『ブラウザ版』はこのWikiで扱う作品における「扱えない作品・ブラウザゲーム」に該当するため、評価対象版としては扱っておりません。



Canabalt

【かなばると】

C64anabalt

【かなばると】

Canabalt Classic

【かなばると くらしっく】

ジャンル エンドレスランナー
対応機種 CS機 コモドール64
プレイステーション・ポータブル
Ouya
配信 itch.io Windows
Mac OS X
Linux
メディア C64 ロムカセット
PSP PSP minis配信専用
Ouya 配信専用
Classic ダウンロード専売
発売元 C64 RGCD
PSP Beatshapers
Ouya Kittehface Software
Classic Finji
開発元 Adam Saltsman
発売日 C64 2012年1月10日
PSP 2012年3月15日
Ouya 2013年3月19日
Classic 2024年2月8日
定価
(税10%込)
Ouya 無料
Classic 無料
プレイ人数 1人
レーティング ESRB:Everyone 10+(10歳以上)
備考 日本語非対応
判定 スルメゲー
ポイント モノトーンで統一されたグラフィック
ビルの屋上をひたすら駆け抜けていく
操作はボタンひとつと非常にシンプル

概要

一般的にAdam Atomicの名で知られるAdam Saltsman氏の代表作として知られており、現在に至るまでFinji発足以前の代表作としても開発者のキャリアに対しての記念碑的存在として実績に名を刻んでいる。

元々は2009年8月31日に開発者本人のサイトにてフリーゲームとして公開されたタイトルであり、 その衝撃から各ゲームレビューサイトで「シンプルさとプレイヤースキルの求められる内容ゆえの高い中毒性を誇る」として高評価を叩き出し、氏の名を不動のものとさせ「エンドレスランナー」と言うジャンルを確立させた。その実績からニューヨーク近代美術館に展示され、The New Yorker誌からは「誰も本作が同様のゲームジャンルを普及させたことには反論しないだろう」とも語られることに。

ブラウザ版はAdobe Flashを用いて制作されたため、2020年12月31日のサポート終了により2021年1月12日以降プレイ不能の状態が続いていたが、2024年2月8日にHaxeFlixel(とOpenFL)を用いて復元された。併せてitch.ioでもダウンロード版が『Canabalt Classic』として無償配布された。

これらとは別になんと当時基準からして見てもビンテージパソコンとなって久しいコモドール64(1982年8月発売)向けの移植として『C64anabalt』が発売された。移植は現在でもコモドール64やAmigaなどのレトロ機種向けに新規のゲーム開発・移植を行っているRGCD社によるものである。


発売元について

繰り返すが本作はFinjiの実質的な原点にあたるタイトルである。

開発元の現名義にあたる「Finji」は、北米ミシガン州グランドラピッズに拠点を置くインディーズゲームのパブリッシングをメインに活動している企業であり、Rebekah Saltsman氏がCEOを務める。

元々は2006年にAdam Saltsman氏とRebekah Saltsman氏夫妻によって設立されたゲームスタジオ「Last Chance Media, LLC」が起源であり、主にAdobe Flashを活用したゲーム制作やノキア製携帯電話向けのゲーム制作を手掛けていた。後の2014年に北米のゲーム会社と合併し、イタチと王冠のロゴのFinjiとして生まれ変わった。以後はインディーズゲームのパブリッシャーに専念することとなり、内製の新作タイトルもストラテジーゲーム『Overland』 がリリースされた2019年9月19日(北米時間)まで待つこととなる。

また、『iOS版』の発売元にあたる「Semi-Secret Software」は妻Rebekah Saltsman氏が財務とゲーム移植のパートナーシップを務めていたこともあるため、開発者と密接な関係である点も特筆すべき点である。


