悪い。
何を隠そうこの完全版、遊びやすさと引き換えに一番大事なコミュニケーション要素をぶち壊しにした問題作となっている。

『ぼのぼの』の動物と触れ合える魅力は3DO版据え置きだが、ゲーム性は余計に単調な作業の繰り返しとなってしまい、「キャラクターゲームだから」で想定される範囲を超えてゲーム性に乏しいものとなってしまった。
原作でウケていた「かわいらしい見た目に反した意外とディープな中身」を味わおうにも、ここまでゲーム内容がスカスカだとキャラゲーとしても物足りない。
3DO版同様、癒し系の方向性としてはアリかもしれないが、ハッキリ断言できるほど完成度が低く、広く普及した家庭用テレビゲームで遊べる『ぼのぼの』ゲーがこれしかないという現実に、打ちのめされるばかりである。
どんな診断結果であれ、こちらを最後まで遊べるということはおおらかでのんびりした性格だろうが、そんな遠まわしな性格診断はしなくていい。


どの機種版にしろ、大元の企画性には『どうぶつの森』の走りとなる先見の明が垣間見えるのだが、それを実現するための開発力やノウハウが追いついていなかったことが窺える。
「次世代ハード」黎明期にはゲーム畑でない企業が参入して失敗するケースが多々あったが、今作もそんなケースのひとつと言えるだろうか。

いずれも世界観は評価されているため、もし『ぼのぐらし』を手にするとすれば「『ぼのぼの』世界の魅力を味わいたいので評判は悪くても入手したい」という熱烈なファン向けとなる。
各バージョンをシンプルにまとめるなら

  • ムードは良いが最後まで遊ぶのが困難な苦行ゲーの3DO版
  • 目標は明快だが大事な物を全部消し飛ばした虚無ゲーのPS版

といった真逆の二者択一なので、遊びたい人は参考にしてみてほしい。
雰囲気と難易度のどちらを優先すべきか、きっとそれはプレイヤーの"性格"によって変わるのだろう。


余談(共通)

  • 今作はゲーム展開に応じてイベントが発生するようになっているが、攻略情報がネット上にほとんど無いことも加わり、全イベントの内訳や、その発生条件、機種ごとの違いは不明瞭である。
    • 2025年5月に有名なクソゲーレビュー投稿者が検証した動画(PS版)では、視聴者の情報提供を通じて4件のイベントを確認することに成功している*23が、実はこれ以外にもイベントが存在する模様。
      • たとえば「空腹で倒れているカンガルーネズミくん*24に食べ物を与えて助ける」といったイベントが両機種にて確認できる(参考:3DO版の画像)。
      • SNSにおいては、3DO版においてボーズくんを探す*25イベントが存在するという投稿が確認できる(ソース)。
    • 説明書によると、今作は最初の性格診断で12通りのゲームに分岐するそうなので、これによっても発生条件が変わるのかもしれない。
    • この他、プレイヤーの性格に反する行動ばかり行っていると隠れキャラクターが現れて「すなおになれ」と言ってくるとのことだが(説明書より)、こちらの具体的な条件も不明。
  • 今作を発売したアミューズは直前に『眠れる夜の小さなお話』*26のゲームを出しており、「島を探索して原作世界を体験する」というコンセプトはこの作品からの系譜となっている。
    • こちらはシミュレーションの要素は無く、島中を歩いて発生する様々な物語を味わうADV。
      • 初出のPCE版とそれ以外では若干仕様が異なり、前者はアニメの内容をゲームとして再現したものだったが、後者はその一部で代わりにアニメ本編が流れるようになった。
    • ゲームとしてはよくあるインタラクティブムービー系の作品なのだが、3DOマガジンの編集部にはやたら好評だったらしく、度々プッシュする記事を書いたうえで全ソフトレビューの際に8点も付けていた(『ストIIX』と同点)。
      • 確かに大人がふと見て暖かい雰囲気を味わえる作品ではあるのだが、同レビューでは3DOで乱造された映像頼みのゲームが軒並み酷評されており、他のソフトと比べても明らかに場違いな点数であった。どれだけ琴線に触れたのだろう……
  • その他機種について
    • 3DO版・PS版以外にはMac版も存在する(パッケージ画像)。
      • タイトルは3DO版と同じ『ぼのぐらし』。
      • 詳細な内容はネット上でもほとんど確認できないが、パッケージ裏面を見る限りPS版準拠の内容と見られる。
    • ピピンアットマーク版が1996年5月に発売予定だったが発売中止。
  • その他『ぼのぼの』関連作品
    • アミューズはこれ以前にMac用に、スケジューラソフト『ぼのジューラー』とインタラクティブムービーソフト『ぼのいじり』を出している。
      • 『ぼのいじり』は、映画『ぼのぼの』を選択キャラがいない場面を除いた構成で視聴できるようにしたもので、ゲームではない。
    • PSソフトの発売予定に『ぼのぼの ぼのぼーど』なるタイトルがアミューズから発表されていたが、発売されなかった。
    • 他に韓国のBARUNSON GAMESがぼのぼののオンラインゲームを開発していたが、情報が出ないままである。
    • 2017年にスマートフォン用アプリとして『ぼのぼの おえかきロジック』『ぼのぼの しまっちゃうおじさんの森 ~一筆書き脳トレゲーム~』『ぼのぼの 激ムズぼのジャンプ』『ぼのぼの 脱出すらいどパズル』『ぼのぼのころころ』『脱出ゲーム-ぬいぐるみの塔新作 ぼのぼの編-』が配信された。2018年には『ぼのぼの ブロックパズル』が配信された。
    • 2023年にはモバイルゲーム『ぼのぼの なにしてる?』のリリースが発表され、同年12月に配信開始された。
      • 翌年10月にサービス終了。
最終更新:2025年09月09日 00:03

