注意:このページでは、『俺たちに翼はない』と全年齢版の『俺たちに翼はない R』及びそのコンシューマ移植版を扱っています。


俺たちに翼はない

【おれたちにつばさはない】

ジャンル 恋愛アドベンチャーゲーム
対応機種 Windows2000/XP/Vista
発売・開発元 Navel
発売日 Limited Edition 2009年1月30日
Standard Edition 2009年4月24日
Anniversary Edition 2011年2月25日
定価 8,800円(税別)
レーティング アダルトゲーム
判定 良作
ポイント 高品質なテキスト
人を選ぶ序盤
Navel作品リンク


概要

Navelブランドから2009年に発売された作品。 企画自体は2003年から存在していたものの、幾度となく修正を繰り返したことや、並行して『SHUFFLE!』シリーズや『Soul Link』を制作していたことから非常に難産な作品となった。
各広告媒体を通した制作発表は2005年になされるも、開発が難航したためそれらへの情報掲載も一時中断された。
2007年に広報活動が再開。発売日は当初2008年6月28日と発表されていたが、それも延期になったため、同日には前日談+体験版と言える『俺たちに翼はない~Prelude~』が発売されている(詳細は当該記事を参照)。

開発にあたってはユーザーの声を積極的に拾っており、一部キャラには雑誌企画の読者公募デザインが採用されている。
また、シリーズを通して通算5回に渡ってキャラクター人気投票が行われており、その結果を元に一部キャラの攻略ルートが追加される等、発売後も含めてメーカー主導の動きが活発な作品であった。

メインライターは王雀孫氏、メインのキャラクターデザインとCGは西又葵氏がそれぞれ担当している。
特に王雀孫氏は前ブランドであるBasil発売の『それは舞い散る桜のように』にて高い評価を得ており、前述の通りユーザーの意見の吸い上げも活発であったことから大きい期待感を持たれてリリースされたタイトルである。

本作の一部のシステム機能や演出手法の一部がシリーズ作品外のゲームにも継承されている等*1、同社の以後の作品にも小さくない影響力を与えている作品である。


システム

  • テキストを読み進めて時折現れる選択を選ぶ一般的なアドベンチャーゲーム。画面構成も下部がテキストウィンドウ・上部がキャラクターの立ち絵のオーソドックスな形。
  • 物語はオムニバス方式となっており、主人公が複数存在する。
    • 進行は時系列順ではなく主人公順であり、例えば主人公Aの12月1日午前の次は主人公Bの同日の午後ではなく、主人公Aの12月2日となり、ある程度までシナリオが進行して初めて次の主人公にバトンタッチする流れである。
    • 主人公全員の話を一通り終えるまでがいわゆる共通ルートで、その後は選択肢によって各ヒロインの個別ルートに突入する。ヒロインごとに対応する主人公は決まっており、以後はそれ以外の主人公の出番が大幅に減る。
    • 共通ルート内の出番が早い主人公でヒロインの好感度を上げすぎると、後の主人公に対応するヒロインが攻略不可になる。ただし、基本的に選択肢は少なく好感度のボーダーそのものは甘いため難易度は高くない。
    • 一部ルートロックはあるが、これも解除条件・ルート突入方法共にアナウンスのような演出があるため分かりやすいものである。

特徴

  • 世界観はファンタジー要素の無い現実的なものであり、設定周りは練られてはいるものの極めて硬派な内容である。
  • シナリオは各主人公ごとに全く異なる雰囲気の話が展開される。それらは単独でも一つ物語として成り立っているが、 後半になるほどそれぞれの話の情報から核心が見えてくる構成となっている。
    • 一般的な恋愛ゲームと比較してもそれぞれの各シナリオは極端に短い訳ではなく、それが直列で繋がるためゲーム全体のボリュームはかなり大きい。
  • 総じて長丁場な物語でありながらテキスト・ストーリー・キャラ・演出等の全てが非常に凝っているが、特にテキストは劇中に極めて幅広い内容が混在しているにもかかわらず、そのどれもが高いクオリティで安定している。

ストーリー

ーー大都市「柳木原」
おびただしい数のひとと建物がひしめく、巨大な繫華街。
ーー季節は冬。空を見上げれば、そこには無表情な白い空。
ありがちな悩みとありがちじゃない悩みを抱えた若者たち。
彼らが出会う、恋ともろもろ。
それはきっとどこにでもある、ありふれた物語。
~羽田鷹志編~
将来の目標もなく、無気力で周囲に馴染めず孤立している。
そんな彼の日常は携帯電話のメモ帳に“残務処理”と称し記録した
「学食のチキンソテー&エビフライ定食を食べる」などといった些細な“残務”を消化する日々だった。
~千歳鷲介編~
陽気な性格で定職には就かず気ままな鷲介は、
行きつけのレストラン『アレキサンダー』の店長「軽部狩男」のわがままから“合コンごっこ”が企画され、
アレキサンダーの女の子スタッフとの親睦を深めることとなる。
~成田隼人編~
アウトロー気取りだがどこか格好つかない成田隼人。
大都市『柳木原』でヘルプ業務を請け負っているうちに、「便利屋」と呼ばれるに至る。
ある夜。隼人の噂を聞きつけた「鳳鳴」が「盗まれた自転車を探してほしい」という依頼を持って訪ねてくる。

