SIMPLEシリーズ for Nintendo Switch Vol.3 THE バスフィッシング
【しんぷるしりーず ふぉー にんてんどー すいっち ぼりゅーむすりー ざ ばすふぃっしんぐ】
| ジャンル | スポーツフィッシング |  | 
| 対応機種 | Nintendo Switch | 
| 発売元 | D3パブリッシャー | 
| 開発元 | タキオン | 
| 発売日 | ダウンロード版:2022年6月16日 パッケージ版:2022年12月15日
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| 定価 | ダウンロード版:2,000円(税10%込) パッケージ版:2,800円(税10%込)
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| プレイ人数 | 1人 2人~12人(通信)
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| レーティング | CERO:A(全年齢対象) | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | 面クリア型のリアルタッチなバス釣りゲーム 体感操作でのファイトが手軽に楽しめる
 水中視点やテンションゲージによりストレスも感じにくい
 バラエティ性の低さだけが明確な難点
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| SIMPLEシリーズ for Nintendo Switch | 
 
概要
D3パブリッシャーの低価格ブランド「SIMPLEシリーズ」のSwitch版3作目。
バス釣りを扱った釣りゲーであり、『THE バスフィッシング』のタイトルはSIMPLE2000シリーズ(PS2)以来、実に約20年振りの2作目。
(ちなみに、PS2の『THE バスフィッシング』もVol.3であった)
タイトルが異なるものも含めると、Wiiの 『THE みんなでバス釣り大会』以来となる。
開発元のタキオンは釣りゲー『Reel Fishing』シリーズ(『フィッシュアイズ』シリーズの後継)を製作しており、本作はそのノウハウで製作されたものと思われる。
Vol.2の『THE トランプ パーフェクトコレクション』と同様、当初ダウンロード版のみが販売され、約半年後の12月15日にパッケージ版が発売された。
特徴
モードやゲーム進行について
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ゲーム開始時に、難易度を「ビギナー」「ノーマル」「エキスパート」から選択する。
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面クリア型の「ミッション」モードが本作のメインとなる。ミッションには個人で行うものと「大会」に参加するものとがある。
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個人で行うものは、釣り場とルアーが指定され、規定時間(10分~20分)内に指定された種類のバスを決められた数釣ればクリアとなる。ミッションによっては、種類数のほか「○cm以上」とサイズ縛りも発生する。
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指定された種類以外のバスを釣ってしまった場合は外道扱いでクリアには一切寄与しないが、サイズの大きなものを釣った場合後述の全体記録には残る。
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クリアした場合、そのまま規定時間が終わるまで釣り続けるか、その時点で釣りを終了するか選べる。
 
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大会では、規定時間(10分~30分)内いっぱい釣りを行い、釣ったバスのうち指定された種類のものを上位5位まで重量を合計し、その総重量で参加者の中での順位を決定する。規定順位内に入ればクリア。
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規定時間が来る前に自分から終了して、その時点での重量で勝負することも可能。
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釣り場は指定されていて変更できないミッションと、自由に選ぶことができ途中で釣り場を変更することもできるミッションとが両方ある。
 
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いずれの形式でもファイト中(バスを引いている途中)で時間切れになった場合の救済はなく、そのまま強制終了する。
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クリアしたらまた次のミッション…、という流れであり、一度クリアしたミッションの再挑戦はできない。
 
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ミッション6の大会をクリアすると、「フリーフィッシング」が選択できるようになる。
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フリーフィッシングでは、自由に釣り場やルアー、制限時間(10分~60分で5分刻み)を設定して釣りができる。ただし、ミッションでまだ登場していない釣り場やルアーは使用不可。
 
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オンラインまたはローカルでの対戦機能も用意されている。こちらはタイトル画面から選択するため、ミッションの進行状況に関わらず遊べる。
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1人用ミッションの大会形式に近く、時間内に釣ったバスの合計重量で順位を競う。
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順位基準は「自分の釣った中で上位3匹の合計重量」「同、上位5匹の合計重量」「同、全釣果の合計重量」の3種類で、釣り場は専用のものが3種類、制限時間は5~30分、参加人数は最大12人。対戦の部屋を立てる際にそれぞれ設定できる。
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釣りの間は現在の順位(上位3位まで)と、他のプレイヤーが何か釣るごとにその重量がリアルタイムで表示されるが、残り1分になった時点で表示はいずれも隠される。
 