*1 映画のスタッフロールで確認可能。

*2 ただし、その最後に描かれる石探しのエピソードは11巻で完結する。コミックスの最初の方で終わるため、電子配信の試し読みで読破することも可能。

*3 特にPS版のテレビCMでは「鬼才・いがらしみきおがプレイステーションの世界を変える」とまで豪語されていた。

*4 PS版の説明書に記載された設定。

*5 PS版は、YES/NOがうなずく/くびをふるに改名されている。

*6 3DO版の説明書に名称の記載は無いが、本記事では便宜的にPS版の名称を使用する。

*7 3DO版とPS版で同じステータスを入力すると、全く同じ動物が診断に登場する。

*8 このやりとりは原作第一話の再現なので、『ぼのぼの』を知っているほど感慨深いものになる。

*9 この地図は電子書籍の試し読みでも確認可能なので、現在だとその気になればすぐ見られる。なお動物たちの生息地は流石にゲームで再現されていない。

*10 今作で出てくるのは「石の裏が変なウロコまみれになっている」「おとうさんの中にバケモノが入っている」「シマリスくんのシッポがダボダボになっている」など。

*11 アクション中にメニューを操作できるようになるバグ(余談参照)を使用した場合は多少マシになる。

*12 おどり自体は大変可愛らしい。

*13 例えば本記事で引き合いに出している『どうぶつの森』では、しつこく話し続けると拒否されるなどの工夫がある。

*14 この「なでる」はそのイメージ通り、多くの動物に対して有効なので、うっかり選んでしまいがち。

*15 同ツールでは、3DOのセーブデータを16進数に変換して可視化することが可能。

*16 いちおう9巻でアライグマくんに言及されるシーンがある。このときもすぐ隠れてしまったため、直接顔を出す機会はなかった。

*17 元々は日本初のCGテレビアニメ『ビット・ザ・キューピッド』のために作られた放送枠があったのだが、当時の技術では15分アニメにするのがやっとだったため、30分枠のうち余った15分を埋めるのに作られたのがアニメ版『ぼのぼの』(1作目)である。このアニメは皮肉にも、『ビット』より高い人気を得るに至った。

*18 実際の動物は「プレーリードッグ」が正しいのだが、かつては各種メディア展開でも一貫して「プレーリードックくん」が正式名称とされていた。現在では「グ」表記になっている。

*19 当初はアフレコまで完了していたのだが、アニメで見せる際の面白みが薄いという理由により原作者判断で没にされた。この登場シーンは後の映像ソフトにおいて日の目を見ている。Dアニメなどのサブスク配信ではカットされたままなので注意。

*20 確認するには、セレクトボタンを押してチュートリアル用の画面を開く必要がある。

*21 このゲームは「右に進むと反時計回りの方向に進む」といったマップ構造となっており、地図の北側のエリアを歩いている場合は進行方向と逆向きに進むことになる。

*22 一応原作でもフェネギーくんの横に感情メーターが出るなどのギャグはあったが、それを全編に渡ってやられるのは……

*23 このうち1件は3DO版に登場しないオオサンショウウオさんに関するイベントなので、PS版限定であることが確実。

*24 1巻85ページに一度だけ登場した超マイナーキャラ。原作よりもかなり大きく描かれている。

*25 原作でも、迷子になったボーズくんを両親が探すエピソードが存在した。

*26 原作は、原由子氏(サザンの桑田佳祐氏の妻)が手掛けたメディアミックス作品。『ポンキッキーズ』でアニメが放送されていた。