※コンシューマー版公式サイトより引用。


キャラクター

主人公

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  • 羽田 鷹志(はねだ たかし)
    • 主人公その1。
    • 控えめで穏やかな文学少年。美空学園3年A組のクラス委員長。
    • 異世界である「グレタガルド」から転生してきた存在であるため、 本来この世界の人間ではなく、近いうちに現世を離れなければならない…と自覚している。
      • 物事への一歩引いた態度はこれが大きな原因だが、幼少時に他人にありのままを話して白眼視されたことがあり、ある程度の年齢になってからは誰にも口外していない。
    • 趣味はゲーム全般(ギャルゲー含む)やアニメをはじめとするサブカルチャー全般に加え、描写は少ないが野鳥観察等もあるようでかなり幅広い。 関連して映像技術や音楽に関する造詣も人並み以上にあるのだが、熱心に語り始めて周囲を困惑させたことがあったようで、 異世界の話ほどではないが進んで話すことは少ない。
    • 良い意味で真面目で成績も優秀なのだが、出自と趣味の両方に関して話せない関係で人との会話そのものが少なく、ゲーム開始時点での友人は皆無。
    • ゲームをプレイしてみると分かるが、しばしば描写される彼のオタク的な一面はかなりリアルである。この手のゲームにおける主人公と言えば、性格は前向きか普通・人間関係も良好か普通・趣味は無難なもの…といったものにされがちであるのに対し、ここまで現実的かつ(恋愛ゲーム的に)挑戦的な設定は珍しい。
    • 一方、「人間的に何かが欠落している」と作中で指摘されるほど思考・行動が善良かつ献身的であり、怒る、あるいは機嫌が悪くなることが基本的に無い。
      • また、相手の趣味に合わせた調べ物をして会話に臨む・休日を潰してまで一人で学級委員の仕事をこなす等マメな点もある。
      • 他、何気に突発的な荒事に対する異様に高い対応力も持つが、その性格から発揮される機会は少ない。
    • 総じて癖はあるものの、十分に主役らしい個性を持ったキャラと言える。
  • 千歳 鷲介(ちとせ しゅうすけ)
    • 主人公その2。
    • 自由気ままなフリーター。
    • 普段はお調子者を演じることが多いが、実際には場の雰囲気を和ませるためのポーズとしての意味合いが大きい。
    • おどけた態度とは裏腹に頭脳明晰で、周囲の人間に対する洞察力や気配りにも優れ、有事の際の問題解決能力も高い。
      • 鷹志と異なり性悪説的で計算高い面もあるが、その能力を発揮する機会は他人のためであること大半なので悪い印象には繋がらないだろう。
    • アルバイトの一環として雑誌のライターも請け負っており、文学的な教養にも秀でる。また、作中の男性アイドルの熱心なファンであり、その良さを力説する場面がしばしばあるが、これもコミュニケーションの一環として相手の迷惑にならないレベルにとどめている。
    • 全体的にスペックが高いが、恋愛に関しては純粋かつ不器用であるため良い意味で隙もあり、素直に好感を持ちやすい主人公。
  • 成田 隼人(なりた はやと)
    • 主人公その3。
    • 夜の街を主戦場とするヤンキー…と見せかけて、口調はそれ風だが全く素行不良ではない男。
    • 「成田工務店」と称して何でも屋を営んでいるが、従業員は彼一人で便利屋の延長のようなものである。
    • 群れるのを好まない一匹狼を自称しているが、認めた他人に対する態度は嫌悪的ではなく、むしろその点を見抜かれて友人・知人は結構な数が登場する。
    • 掛け合いではツッコミに回ることが多く、その内容はライターの力量が存分に発揮された非常にユニークなものになっている。 作中の人物からもツッコミが彼の長所として挙げられる場面があるが、全く違和感なく納得できる。
    • ボクシングの心得があり、作中でも最上位クラスの腕っぷしの強さだが、進んで喧嘩を仕掛けることはない。
    • 主人公の中では唯一それなりの女性経験があるものの、恋愛観は冷めたものではないため、恋愛ゲームなりの面白さは損なわれていない。
    • 独特の台詞回しと人の良さを隠し切れない性格から、ユーザーの評価は高い。

