There Is No Game: Wrong Dimension

【ぜあ いず のーげーむ ろぉーんでぃめんしょん】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 Windows/Mac OS(Steam)
iOS 10.0以降
Android 5.1以上
Nintendo Switch
メディア ダウンロード専売
発売・開発元 Draw Me A Pixel
発売日 【Steam】2020年8月6日
【iOS/Android】2020年12月17日
【Switch】2021年12月16日
定価 【Steam】1,320円(税込)
【iOS】610円(税込)
【Android】650円(税込)
【Switch】1,670円(税込)
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 良作
バカゲー
ポイント メタネタ・パロディだらけのADV


概要

フランスのインディーデベロッパーDraw Me A Pixelから発売されたゲーム。
Steam版は当初日本語に非対応だったが、2021年12月16日の日本でのSwitch版の発売に伴い、Steam版も日本語に公式対応した。
iOS/Android版は『There Is No Game: WD』のタイトルで配信され、2022年1月3日に日本語に対応した。


特徴

  • 基本的なシステムはポイント&クリック式のアドベンチャーゲーム。
  • プレイヤーは「ユーザー」と呼ばれ「プログラム(ゲーム*1)」と会話をしていき、ストーリーを進めていく。
  • 全体の流れとしては「序盤:プログラムVSユーザーの1対1の戦い」、「中盤:第三勢力によってバグまみれになった他ゲーム世界(=Wrong Dimension)をプログラム&ユーザーが呉越同舟で救っていく旅」、「終盤:第三勢力とプログラム&ユーザーの最終決戦」の三段構成となっている。

評価点・おバカな点

  • プログラムがユーザーに対して話しかけてくるなどメタ要素が多く、全体的にコメディチックな雰囲気となっている。
    • 最初はプログラムは「There Is No Game!(ここにはゲームはない)」と言い張り、ユーザーに対して「あれをするな」「これに触るな」など、完全にダチョウ俱楽部のノリで止めてくるので、プレイヤーも自然と色々と弄りたくなるような入りになっている。
    • 時折、実在人物の名前や版権作品のキャラの名前を出したりと、中々ふざけた台詞を話してくる。
  • ほぼフルボイスの名演技
    • レトロゲームの「ポポポ」系のセリフには意図的に声がついていないが、それ以外の作中会話は全てがフルボイスである。特に主役のプログラム役のパスカル・キャミソット氏(=開発者)による長丁場のノリツッコミや一人二役芝居はまるで専業のプロ声優なのかと錯覚するほどのクオリティ。とある場面で日本語で「ゲームガアリマセーン!」と叫ぶ邦人など、モブキャラにも声がきちんと充てられており、耳と目で楽しめるようになっている。
  • 1本のゲームで複数のゲームを遊んだ気になれる満足感
    • 「バグありゲームを直してクリアに導く」という中盤の展開ゆえに、さまざまなUIのゲーム画面が乱れ飛びつつも何度も「めでたし・めでたし」が訪れる。どのゲーム画面もしっかりと作りこまれており、複数のゲームをクリアした気分に浸れるお得感がある。
  • ストーリーも進めるにつれて突拍子も無い闇鍋のような展開になっていく。
    + カオスなストーリーの詳細、ネタバレ注意。
    • とあるチャプターではプログラム曰くRPG風の世界観に飛ばされてしまうが、この世界のUIならびにアイテム類・ゲーム性がどう見ても『ゼルダの伝説』のパロディ。
    • 直後のチャプターでは直前のゼルダ風の世界観でF2Pゲーム*2に飛ばされてしまう。
      • 広告がやたらと多い、スタミナ制のシステム、ルートボックス(いわゆるガチャ)があるなど、F2Pの闇をごちゃ混ぜしたかのような世界となっている。プログラム自身もF2Pの世界は最悪だと言う始末。
      • しかも、その広告はどこかで見たようなゲームの露骨なパロディネタになっている。海外産のゲームなので、日本人には若干マイナーなゲームのネタもあるが。
    + 最終盤に至っては……?
    • なんとプログラムの作者が実写映像で登場する
      • 冒頭からメタ発言・メタ演出が大量に出てくる本作でしか許されない芸当と言えるだろう。
    • 終盤のストーリー自体は「悪のプログラムが現実世界に大混乱を引き起こす」という展開なのだが、それを人間が一人芝居で表現している*3ので、人によってはシュールな絵面に映るかもしれない。
  • 笑いの中にも涙あり、の絶妙な緩急
    • 常にコメディチックな雰囲気に包まれた作品であるが、所々でシリアスな伏線が違和感なく挿入される。
      + 終盤のどんでん返しに関するネタバレ注意
    • プログラム本人が序盤から「There is No Game!(ここにゲームはない!)」と主張し続ける真意が、「There is “No Game”...(ここにある俺はゲームの出来損ないだ...)」という自責の念だったことが終盤に判明する。この伏線は序盤・中盤のそこかしこに「英語が特定の言語訛り」「特定の単語で言いよどむ」など絶妙な違和感としてプレイヤーに提示されていたものであり、終盤で伏線回収されるカタルシスへと巧妙に誘導している。
    • シリアスを挟みつつもアンサーはコメディ交じりのもので、おバカなノリを損なうこともない絶妙さ。
  • 愛嬌のあるキャラクター達
    • 相棒である「プログラム」をはじめとして、敵味方全てのキャラクターがおバカで人間臭い性格をしている。トンチンカンな迷探偵やマイペースすぎる勇者、アクの強い他国籍ゲーム達など皆ハタ迷惑なのに憎めない愛嬌がある。