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プレイヤーへのコーチ役となる「インストラクター」を男性・女性いずれかから選択できる。
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インストラクターはゲームメニューに登場するほか、ミッションで進行役となる。新しく登場した釣り場やルアーを紹介したり、ミッションのターゲットに沿ったお勧めのキャスティング位置や、後述の「テクニック」(ルアーの引き方)などのアドバイスをくれる。
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ミッション中にも、ラインブレイクした(糸が切れた)、バスがなかなか掛からない、などのタイミングでアドバイスを受けることができる。
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男性インストラクターはサングラス+スポーツウェア姿のがっしりした風貌、女性インストラクターは胸元の空いた金髪ポニーテールのお姉さん的な風貌。女性インストラクターの服装がやたらテリー・ボガードに似ている。
 
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メニューの「釣り手帳」から記録や操作説明を確認できる。
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記録ではミッションの達成率、釣ったバスの種類別重量ランキングが見られる。
 
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セーブはオートセーブ枠と手動セーブ枠(3つまで)がある。
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釣り中はミッション開始、バスを釣ったタイミングなどで英語のシステムボイスが流れる。
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距離をメートル表記とフィート表記に切り替えられるなど、英語圏への海外展開も意識している模様。
 
釣りについて
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携帯/TVモードでの操作とJoy-Con(コントローラ)を切り離しての操作の両方に対応している。
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ほぼ全ての挙動にボタンでの操作とコントローラを振る操作の両方が割り当てられており、ボタン操作でも体感的な操作でも遊ぶことができる。
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コントローラの持ち方で特にボタン操作か体感操作いずれかを選ばなければいけない訳ではなく、Joy-Conを切り離して遊びつつ最初にルアーを投げるキャスティングはボタンで行い、リールを巻き上げる部分は体感操作で行うといったこともできる。
 
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まずはキャスティングで、主観視点で湖面が表示されるので、ルアーを釣りたい位置に投げる。
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事前に左右のスティックで、自分の位置と投げたい方向を動かす。
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ボタンの場合、ZRボタンを押すとパワーゲージが現れ、投げたい強さのところでボタンを離すことでその強さで飛んでいく。十字ボタンの右や下を押しながら投げることで、方向を変えて投げられる。
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体感操作の場合、コントローラを強く振ると振った強さ、方向で飛んでいく。
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ミッション後半になると、天井の低い岩肌の下を通す場合など、横投げでないと投げた後にぶつかってしまい遠くまで届かない水面なども出て来る。
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投げてからルアーの着水までにボタンを押すと、ルアーの飛距離を後からある程度調整できる(サミング)。
 
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ルアーが着水すると、水中視点に移行してバスを狙う。
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画面には今使用しているルアーの種類と、ルアーの位置(水深、距離)が表示される。
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ボタンの場合、左スティックでロッド(釣り竿)を振りつつ、右側の各ボタンでリールを巻いていく(ボタンで巻く速度が異なる)。
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体感操作の場合、右スティックを振ることでロッドを動かし、左スティックを水平に持って回すことでリールの巻き取りになる。
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ルアーには特定の動かし方「テクニック」があり、その方法で動かすことで大幅にバスから狙われやすくなる。テクニックが発動している間はルアーのマークが光る。
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バスがルアーを狙い始めると「オッ、オッ」というナレーションボイスが入る。
 
 
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バスが食いついたらロッドを動かすことでバスとのファイトに移行する。食いついてもしばらく反応しないと逃げられてしまう。
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ファイトでは、画面下にライン(糸)の張り具合を表すテンションゲージが表示される。低いままにしておくと逃げられ、高いままにしておくとラインが切れてしまう(ラインブレイク)ので、いずれも起きない程度に休みながらリールを巻き続ける。
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バスの体力があるうちはリールを巻いてもほとんど距離が縮まらない。しばらくファイトを続けているとバスの体力がなくなり、リールが巻きやすくなる。
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バスは定期的に水面の方に出て来て暴れる。この水面でバシャバシャしている間はテンションゲージが弱い方に寄りやすく、リールを巻くチャンスではあるが逃げられやすくなる。
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距離3mほどまでリールを巻けば釣り上げられる。
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体感操作の場合は、ファイト中にバスの動きに合わせてコントローラからの振動が入る。
 
