戦場の狼
【せんじょうのおおかみ】
ジャンル
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アクションシューティング
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対応機種
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アーケード
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発売・開発元
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カプコン
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稼動開始日
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1985年5月
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プレイ人数
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1~2人(交代)
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レーティング
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CERO:B(12歳以上対象) ※バーチャルコンソール版より付加
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配信
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バーチャルコンソールアーケード 2010年10月5日/800Wiiポイント
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判定
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なし
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ポイント
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ジオラマ風の渋いグラフィック 前進あるのみの硬派な作風
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概要
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1985年にカプコンからアーケードにリリースされた、任意だがほぼ強制スクロールの縦アクションシューティング。
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孤高の軍人「スーパージョー(主人公)」を操り、敵陣地の関門をひたすら突破していく。
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攻略サイトでも殆ど「とにかく前に進む」を推奨している。
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一人~二人交互プレイ可能。全8エリア構成のループ制。
主なルール
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操作方法はレバーで主人公の八方向移動と向き調節、ボタンはショットボタンと手榴弾ボタンの2つ。
いわゆるボンバーなどの緊急回避は存在しない。
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敵や敵弾に触れたり、地面の裂け目(塹壕)や池に落ちるとミスとなり、残機制の戻り復活で残機が全て無くなるとゲームオーバー。
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エクステンドは『1942』などの初期カプコン作品にある、100万点までEVERY方式。
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関門までの敵陣地には、ライフルやバズーカ、手榴弾などを装備した敵兵たちが待ち構えており、当然彼らを排除しなければ無事には進めない。
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主な得点源は敵兵を倒した点数で、終盤エリアの方が敵兵の配点が高い。
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関門に到着するとBGMが変化し、ボス戦が開始。ただし特別に強力な敵が出現するわけではなく、敵兵たちが次々に現れる、いわゆるザコラッシュといった趣の戦闘となる。
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ここで敵兵を殲滅させることができれば5000点のボーナスが加算され、ファンファーレとともに次のエリアへと進むことができる。
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4の倍数のエリアをクリアすると、短めのデモを挟んで再びエリア1からの再開となる。8ステージで1周クリア。
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ショットボタンで、プレイヤーが向いている方向に自動小銃(以下マシンガン)を発射。弾数無制限で連射が可能だが、射程制限がある。
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8方向に撃ち分けが可能だが、その角度の穴をついてくる敵にはやや当てにくく、うまく角度を調整して撃つ必要がある。
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原則として、マシンガンはプレイヤーと同じ高度の敵のみに有効であり、乗り物や穴などに隠れるような形で攻撃を仕掛ける敵などには効果がない。但し、エリア2の最初のジープだけは数発打ち込むと破壊できる。
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手榴弾ボタンで、上方向に手榴弾を投げる。
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投擲後すぐには攻撃判定が発生せず、着弾するタイミングを見極める必要があるため、やや扱いが難しい。
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手榴弾はマシンガンでは倒せない、穴や壁で待ち伏せしている敵を倒せる。建物のようなものも、壊せる場合がある。
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ただし、マシンガンとは異なり弾数制限がある。弾切れを防ぐには、エリア各地に配置されている手榴弾の箱を回収する必要がある。
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手榴弾は常に前方に向かって投げられるので、横移動や斜め移動をしながら前方を攻撃するためにも使える。他の方向には投げられないのは一見して不便にも思えるが、縦長のステージを前進し続けるという構造上、実際には前方以外に投げたい場面はほぼない。
