ビックリマンワールド 激闘聖戦士
【びっくりまんわーるど げきとうせいせんし】
| ジャンル | ロールプレイング |  | 
| 対応機種 | ファミリーコンピュータ | 
| メディア | 2MbitROMカートリッジ | 
| 発売元 | ハドソン | 
| 開発元 | アトラス | 
| 発売日 | 1990年7月27日 | 
| 定価 | 6,800円(税抜) | 
| プレイ人数 | 1人 | 
| セーブデータ | 3個 | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | シリーズゲーム化作唯一の純RPG作品 | 
| ビックリマンシリーズ | 
 
概要
 当時、子供達を中心に人気沸騰中であった『ビックリマン』シリーズのゲーム化作品のひとつ。
 1987年~1989年に放送されていたアニメ第一作で展開されるストーリーを下地に、ロールプレイングゲームとしてのアレンジが施されているのが特徴。
特徴
新天地『次界』の探求を命じられた天使達の冒険を描くRPG
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ヤマト王子や聖フェニックスを始めとした、悪魔vs天使シールやアニメ第一作(以下原作と称する)でも中心人物として活躍した若神子が主役。
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ランダムエンカウント・ターン制バトルによるオーソドックスなRPG。
 悪魔を倒して経験値とお金を稼ぎ、行く先々で仲間とアイテムを集めてストーリーを進めていく。
 
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ストーリーは大まかに4つのシナリオと、それぞれのシナリオの舞台となるエリアで区切られている。
 エリアの要所では味方の司令官的な立場であるスーパーゼウスとシャーマンカーンが登場し、シナリオにおける目的を説明する役割を担う。
    
    
        | + | 各シナリオの特徴 | 
シナリオ1(天聖界):スーパーゼウスより次界探索の使命を帯びて旅立つヤマト王子。彼を中心に同じ使命のもと集った聖戦士達の前に、復活を果たした悪魔ヘッド『始祖ジュラ』が立ちはだかる。
シナリオ2(天安京):エリア全体が悪魔の襲撃を受けている巨大な町となっており、フィールドと同様にエンカウントする。聖戦士達は天聖界をおびやかさんとする悪魔ヘッド『ブラックゼウス』に対抗するため、聖ボット『ヘラクライスト』を目覚めさせなければならない。
シナリオ3(天聖門):次界へ向かう唯一の道である天聖門を開く力を求め、ゲート天使の力を借りる旅に出た若神子。一方、天魔界の悪魔達は若神子の次界行きを阻止するべく、最強の悪魔ヘッドを刺客として差し向ける。
シナリオ4(無縁ゾーン):天聖門をくぐった先は光の届かない広大な世界『無縁ゾーン』だった。長い修行を終えて帰って来た聖フェニックスを加え、次界を目指す若神子の旅は最終局面を迎える。
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最大8人に及ぶ、当時の基準としては珍しい大所帯のパーティ
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最初はヤマト王子1人だが、旅先でファンにはおなじみの聖戦士がパーティに加わり、最終的に8人パーティで冒険する。
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パーティコマンドでは1人~4人の間で前衛・後衛の割り振りを行い、戦闘シーンは1ターン毎に前衛・後衛が交互に戦うことになる。
旅の心強いお供、お助けキャラ
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聖戦士以外にも旅の仲間に加わる天使やお守りがおり、こちらは『お助けキャラ』として専用の名簿に登録される。
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名簿入りしたお助けキャラは戦闘中、1ターンに1人呼び出せる。呼び出されたキャラは通常攻撃か専用技で援護してくれる。
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呼び出せるのは1人あたり3回まで。『エネルギー館』を利用するか、特定の理力を使うことで消耗分を回復できる。
 
 
その他、本作の要素の数々
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理力:一般的なRPGの魔法にあたる。攻撃や回復の他、特定のイベント進行に必要になるものも多い。
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道具:回復アイテムやキーアイテムを使う。移動中のみ可能。
 アイテムによっては
中身を「みる」
、
NPCに「わたす」
といったサブコマンドを活用するシチュエーションがある。
 市販アイテムは店によって価格が変化し、先の街に進むほど高価になる傾向がある。
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合聖:『合聖パワー』。いわゆる合体技。パーティの人数が増えると専用コストである『合聖ポイント』の上限が上がる。
 イベントや特定の宝箱から習得でき、その多くはストーリー進行上欠かすことのできない重要な役割を持つ。
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オートバトル:味方全員が通常攻撃を選択した状態で高速戦闘を行う。戦闘の進行がスピーディになり、雑魚を蹴散らすのに適している。
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状態異常:多くは行動不能に陥るものだが『睡眠』『麻痺』のほかに『ふぬけ』『赤ん坊』といった比較的珍しいものも。
 中でも他のRPGの混乱に相当する『悪魔』はプレイヤーの状態異常に留まらず、ストーリー上でも何度かお目にかかる本作らしい設定となっている。
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全滅:味方全員が戦闘不能になると、リーダーのみ復活した状態で最後に立ち寄った記録の館からのやり直しとなる。
評価点
オーソドックスなRPGのスタイルで、ビックリマンの世界を堪能できる
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登場人物はほぼ全てがシールやアニメにも登場したビックリマンのキャラ。
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原作のストーリーラインやキャラ設定はそのままに、RPG向けに上手く料理している。
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施設NPCもキャラ名は表示されないものの、概ねイメージに適した人選がなされている。
 
