本項は「Ver1.00」「Ver1.50」「Ver2.00」をまとめて取り扱っています。
Ez2Dj 7thTRAX ~Resistance~
【いーじーとぅーでぃーじぇー せぶんすとらっくす れじすたんす】
ジャンル
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音楽ゲーム
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対応機種
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アーケード
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販売・開発元
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Amuse World
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稼動開始日
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Ver1.0
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2007年3月14日
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Ver1.5
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2007年12月21日
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Ver2.0
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2008年3月28日
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プレイ人数
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1人~2人
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判定
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なし
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ポイント
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2年半振りに帰って来たEz2Dj ゲームシステムの大幅強化 シリーズ3回目のスタッフ総入れ替え 劣悪な開発環境から露呈した品質低下
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EZ2シリーズ
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概要
『EZ2DJシリーズ』の8作目となり『EZ2DJ 6thTRAX ~Self Evolution~』から2年半ぶりの新作タイトル。
「Resistance」というサブタイトルは、稼働当時の2007年においてオンラインゲームのブームの影響で景気が悪化していた韓国アーケードゲーム市場と、シリーズが置かれていた状況に対するものだとのこと。
開発スタッフが総入れ替えしており、本作からを「第二世代」と呼ぶことが多い。
Ver1.00/Ver1.50/Ver2.00合わせた新曲55曲に加え、Ver2.00では復活曲が6曲追加。総収録曲は204曲と過去最高の収録曲を誇ることとなった。
特徴
SHDMIXの追加
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これまでの難易度設定はEZMIX・NMMIX・HDMIXの3種類だったが、新たにSHD(SuperHard)MIXが追加された。
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SHD譜面は主にコースモードのRadio Mixでしか遊べなかった専用譜面や新曲を中心に追加されており、HDMIXを超える上位難易度が自由選択で楽しめるようになった。
ロングノートの仕様変更
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前作までのロングノートは押している間はコンボ数が1個しか増えなかったが、本作以降「ロングノートを押している間はコンボとスコアが増え続ける」という仕様に変更された。これは『DJMAX Portable 2』や『PUMP IT UP EXTRA』を受けての変更とされる。
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ただし、新仕様が適用されるのは7th TRAXの新曲のみで、6th TRAX以前の旧曲は旧仕様のロングノートシステムが適用される。
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例外としてRadio Mixでは全て新仕様のロングノートシステムが適用される。
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またVer1.50からはスタートボタンを押しながら開始することで、旧曲にも新仕様のロングノートシステムを適用できるようになった。ただしランキング登録が無効になるため、誰も使わなかった。
選曲時間の変更
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本作では新曲が多数収録されたためなのか、Street MixやRadio Mixでは60秒だった選曲時間が99秒に大幅増加された。
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モード選択画面は20秒から50秒に増加し、Space Mixの選曲画面では40秒から50秒に増加した。
基板のアップグレード
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基板の交換が実施され、処理落ちが改善された。…が、Pentium IIIベースという発売当時から見てもかなりの型落ちなスペックだったため、すぐ限界が露呈した。
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本作の開発中、スペック不足によりBGAの演出をいくつかオミットせざるを得なかったとのこと。
評価点
高難易度譜面の大量追加
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SHD MIXの実装により高難易度譜面が大量に追加された。今までの譜面を乗り越え、さらなる歯ごたえを求める上級プレイヤーに応える形となった。
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特に前作『6th』は譜面のクオリティが悪かったこともあり、本作の新譜面は歓迎された。
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Club MixとSpace Mixの譜面は譜面の制作方針が変更され、よりダブルプレイとしての演奏感がアップした。
強化されたRadio mixコース
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本作ではRadio mixのチャンネルが大幅に増加。Ver1.50からは前作の20チャンネルから2倍の40ものチャンネルが収録されている。
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過去の人気チャンネルの復活の他、オールコンボが難しい「YammyYammy」や途中で変速する曲ばかり集めた「Trick BPM」などといった一味違ったチャンネルが楽しめるようになった。
賛否両論点
楽曲ジャンルの偏り
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前作までは楽曲ジャンルがバランス良く収録されていたのだが、本作はなぜかトランスに偏ってしまっている。
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Ver1.00時点で追加された新曲32曲のうち、トランスに関連する楽曲は14曲も存在する。
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Ver1.50からトランス以外のジャンルもある程度追加されるようになったものの、最終的に55曲中17曲がトランス関連と偏りが目立ってしまっている。
問題点
プレイ中における正常に音が鳴らなくなるバグ
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本作のVer1.50から公式名称「音波クラッシュバグ」、通称「ポグジン(뽁찡)」と呼ばれている、プレイ中に一定の確率で音がおかしくなる現象が発生するようになった。
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症状は曲によって様々で、バックの音やキー音が鳴らなかったり、コイン投入音が鳴ったり、ノイズが入るなど症状は様々。
