プロ野球?殺人事件!
【ぷろやきゅう さつじんじけん】
ジャンル
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アドベンチャー
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高解像度で見る
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売・開発元
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カプコン
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発売日
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1988年12月24日
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定価
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5,900円(税別)
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判定
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ゲームバランスが不安定
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ポイント
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ノーヒントすぎる捜査 雑すぎるフラグ管理 (当時の)野球選手が多数登場
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概要
発売当時の野球選手をモチーフにしたアドベンチャーゲーム。
『さんまの名探偵』のように許可はとらなかったようで、「いがわ すぐる」「ほら たつのり」「くあた ますみ」等、微妙に名前を変えて当時の野球選手が大量に登場している。
あらすじ
元プロ野球選手のいがわがTVで野球ニュースを見ていると殺人事件の臨時ニュースが入り、そのタイミングでガンアンツのほらがスポーツ記者のおおたから押し付けられたアタッシュケースを持っていがわの家を訪ねてくる。
開けてみると中には大量の札束が入っており、更にはほらを追いかけて警察がいがわ宅を訪れる。
ほらは慌てて逃げだし、いがわもほらを追って警察から逃げ出してしまう。
そしていがわは警察から逃げながら事件の謎を追う事になる。
ゲーム内容
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RPGのように街中を歩く形のアドベンチャーゲーム
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RPGの街中同様、建物の中に入るとまた別のマップになり、そこにいる人々に話しかけて情報を集めたり、アイテムを入手してゲームを進めていく。
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一部には矢印で場所を指定するアドベンチャーゲーム形式になる場所もある。
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警察官が敵
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街中にはあちこちに警官が歩いており、警官の視界に入ると警官がいがわを追跡するようになる。
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一定以上離れる、別の画面に入る等すると追跡を振り切れる。
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捕まった場合には職質の画面になり、そこでの会話で正体がばれると縦スクロールシューティング形式の警官との勝負になる。ボールを投げて警官を倒し、LPが0になる前に画面上部まで辿り着けば逃走成功。失敗すると捕まってしまう。
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車に乗っている際には徒歩の警官にはバレないが、パトカーの視界に入るとパトカーに追われるようになる。警官に比べパトカーから逃げるのはかなり困難で、別画面へ移行しないとまず逃走は無理。
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LPが体力
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時間が経過すると体力は減っていき、0になると倒れてしまう。
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東京に出るまでは自宅に戻され、東京に着いて以降は警察に捕まってしまう。捕まった際には所持金とアイテムがすべて没収されてしまうが、アイテムは取り返すことが可能。
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LPは色々な場所で休憩したり、食べ物を食べる事で回復することが可能。
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病気や火傷になるとLP減少速度が速くなる。
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病院へ行ったり、薬を飲む事で状態異常の回復が可能。
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街中の移動手段は徒歩と車
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横浜と東京ではいがわの愛車、広島では知人の車を借りられる等、車での移動も可能で移動速度が速くなる。
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車はLPの代わりにガソリンを消費し、なくなると走れなくなる。ガソリンはガソリンスタンドで補給可能。
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車はどこにでも駐車できるが、路上駐車したまま建物に入ると車の周囲に警官がうろつくようになる。
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各所にあるパーキングに止めれば警官を避けられるが、お金がかかってしまう。
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アイテムを使用する事で変装が可能
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変装中でないと聞けない情報がある他、変装中は警官の職質を回避しやすくなる。
評価点
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事件の作り自体はかなり凝っている
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今できる事から情報を追っていると話が二転三転し、かなり複雑な事件に巻き込まれていることが分かる。
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殺人事件を追うアドベンチャーゲームとしてシナリオ部分はそれなりの出来。
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大量の野球選手との会話
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後述の問題点に繋がるが、マップがかなり広大なゲームになっており、登場人物もかなり多い。当時の野球選手を元にした人物も数多く登場し、当時の野球界を知っていると楽しめるネタも多数ちりばめられている。
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BGMは良好
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通常の探索時の明るい曲、警官に追われている時のスピード感ある曲、下水道探索時の重々しい曲等、BGMの出来は良い。
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操作性は一部を除いて良い
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警官との勝負時のシューティングゲームを含め、操作性は良好でその点では問題なく遊べる。この点はカプコンがしっかり作りこんでいると言える。
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「かんがえる」コマンドのおかげでゲーム進行に必要な事は多少サポートされている
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「かんがえる」コマンドを使用すると、何かアイテムを探すべきなのか、どこへ行くべきなのか等、現在の進行状況に合わせていがわがどうするべきかを教えてくれる。
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ただしあくまで最低限で、誰かから話を聞くべき時は情報を集めようとしか言ってくれずどこへ行けばいいかは分からなかったりと、そこまで頼りになる物ではない。