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タイトル画面でしばらく放置するか、スタートメニュー画面から『ストーリーを見る』を選択すると、あらすじをビジュアル付きで見ることができるため、原作を知らない人でも安心してストーリーに入っていける。
キャラゲーとしてのビジュアルの完成度の高さ
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敵味方問わず、登場キャラの多くに立ち絵が存在し、いずれも原作のビジュアルイメージを損なっていない。
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元々2頭身キャラとファミコンのスペックとの相性が良かったのかも知れないが、キャラクターの持つ個性を十分に生かしつつ描き分けている点は特筆に値する。
 
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パワーアップを果たすキャラは原作同様、パワーアップ前後両方の立ち絵が用意されている手の込みよう。
メリハリの利いたサウンドの絶妙な心地よさ
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BGMは世界観を反映させたポップス調のものが中心。華やかさには欠けるがシーンのテンションに合わせた小気味の良い作品が揃っている。
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逆に効果音は総じてかなり派手なものとなっており、いぶし銀のBGMとのコントラストによって独特の爽快感を持たせている。
原作ファンがニヤリとできる細かいネタもバッチリ押さえている
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特定のキーアイテムに対応した『アルバム』がいくつか存在する。
 キーアイテムを担当するNPCがアルバムに登録される様子は、さながらビックリマンシールを集めているかのよう。
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回復アイテムには『ビックリマンチョコ』『ビックリマンアイス』『ビックリマンスナック』といった、当時展開されていた食玩の名称が使われている。
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NPCとの会話に時折含まれる一見謎の文字列の多くは、原作シールにもあるオノマトペ(擬音語)にちなんでいる。
RPG初心者も取っつきやすい、ユーザーフレンドリーなシステムが多い
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シナリオ4を除くエリアの最序盤は結界で覆われており、特定の人物との会話を経て必要なアイテムを受け取らないと先に進めないようになっている。
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戦闘シーンはオートバトル機能の存在もあって非常に快適に進められる。上述のサウンドも相まって悪魔を蹴散らす快感は上々。
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レベルが上がるとHPとFPが全快する。
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NPCのメッセージはそのほとんどがゲームのヒントに通じている。くまなく耳を傾けていれば自然とストーリーを進められるだろう。
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移動中に回復のために道具か理力を使う際、回復が必要なメンバーのみが対象リストに表示される。
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FPやアイテムのリソース上限はあまり潤沢とは言えないため、無駄撃ちしない仕組みが存在するのは非常にありがたい。
 
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特定のキーアイテムは専用のアルバム1つにまとめられ、道具枠を圧迫しない。
 アルバムを「みる」と、今までどのNPCに会ったかがグラフィカルに確認でき、進捗が把握しやすい作りとなっている。
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シナリオのボスを撃破すると、スーパーゼウスが褒美として死亡した味方全員を復活させてくれる。
賛否両論点
良くも悪くもRPGとしてはシンプルな点
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キャラクターが強くなる方法が実質レベルアップ一択しかない。シンプルで分かりやすい一方、攻略上工夫の余地が少ないとも言える。
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加えてキャラクターのレベルが水準に達しないと進めることのできないイベントもあいまって、要所要所でレベル上げを強いられるゲームデザインとなっている。
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キャラのパラメータもHP・FP・攻撃力・防御力の4つのみと至ってシンプル。行動順に影響を及ぼす素早さは存在しない。
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ステータス画面に表示される装備は、原作再現の都合上か装備変更が不可能な固有装備のみで、フレーバー以上の役割を成していない。
 
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通貨である『ビック』は拠点での回復と、回復アイテムの補充に用いられるのみで、他のRPGと比較してもお金をやりくりする意義が非常に薄い。
シナリオの展開がワンパターン
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シナリオの大部分が「キーアイテムを持つNPCを訪ねて回り、エリアのボスを倒す」に集約されている。
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形は違えど、全てのシナリオでこのサイクルを要求される構成になっており、お使いゲーの側面を強くしている。
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せめてアニメのようなキャラ同士の掛け合いがいくらか再現できていれば、ファンにとっても嬉しい要素になったのが惜しい所。
 
