燃えろ!!プロ野球'88 決定版
【もえろ ぷろやきゅう はちじゅうはちけっていばん】
ジャンル
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スポーツ(野球)
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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ジャレコ
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発売元
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トーセ
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発売日
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1988年8月10日
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プレイ人数
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1~2人
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定価
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5,800円
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判定
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良作
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ポイント
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本来あるべき形になった 野手がスピードアップして広いグラウンドに対応 バイオリズム導入で選手起用の幅が増えた ファミコン初の本格的2リーグ制ペナントレース 選手名は残念ながら改変
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燃えろ!!シリーズ
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概要
158万本という大ヒットに加えていろいろネタも満載だった『燃えろ!!プロ野球』の続編であり『燃えろ!!シリーズ』の第3弾。
前作では良くも悪くも有名だった「バントでホームラン」といったありえないものはなくなった。
本作からバイオリズムが取り入れられた。
本項目では前作からの変更点を中心に記述する。
タイトル画面には前作では江川卓(を模したキャラ)だったが、本作では当年度の新人で、あのミスタージャイアンツ長嶋茂雄の長男ということで注目の筆頭だったヤクルトスワローズの長嶋一茂(を模したキャラ)が登場している。
変更点
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バイオリズムが取り入れられ好不調の波が発生するようになった。
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野手はヒット、ホームラン、タイムリー。投手ならスピード、コントロール、スタミナ。
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コールド制の導入。
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ただし5回以降で9点差が条件なので最低5回までは行う。
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広いグラウンドに併せて守備のスピードが大幅アップ。
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守備のアングルがライト側とレフト側が使い分けられている。
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外野手の場合、打球が飛んできて対象の選手が見えるまである程度まで自動で動いてくれるので、そこまで難しくない。
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オーダーが変更できるようになった。
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打順の組み換えだけでなく、控えをスタメンに出すことも可能になった。
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Bボタンで自在にジャンピングキャッチやスライディングキャッチといったファインプレーが発動できる。
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前作のバグや不自然な点がきれいに改善。
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前作の野手の大部分が3割打者は修正され選手データも現実に近いものになった。だいたいは前年である1987年度に準拠している。
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有名選手はだいたいそのままで中には多少補正されている選手もいる。
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当然あの「バントでホームラン」もできなくなっている。
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キャッチャーミットが体から離れどこまでも飛んで行って必ず捕球する人間離れした仕様は修正され、遠すぎるところに投げればバッテリーエラー(ワイルドピッチ又はパスボール)も発生するようになった。
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選手名が実名ではなくなった。
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これはこの年からNPBの公式ライセンスを取得しなければ実名使用ができなくなったため。
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ペナントレースがより現実に近づいた。
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前作ではセ・パ12球団が総当りの1リーグ制だったがちゃんと現実に即して2リーグになった。
セ・リーグモデルが「大西洋リーグ」、パ・リーグモデルが「太平洋リーグ」。
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130戦中75勝すると優勝となり、現実に即した7戦方式の日本シリーズまで導入された。
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上記に伴い試合の日付が導入された。
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ただ、S63年1月1日~S67年12月31日という結果的に実際には存在しない日付が8割近くを占めているが…
評価点
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前作のシステムはほぼそのままに、良い部分は残しつつ問題点や不自然な点が改善され、より自然に『ファミスタシリーズ』とは違ったスタイルの野球が楽しめるようになった。
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前作同様それぞれに、内野、外野、捕手が決められており、ファミスタでは貧打で初回から代打を出されがちな捕手に、その存在価値を持たせている。
しかも、代打を出す際はそれぞれ、内野(I)、外野(O)、捕手(C)と対象のポジション区分が表示されるようになった。
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前作はグラウンドがやたらだだっ広い割に、足が遅く外野に飛べばまず長打になっていたが、守備時の野手の足がそれに併せて速くなっている。
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広くて守りにくいイメージもあるが、画面内に入るまで野手はオート操作なので、とんだドハズレな位置にいることは少ない。
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また外野フェンスに当たったボールがスーパーボールのように弾んで転がる不自然な挙動もなくなった。
これにより外野に飛んでヒットになればまず高確率で三塁打になるようなこともなくなった。
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バイオリズムが導入され選手の起用の幅が増えた。
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本来貧打の選手でも、好調時なら強打者に負けじとホームランを打てたりする。