特徴・評価点

シンプルさと緊張感からの中毒性

  • 本タイトルのゲームシステムは、大まかに分けて「操作系統はボタン1つ」「ミスをせずどこまで走ったのかだけが記録される」と全体的にシンプルでわかりやすいものとなっている。今日び複雑化したゲームに対してのアンチテーゼとの見方もできるため、そうした意味でも一石を投じたものとも言える。
    • だからといって簡単かと言えばそんなことはない。ジャンプした際の挙動は癖があり惰性が付いているため、この先どこに着地していくのかが読みづらく、なにも障害物にぶつからなければ徐々に加速していくうえ、自分の背丈と同じくらいの障害物にぶつかれば今度は大きく減速もする。そのため基本的にはこれらの挙動を駆使して次のジャンプした後の着地地点を先読みしながら進めていくこととなるため、プレイヤーは常時瞬間的な状況判断力が試される。
      • 次の足場がどうなるかは完全にランダムとなっており、飽きさせないのと同時に純粋なプレイヤースキルを求められるゲーム性となっている点も特筆すべき点である。とは言えある程度の規則性があるため最初からいきなり初見殺しじみたトラップが襲いかかってくることはなく、理不尽なゲームバランスにならないよう調整されている。
    • 初っ端から狭いフロアからのスタートであり、ここにも当然のごとく障害物が散らばっている。無論ぶつかれば減速するため慣れないうちは最初のジャンプでらす飛び越えられずにいきなりゲームオーバーになりかねない。まずはここを安定して乗り越えられるかがカギとなる。
      • ゲームが進行していくにつれて「距離の短い看板」「飛び降りた先が読みにくくなる吊るされた鉄骨」「突入できる範囲の限られているビルのワンフロア」「ビルごと破壊していく短い足場」と言った足場や「突然ビル上に降って来る爆弾」と言った障害物が段階的に追加され、更にビル間との距離が空くタイミングも時折発生していく。

ビジュアル面

  • タイトルからプレー中画面のゲーム内全域に至るまでグレースケール「だけ」で構成されたビジュアルとなっている。さながら曇天を思わせるものとなっており、これからやって来るであろう未知の脅威から逃れる緊張感を表現することに一役買っている。
    • ギミックの描写もどれも細かく描写される。ガラスを割れば破片が飛び散る、白い鳥の群れに突っ込めばどこかへ羽ばたく、プレイヤーが体制を崩して着地すれば転がりながら姿勢を回復させる、背景の重機が物々しく動く、と言ったようにそれぞれのモチーフに意味のある動作がなされるようになっており、見ているだけでも面白い完成度となっている。また、キャラ選択は無いもののそれぞれで異なるキャラ(衣装違い)も確認できる。
  • 音響面での迫力も格別なものとなっている。ゲーム起動時に「For maximum awesome, headphones recommended.」と表示されるだけあり、全体的に重低音を響かせたものとなっている。特に時々背景を通り過ぎる謎の物体が飛行している時の音は、通り過ぎただけでもかなりの音を出してくるため、プレイヤーの集中力を不用意に削ぐ要因として立ちはだかる。
    • BGMはインディーズゲームに積極的な楽曲提供を行なっているDanny Baranowsky氏が担当している。唯一のBGMである重低音響くシネマティックなBGM「Run」はタイトル画面から早速再生され、プレイヤーに暗くも疾走感に溢れた印象を与えさせ、ゲーム内容とこれ以上もないほどマッチングしたものとなっている。

賛否両論点

ストーリー類は無し

  • 本作にはストーリーという概念、それも世界観の設定どころかバックストーリーすらも存在しないため、プレイヤーがどう言った目的で走り続けているのか、背景で動いている重機などがどう言った目的で稼働し続けているのか、と言ったことはプレイヤーから知る由は無く、プレイヤーの想像に委ねられることとなる。
    • ストーリー自体が無ければステージクリアと言う概念もエンディングという概念も存在しないため、プレイヤーは自分で目標を決める必要が必然的に発生する。とはいえ、後付け感満載のバックストーリーなどが挿入されたらされたで今度は「無い方がマシ」といった事態に陥ることは容易に予想できるため、「ゲームをプレーするうえで余計な要素を排除している」シンプルな内容と言う意味でもストイックにスコアを極める人には向いているゲーム性といえる。