問題点
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全体的にヒントが少なすぎる
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多少なりともヒントが出る場所はあるが、見た目何もない机の上や床に重要アイテムが配置されており、目印もなく足元を調べて重要アイテムを探す必要がある個所がいくつもある。
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ゲーム開始早々からして開始地点横の電話を取るといがわの奥さんからキャッシュカード(銀行で金を下ろす重要アイテム)を家に忘れていると忠告されるが、家に戻って奥さんに話しかけても別の話を始めてカードを渡してくれたりはしない。
しかも家の中の画面にカードが置いてあるようなアイコン等は何もなく、ぱっと見何もない机を調べないとキャッシュカードを入手できない。チュートリアルという事なのかもしれないが、プレイに不安しか感じさせない。
更にこのキャッシュカードを入手しないとお金を引き出せない(金が増えない)ので、買い物や休憩、電車代やガソリンスタンドの利用等お金を使う事が何もできない。実質ゲームが始まらないようなもの。
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一部のマップアイコンは通り抜けが可能で、特に目印があるわけでもない木を通り抜け可能でその場所を調べると調査画面が出てきたり、何故か池の中に隠し通路がある、球場の観客席から外野に降りられる個所がある等、普通に気づけという方が無理な箇所が多数ある。
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木に囲まれた内側で焚火をしている人がいるのだが、その人に話しかけるには「スコップを持って」「囲んでいる木の内一か所を調べると木を切って中に入れる」という物まである。
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広大すぎるマップ
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一つの都市だけでもかなりマップが広く、各所を回るだけで一苦労。加えて病院や球場も一つの都市に複数あるが何病院や何球場といった表記はないのでそれらは自分で覚える必要がある。
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更にえげつないのが下水道。とんでもなく広い迷路構造になっており、更には水の流れる場所を歩き続けていると病気になってLPがドンドン減るようになってしまう。
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体力回復手段と薬を持っておかないとまともに探索するのもきつい。
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それに伴い街中を歩く通行人も多数配置されているが、どうでもいい話をする人が多数で、捜査もかなり大変。
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警察に追われる要素がストレスにしかなっていない
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シューティング画面でのゲームも含め、色々なシステムを入れる事で飽きさせないようにしたのかもしれないが、最初の内を除けば面倒くささしか感じない。
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フラグ管理が雑な箇所がある
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本来人物Aに話を聞いてから会いに行く人物BにAに会う前に話しかける事が可能な上、Aの会話を聞いた前提の話をいがわがBにし始める等、話の順序をしっかりフラグ管理出来ていない箇所がある。
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また、電話番号については番号の情報を入手できる事を実質的なフラグにしており、電話をかける時期に関係なく同じ内容を話す。初見プレイ時には問題ないが、電話番号を知っている2周目以降のプレイでは進行状況に噛み合わない電話を出来てしまう。
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シナリオが複雑すぎる
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評価点にもある通り事件自体がかなりややこしいのに事件を振り返って情報をまとめるといったシーンがなく、それに加え、上記のようにシナリオ進展を求めて長い時間右往左往する、フラグ管理ミスで意味不明な話をされる等も組み合わさり、結局それぞれがどう動いてどういう事件が起きていたのかが理解しづらい。
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野球選手はほぼいるだけ
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当時の野球選手を元にした登場人物が大量に登場するが、ほとんどの選手は事件に関係ない内容を一言二言喋るだけでクリアを目指すためであれば話しかける必要はない。
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いがわ(江川)と他選手との関係を知っていると楽しめるセリフなども多いが、事件解決を目指すゲームとしてはただただどうでもいいセリフをしゃべる人物が大量に配置されただけになってしまっている。
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入団試験の内、「守備」がかなり厳しい
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いわゆる野球ゲームの打たれた後のキャッチだけを行うような内容なのだが、「いがわの足が遅い」「上下左右にしか動けず斜めに移動できない」「猶予時間が少なく打たれた直後にはどこに行くべきかすぐ判断しないと間に合わない」と、実際やってみるとかなり捕球が厳しい。
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ダイビングをうまく使ってすばやく移動距離を稼ぐとかなり楽になるのだが、移動して届かないのでダイブするならともかく、ダイブで移動距離を稼いでから微調整するという通常と逆の動きをしなければならず気づきにくい。
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しかも10回中8回の成功が必要な上、3回失敗しても10回終わるまで中断はできない。
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早々に失敗を重ねてしまった場合、やり直しまで結構待たされることになる。
総評
プロ野球選手を題材にした殺人事件を解くアドベンチャーゲームとしてゲームの基礎部分はそれなりにしっかり作られてはいるのだが、全体的にノーヒントが過ぎて攻略本等を見ずにクリアするのはかなり厳しい。
警察から逃げながらの捜査という点も特徴ではあるが、ただでさえ面倒な広大なマップの探索をひたすら面倒にしているだけで、余り面白さには繋がっていない。
実在の野球選手と交流できる点や歩いて情報を集めるアドベンチャーとして楽しめる点もあるにはあるのだが、理不尽な難しさばかりが目立つゲームになってしまっている。
余談
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実在の選手を(恐らく)勝手にゲームにした事もあってか、移植等は一切行われていない。
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ポートピアのパロディ要素
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事件に関わりのある人物として病院の院長「やまかわ こうぞう」が登場する他、「ヤス」という人物も登場する。
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作中いがわが警官に怪しまれ正体がばれると大勢の警官による包囲網をいがわはボール投げと体当りで戦うことになり次々と警官たちをなぎ倒すわけだが、ふと考えてみればシュールな光景である。
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野暮な突っ込みだがいくら相手が元野球選手で一般の人間よりは鍛えられているとはいえ、一人に警官があれだけ大勢で総がかりして捕まえられないのも考え物。
やっぱりただ公務員というだけ警察官になって日頃は弱い者ばかり取り締まってるからこうなるんだろう。もっと鍛えとけ!
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またボールを凶器にする様は某野球名作の野球恋愛無視クソゲーを思い出したかも…
もっとも、本作の場合逃げるために他にないからボールを投げているので、一応まだ納得できる理由はあるといえばある。
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カプコンCMでは恒例でありルパン役で有名な山田康雄氏がいがわを演じている。
最終更新:2024年08月03日 08:34