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裏を返せばチームの中軸打者でも、これが悪いと大した活躍ができなかったりする。
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本作の目玉がこれで、上記の通り貧打が多いキャッチャーを他の野球ゲームのようにおいそれと代打を出して引っ込められないゲーム性だが、これにより充分活躍するチャンスがある。
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ジャンピングキャッチやスライディングキャッチにより技術介入度が増した。
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これをうまく使いこなすことで本来は外野フェンスに当たってヒットになるような打球もアウトにできたり、際どい外野フライも取れるようになる。
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もちろん使えなくても、それなりのプレーはできる。
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野球らしくノリのいい明るいBGMになった。
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ヒッティングのSEも「カアァーン!」と響きのいい爽快な音になった。
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上記に合わせて判定のボイスもキレのいいものになった。
賛否両論点
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本格的ペナントレース。
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今までどのゲームでも採用されていなかったリーグ戦と日本シリーズの構成はファミコン初でまさに現実のプロ野球そのままである。
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ただゲームとして考えると試合数が前作とほとんど同じながらその間同じ相手と対戦する度合いも2倍ということになる。
問題点
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バイオリズムの確認が交代確定時と試合後しかできない。
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代打にせよリリーフにせよ調子を見て、交代させたいので本末転倒な一面。
そのため、交代した後で不調に気付いたところで後の祭り。
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ホームランの判定が見た目のフェンスより若干低い。
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一部フェンスではボールが外野フェンスに吸い込まれて(或いは貫いて)スタンドに入ったようにも見えてしまう。
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選手の生年月日まで登録されており、まるでちょっとした選手名鑑なのはいいが、一部の選手に誤りがある。
総評
前作の問題点は無難に解決されており、同時に試合のシステムではバイオリズムとオーダーの変更等などが導入され『ファミスタ』とは違った野球ゲームとして楽しめるようになった。
ただ前作のシステム的問題点や4割打者がいたりするステータスなど変な意味でインパクト抜群で面白い部分でもあったので、逆に「地味臭くなった」とマイナスイメージに取った人もおり、そういう意味では賛否両論と言えなくもない。
とはいえ根本的には前作のシステムを受け継ぎつつ、ゲームとして地盤はしっかりしたものに生まれ変わった。更に日本シリーズも搭載されるなど様々な要素が追加され、前作の問題点との比較を抜きにしても順当な発展形になっている。
バイオリズムに関してはまだまだ実用の上で配慮が足りない部分があるが、全体的な完成度は高いものになった。
その後の展開
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翌1989年『新・燃えろ!!プロ野球』が発売されたが、やりにくそうなアングルが災いして人気という点では早くも失われ、売上本数も本作よりも大幅に落とし、早くも息切れのような雰囲気になった。
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1990年からは『燃えプロ!'90 感動編』とそれまで略称だった「燃えプロ」が正式名称になったが、それは1991年の『燃えプロ!最強編』の2作で終わることになる。同時に年次の新作は打ち切りとなる。
余談
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タイトル画面でわかる通りこの年は開幕前の注目度が高かった長嶋一茂はその期待も高く本作では打率.275、本塁打15で、長打・巧打ともチーム内でもクリーンナップに準ずる力がある。
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このシーズン、セ・リーグ新人王は中日ドラゴンズの立浪和義に奪われたが、その立浪よりも全体的に強いステータスになっている。
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実は本作はわずか20日程度の微差で一部のチームの戦力に損得が出てしまっている。
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阪神タイガースは、この年アメリカ人助っ人ランディ・バースが子供の病気に関わる帰国問題で球団と対立し結局6月27日に解雇となった。
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近鉄バファローズはこの年、同じくアメリカ人のディック・デービスが大麻所持により逮捕されたため6月8日付で解雇された。
その後、中日ドラゴンズの二軍で燻っていたラルフ・ブライアントを獲得し6月28日に入団。彼はデービスの抜けた穴を補って余りある活躍をし、この年優勝争いに絡む猛追劇の原動力となった。
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この三者の入団、退団の日時は上記の通り20日ほどの差なのだが、それが響いたか元々のネームバリューの差か阪神タイガースモデルの「T」チームにはバースをモデルとする「ぶうす」がいるのに、近鉄バファローズモデルの「Bu」チームにはデービス、ブライアントのどちらにも該当する選手はいないというあんまりなことになった。
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非常に珍しいことに本作で登録されている選手に高田誠(巨人)が含まれている。(もじられているので表記は「たかた」)
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高田は法政大卒で1987年デビューだが1年目は全く出場機会がなく2年目の当時、初めて一軍出場し同年28試合に出場した。将来的な正捕手候補と期待されたものの、翌1989年には中日で元正捕手だった中尾孝義が加入するなど結局は再び出番がなくなり1989~1991年の3年間では5試合しか出られず、1991年オフにオリックスに移籍。移籍をきっかけに正捕手級の扱いを受けて出場機会がグンと増すことになった。
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そして彼の存在が広く知れ渡ったのは1994年にイチローが大ブレイクして、オリックスが注目された頃であり、1996年にパ・リーグ連覇を成し遂げ、日本シリーズで古巣の巨人を破って日本一に輝いた時、同じ元巨人として四條稔、勝呂壽統らと共に「いつか日本シリーズで自分たちを放り出した巨人を倒すことを誓い、それを成し遂げた者たち」として高田もまた注目されることになり、やっと元巨人の選手としても広く知れ渡った。
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また、捕手は基本的に打撃よりも安定したリードなどが重要視される土台石的なポジションのため目立ちにくく、その捕手に限っても長年に亘り正捕手として存在感を示してきた山倉和博や近鉄で元正捕手の有田修三、翌年以降も上記の中尾孝義など名立たる面々が名を連ねる巨人軍ではかなり影の薄い存在だった。つまり巨人の選手として現役の頃の高田はまるでマイナーな選手でしかなかったのだ。
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しかもゲームともなれば更に限られた選手しか登場できない上に、打撃成績の優れた選手ばかりが目立つため、それらが優先されがちなため尚更である。ただ本作はポジションまで選手ごとにしっかり決められているため、ちゃんと正式な捕手を選抜して入れる必要があることと、実質同年デビューでまだ期待されていた時期だったことが幸いしたと言えるだろう。しかし、そんな形でゲームに登場したものの残念ながら当時のゲームプレイヤーにとって捕手の重要さを知る者は少なく、やはり貧打が災いして特別記憶に残るものにはならなかったようだ。
最終更新:2023年07月01日 20:56