フロントライン

【ふろんとらいん】

ジャンル アクションシューティング
対応機種 アーケード
発売・開発元 タイトー
稼動開始日 1982年11月
プレイ人数 1~2人
判定 なし
ポイント 戦車を乗り継ぎ敵陣を突破
独特な操作と激しい戦闘
戦場アクションの草分け

概要

  • タイトーが1982年に発表したアクションシューティングゲーム。
  • プレイヤーは青い軍服を着た兵士、「軍曹」を操って敵陣の破壊を目指す。武装はピストルと手榴弾で、どちらも弾数無制限。
    • ダイヤルスイッチを採用しており、進行方向とは別の方向にも攻撃が行える。
  • ステージは谷間、草原、砂漠、敵陣という4つの環境で構成されている。
  • 草原以降に見つかる青色の戦車は操縦可能。敵装甲車の機関砲による攻撃には1度耐えることができるので、降りれば戦車は修理される*1。敵戦車の戦車砲による攻撃には耐えられない。しかし、戦車が被弾炎上しても、爆発までに脱出すれば生き延びるチャンスがある。戦車のほか、攻撃力と装甲が劣るが機動性に優れる装甲車もある。
  • 敵は歩兵、戦車、装甲車。歩兵は軍曹同様にピストルと手榴弾を使う。戦車は戦車砲を、装甲車は機関砲を使う。車両にはピストルが通用せず、自らも車両を調達して対抗するか、うまく手榴弾を当てるしかない。
  • 敵軍のほか、地雷や落石もプレイヤーの行く手を阻む。
    • 地雷が爆発した後の穴に落ちればしばらく移動できず、草地に入ると移動速度が落ちるなど、地形を利用したギミックも。
  • ステージ最後の敵陣では、要塞に据え付けられた砲台を手榴弾で破壊すると司令官が白旗を振って降伏、クリアとなる。
  • 以後は再び谷間に戻り同じステージを繰り返すことになるが、周回ごとに敵兵の能力が向上していく。

評価点

  • 「見下ろし視点を採用した戦場アクション」として、本作は最初期に発表されたものである。
    • 当時としては非常に目新しく、後の移植版のパッケージ裏に書かれたとおり「超リアル戦争ゲーム」であったものと思われる。
  • 歩兵と戦車で戦い方が変わるため、敵陣を目指して前進し続けるシンプルなゲームプレイにアクセントが生まれている。
  • ダイヤルスイッチ操作による移動方向と攻撃方向の分離。
    • どの方向から敵が現れても足を止めずに反撃できるので、複数の敵を相手にした激しい戦闘の中でもゲームのテンポが崩れない。
    • 砲塔と車体を別々に操作する戦車の操縦との相性も良い。

問題点

  • 難易度の高さ。本作は1982年当時としても非常に難しいゲームと見なされ、レビュー等でよく指摘されていた。
    • 修理が可能とはいえ、戦車もさほど頑丈ではない。
  • 独特の操作方法の複雑さも欠点として指摘されることが多かった。
  • 弾がピストルの銃口から発射される。
    • ある意味では現実的なのかもしれないが、プレイヤーの中心よりも少しズレた位置が射撃の基準になり、慣れるまで直感的な照準が難しい。また、照準の方向によって右手と左手でピストルを持ち替えることもこれに拍車をかける。

総評

見下ろし視点を採用し、戦場を舞台としたRun and gunシューター*2の草分け的存在である。その独創性や激しい戦闘(特に戦車戦)が国内外で高く評価された一方、難易度や独特の操作方法の複雑さに対する批判も常に付きまとった。

2年後の1985年には『戦場の狼』、1986年には『』がそれぞれ発表され、どちらも大ヒットを記録した。これ以降、世界中で同様の戦争アクションが多数制作され、ジャンルとしての地位を確固たるものとしていくこととなる。そうしたブームを経て、「元祖」であるが故に荒削りな部分の残る本作はいささか影の薄い存在となってしまった。

移植など

AC版リリース直後の1983年から1985年にかけて、本作はいくつかの家庭用コンピューターおよびゲーム機に移植されている。しかし、ダイヤルスイッチ操作を再現することが難しく、後年の移植版や関連作品も含めて、単純にプレイヤーが向いている方向にのみ攻撃を行うよう変更されているものが多い。

  • ファミコン版(1985年8月1日発売)
    • タイトーが家庭用ゲーム機向けに開発した最初のソフト。
    • 攻撃はプレイヤーが向いている方向にのみ行える。
    • 性能の限界か、グラフィックをはじめとしてあちこちが簡素化されている。
    • 敵は1画面に2ユニットまでしか出現せず、攻撃もまばら。手榴弾は使わない。地雷も削除された。
    • 戦車の入手機会が多い。
    • 上記の要素が重なった結果として、難易度は大幅に下がった……というよりも下がりすぎてしまった。高く評価されていた激しい戦闘はすっかり寂しいものに。
    • ポーズ機能はない。
  • そのほかにコレコビジョン、PC-8801、パソコンテレビX1、Atari 2600、MSX、FM-7などに移植された。
  • Win95 タイトーレトロアーケードパック(1996年)
    • AC版。
    • 射撃方向を45度ずつ左右に回転する操作をキーに割り当てることで、移動方向と攻撃方向の分離を試みている。

2000年代以降にもAC版およびFC版が何度か移植された。

  • PS2 タイトーメモリーズ 下巻(2005年8月25日発売)
  • PS4/Switchアーケードアーカイブス(2017年12月26日/2019年2月14日)
  • Switch タイトーマイルストーン(2022年2月24日)
    • いずれもAC版。
    • 左スティックで移動、右スティックで射撃方法を定めるといった操作方法によって、移動方向と攻撃方向の分離を試みている。
  • Wii/3DS/Wii Uバーチャルコンソール(2007年6月5日/2014年1月15日/2016年6月29日)
    • いずれもFC版。
  • 1986年に発表されたタイトーの『陸海空 最前線』は、「最前線」というタイトルに加えて、弾数無制限の銃や手榴弾、乗降可能な車両、さらにステージ最後に待ち受ける砲台など、本作を思わせる要素が多く取り入れられている。
  • 2001年2月23日、GBC向けソフト『フロントライン The Next Mission』が発表された。ストーリーも用意されており、ステージ間には短いカットシーンが表示される。海外版『Sgt. Rock: On the Frontline』は、DCコミックスのキャラクターであるロック軍曹を主人公としている。

余談

  • 開発者のインタビューによれば、「ひとつやられても、もう1回チャンスのあるゲーム」というアイデアから始まって、戦車がやられても脱出して戦い続けられるゲームというアイデアに派生し、ここから戦場を舞台にしたゲームとして肉付けをすることで本作が生まれたのだという。
    • 社内テストでは不評だった。操作の複雑さに加えて、戦場ゲームというテーマも大きく賛否が分かれた。1982年当時主力だった40代から50代の開発者らにとって、戦争の記憶が決して遠いものではなかったためである。本作のコミカルな雰囲気はこのあたりに理由があるのかもしれない。
  • SNKのシューティングゲーム『T・A・N・K』は、本作の戦車戦を参考に開発された。
    • 大ヒットした同作は後に『』シリーズへとつながっていく。
最終更新:2022年12月27日 00:18

*1 この挙動はバグだと言われることもある。AC版のインストカードやFC版の説明書では触れられていない一方、MSX版の説明書では「あそびかた」のページに明記されている。書籍等でも攻略テクニックとしてしばしば取り上げられていた。

*2 シューティングゲームのうち、自機が主に徒歩で移動しながら敵を撃つものを指すサブジャンル。