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各エリア道中の敵陣地では様々なギミックが待ち構えている。
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画面横や上から乗り物で轢き殺しに来る敵が居る。ゆっくり進みつつ敵兵が飛び出すトラック以外は破壊不能。
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弾は撃たず直進しかしないが敵兵に追い込まれたときには厄介な敵である。
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味方の捕虜が捕らえられている場合があり、これを救出する(触れる)と1000点のボーナススコアが加算される。
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捕虜に当たり判定は無いので、こちらの攻撃の巻き添えになる心配は無い。
評価点
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戦場の過酷さが巧みに表現されたゲームデザイン。
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たった一人で戦場に赴く主人公・スーパージョーに対し、敵兵たちは容赦なく四方八方から出現し、攻撃をしてくる。その敵兵たちの猛攻をかわし、マシンガンや手榴弾で紙一重の反撃を行う…という「撃つ・避ける」を徹底したストイックさが味わい深い。
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エリアクリア時には、スーパージョーがタバコをふかしたりしてくつろぐシーンの絵が表示される。敵兵たちとの死闘を制した彼が見せる、つかの間の安堵がプレイヤーにも一時的な安らぎをあたえ、そして次の戦場(エリア)への臨場感を醸し出す…という粋な名演出といえる。
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グラフィック周りも、ひたすらに泥臭くストイックな戦場感を醸し出している。良くいえば硬派一徹、悪くいえば地味だが、当時のゲームでこれだけ「リアル」を追求したものは珍しい。
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敵兵の描写も力が入れられており、丘の上から飛び降りて来る前に足踏みしたり、一部の敵は画面に現れて直ぐに画面外(ハッチなど)に戻るなどといった仕草が見られる。
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BGMに関しても、その戦いの過酷さを表したかのような硬派な戦場マーチ的な楽曲であり、このゲームの作風に見事にマッチしている。楽曲自体は4の倍数エリア以外は同じメインBGMだが、延々と同じ曲が流れる様が硬派度に磨きをかけているといえる。
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また、本作はカプコンのACゲームで初めてFM音源が採用された作品である。
賛否両論点
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進行に深刻な影響をもたらすほどではないものの、軽微なバグが多い。
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塹壕(地面の裂け目)で弾が遮られる事がある。間合いを調整すればこちらのみ一方的にマシンガンを撃つ事も可能。
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見えない手榴弾箱がある。消えているのは表示だけで、触れると回収可能。
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パワーアップ要素や味方との協力要素といったものが存在しない。アイテムは手榴弾補給のみ。良くも悪くも、プレイヤーの技術が生死を分けると言える。
問題点
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本作の基本的なプレイスタイルはひたすらに前進し、前方以外の敵を相手にせずにエリア最後の関門まで突っ走るものだが、それに気づけないと敷居が高すぎる。「障害物の背後で待ち構えている敵の横を通過しようとすると敵が逃げ出す」という点には初見では気づきにくいだろう。
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序盤のエリアでも終盤のエリアと難易度があまり変わらない。
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エリア1から敵兵の待ち伏せ、中盤の城壁、最後の関門の総攻撃と敵の基本攻撃パターンのすべてが揃っている。
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エリア2の関門には画面左右に防空壕?がせり出しており、スーパージョーの行動範囲が限定されて敵兵との接近戦を避けられない。
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その反面、序盤エリアを凌げるようになると良心的EVERY設定も相まってプレイ時間が長引く傾向もある。
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本作のプレーするには、パターン構築に加えて、ある程度のアドリブも求められる。
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敵兵は基本的には直進するが、細かくスーパージョーを追尾する敵兵やランダム度の高いトリッキーな動きの敵兵も居る。敵出現地点は(左右両端のどちらかの意味合いも含めて)ほぼ固定だが出現数やタイミングが一定ではない。移動スピードも一人一人まちまち。
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大半の場所で無限に沸いてくる敵兵が手榴弾を投げながら弾をばら撒いてくる。故に待ちの姿勢に偏りすぎると死に至る危険性が高い。
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救いがあるとするなら、各エリアの構造はどれも短く激戦さえ抜ければゴールに到達しやすい点と、ボス的な存在がないので敵の硬さに悩まされる状況が無い事だろうか。
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ミスにつながりやすい要素が多い。
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マシンガンに撃ちムラが多く八方向以外の敵兵を確実にしとめるのは難しい。直線上の敵を一掃する快感のある一方、敵とニアミスする場面も多い。