お助けキャラの行動が運頼み
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呼び出されたお助けキャラの行動をプレイヤーが指定することはできず、通常攻撃になるか専用技になるかは完全にランダム。
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強力な通常攻撃を期待して呼び出すと、現在の敵には全く効果の無い専用技を行う、もしくはその逆のケースでコストを無駄に消費、というケースもまま見られるため、強力ではあるが頼り切りという訳にはいかない。
 
スタッフロールの終わりにプレイ記録が表示される、ちょっと珍しいオマケが存在する
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内訳は平均レベル、倒した敵の数、全滅回数、リセット回数の4つ。
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ただし、下記の問題点に挙げられた全滅ポイントによる全滅もキッチリカウントされる点には、理不尽という意見も存在する。
 
BGMについての賛否両論点
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2~4小節のモチーフを繰り返すパターンのBGMが多く、BGM単体では飽きやすい傾向にある。
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ボス戦のBGMがラスボスにも適用されている。雰囲気にはよく合っているのだが、専用曲が用意されていない点には残念がる声も。
問題点
専門用語に対するフォローに乏しい
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登場人物・アイテム・理力といったあらゆる方面で専門用語が多い上に、説明がゲーム内で十分になされているとは言い難く、理解にはある程度原作を履修する事が求められる。
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一見では意味を理解できない名称が多く、原作を知る者ですら違和感を感じさせる。
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原作では、固有名詞にしばしば漢字やアルファベットを交えた独創的な当て字が用いられていたが、ファミコンのスペックの都合上、ひらがなとカタカナのみに置き換えなければならなかった故の弊害とも言える。
 
 
ユーザーフレンドリーなシステムに反して、シビアなリソース管理が求められる仕様
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HPの減少に応じて攻撃の命中率が低下し、またFPが減少すると命中率の低下に加えて被クリティカル率が上昇する、独自の仕様がある。
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このためHPとFPを高く保つことが攻略上で理想となり、FPを消費する理力を気軽に使うことができないというジレンマを抱えることになる。
 
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道具の所持上限数がかなりシビア、上述のアルバムを差し引いてもやりくりに困るレベル。預り所のような道具を別枠で保管するシステムも存在しない。
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『ふっかつボール』や『りりょくのみ』といった非売品が道中の宝箱から手に入ることがあるが、順当にゲームを進めていると所持上限からあぶれてしまうほど入手機会があるため、取捨選択に苦慮するプレイヤーが続出した。
 
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合聖パワーは決まればいずれも強力な技ばかりだが、合聖ポイントの仕様が足を引っ張る。
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パーティ人数に応じて合聖ポイントの上限が上がるが、死亡を始めとした状態異常に掛かったメンバーは人数に数えられない。
 つまり誰かが状態異常に掛かった時点でポイントの上限が下がり、その時点で上限を上回った分の合聖ポイントが消失してしまうのである。
 治療すればポイントの上限は元に戻るが、減った分はエネルギー館で回復しない限り戻らない。
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加えて特定のボス攻略のためには、シールド破壊用の合聖パワーを温存する必要があるため、道中でむやみに乱発できないのも痛し痒し。
 
 
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とりわけこのゲームは、ボスよりもザコ敵の方が厄介な特殊能力を持っていることが多く、「ボスをどう攻略するか」よりも「道中のザコ敵による消耗をいかに抑えるか」に攻略の比重が掛かっている印象さえ受ける。
理力の効果についての説明が不足している
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複数の聖戦士が習得できる理力に『HPかいふく』『FPかいふく』が存在するが、一見同じ能力に見えて、キャラによって効果や消費コストが異なる。
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一応説明書にもその旨の記述はあるものの、肝心の効果の違いについては説明がないため、プレイヤーが手探りで把握するしかない。
 
エンカウント率の高さ
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多くの場合、直線距離において半画面分~1画面分の移動ごとの頻度で次のエンカウントが発生する。
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拠点に帰還する用途での瞬間移動の手段はいくつか用意されているが、ストーリー進行上、主にキーアイテム集めのために右往左往させられるようなシチュエーションが多く、それが体感的なエンカウント率の高さに拍車をかけている。
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エンカウントのあるエリアでBボタンを連打すると、その場で意図的にエンカウントを発生させる隠し技があるが、稼ぎプレイに有用かと問われると、元々のエンカウント率も相まってメリットを見出しにくい。
 