ヒロイン

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  • 渡来 明日香(わたらい あすか)
    • 羽田鷹志編のヒロイン。
    • 圧倒的美貌とスタイルで「学園のプリンセス」との通称があり、常に明るく誰にでも愛想が良い。さらに主人公には特別な興味を持っており、何かと注目している。…という総じていかにもテンプレな設定を持つキャラで、デザインまでも意図的に王道を踏襲するコンセプトで行われている。
      • 実際には面倒ごとを避けるために愛想が良いだけで、基本的には人間嫌い。さらに身内には男言葉混じりで遠慮なく意見を述べ、 主人公に興味を持っていた理由も恋愛的な甘いものではない…と少なくともオーソドックスではないキャラクターである。
    • ライターにしても実験的な要素を持ったヒロインだったとのことだが、プレイヤーからは好意的に受け取られたようで、 本作発売以降の人気投票では3回全てで女性キャラ中1位という結果になっている。
  • 山科京(やましな みやこ)
    • 羽田鷹志編のサブヒロイン。
    • 鷹志のクラスメイトで、大人しいを通り越して周囲からは暗いと評される少女。
    • 精神疾患を抱えているが、病名は作中では明かされない。精神状態のアップダウンが激しく、 ダウン時はしばらく登校不能になるほど衰弱した状態になるが、アップ時は人が変わったように快活に早口で話すようになる。
    • 作中のビジュアル系バンドの熱心なファンで、ネット上に自作の詞をアップロードしたりもしている。 ファンクラブ繋がりで個性的な知り合いはいるものの、基本的に友人は少ない。
    • 対人関係が苦手な一方でサブカルチャー方面の知識は人並み以上にある等、鷹志とは考えが合う点が多い。
    • 一見かなり尖ったキャラなのだが、自身の病状の関係もあって他人の異常や体調不良には敏感かつ寛容であり、作中の大半のシーンで普通に善人である。
    • 片目が隠れる髪型の関係でデザインには相当な研究と苦労があったとは担当の西又氏の談。
      • その甲斐あってか各キャラの内面の情報が極めて限られていた(=キャラデザインの影響が大きい)『~Prelude~』発売前のキャラ人気投票ではサブキャラクター中トップの順位であり、唯一メインヒロイン達以外で攻略ルートが追加された。
  • 玉泉 日和子(たまいずみ ひよこ)
    • 千歳鷲介編のヒロイン。
    • 鷹志とは同じ学校だが、1年後輩であるため直接の面識はない。
    • 鷲介のアルバイト先の(業務経験上の)先輩として、彼の指導役に任命される。
    • 常に自他共に規律を重んじ、融通が利かない性格。
      • しかし、冗談が通じない部分を利用してギャグパートのオチに使われることが多いため、 この手のヒロインにありがちな杓子定規的な鬱陶しさはあまり見られず、ネガティブな感想を抱きにくい。
    • 大ヒット小説の執筆経験もある作家であるが、本編開始時点では不調気味。
    • 一見癖が強そうなキャラだが、基本的に善良でヒロインの中で最も分かりやすい性格である。
  • 鳳 鳴(おおとり なる)
    • 成田隼人編のヒロイン。
    • 身なりの整った小柄な少女で、初対面の相手には人見知りする性格。
      • しかし、気を許した相手にはかなり積極的に話すため、基本的には明るく賑やかな印象。
    • 話題が急に変わる・真剣な時以外は語尾が伸びる・都合の悪い話は完全に聞こえなかったことにして無視する等、話し方に複数の特徴がある。 加えて言葉選びも特殊で行動そのものも珍妙であり、ギャグ方面に描写に力が入っているキャラ。
      • 声優の藤野らん氏の演技力もあり、特に隼人との掛け合いは本作のユニークなテキストの中でも評価が高い会話群である。
    • 作中ではあまり強調されないが、常に朗らかでマイナスの感情を出さない。 時折見せる健気さもあり、賑やかしのみでなくヒロインとしての魅力も十分に備えたキャラと言える。
  • 羽田 小鳩(はねだ こばと)
    • 羽田鷹志編から登場するヒロインだが、彼では攻略できない。
    • 主人公の義理の妹であるが、年齢は5歳差とかなり大きい。
    • 序盤は年相応の天真爛漫さがない一方で異様な穏やかさと落ち着きを持ち、言動もどこか掴みどころが無い。
    • ヒロインの中でも伏せられている情報量が多く、終盤でその内容が明らかになるにつれ良い意味で印象が変化していくタイプのキャラである。

サブキャラクター(主要人物のみ)