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主人公の手榴弾は前方にしか投げられないのに、敵側は多勢で複数方向に手榴弾を投げ、さらにはこっちには備わっていないグレネードランチャーもバンバン撃ってくる。特にエリア7後半のランチャーラッシュは難関。グレネードは自分のマシンガンより射程が長く着弾点で炸裂する。画面下方向にしか撃ってこないのは救いであるが、あまりに理不尽である。
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場所は固定されているが、何の前動作もなく敵車が左右から現れる。初見では回避不能な場合がある。敵兵も左右から現れるので慣れないうちは画面端に寄り過ぎないほうが良い。
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画面の左右と上下でいわゆる(当たり)判定が突き抜けている。画面左に消えた敵兵かららしき流れ弾が右から飛んできたり、自分が画面の一番下に居ると一番上の敵兵に接触したりする。
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各エリアの中程で城壁の間のトンネルを潜り抜ける必要があるが、あるエリアを除き不可視になっている為、なぜミスになったのか推測しにくい。それに加えて左右から敵兵がトンネル目掛けて突進してくるので安定して突破するのは難しい。各エリアで多少のクセはあるので経験則でミスしにくい方法を探る必要がある。
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敵通常弾と自分のマシンガンの弾の画面表示が同じで、見分けがつきにくい。
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敵弾より敵ユニットの表示順位が高いので、敵の影に隠れて飛んできた弾にやられやすい。
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エリア途中の障害物(施設)の角に引っかかりやすい。敵兵も同じように引っかかるので公平ではある。
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退治可能な敵と不可能な敵のグラフィックがほぼ同じで初見では区別できない。
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手榴弾を投げれば高所の敵兵も倒せるはずなのに倒せないのも多い(画面表示上は命中している)。
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これにより手榴弾の活躍する場面はやや少な目になっている。
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関門での画面上部の移動可能範囲が見た目(敵兵の移動可能範囲)より狭いので、追い込まれてミスりやすい。
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ある場面でマシンガン連射のみで永パになる安地がある。ここでは敵が手榴弾を使ってこない。
総評
ゲームとしての難易度は油断しているとすぐ死ねる程の高さだが、操作系統が分かりやすく、「手強くもやりがいあり」というカプコン製のゲームに漏れない面白さを持つ作品。ザコ戦に比重を置いたカプコン初期シューティングの集大成。硬派に見えるが敵兵のやられる時の弾けるような効果音などコミカルな要素もある。敵を撃つのと敵弾を避して敵陣を突破する両方の魅力がある。
タイトーの『フロントライン』(1982年)など、本作以前にも同ジャンルのゲームは存在していたが、いわゆるRun and gunシューターが大いに注目されたのは、やはり本作の大ヒットがきっかけであった。1980年代から1990年代には本作に倣ったスタイルのアクションシューティングが無数にリリースされ、そこからさらに様々な形態のゲームが派生していった。このことから、イギリスのYour Sinclair誌(1990年8月号)では、本作を「現代のシューティングゲームの曽祖父」と評している。
その後の展開
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本作発売から5年後に続編『戦場の狼II』が稼働したが、前作と雰囲気やゲーム性が全く異なる、いわば「魂斗羅風味の戦場の狼」的な作品となった。
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『戦場の狼II』はスーパージョーを彷彿とさせる「ジョセフ・ギブソン」が主役だが、2009年の『バイオニックコマンドー』(PS3/360/Win)の発売に伴いスーパージョーの本名がジョセフ・ギブソンとなり、後付け設定で『戦場の狼II』もスーパージョーが主役と位置付けられた。
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海外版タイトルは『Mercs』。
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2008年には『Wolf of the Battlefield: Commando 3』がPS3およびXBOX360向けにリリースされている(日本未発売)。
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スロバキアのMicrotech Systems社は、ZX Spectrum向けの続編として(カプコンの許可を得ず)『Komando 2』を開発し、1992年にリリースした。バズーカなどのパワーアップが追加されているほか、放射能汚染地域が舞台となり、身体が徐々に蝕まれていくという設定がある。汚染度は実質的にタイマーとして機能しており、これが限界を超えるとプレイヤーは死亡する。
家庭用移植
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『1942』や『魔界村』に次ぐカプコンのヒット作となった本作だが、国内での家庭用ゲーム機への単体移植はファミコン版のみに留まっている。しかし、後にカプコンのレトロゲームのオムニバスソフトに多数収録されたほか、バーチャルコンソールにも配信されているので、プレイする手段は多い。
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ファミリーコンピュータ版(1986年9月27日発売)
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移植にあたっていくつかの大きな変更が加えられている。
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AC版では第4エリアクリア後に再びジャングルに送られ、さらに4つのエリアを攻略するという流れになり、合計8エリアが存在した。FC移植版では、1-1から4-4までの合計16エリアを攻略する必要がある。
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手榴弾で扉を破壊して侵入する秘密の地下壕、敵からのアイテムドロップ、パワーアップ、ボーナスアイテム、隠しコマンドなどの要素が追加された。白旗を振る司令官が出てくるのもFC版のみ。
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タイトル画面や地下壕など、独自のBGMも追加された。
