SUPER将棋
【すーぱーしょうぎ】
ジャンル
|
将棋
|
|
対応機種
|
スーパーファミコン
|
メディア
|
8MbitROMカートリッジ
|
発売・開発元
|
I'MAX
|
発売日
|
1992年6月19日
|
定価
|
8,800円(税別)
|
プレイ人数
|
1人~2人
|
セーブファイル
|
棋譜5局など
|
判定
|
なし
|
ポイント
|
初心者お断り SFC初のまともな将棋 詰将棋120問は史上初
|
概要
SFC初期に発売された将棋ソフト。
当時のSFC将棋の事情は明るいものではなく、同社の『ファミコン将棋 竜王戦』(以下、FC竜王戦と表記)でファミコンの限界を突き付けられたところに『初段 森田将棋』の失敗もあり、暗礁に乗り上げていた……
その翌年に本作が発売された。『FC竜王戦』の正統進化版とも言えるものであり、特に問題だったCPUの長考とそれに見合わない棋力の低さが大幅に改善されている。
内容
本作は「棋力別対局」「東海道五十三次」「トーナメント」「詰将棋」で構成されている。尚、分かり易さのため順番を変えて説明する。
-
棋力別対局
-
CPU対局
-
AIの強さは8段階で、駒落ちは平手~飛角落ちの上手下手が選べるので、初心者を脱したプレーヤーから腕に覚えがあるプレーヤーまで幅広い棋力に対応している。
-
音声の読み上げも実装
-
女性の声で指し手を読み上げてくれる。ただ読み上げている間は指す事は出来ないが、そこは必要に応じてON/OFFの切り替えも出来るようになっている。
-
棋譜の保存
-
5局まで保存可能であり感想戦も行う事が出来る。尚、他のモードでは進行状況はセーブ出来るが棋譜の保存は出来ないので注意。
-
候補手表示
-
2人プレイも可能。
-
お互いに対局するのが、本作唯一の2人プレイモードである。
-
しかし、同社の『FC竜王戦』で実装されていた手番に応じた盤面反転や待った機能は実装されていないのは惜しい。
-
トーナメント
-
内容は『FC竜王戦』を踏襲しており、将棋ニュースのアナウンスの後に対局が始まる。主人公は「ぷれいや」となり、Cリーグから将棋を勝ち抜いて行き、名人への挑戦権を獲得することになる。
-
『FC竜王戦』ではパスワードが表示されていたが、本作ではセーブする仕様になっている。ただし、対局した際の棋譜は保存出来ない。
-
Cリーグ
-
「おおそと」「きしや」「おしお」「はやっし」「あわあわ」
-
Bリーグ
-
「はっしん」「きたべい」「あおやん」「まむし」「しましま」
-
Aリーグ
-
「つかった」「そとふじ」「べーちょ」「ちゅうや」「やがわん」
-
スーパー名人戦
-
名前で既にお気づきの方もいると思われるが、実在する棋士のそっくりさんである。1人1人に顔グラが用意されており、盤面の状況に応じて表情も違って来るようになっている。
-
詰将棋
-
5手詰(40問)
-
7手詰(40問)
-
9手詰(30問)
-
11手詰(10問)
-
以上、全部で120問用意されている。
-
後述する「東海道五十三次」モードで登場する事があるため予習しておくと有利になるだろう。
-
東海道五十三次
-
双六形式で江戸から京都へ向かうストーリーモード。行く先々で色々な相手と金を賭けての勝負が繰り広げられる。
-
「ある晩、江戸の日本橋に住む『弥平』という男のもとに『将棋の駒の精』が訪ねてくる。駒の精は家族とはぐれてしまったため、三度の飯より将棋好きな弥平を頼ってきたという。そして弥平は家族がいるという京都まで一緒に行くことにした」というストーリー。
-
道中は一本道で、分岐などはない。
-
勝負内容
-
止まったマスでは将棋の使い手から勝負を挑まれる。その内容は他のモード「棋力別対局」や「詰将棋」の集大成となっている。
-
対局は、駒落ちのハンデを背負ってレベル1のCPUと戦ったり、他にも時間制限や手数制限があるなど色々な条件で戦う事になる。
-
詰将棋は一発勝負。ミスは許されないが、詰将棋モードで予習をして解答を知っているなら、対局よりも早く勝てるというメリットもある。
-
勝負に負けると所持金が減り、なくなった時点でゲームオーバー(つまり所持金=残機)。
-
負けてもマスを戻ることはなく、その場から再開する。
-
ラスボスとは1両支払って対局する形になる。
-