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  • 香田 亜衣(こうだ あい)
    • 成田隼斗編から登場。
    • ギャルっぽい見た目と話し方ではあるものの言動はまともであり、怪しい話に手を出したり関わったりすることも一切無い。
    • 根気よく主人公に対して好意的にアプローチするも袖にされ続け、本作ではその思いが成就することはない。
      • その一貫した恋愛面での姿勢が評価されてかメインヒロインらに匹敵するほどプレイヤーからの人気が高く、後の全年齢版で攻略ルートが追加された。
  • 林田 美咲(はやしだ みさき)
    • 羽田鷹志編に登場。本来本作には登場しない予定だったが、『Prelude』で人気が出たため出番が与えられた。 とは言え、スタッフクレジットでは「女生徒A」とされ、台詞も極めて少ない等扱いは非常に小さい。
    • ただ、その天然ながら一途な性格、関連作品での活躍もあってか本作発売後もプレイヤーからの人気は高いままであり、 後のコンシューマー移植版で攻略ルートが実装された。
  • 森里 拓馬(もりさと たくま)
    • 羽田鷹志編から登場。
    • 軽い性格で主人公をパシリやプロレス技の練習台にする一方、彼の周囲から浮いた発言や行動にはアドバイスする等、友人らしい行動も見られる。
    • いわゆる「主人公の悪友」ポジションにしてはかなり複雑かつ屈折したキャラで、プレイヤーからの評価は分かれる。
  • 針生 蔵人(はりゅう くろうど)
    • 羽田鷹志編から登場。
    • 主人公より1年上だが、素行不良により留年しているため同じクラスに在籍。
    • よくある「何でもできる天才だが興味を持たないものには冷淡」といったキャラだが、 密かに過激な音楽活動をしていた関係で発言は割とユニーク。
    • 認めた対象には肩入れすることもあり、シナリオ後半では情に厚い一面も見られる。
  • 鳳 翔(おおとり かける)
    • 千歳 就介編から登場。
    • イラストレーター兼モデルの美青年。常に冷めた態度で主人公以外には非常に口が悪い。
    • 社会人ではあるが作中の口ぶりでは年齢は主人公らからそう離れておらず、飲酒・喫煙の描写を考慮しても20歳程度だと思われる。
    • 今作のシナリオ・設定の練り込みの深さに大きく関わり、友人ともライバルとも黒幕とも言い切れない極めて独特なキャラとなっている。

評価点

テキスト

  • 全体を通して完成度が非常に高い。
    • 通常、「テキストが良い」と一口に言っても、「日常パートが面白い」、「心情・情景描写が細かく丁寧」、「シーンごとの描き分けが的確」、「比喩表現がハイセンス」、「専門的な情報が興味深い」等あるが、本作はそれら全てを高いレベルで満たしていると言ってよい。
  • 今作の日常パートはライターのユーモアセンスと語彙力が遺憾無く発揮されている。 意表を突いた言葉選びと比喩表現、そしてテンポの良さは界隈でも稀に見る評価の高さである。
    • さらにそのネタ導入の自然さと頻度の多さも特筆すべき点であり、 各ルートの雰囲気を壊すことなく、しかしシナリオ全体が明るくなるような絶妙な塩梅で細かいジョークが多数仕込まれている。
  • 一方、シリアス部分である地の文による描写も人・場所の両方の表現において高水準であり、 その場の雰囲気を直接的な言葉なしに、しかし直接的な言葉以上に直接的に訴えかけてくる。
  • 例えば、作中でのとある場面では早朝の外の風景を次のように描写している。
    + クリックで開閉
    扉の外は今日も寒かった。
    昨日と同じ、明日も同じ。
    ほどよく晴れてる。けれど冬の朝の乾いた天蓋は、青空と呼ぶにはほど遠く、
    かと言って灰色と呼ぶほどには濁ってもいない。
    爽快でも陰鬱でもなく、それは寒さに慣れて表情を失ってしまった、くすんだ白。
    だから僕は、蕭条(しょうじょう)とした12月の朝とその空の色が好きだった。
    
    • 上記に限らず、物の説明や過去の出来事、目の前の人に対する印象等、 あらゆる対象に関して詳細な、時には情緒ある表現が継続されるのでプレイ感覚として質が高い。
  • 人物描写も細かく、特に何気ない動作や表情の変化が丁寧に描かれている。
    一例として
    「こうべを垂れて、アスファルトの舗装に溜息のような声を落とした」
    「暇をもてあますようにコートを引っぱって皺を伸ばした」
    といったような些細な描写は頻繫に繰り返され、その人物の人間らしさ・生々しさを際立たせ、キャラクターにリアリティを与える役割を果たしている。 また副次的ではあるが、主人公が他人をよく見ていることの表現にもなり、個性付けの一環としても機能している。
  • ルート・主人公による描き分けは、使われる単語の傾向やモノローグの文体まで変化する力の入れよう。 例えば鷹志編であれば口語体の穏やかな表現中心の文章に、鷲介編であれば丁寧語の中におどけと冷静な分析が混在した文章に…といった具合であり、 各シナリオごとの印象の差別化に大きく貢献している*2
  • 作中では特定の病理やドラッグをはじめ、音楽・文学・サブカルチャー・(特殊な)アルバイト等に関する専門的な内容がしばしば登場するが、 いずれもライターによる綿密な取材や調査により、かなり具体的な情報まで説明される。
    • もちろん素人目に見ても全ての正誤は分からないのだが、それでも劇中の出来事の現実感やキャラ設定の厚みを感じさせる要素となっている。
  • 場面によってはセリフやテキストが混沌としたものになるのだが、この内容が常軌を逸している。 シーン単体で見ると面喰らうが、状況的に常識外れの演出が適するタイミングであるのであくまで書き分けの一環である。
    • 特に「夢テレビ」のシーン「左上太陽」「厚生労働省」といった単語は多くのプレイヤーの印象に残っているだろう。