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選曲によっては音楽としては成り立たない前衛的な曲と化してしまい、何を演奏しているかがわからなくなってしまう。
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このバグが一度でも発生してしまうと、以降のプレイでもずっと発生するようになる。直すにはシステムを再起動するしかなかった。
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音楽ゲームとして考えるとこのバグはかなり致命的で、症状が発生してしまうとゲームとして成り立たなくなってしまう。
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そしてこのバグは次作以降でも発生するようになり、原因の判明と解決までかなりの時間を要した。
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なお、原因はサウンドカードのバッファ容量をオーバーしていたためだった。『Ver1.00』まではガイドラインがありそれを遵守していたが、『Ver1.50』の開発の際引き継ぎに失敗、以後バッファ容量を無視した音作りが行われるようになってしまったために発生したバグである。
グラフィックの低下
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前作まではムービーとグラフィックがアーケードとしては高品質のクオリティだったのだが、本作ではBGAやUIなど全てにおいて劣化してしまっている。
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毎作UI面に関しては(Space Mixを除いて)レイアウトが変更されていたのだが、本作から『AZURE EXPRESSION INTEGRAL COMPOSITION』に至るまでの間ゲームグラフィックのレイアウトにはしばらく変化が見られなくなり、ただガワを変えただけというものが続くことになる。
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本作のギア=プレイスキンに至っては5 Street Mixにしか新しいものが用意されておらず、それ以外のモードのギアスキンはすべて前作の使い回し。特に7 Radio Mixのギアスキンは『3rd』のギアスキンの色を変えただけと、使い回しも露骨。
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BGAは兄弟作の『EZ2Dancer』や過去作からの流用が目立つ上、Ver1.50ではついにStreet Mixでもシリーズ初の汎用BGAといえるものが登場してしまう。
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例えば「Hyper Magic」のBGAは過去曲「Special K」の流用なのだが、能面に見える不気味な白い顔が手を繰り出すシーンが追加されちょっとしたホラーとなっている。
加速した難易度インフレ
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本作ではSHD譜面の追加や譜面バリエーションの追加にこだわり過ぎた結果、難易度が大幅にインフレしてしまっている。
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5 Street Mixでは、これまでLv13が上限だった難易度へ新たにLv14・Lv15を追加。新曲は大半が高難易度の譜面ばかりで、中級者以下のプレイヤーは新曲に手を出しづらい状況となっていた。
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例えばVer1,00の新曲の「Revelation」はEZMIXがLv14、NMMIXがLv15、そして初心者向けであるはずのRuby Mix専用譜面でもLv13と、いくらボス曲とはいえ凶悪な難易度設定だった。
ロード時間の大幅増加
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曲数が多すぎて筐体のスペックが追いつかないのか、選曲画面のロード時間が長い。
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また、Street Mixには全曲選択できる隠しコマンドがあるのだが、これを使用してプレイすると選曲までのロード時間が30秒~1分近くかかるという問題が発生する。
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しかも毎回プレイし終わる度に再度全曲を読み込み直すため、通常よりも余計に時間がかかる状況となってしまった。
重すぎた隠し解禁条件
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Ver2.00の解禁は7段階用意されており、6段階目まではタイトルで特定のコマンドを入力する形式だったのだが、7段階目の解禁条件が通常とは大きく違っていた。
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その条件が「7 Radio Mixモードの全チャンネル=コースにスコア記録を残し、最後にどのチャンネルでも良いので特定の名前を残した上で次のクレジットで5 Radio Mixモードを選ぶ」というもの。
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7 Radio Mixチャンネルは隠しを含めておおよそ50コースもあるため、それらをすべて踏破しなければならない。
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また、オートペダルもしくはオートスクラッチを使用するとランキング登録が無効になるので、条件を達成する事ができない。
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Radio Mixは高難易度の譜面が主体であり、それに操作が難しい7キー限定となるとかなりの上級プレイヤーが協力しないと達成できない代物となっていたため、この解禁仕様は大きな批判を呼んだ。
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これを実装した開発者としては「プレイヤーは一部の高難易度譜面チャンネルしか遊ばないため、これを機に他のコースにも触れてほしい」という意図があったのだが、結果として重すぎる解禁要素になってしまった。
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後にVer 2.02のパッチが配布されることとなるのだが、そのパッチでは隠し要素がすべて解禁された状況となっている。
総評
クオリティ自体はインディーゲームも同然だったが、高難易度譜面の追加でコアプレイヤーから肯定的な評価を引き出すことに成功した。
ただしそれ以外の要素が犠牲となってしまい、特にグラフィックに関してはあからさまな低下が見て取れる。
それでも作品の今後の方向性を決定づけたという点では、本作はシリーズの中興の祖と言えるだろう。
余談
本作の開発状況について
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Ver1.00の開発期間は3ヶ月というとても短い期間だった。またスタッフもプログラマー以外臨時招集に過ぎなかった。
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スタッフの人員も不足しており、BMSのBGA制作で知られたRYUminusが本作のプロデューサー・譜面制作・グラフィック・ボーカルを兼任し、32曲中26曲のBGA制作を担当した。当時は会社で寝泊まりする日々だったとのこと。
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Ver1.50ではさらに悪化し、開発期間はたったの15日だったとされる。
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この劣悪でその場しのぎ的な開発体制は恒常化していき、きちんとした開発体制の整備は『EZ2AC』シリーズになるまで待つこととなる。
楽曲大量削除騒動
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本作で収録された新曲55曲のうち、42曲が『EZ2DJ:AZURE EXPRESSION』で削除された。
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ちょうど7thの時期にオンラインゲーム版となる『EZ2ON ONLINE TRAX』が開始しており、その開発会社に楽曲の権利が移ってしまっていたのが原因とされる。
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開発側から「復活は絶対に不可能」と釘を刺されることもあったが、9年後の『EZ2AC:TIME TRAVELER』で復活収録が開始されていき、『EZ2AC:FINAL EX』で全曲の再収録が完了した。
最終更新:2023年08月29日 03:32