賛否両論点

  • 謎解きが難しい。
    • 基本的にメタ的な視点でプレイする都合上、「その発想があったのか!?」と思うような奇想天外な解き方が多いので、謎解きの難易度はやや高め。その分意外性はあるのだが。
    • 幸いにもヒントや答えを見ることができる機能が搭載されているため、答えがわからなくて詰まることはない。
  • 常に「画面を観察すること」が求められるが、それがUIを含むあらゆる場所であるため、小さめの画面やコントラストが弱めの環境でプレイすると難易度が上がる場面が少なくない。*4

問題点

  • アクション性の高いプレイを要求されることが多い。
    • アクション性が高いこと自体は問題ではなく、問題なのは操作性。基本的にポイント&クリックで操作するため、思うように操作しづらい。
    • 「ポイント&クリック」と言いつつ、ドラッグ&ドロップ操作が必要となる場面の方が多いのも難点。PCでマウス操作する分には気にならなくとも、コンソール機でコントローラ操作する場合はそれだけで難易度が上がってしまう。
      • カーソルを高速で動かせないSwitch版では、なおさら難しい。
    • 例を挙げると特定のタイミングでアイテムを使用したり、手際よくアイテムを使用する場面があるなど、ポイント&クリックの操作性では若干難しい操作が入ることが多い。
    • とはいえ、ゲームオーバーやバッドエンドというものはないので、そこまでストレスの溜まるものではないが。

総評

ゲームシステム自体は昔ながらのポイント&クリック式のアドベンチャーであり、システム面において革新的な部分があるわけではないが、本作の魅力はそこではない。
本作の一番の魅力はプレイヤーを笑わせるための豊富なメタ演出やギャグシーンの数々によって、笑わせて楽しませてくれることなのである。
比較的価格も安く、謎解きがわからない場合の救済措置も搭載されているため、興味があれば購入を検討してもらいたい。


余談

  • 本作は2015年に行われたゲームジャムにおいて開発された『There Is No Game』という作品が元となっている。
    • この元となった作品は、日本語は未対応だが、Steamにて無料配信されている。
最終更新:2022年12月25日 16:55

*1 作中での呼び名。自己紹介する際にも「ゲーム」と名乗っている。

*2 「Free To Play」の略。要は基本無料ゲーム=課金制ゲームのこと。

*3 苦手な味のコーヒーを飲んで噴き出す、掃除機に追っかけられるなど。

*4 特にF2Pのとある場面はヒントがもの凄く細かい場所に隠されており、モニタ環境によっては気付くのが無理ゲーに近い。