シナリオ

  • 構成が巧みであり、伏線の展開・回収の面白さに一役買っている。
  • 本作のシナリオが時系列順でないことは先に述べた通りだが、 これによって時系列的には前の出来事をプレイヤーには後から体験させることができる。
    • 例えば先の主人公で12月3日の夜に小さな違和感のある出来事が発生し、 後々の別の主人公の12月3日の夕方のシナリオを後々プレイすることで真相が明らかに…といった具合。
    • この構成によって今作には回想シーン等での露骨なネタばらしが少なく、自然に行われる伏線回収に自発的に気付く楽しさがある。
  • セーブ・ロードを駆使する等してあえて時系列順にプレイすると分かりやすいのだが、 序盤から絶妙な引っ掛かりを覚える程度の(=読み進めるのに支障がない程度の)伏線が実に巧妙に展開されている。
  • 今作はシナリオごとに主人公の性格・活動場所・社会的立場・所属するコミュニティまで変化するが、 どの物語も一貫して丁寧な作りであり、単独の読み物としても十分楽しめる。
  • 後半になるとそれまでのシナリオ同士の関連性が明らかになり、話の内容は非常に濃くなっていく。
    + シナリオの核心についてネタバレ
  • 各主人公は解離性同一性障害を持った多重人格者であり、複数存在するように紹介されていた彼らは同一人物である。
  • 3人の中では鷹志のみ自覚がなく、グレタガルド関係の記憶を無意識に捏造することによって人格交代によって生じる空白の時間のつじつまを合わせている。
    他にも、
    ・シナリオ開始時点で人格統合の期限が近いことによる、(主人格になれない人格の)実質的な余命の短さ
    ・各主人公の自身の先行きが不透明なことによるヒロインとの関係の難しさ
    ・兄が多重人格であることによる妹の生活の苦労
    3人共オリジナルの人格ではなく、後付けの数多の人格の一つに過ぎないこと
    ・長年表に出ていないオリジナルの人格やその他の人格の扱い
    等、重い設定が多いが、その分それらに関係するシーンは総じて読みごたえがある。
  • 一方、一部を除いて各人格同士は協力的であり、ヒロインと恋仲になった主人公は精神的な支えを得て消滅しないようになる(=主人格となる)等、 ただ暗いだけの話ではない、ほどよく前向きな要素もあるバランスになっている。
  • 多重人格というテーマはこの手の作品ではしばしば使用される題材ではあるが、 本作は現実の解離性人格障害の人物への取材を行って設定を詰める等、相当力を入れて作り込まれている。
    • 例えば「主人公達のビジュアルは外部の人間から見れば全く同じであるが、主観的には他人格の姿が異なって見える」という設定も、 取材を通して実際に患者本人は他人格を違った容姿で捉えていたとの情報に沿って決定されている。
  • 他にも作中では(人格の)統合・ISH*3・ DSM*4等 の日常では接することのないような専門用語がしばしば登場し、これらも作品の事態の現実味や真剣味を印象付ける役割として機能している。
  • また、これだけ題材として大きな内容を取り扱いながらも、ルートによって
    ・病気の内容は短く描写し、恋愛模様に重点を置いて表現する
    ・病気に向き合うことと恋愛に向き合うことを並行して描写する
    ・先に恋愛描写の進展を描ききり、後にパートナーの協力して病気に向き合う流れを描写する
    等、恋愛ゲームとしての要素も生きるように複数の展開を使い分けており、それぞれが内容の濃いオンリーワンの魅力あるシナリオとなっている。
  • + 最後のシナリオについて
  • ルートロックされている最後のシナリオは各主人公のオリジナルの人格である羽田鷹志*5が主役となるが、 とある事情によってこれまで登場した人格を全て統合した状態で物語が進行するため、実質的にはゲーム全体を包括するような内容である。
    • 他ルートに劣らずテキストの質は高いが、特に序盤~中盤にかけては統合が不完全であることから複数の文体が入り交じった独特のものとなり、 そのクオリティもあって他作品ではそうそうお目にかかれないと思わせるような文章である。
    • 終盤に向かうにつれて全てのルートのキャラや伏線等のあらゆる構成要素が融合してシナリオが進むので他のルートにも増して内容が濃い。 それでいてシリアス要素とバラエティ要素のバランスも良く、一定の緊張感を持ちながらも暗い気持ちになりすぎずに読み進めることができる。
    • クライマックスは大どんでん返しがあるわけではないものの、膨大な情報を総括するにふさわしい丁寧な結末であり、シナリオを通して完成度が非常に高い。