問題点

実質難易度固定

  • 一見評価点と矛盾しているように見えるが、今作には「難易度を易化するオプション」「低難易度モード・ステージ・キャラ」と言ったものは一切存在せず、プレイヤーの実力を問わず否応なしにこれらと向き合わなければならない。少なくともカジュアルだからと言ってライトユーザーが易々と手出しして良いものではないほどにハードルが高いことは確かである。
    • 上記の通り、後半になるにつれて足場に制約の発生するタイミングが時折発生したり、各種背丈以上の爆弾が突然降って来るのもあるため、常に一発勝負と隣り合わせである。操作キャラも1種類しかなく、それも惰性のついたものとなっているため、ゲームが進むにつれて初見どころかゲームに慣れているプレイヤーからして見ても咄嗟の判断を下すことも難しくなっていく。
  • 逆により「難易度を難化するオプション」「高難易度モード・ステージ・キャラ」と言った機能も実装されておらず、ストイックにスコアを極めたいプレイヤー以外からは飽きやすいと言えるかもしれない。

総評

曇天を思わせるグレースケールだけで表現された崩壊都市にそびえ立つ、今にも崩壊しそうなビルの上を未知の脅威から逃れるためにただひたすら駆け抜けていき、最終的な目標もまた、ゲームオーバーになるまでに走った距離だけをこれまたひたすら稼ぐだけ…と言う自己完結型に特化した非常にストイックな内容は、迫力ある音響と世界観に見合った暗くも疾走感溢れるBGM、なによりシンプルな操作性と高難易度なステージ構成も相まって中毒になるユーザーを世界中で輩出していった。

しかし同時に内容自体もスコアアタックだけに特化しきった内容であるため、ステージ進行がランダムとは言え「実質難易度固定ステージ1種類」だけも同然なボリューム不足ぶりがどうしても鼻についてしまうため、まさしくストイックな人向けのゲームと言える。

現在は当時の仕様のまま現代の環境でもプレーできるよう復元された『Canabalt Classic』が配信されているため、ボタンを押せばすぐにゲーム開始となるオールドスクールなアーケードスタイルのゲームを懐かしむ意味でも是非とも手に取ってみてはいかがだろうか。


Canabalt (iOS)

【かなばると】

Canabalt HD

【かなばると えいちでぃー】

ジャンル エンドレスランナー
対応機種 iOS 3以降
Android
配信 Steam Windows 10以降
Mac OS X 10.15以降
メディア 共通 ダウンロード専売
発売元 iOS Semi-Secret Software
Android Kittehface Software
Steam Finji
開発元 Adam Saltsman
発売日 iOS 2009年10月1日
Android 2012年3月19日
Steam 2015年5月1日
定価
(税10%込)
iOS 370円
Android 298円
Steam 298円
プレイ人数 1〜2人
備考 日本語非対応
判定 スルメゲー
ポイント 独自要素追加版
なぜか冷遇されている『iOS版』
定価と不釣合いなボリューム
『Ver.2.0』である程度充実化

概要

ブラウザ版公開開始から程なくしてiOS向けアプリとして配信開始、その後も間を置き「3D表示」機能を実装した『Android版』が配信開始、2014年には追加要素を提げた「Ver.2.0」アップデートが実施され、1年後には「Ver.2.0」をベースとした『Steam版』が配信開始された。

後述の経緯から、リニューアル後にリリースされた『Steam版』は当然としてそれ以前から既にリリース済みの『iOS版』『Android版』についても現在は全てFinji名義に統一されている。ただし基本情報欄には発売当時の方を記載する。

タイトル表記に曖昧な点が見受けられ、公式サイトで現在発売中として扱われている3機種分の版を全て『HD版』としているが、その中で唯一『iOS版』にはゲーム内も含めて「HD」表記が無い。


HD版での追加要素

「3D表示」を除き、2014年にリリースされた「Ver.2.0」より追加された要素である。『Steam版』は全ての要素が配信開始当初より搭載されている。

BGM

  • 従来の「Run」に加えて「Daring Escape」「Mach Runner」「Mega Ranabaut」の3曲が追加された。引き続きDanny Baranowskyが作曲を担当している。

3D表示(Android/Steam版)

  • 『Android版』で初めて追加された3D表示機能である。ゲーム中でもポーズしている間の画面中央真下にあるトグル操作で切り替えが可能である。適用中は手前のビル群や障害物のみならず背景も3D表示となる。