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釣り上げると捕獲されて跳ねているバスが表示され、また釣り画面に戻る。
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「現在のミッションでターゲットになっているバス」「種類毎のサイズ記録を更新したバス」を釣った場合はその表示もされる。
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失敗した場合や、なかなかバスが釣れないでいる場合はインストラクターからのヒントを聞くことができる。
 
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キャスティングする前に、ルアーを変更することができる。
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大会やフリーモード等のルアーが固定されていない場合は自由にルアーを選べるし、ルアーが固定されたミッションでも、ルアーの色を3色から変更することができる。
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同じルアーでも色が違うと食いつかない、というケースもしばしば起こるので、バスの前でルアーを振っても全然反応しない、という場合はルアーを変えることで割と解決する。
 
評価点
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振動とコントローラをリールに見立てて回す体感操作により、臨場感ある操作が味わえる。
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釣りゲーの低価格DLソフトという時点で珍しく、この価格で体感的な釣りゲーができるというのは十分評価点である。
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特に、水面でバスが暴れてバシャバシャしているところをリール操作で押さえつけるところでは、コントローラからの振動を肌で感じつつリールの緩急を慎重に判断する緊張感があり、バス釣りの醍醐味を味わえるだろう。
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一応ボタン操作にも対応しているが、少なくともファイト部分についてはやはり体感操作で遊びたいところ。
 
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ルアーの着水以降は全て水中視点であるため、この点でも臨場感を感じやすく、バスの所在や食いつき状況も目視できるので狙いやすい。
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ルアーの違いによる、リールを巻いた時の動作の違いはよく表現されており、作中ではどういったルアーがどういったケースで向くかの説明もしてくれる。
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ルアー以外の釣り用具選択ができない分、ルアーの選択は全14種類(カラー違いも含めれば×3で42種類)とそこそこ豊富。
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ルアーの動かし方はイラストでも説明してくれるので分かりやすい。
 
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テンションゲージが画面に表示されているため、ラインブレイクや針が外れることでバスに逃げられても理不尽さは感じにくい。
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テンションゲージで可視化されていることで簡単になっているかと言うとそこまでではなく、油断するとバスが暴れたタイミングなどで一気にゲージを持っていかれ簡単に脱出される。
 
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ミッションモードの難易度も難しすぎず簡単すぎずで、後半に行くに従っての難度上昇も機能している。
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1ミッション当たりの制限時間は最初の方でも最後の方でもあまり変わらないが、後半に行くに従ってバスを釣り上げるまでのファイト時間が大幅に長くなるため、難易度は徐々に高くなっていく。
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ターゲットとなるバスがなかなか見つからず運ゲー感が強くなったりやり直しが多発するようなこともほぼ無く、上手いプレイヤーが慣れていけばどの面も1発クリアを十分狙える程度の難易度である。
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1つだけではあるが、クリア後に挑戦できる追加ミッション(特別なバスが釣れる)も用意されている。
 
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グラフィックも、肝心のバスや、バスが暴れた際の水飛沫などの描写についてはしっかりしている。
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釣り上げた際もバスが画面いっぱいに表示され元気にピチピチと跳ねる描写があり、大物を釣った場合の満足感が得やすい。
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流石に低価格作品ゆえ、同じ種類のバス間での違いは大きさぐらいで個体差レベルの模様などの違いまでは表現できていないが、価格としての及第点評価は出せるだろう。
 
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オンライン対戦も用意されており、オフライン用ミッションの大会とほぼ同じルールではあるがそこそこ盛り上がる。
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合計重量での勝負ということで、数を釣るか時間を掛けて大物を狙うかという駆け引きも発生するし、1匹逃すだけでも十分逆転に繋がるため緊迫感は悪くない。
 
問題点
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ルアーの変更以外の、ロッドやラインといった他の釣り用具の選択は存在せず、天候や風向き、季節などの要素も全くない。
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ルアーの違いによる操作感の違い自体は十分表現されているし、同じような問題が見られる『バスフィッシングWii ワールドトーナメント』と違って本作は低価格帯ソフトであるため妥協はできるレベルなのだが、やはり少々寂しい。
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この辺りがあと1つ2つ要素があればミッションモードの飽きにくさにも繋がったと思われるだけに、ここは低価格作品だからと諦めずもう少し頑張って欲しかったところ。
 