キャラ

  • シナリオに登場するキャラクターは主人公1人につき5~10人程度(一部重複はあるが) であるため作品のトータルで見るとかなりの大人数である。
    • その大半が立ち絵あり・ボイスありでシナリオでの掘り下げも深く、1人1人に存在感がある。
  • キャラ紹介の段落ではかなり省略したが、作中全体で言えば実は男性キャラの方が人数が多く、 特徴付けも女性キャラと同等程度にされているのも特筆すべき点である。
  • 前述のテキストの効果もあり、本作のキャラクターは誰もがテンプレ的な人物でなく、リアルな複雑さと個性、そして独特の魅力を持っている。

BGM

  • 楽曲単体で見ると一部を除き特異なものではないが、各物語の雰囲気の違いの演出において重要な役割を果たしている。
  • 各シナリオの冒頭付近ではそれぞれの主人公のメインテーマ曲が流れるが、 これらは同じメロディながらもアレンジの差で受ける印象がかなり異なる。
    • その他の曲もシナリオごとに全く違った楽曲が使用され、例えば感傷的な描写が多い羽田鷹志編ではゆったりとしたアコースティック調の曲が多く、 カフェでの活動が多い千歳鷲介編で洒落たジャズ調のBGMが中心になる等、まるで違う作品をプレイしているかのように見事にイメージが変化する。
    • EDテーマ曲も主人公別が徹底されており、各々の方向性はBGMに輪をかけて全く異なるものの、演出的な意味も含めて評判は良い。

演出

  • 効果音の使い方が細かいながら小気味良く、特にギャグパートのテンポの良さに一役買っている。
  • 1日の初めに日付表示画面が挿入されるが、各主人公ごとに象徴的なオブジェクトが表示される等、凝った作りになっている。
  • 結構な頻度で中程度のウィンドウが割り込む形で静物のCGが挿入される。この仕様は同社の後発作品にも継承される要素であるが、今作は特に種類が豊富。
    • 絵の内容で言えば公衆電話や文庫本、パソコン等の日常的なものだが、それだけにその場の情景が分かりやすい手堅い演出となっている。
  • 本作の各主人公はパートボイスだが、これも演出の一環としてそれぞれのシーンをより印象深いものにしている。
  • 比喩ではなく子供の落書きのようなCGがいくつか存在するが、該当部分のシナリオと合わせて極めて印象的な 恐怖の 演出に成功している。
  • オープニングムービーがかなり豪華。フルアニメーションであり、制作はアニメ版『SHUFFLE!』や後年の『SHUFFLE!エピソード2』の オープニングムービーも担当する株式会社アスリード。
    各ヒロインを含みありげに描写しつつ、本作の数多いキャラクターを矢継ぎ早に個性豊かに登場させている。 勢いとシリアスさを併せ持った楽曲の効果もあり、作品の世界観の広さや練りこみを連想させる映像となっている。

システム

  • インターフェースの効果音やシステムは先発の『SHUFFLE!』シリーズと共通であり、機能的にもバックログやボリュームコントロール等の一通りのものは揃っている。
    • その中でも新しく実装されたシーンスキップ機能は手の込んだ作りである。スキップする前に現在のシーンタイトル・日付・登場キャラに加えて簡単なあらすじまで明示されるため、ただ暗転するだけのことが多い他作品と異なりシナリオの流れを追いやすい。
      あらすじはこの機能専用のテキストである。また、シーンタイトル表示も他には閲覧目的には向かないセーブ画面限定であるため、攻略目的でなくても見る価値がある。

賛否両論点

序盤のシナリオ

  • トップバッターにあたる羽田鷹志編の話が暗い。本作の体験版は主人公ごとに分かれているのだが、 (もちろん公式サイトであるにもかかわらず)ダウンロードページに「千歳鷲介編を先にプレイすることをおすすめします」との記載があるほど。
  • 鷹志本人に自覚はないものの、彼の優しさに周囲の人間が漬け込む描写が多く、有り体に言えばイジメ。
    • 彼がそもそも設定的に損な役回りが多いキャラであることに加え、時期的にも後々の展開と対比して雌伏の時であるため二重に辛い内容となっている。
  • この序盤を苦手とする、あるいは乗り切れずにギブアップしたプレイヤーも存在し、やり抜いたユーザーからも「本作で唯一つまらない部分」と評されることがある。
  • ただ、この章は作中の時間で言えばたった2日間の出来事で、実際のプレイ時間的にも2時間半程度で済むため、 後のシナリオへの繋ぎと割り切れるプレイヤーにとっては問題になりにくい。
    • また、暗い話ではあるが物語の質が低いわけではなく、含みのある描写や伏線も多いこの序盤を前向きに興味深いと評価するユーザーも少なくない。