クリアまでの道のりは長いが、1勝負ごとにセーブできるようになっている。
+
|
ラスボス
|
-
ラスボスは京都の金持ち商人『金次郎』
-
勝つと金次郎に気に入られ、弥平は娘の婿として店を継ぐことに。駒の精も家族と再会する。
|
評価点
-
棋力の進化
-
ハードスペックの向上により棋力も向上。特に同社の『FC竜王戦』のCPU対局の悲惨さを味わったプレーヤーから見れば、尚更早くて強くなった事を実感できるだろう。
-
序盤・中盤・終盤
-
序盤は「約5万手の定跡データ」とパッケージ裏にある通り、定跡手は即座に進行。勿論、奇襲戦法パックマンに対する耐性も健在。
-
終盤ともなると、詰みがある際は確実に詰ませてくるし、自玉の詰みは消してくる。更にポカやトン死も絶対にしないため勝ち切るのは容易ではなく、場合によっては勝勢から逆転負けという事もある。ここは特に猛威を振るってくるだろう。
-
したがって、序盤を乗り越えてから中盤でポイントを稼ぎ終盤で押し切るというのがセオリーである。ただCPUが強くなっているのでそれも難しくなってきている。
-
SFC将棋は本作以降も発売されるが、それらと比較してもまだ強い部類に入るほど。本作のCPUに勝つことが出来るのならば、ほとんどのSFC将棋に勝つことが出来ると言っても過言ではないだろう。
-
詰将棋の問題数が豊富
-
現在でこそ珍しくなくなったが、詰将棋が120問収録されているのは当時としては最大である。
-
その他
-
指し手の音声読み上げが実装されていて、臨場感がある。
-
トーナメントの棋士や東海道五十三次の人々も状況に合わせて表情が細かく変化する。
-
大容量8メガROMを採用したことで、上記のような内容を色々と実現している。
賛否両論点
-
初心者には厳しい強さ
-
CPU対局は前述したとおりの強さであり、初心者は最も弱いレベル1を相手に二枚落ちの下手を持ったとしてもまだ難しいかも知れない。
-
詰将棋も最初から5手詰め以上で簡単ではない。
-
東海道五十三次は見た目こそライトユーザー向けだが、道中は上記のCPU対局や詰将棋が猛威を振るって来るので厳しく、そして何よりラスボスが待ち構えている。
-
本作以降もあらゆるメーカーから将棋作品が発売されているが、残念な事に初心者に適したSFC将棋は1作も発売されることは無かった。
問題点
-
機能が物足りない
-
『FC竜王戦』ではCPU同士の対局を行ったり、自作した詰将棋をCPUが解くモードが搭載されているが、今回はそれらは実装されなかった。SFCで更なる発展や改善を期待していたプレーヤーにとっては劣化ともとれるだろう。本当に勿体ない。
-
また2人プレイでは手番が回って来たプレーヤーに応じて盤面が反転する機能もあったがそちらも実装されていない。
-
後に本作の2作目3作目も発売されるのだが、そちらにおいてもそういう機能が実装されることは無かった。
-
読み上げが少し不自然
-
異様に怯えているような声で棋譜を読み上げる。イントネーション自体は自然なのだが…
-
『2』では改善され、落ち着いた声で読み上げるようになっている。
-
「2二角」に対して「2二銀」とする状況などでは、本来「同銀」、又は「2二同銀」とするのが普通だが、なぜか「同2二銀」と読んでいる。
-
この他にも、駒落ち戦で「上手」と読むべきところを「先手」と読んでいたりする。定跡や詰将棋の数が多すぎて容量が足りなかったのだろうか。
-
候補手表示の取り扱いが不便
-
考えている間は「候補手検索中」と出るが、その間は画面が止まった状態であり経過時間が表示される事もなく、まるでフリーズしているように見える。
-
指し手を示してくれるのだが、1回だけ動かした後はすぐに手を戻してしまう。このため見逃したら再度行わなければならない。
-
これを1手ずつ繰り返して行けば一応CPU対局を行える考えになるが、そこまでしてCPU同士の対局を見たいかと言われたら流石に無いところである。
-
本作シリーズの2作目3作目でも実装されていないので、もっと良い選択肢を考えてみよう。
-
「待った」が出来ない
-
トーナメントや東海道五十三次で使えないのは分かるが、2人プレイでも待ったが出来ないのは厳しい。
-
SUPER将棋の2作目以降では実装されるようになった。
-
トーナメントの仕様
-