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処理落ちやちらつきが酷く、お世辞にも快適にプレイできるとは言えないという悪評も多いが、同時期のカプコン製移植ゲーの中ではまだまともに遊べる部類でもある。
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『1942』や『魔界村』、極めつきは『エグゼドエグゼス』といった超劣化移植を連発していたマイクロニクスへの委託を辞め、本作から自社開発になったらしい。
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Commodore 64を始めとする様々な家庭用コンピュータにも移植された。C64版のリミックスされたテーマソングは当時のプレイヤーの間でカルト的な人気を誇る。
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MSX版は動きがカクカクすぎてアクションゲームとしては成立していない。MSX2版も開発されていたものの、結局発売されなかった。
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オムニバスソフト
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『カプコンジェネレーション ~第4集 孤高の英雄~』(セガサターン/プレイステーション、各1998年11月12日発売)
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『カプコン クラシックス コレクション』(プレイステーション2/プレイステーション・ポータブル、2006年3月2日発売(PS2)/2006年9月7日発売(PSP))
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上記のカプコンジェネレーションのものも含め、数々のゲームとのカップリング収録。
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『カプコンアーケードキャビネット』(プレイステーション3/Xbox 360、2013年2月19日配信(PS3)/2013年2月20日配信(360))
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ダウンロード専用ソフト。1980年代のカプコンAC作品を多数収録。ソフト本体は無料だが、各収録ゲームはパック販売されている(単体での購入も可能)。『戦場の狼』は配信第4弾1985-IIパックに収録。
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『カプコンアーケードスタジアム』(Switch/PS4/One/Win)
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『Pack 1 すべてはここからはじまった!』のうちの1タイトルとして収録。
余談
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スーパージョーは後の『バイオニックコマンドーシリーズ』で脇役として登場している。また彼が主人公となった作品は近年で「ジョセフ・ギブソン=スーパージョー」という設定になるまでは本作と海外版『トップシークレット』である『バイオニックコマンドー』(初代)しか無かった。
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西ドイツ版のタイトルは『Space Invasion』。同国の暴力描写に関する厳しい規制に対応するため、敵兵はロボット風、司令官は宇宙人風にグラフィックが変更されている。ただし、結局は戦争賛美の描写が認められるとして、1988年に「若者に有害なメディア」のリストに追加された。このリストから削除されるのは2005年になってからであった。
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殺伐とした作風にもかかわらず、ネームレジスト画面の特殊記号は
ハートマークのみ
である。
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『エグゼドエグゼス』のように入力をハートマークで埋めても女性の名前には変化しない。
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AC版には多くの未使用のグラフィックがある。スコア表示のような小さなものから、命令を下す司令官のアニメーション、別パターンの司令官(カーキ色のコートと制帽を身につけており、チラシのイラストに似ている)、落下傘で投下される物資、頭上を飛び爆撃を行う戦闘機まで様々。
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FC版には通常表示されない隠しメッセージが残されていることが解析で明らかになっている。内容は高井麻巳子ファンである書き手が会社の引っ越しのために86/7/6の握手会に行けなかったことを悔やむというもの。
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AC版ではデモ画面の途中で「カプコンクラブのPGCをもらおう!!」という告知が表示される。
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PGCはプレイゲームカードの略で、ハイスコアや感想などを送ると受け取れる絵葉書のようなもの。本作のほかにも様々なゲームのものが作られていた。ただし、デモ画面で告知を行ったのは非常に珍しい。
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大抵の移植版ではこの告知がカットされているが、『カプコンジェネレーション』では「カプコンフレンドリークラブCFCに入ろう!!」という告知に置き換えられていた。
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海外版のタイトルは『COMMANDO』だが、奇しくも本作リリースの6ヶ月後にはアーノルド・シュワルツェネッガー主演で同名の映画が公開されている。
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内容は無関係。「commando」自体「特殊部隊」「奇襲部隊」といった意味の単語であるため、タイトル被りは単なる偶然だろう。
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邦画タイトルが『マシンガン・ソルジャー/戦場の狼(原題:Nato per combattere)』というタイトルのイタリア映画(1989)がある。本作に便乗したものかどうかは不明。
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ファミコン必勝本(1986年5月号)では、FC版リリースが迫る本作を題材にしたギャグ漫画『戦場の狼 地獄でサバイバルの巻』(画・すのうち さとる)が掲載された。ゲームでも描かれた戦場のほか、鉄下駄を履きながら機関銃の掃射を避けるという過酷な訓練シーン、帰国して大統領から勲章を受けるシーンなども描かれている。バイオレンス描写が見もの。
最終更新:2024年05月12日 21:39