中盤の展開

  • ある程度物語が進んだ段階で登場キャラがいわゆる精神異常者中心になるパートがある。 その内容はかなり癖があり、(妄想が入っているものの)グロテスクな表現も含むため、苦手なプレイヤーによっては辛く感じる。
    • しかし、前述の通り混沌とした状況を混沌としたテキストで表現していること自体は筋が通っているため、作品としては評価点とする声も多い。

CG

  • 登場人物が多いこともあってか女性キャラの描き分けがあまり出来ておらず、人によっては気になるところ。 一応、テキスト上では頻度の差はあれど基本的に全員美人であると描写されるため、整合性という点での大きな違和感は無い。
    • その他、主にアダルトシーンにおけるキャラの姿勢や手足・胴体の長さに違和感を感じるイラストも散見される。
    • ただ、西又氏のこうした作風は今に始まったことではなく、特に過去作からのファンは気にしないプレイヤーも多い。 また、そもそも大半のCGでは問題なくキャラを魅力的に描けている。
  • 余談だが、作中に氏が過去に担当したゲームが登場するシーンがあり、 作中のキャラが「全員同じ顔をしている」と評する自虐ネタが仕込まれている。

香田亜衣の扱い

  • サブキャラクターの一人である彼女は本編中での扱いが大きく恋愛的な描写も充実していたため、 攻略ルートが無いことに対する不満の声がかなり多かった。
    • しかしながらこれらの声はシナリオ中の彼女の描写が魅力的であったことに対するジョーク・遠回しな賞賛の意味合いも大きく、 真に批判的な反応であったのは皆無かごく一部であったと思われる。

問題点

羽田小鳩の扱い

  • メインヒロインの一人であるはずの羽田小鳩のアダルトシーンについて、完全合意の下で進行するシーンが存在しない。
  • 具体的には、2シーン中2シーン共に主人公から強引に行為を求める展開である。
    • この時点での主人公は精神的に不安定ではあるのだが、それを鑑みても経緯も一足飛びで後味が悪い。

シナリオの起伏の無さ

  • 本作のシナリオは順序立てた恋愛や各キャラクターの内部的な成長を軸に話が展開しており、丁寧ではあるのだが盛り上がりに欠ける部分がある。
  • ただ、これは本作の設定周りが現実味のある、悪く言えば地味なものである関係上、実際に作中で発生させられる大事件やイベントはどうしても限られる、という事情もある。

総評

ハイレベルなテキストとシナリオをはじめ、キャラ・演出・BGMのどれをとっても丁寧な作りの良作。
序盤の話こそやや人を選ぶ部分はあるが、ライターやブランドに興味がある人はもちろん、恋愛アドベンチャーゲームに慣れ親しんだ多くの人におすすめできる名作である。


余談

前述の通り本作の開発は非常に難航しており、発売日が発表された際には後藤邑子氏から「(発売日が決まったのは)何かの冗談ですか?」と言われるなど、幻の作品として扱われていた。


全年齢版・移植版

※コンシューマー移植版のタイトルは『俺たちに翼はない』ですが、内容は『俺たちに翼はない R』準拠であるため、まとめて扱っています。

俺たちに翼はない R

【おれたちにつばさはないあーる】

ジャンル 恋愛アドベンチャーゲーム
対応機種 PC版 Windows XP/Vista/7
移植版 プレイステーション3
プレイステーション・ヴィータ
発売・開発元 PC版 Navel
移植版 5bp.
発売日 PC版 2011年6月24日
移植版 2014年4月10日
定価 PC版 8,800円(税別)
移植版 【通常版】6,800円(税別)
【限定版】8,800円(税別)
【DL版】6,000円(税別)
レーティング PC版 ソフ倫:15歳以上対象
移植版 CERO:C(15歳以上対象)
判定 良作

俺たちに翼はない R(PC版)