死亡者が出ると画面の文字が非常に見づらくなる
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ドラクエなどでも見られたが、プレイヤー側に死亡者が出ると、カラーパレットの関係で白い部分が一気に真っ赤になる。例えるなら『ドぎつくなった臙脂色』といった感じだろうか。
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こうなると、HPやメッセージ欄などがすべて一気に真っ赤に染まるため、画面や文字が非常に見づらくなる。背景色が黒一色な戦闘画面なのも影響し、味方の残りHPの管理が視覚的に厳しくなってしまう。
 
意地の悪い全滅ポイントが多い
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本作に登場するボスの多くは特定の合聖パワーでシールドを破らない限り、絶対に撃破できないようになっている。
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そしてボス戦で逃げることは不可能であることから、もし合聖パワーを使えないと全滅orリセットでやり直すしかなくなってしまう。
 
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エリア2に点在するダメージゾーンは、特定のイベントを経ないと一歩踏み入れるだけで致死量のダメージを受ける危険地帯。
 シナリオ進行上不可避な箇所に配置されていることから、フラグ管理の一環と取ることもできる。
    
    
        | + | 更にシナリオ4では、対応を誤ると即全滅に繋がるポイントが複数個所に存在する…… | 
無縁ゾーンの中央を横断する『火炎ゾーン』。何も対策を取らずに突入すると全滅してしまう。突破には『キーアイテム』『聖フェニックスのパワーアップ』『かつ彼をリーダーにする』という3つの条件を満たす必要がある。
悪魔『もの魔ね』を助けると貰える『破壊スティック』。いかにも重要アイテムであるかのように渡されるが、実は罠アイテム。これを持った状態で次のダンジョン『新夢幻ゾーン』に入ると問答無用で全滅してしまうことに。誤って手に入れたら捨ててしまおう。
 直前のアメーバ(NPC)が「破壊スティックをもって新夢幻ゾーンに入ってはいけません」と教えてくれるが、そのNPCの近くにあるダンジョンがまさに新夢幻ゾーンというトラップである。
 因みに破壊スティックを『みる』で見てみると、ドクロの杖のような形状をしている為、勘の良い人はこれで罠アイテムだと気づくだろう。
ボス『大門魔』を倒した後の選択肢。メッセージを読み飛ばしてしまった結果、ゴールを目前にして出鼻を挫かれたプレイヤーも少なからず存在した。
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いずれもRPGの基本であるNPCのメッセージにちゃんと耳を傾けることを心掛ければ全滅は回避できる。
 とは言え、話を聞かないプレイヤーへのペナルティとしては重すぎるのではないかという見方も。
総評
 ゲームに不慣れな人も遊べるように設けられた、丁寧な導線とインターフェイス、制約の多いシステムの可能な範囲で詰め込まれた原作愛が光る。
 ゲーム全体で見ると粗削りな作りが目立つが、より多くのプレイヤーにビックリマンの世界を楽しんでもらおうという、スタッフの熱意が感じ取れそうな一作。
 旧ビックリマンの世界に興味を持ったならば、本作を手に取ってみるのも悪くないだろう。
余談
終盤のストーリーにおける原作との差異
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原作のストーリーでは次界において天使と悪魔の戦いが更に激化するのだが、ゲームでは次界に到達した時点で大団円を迎える関係上、設定にいくらか差異が生じる。
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ゲームで展開されるストーリーは悪魔vs天使シール1弾~11弾の範囲にあたり、それ以降の天使・悪魔ヘッドは登場しない。
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その一方で、次界におけるメイン敵役の一人である13弾の悪魔ヘッド『ダークヘラ』が、最初から元来の姿であるプリンセスヘラとして登場。
 また本来15弾で登場するお守り『愛然かぐや』『黎元老守』などがヘッドロココの誕生に関わる形で前倒しで登場している。
 
 
遅きに失したファミコン化
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PCエンジンのローンチとして発売された『ビックリマンワールド』(1987年10月30日)は、まさにブーム真っ盛りな時期だったこともあって注目度は高いながらハード自身がやや高めだったことからファミコンへの移植を望む声が多かった。
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「ファミリーコンピュータMagazine」の「ファミコンにしてほしいソフト」(いわば移植希望)でも1988年頃では『カトちゃんケンちゃん』と並んで常に上位にいた。つまり形は違えどやっと「ビックリマンのゲーム」のファミコン化が叶ったことになる。
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だが、この当時はそんなビックリマンブームもすっかり過ぎ去った後で本作のベースとなった前期アニメは既に終了して1年以上、後釜作品の「新・ビックリマン」も終了間近だったこともあって売上という点ではかなり劣ったものになった。
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PCエンジン版は高額な新ハード購入の障壁をものともせずかなりの売上を記録したことを考えると、時機を逸したのはかなりの痛手だったと言わざるを得ない。
 
 
最終更新:2023年07月09日 14:45