キャラクターによって戦法が異なるという事がなく、代り映えがしない。
-
アナウンサーも判を押したようなセリフばかり。
-
棋譜を残せない。
-
エンディングが簡素。
+
|
エンディング
|
ついに新名人がたんじょうしました。ながい間、名人として君りんしてきただいさんを新進気鋭のぷれいやが下したのです。
ごくろうさまでした、だいさん前名人。そして、おめでとうございます、ぷれいや新名人。
ながく苦しい戦いを終え、あなたは名人になることができました。将棋界における一つの歴史が、あなたの手によって終止符を打たれ、新たなながい歴史があなたの手によっていま、幕を開けたのです。
-
以上。原文をそのまま抜粋した。『FC竜王戦』では授位式で免状読み上げや胴上げがあったがそういうものも無く、タイトル画面に戻る。20局以上の対局の後がこれだけではプレーヤーは報われない。漢字が少ないのも迫力に欠ける。
|
-
詰将棋で不正解扱いにされる場合がある
-
一例としては
-
5手詰め1問目から早速出て来てしまっている。これは、詰め上りは馬でも角成でも詰むが、角成が正解で馬が不正解にされてしまう。
-
5手詰め4問目では、3手目に銀不成でも銀成でも同玉とするしかないところであるが、不成が正解で銀成が不正解にされてしまう。
-
詰将棋モードは基本的には時間制限もなく、正解を不正解扱いにされるのは違和感が強いが即座にやり直せるためそこまで気にならない。
-
東海道五十三次では大きな問題点となる。
-
詰将棋の勝負になった場合であるが、これは制限時間内に解ければ良いというようなものではなく一発勝負。普通に間違えて負けたのならまだしも、上記のような理由で敗北扱いは理不尽に感じるだろう。
-
東海道五十三次
-
勝たないといけない勝負のような場面がなく、とにかく京都に辿り着けばいいため、ある程度お金を稼いだら「1両だけ賭けて投了」で
袖の下ショートカットが成立してしまう。
-
その上1戦ごとにセーブできるため「手持ちの金すべてを賭けて勝負し、負けたらリセット」で稼ぐこともできてしまう。
-
ちなみに掛け金も上限はなく、2両→4両→8両→16両→32両→‥‥となって行き最終的には999両までなってしまう。
-
このあたりを見るにテストプレイが甘かったところがあると思われる。ちなみに999両を賭けて負けた際は一気に暴落するので見ていてシュールである。
-
稼いだお金で駕籠に乗って先に進めたり、あるいは詰将棋あたりで待ったが出来るアイテムでも購入できるのならよかったのだが‥‥
総評
CPUの強さや豊富な詰将棋の収録など、タイトル通りスーパーな将棋に仕上がっている。これにより暗礁に乗り上げていたSFC将棋に一筋の光が差し込んだのは確かである。
その一方で問題点や劣化点も大きく良作には届かなかったのは勿体ないところであるが、92年度における唯一のSFC将棋作品ではあり、切り込み隊長という意味合いはかなり大きかったと言えるだろう。
その後の展開
-
本作はシリーズ化し、SFCでは本作を含め3作が発売された。
-
2年後の94年6月には『スーパー将棋2』が発売される。
-
「対局」「将棋番付」「将棋全国選手権」で構成されている。将棋番付ではCPUと対局させてプレーヤーの棋力を判断したり、全国選手権は多くの腕自慢に勝っていき全国を巡る話になっている。
-
その頃までに発売されたSFC将棋は『早指し二段 森田将棋』『将棋 風林火山』『伊藤果六段の将棋道場』のみである。
-
それ以降は日本将棋連盟の監修と、SUPER将棋シリーズ以外のメーカーからも独自の要素を打ち出した将棋作品が発売されて行く。
-
95年12月末には『スーパー将棋3』が発売される。
-
「対局」「回り将棋」「棋士の星」で構成。回り将棋はミニゲームであり、将棋の星は入門して来た女子を鍛えるというもので恋愛シミュレーションを彷彿させる。
-
他社の作品に追随される。
-
2作目3作目ともにグラフィックなどの品質が向上しており、毎回違った付加価値を打ち出しているのは確かであるが、将棋ゲームとしては詰将棋などはなく微妙なところであり、他社の追随を許したのは残念である。
現在のところは3作品とも投げ売りされているので、腕に覚えがありSFC将棋に興味を示した方は手を出すのも良いだろう。
最終更新:2022年10月06日 20:28