  • 原作のテレビアニメ化に合わせ、一般向け(15歳以上)にリニューアルされたバージョン。Windows 7にも正式に対応している。
  • ユーザーからの要望の高かった香田亜衣ルートが追加された。
    ライターは東ノ助氏が担当しているが、これは同社から発売されていた『世界征服彼女』での氏の力量を王雀孫氏が考慮し、 亜衣ルートのシナリオ作成により適任であると判断したためである。
    • 内容は相当に高評価であり、ヒロインの魅力が共通ルートからブレ無く立っていながら、それ以外のキャラも順当に活躍している。 これまでには無かったキャラ同士の絡みや展開もあり、安心して読める内容でありつつ新鮮さも感じられるシナリオとなっている。分量としても全ルート中屈指のボリュームになっており、他ルートよりもシリーズ展開がかなり進んだ段階で作られたためか、そもそもの情報量も多い。
  • アダルトシーンの差し替え分のシナリオは王雀孫氏本人が担当。
    • 意図的かどうかは不明だが、通常のアダルトシーンは直接的な描写は省きつつも「そうした事実があったこと」を示唆するテキストは完全にそのままなのに対して、 不評か賛否両論だったシーンは全く別の展開になるかそもそも無かったことにされた。
    • 差し替え分のイベントのボリュームはまちまちで、元と変わらない尺のイベントが用意されたシーンもあれば単純な省略に近いものも存在する。
    • 鳴ルートは後者の方だが、元々のボリュームもあって結末部分の尺がかなり短くなってしまった。また、他のルートにおいても元々アダルトシーン中に入っていたキャラクター描写は失われているため、ヒロインの印象が変化する可能性がある。
  • 一部シーンは妙な変更をされているが、こちらは元からして混沌とした展開であったため、むしろ変更後の方がキャラ立ちという面で優れているという見方から肯定的な意見が大きい。
  • アダルトシーン以外の修正も多少あるものの、物語の理解に支障をきたすほどではない。

PS3・PSVITA移植版

  • 本編に先駆けて発売された前日談である『Prelude』の内、メインとなる4本のストーリーが全て収録されている。
    • 収録されなかった部分はおまけ程度のものなので、改めて『Prelude』を購入する必要がほぼ無いのはありがたい。
  • タイトルは『俺たちに翼はない』だが、レーティングの関係で内容は『R』準拠である。
  • 新規オープニングムービーを追加。こちらはゲーム起動~タイトル画面前に流れるもの。
    • フルアニメーションだった原作のムービーと比較すると作中のCGや立ち絵を用いた一般的なものだが、ルートが後から追加されたキャラも既存のヒロイン達と並列に描写されるようになり、本編の内容とマッチしている。
      • 楽曲はPC版に輪をかけてスタイリッシュで雰囲気のあるものとなり、順当に高評価。
  • 林田美咲ルートが追加。
    • 他のルートとはかなり方向性が違った内容であり、個別ルートの割には主人公と美咲との仲はそこまで進展しない。一方、他のヒロインやその他キャラクターの描写は手広く行われている。
    • これまでのシリーズ展開に無い目新しいシーンや、不明であった点に関する内容が盛り込まれ、ファンには興味深いシナリオとなっている。 ただ、本来はゲーム全体にまんべんなく散らして配置するような話が1ルートに集約しているため、 香田亜衣ルートに比べて共通ルートの雰囲気が強いままエンディングを迎える。
    • 総じて個別ルートというよりも 「シリーズ発売5周年記念のお祭り特別ifシナリオ!」 と紹介された方がしっくりくるような内容である。
    • 一応彼らの仲が進展しきらないことについてはある程度の理由付けがあり、 また、個々のシーンのクオリティはかなり高いことから、特異な内容に反してファンからの批判はあまり見られない。
    • 最初のPC版の発売から5年経過していることもあってか、新規CGの絵柄が既存のものとはかなり異なり、一部は単体で見た場合のクオリティも怪しい。 『R』時点で追加されていた分は問題無かったのだが…。
  • 画面比率が4:3から16:9に変更。新規のものも含めて背景やイベントCGの縦横比は4:3なのでやや上下が切れて解像度が下がる形になるものの、 プレイ中に違和感が出るほどでもない。
    • 一部は本編中にスクロール演出になるが、それ以外のCGもギャラリーモードで全体を見ることが可能。
    • シナリオ中の日付表示のアイキャッチのみ横に引き伸ばされた形になるが、描写されるオブジェクトが限られるためわざわざPC版と比較する等しなければ気にならない程度である。
  • この手のコンシューマー移植には付き物ではあるが、システムやシーンスキップのレスポンスは遅くなっている。ただ、スキップ機能に関しては元々がかなり高速だったので致命的ではない。

総評(R)

アダルトシーン削除によってシーン中の重要な描写がいくつか失われた一方、差し替え内容の工夫もあって原作の問題点のいくつかは解消されたため、一長一短である。
しかし、追加ルートの質は高く、トータルで見れば作品としての完成度は損なわれていない良リニューアル・良移植と言え、シリーズを初めて触るプレイヤーにも十分おすすめできる。

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最終更新:2022年02月05日 14:31

*1 例えば独特なアイキャッチの演出は後の『世界征服彼女』や『月に寄りそう乙女の作法』シリーズにも全く同じ効果音・ほぼ同じ形で継承されている。

*2 ライター自身もネット上のインタビューにて「キャラごとにまるで違った筆致になるように注意した」と述べている

*3 精神医学用語で「Inner Self-Helper」の略

*4 医学書の一種で正式名称は「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders」

*5 漢字がタカシと全く同じなのでややこしいが「はねだ ようじ」と読む