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釣りそのもののモーション自体は及第点だが、それ以外の演出や台詞についてはかなりしょっぱいものも複数見られる。
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大会に参加するミッションでは、他のプレイヤーの動向も何も見られず、全く大会の雰囲気が無い。始まる際に英語の開催宣言やカウントダウンがあるのと、終わりに釣果に従って自分の順位のみが発表されるだけで、釣りモードの最中は個人での釣りミッションと画面上何ら変わりない。
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このカウントダウンもゴシック体の飾り気のない文字が「3」「2」「1」と流れるだけの代物で全く派手さはなく、盛り上げようという気概が感じられない。
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インストラクターの台詞も、あまりキャラクター性やパターンは感じられない。ミッション前の説明こそ一通りはやってくれるが、ミッション完了時の台詞は「いい調子ね!この調子で次もがんばって!」などと一言くれるだけで、ミッションごとの違いもない2~3パターンのテンプレ台詞である。
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エンディングも、スタッフロール以外はインストラクターの一言台詞と「Congratulations! You are a great angler! Thank you for playing!」というメッセージが出るだけで割と淡泊。
 
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要素が少ないのでやれることは最後まであまり変わらず、飽きさせない努力は薄め。
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バスの種類や釣り場はそこそこ程度には用意されているし、後半になると横投げでないと入れない岩肌の下を狙うなども必要になってくるが、それでも釣り自体の内容が殆ど変わらないため、多数あるミッションを楽しませるには弱い。
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後半になると、既にミッションターゲットになったことのあるバスがサイズ指定有りで再度ターゲットになるミッションもやや多く、目新しさも少なくなってくる。
 
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バスの体力制が露骨すぎる感がある。
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体力が残っている間はいくら巻いても全然距離が縮まらず、体力が尽きるとガンガン距離が縮むようになるというのがかなり極端。
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体力がある間はどう頑張っても釣れないというのが見えてしまうので、その間のモチベーションは低くなりがち。
 
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ファイト中の描写について、バスが岩肌などにぶつかるとかなりガクガクした動きになるなどの違和感は感じられる。
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バスや水飛沫といった動くものの描写については違和感はないが、水草や杭といったそれ以外のものについてのモデリングはやや粗い。
 
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リールをどちらの手で回すかを設定できない。
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本作では「左手でリールを巻く」「右手で竿を操作する」で固定であり、入れ替えることはできない。
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これに関しては他の体感釣りゲーでも配慮されているものは少ないので、仕方ないところはあるが。
 
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丁寧なチュートリアルは無い。
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釣りゲーということで初見では若干操作に戸惑う可能性が高いが、最初のミッションでもメニューから見られる操作説明と同じものを見せてくれるだけで、実際にやってみて覚えるような手取り足取りの説明は特にしてくれない。
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もっとも、最初のミッションは1分あれば釣れるブルーギル2匹で20分と時間制限はかなり長めに取ってある(序盤の他のミッションも同様)ので、試行錯誤して基本操作を覚える時間自体は十分にある。
 
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釣果記録ランキングの内容が薄い。
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バスの種類別に体長と重量がランキング形式で表示されるだけで、いつ釣ったか、どこの釣り場で釣ったかといった情報を見られない。
 
総評
低価格帯のダウンロードソフトで、体感的なバス釣りのゲームができるというだけでも魅力のある作品。
シンプルな作りながら操作性の良さ、適度な緊張感、理不尽要素の少なさと基礎は押さえており、ことバス釣りそのものについて特筆するような出来の悪さはあまり無い。
たまにちょっと普段やらないゲームをやってみよう、と買った初心者でも十分白熱したバスとのファイトを体感で楽しむことができるだろう。
一方で、せいぜいインストラクターが出て来るぐらいでどうしてもバラエティ性の弱さは否めず、悪い意味でのシンプルさもあって、あとひと押しできる部分に乏しいという問題は明確にある。
低価格という制約から要素を取捨選択して作った結果ということなのだろうが、あともう少し全体に要素を足して欲しかった、という感触は抱くところである。
最終更新:2022年12月22日 16:33