2人同時プレー

  • その名の通り2人で同時プレーするモードである。プレー前に画面真下の人のアイコンを押せばトグル操作で切り替わる。もう一度押せば1人プレーに戻る。

追加ステージ

  • 『iOS版』『Android版』については「Ver.2.0」より以下の追加ステージ8つが追加された。
+ 追加ステージ一覧

アチーブメントとして設定されている距離を超えると実績獲得となる。

ステージ名 アチーブメント 頻発するギミック
Bomberdment 2,000m 空からビルに降ってくる爆弾
Purity 3,000m 足場の短い看板と足場が上下する鉄骨
Fractured 2,000m 近付くと崩れるビル
Box Tripper 1,000m 接触すると減速する箱
Panic 2,000m プレイヤーの加速と最高速上昇
Leap of Faith 1,000m ビル自体が見えなくなる
※代わりに着地できる地点には必ず鳥の群れがいるため、識別自体は可能である。
Invasion 1,000m ビルを破壊する巨大な障害物兼短い足場
Defenestration 1,000m ビルの中間層だけ通過できる足場

評価点

追加要素

  • 『Android版』でついに移植版初の独自機能「3D表示機能」が実装された。
    • 3D自体も奥行き感を感じさせる造形となっており、なんと障害物や背景の謎のロボットも含めて3D化される。これにより「ビルの上を疾走する」と言う表現を際立たせたものとなった。
  • 2014年に配信された「Ver.2.0」で従来の懸念点だった「ボリューム面の薄さ」がある程度解消される運びとなった。
    • 内容は「追加ステージ」「追加BGM」となっており、単純なボリューム面では目に見えるほどに増加することとなった。追加ステージもまた特殊シチュエーションの中を攻略すると言ったものであるため、どれも高難易度を楽しみたいユーザーにとってはありがたい要素と言える。

問題点

定価に対して薄いボリューム

  • 『iOS版』は原作の『Flash版』から特に追加要素も無くそのまま発売されたためか、全体的なボリュームは2.99USDと言う低価格にも見合わないほどの薄さだった。当時のレビューの段階からして「有料販売するにしても1USD程度ならば批判どころか歓迎されただろう」と言った指摘が多数見受けられたほどである。
    • 後に『Android版』で3D表示に対応するなどと言った追加要素を引っ提げてリリースさたものの、肝心の新規ステージなどをはじめとした追加要素はこの時点ではまだ搭載されなかった。2014年のVer.2.0アップデートという形で『Android版』『iOS版』に上記「追加の8ステージ」「2人同時プレー」が追加され『Steam版』もそれに準じたものとなったのだが、依然として難易度選択もできなければキャラ選択も実質無いままであるため、根本的に解決したとは言い難いレベルである。更に肝心の『iOS版』には「3D表示」が逆輸入されることは今もなく予定すらもされていない。

総評

ブラウザ版の人気により早速iOSに移植されたことにより、はじめてブラウザ以外でプレーできる環境構築を実現。手軽にプレーできる内容からもスマホとの相性は抜群であり更なる人気を獲得するに至った。その後もAndroidへの移植でHD向けに3D表示機能を提げての配信となり、さらにアップデートで追加要素が、そしてSteamへの移植でついにパソコン上でもHDの魅力を余すことなく体験できるようになった。

しかし移植当初は『Flash版』と大差ない内容のままだったがゆえに(有料販売ゲームとしては)ボリューム不足ぶりがどうしても鼻についてしまう。事実、初の有料版である『iOS版』がリリースされる際も価格不相応である点はどうしても拭えなかったのか、2.99USDで発売された点でそれなりの批判が集まってしまった。2014年の「Ver.2.0」アップデートによる追加要素を加味しても根本的なゲーム内容故にボリューム不足を脱したとは言い難く、依然として人を選ぶことに変わりない。

幸い内容自体は全く変わらず劣化も見受けられないため、価格不相応も甚だしいことは別として、単体のゲームとして見れば面白さは依然として十分であることに変わり無い。それでも3Dグラフィック対応による面白さの差は歴然としているため、今から手に取るならば『Android版』『Steam版』がベストと言えるだろう。

最終更新:2024年05月13日 01:28