ウルトラマンパワード
【うるとらまんぱわーど】
ジャンル
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格闘アクション
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対応機種
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3DO interactive multiplayer
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メディア
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CD-ROM
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発売・開発元
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バンダイ
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発売日
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1994年3月20日
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定価
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8,800円(税抜)
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プレイ人数
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1~2人
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判定
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なし
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ポイント
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SFCの格闘アクションの流れを含む作品 原作と異なり格闘を行うウルトラマンと激しく動く怪獣 次世代機に移行したことで演出面も”パワード”に進化 やっぱり難易度は高い ファンアイテムとしての価値は高いが原作再現度は微妙
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ウルトラマンシリーズ
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概要
ハリウッド製のウルトラマン『ウルトラマンパワード』(英題:『Ultraman The Ultimate Hero』)のゲーム化作品。
国内3DOのローンチタイトルの一つであり、3DO唯一のウルトラマンゲームである。
ゲームシステムはSFCの『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』などに準じた2D格闘アクションゲームとなっている。
原作は海外製の作品であるが、本3DO版は日本のみの発売となっている。そのため、ゲーム内容も日本版準拠となっている。
なお、日本では番組名もキャラクターの名前も「ウルトラマンパワード」であるが、本記事では区別のために、テレビ番組のタイトルを『パワード』、番組内に登場するキャラクターの方を「ウルトラマン」と表記する。
特徴
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基本的なシステムは概要に書いた通り、SFCの2D格闘アクションのウルトラマンシリーズに準じている。以下は本作での追加・変更点。
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ウルトラマンの追加アクションとして、敵の攻撃をガードする「防御」と、敵のゲージを吸収する「挑発」が追加されている。
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必殺技であるメガスペシウム光線を放つにはゲージが満タンの状態を10秒間保つ必要がある。条件を満たすと「みなぎりメーター(カラータイマーの周りにある8つの小さなランプ)」が点滅する。
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今までのシリーズでは、敵を倒すには敵の体力を0にしてから4ゲージの必殺技を使用する必要があったが、本作ではそれが撤廃され、敵怪獣の体力を0にすると必殺技でとどめを刺す演出が入る。
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ゲームモード
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VISUAL MODE
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原作の1~3話を追体験できるモード。
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原作の本編ムービーが流れ、戦闘シーンではウルトラマンを操作する格闘アクションとなる。
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BATTLE MODE
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全8ステージ構成となる本作のメインとなるモード。
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ウルトラマンへの変身前にストライクビートル(戦闘機)を操作するシューティングパートが追加されている。 なおシューティングパートをプレイするか否かは任意。
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シューティングパートでは一人称視点で、ストライクビートルを操作して、怪獣にダメージを与えることができる。与えたダメージはアクションパートに引き継がれる。
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シューティングパートが終わるとVISUAL MODEと同じくウルトラマンを操作する格闘アクションパートに移行する。
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VS MODE
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DATE BASE
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特典として『パワード』のスチール写真が閲覧できる。
+
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登場怪獣
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※VISUAL MODEでは1~3のみ戦う。
※怪獣の名称は、公式での商品展開では初代ウルトラマンの登場怪獣との区別化のため「パワード○○」と名付けられているが、ここではゲーム中の表記に従った名称で記述する。
STORY
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エピソード名
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怪獣名
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1
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銀色の追跡者
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バルタン星人
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2
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その名はウルトラマン
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ケムラー
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3
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怪獣魔境へ飛べ!
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レッドキング
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4
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闇からの使者
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テレスドン
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5
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侵略回路
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ダダ
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6
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宇宙からの帰還
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ジャミラ
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7
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よみがえる巨獣
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ゴモラ
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8
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さらば!ウルトラマン
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バルタン星人Ⅱ
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評価点
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格闘を行うウルトラマンと、躍動的に動く敵。
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本作のウルトラマンは攻撃技として、パンチ・チョップ・キックといった格闘を存分に使用し、対する敵怪獣たちもきびきびと躍動的に動く。
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『パワード』を知らない人からすると「これの何が評価点なの?」と思うかもしれないが、実は『パワード』を知る人にとっては非常に注目したい点なのである。
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まず、前提知識として知ってもらいたいのが、原作となるテレビ番組『パワード』はバトルシーンの評価があまり芳しくない。それには以下の裏事情がある。
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概要にも書いたように『パワード』はハリウッド、すなわちアメリカ製の番組なのだが、アメリカの子供向け番組としても作られた都合上、殴る・蹴るといった激しい格闘を行えなかった(アメリカでは子供向けコンテンツの暴力表現の規制が日本と比べて厳しいため)。特に第3話まではウルトラマンと怪獣の戦いが押したり引いたりで演出されており、一部では「押しトラマン」と揶揄されてしまうほど。
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敵怪獣もデザインそのものはウルトラファンの間では高評価なのだが、デザインを重視しすぎた故に、いざスーツを着て動かすと敵怪獣の動きもいまいち悪かった。
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上記2点以外にも、製作陣に巨大特撮のノウハウが無かったことも、バトルシーンの評価が低い一因とされている。
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日本のウルトラファンからすると、そういった不満の声があった『パワード』であったが、日本専売のゲームとなった本作では、当然そんな事情はお構いなし。
ウルトラマンは怪獣に向かってパンチやキックはもちろんのこと、力強くぶん投げて地面に叩きつけることもでき、敵はきびきびと激しく動く。ある意味幻となった「『ウルトラマン』らしいアクションを行う『パワード』」が実現したのである。
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後述するが、本作は原作が完結する前に開発・発売されている。原作が未完結の間に展開されたメディアミックスには、原作との齟齬が多かれ少なかれ発生するものだが、本作の場合はそれがプラスに転んだいわば「怪我の功名」なのかもしれない。
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ハードスペックの向上と実写取り込みにより、パワーアップした演出とグラフィック。
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本作のグラフィックには実写取り込みを採用しており、それまでドット絵だったグラフィックの多くは、実写へと変更されている。
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ウルトラマンはもちろん、怪獣たちも実写へと変更。前述したように怪獣の動きも悪くない。
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元となる原作がCGを多用する特撮番組であるため、実写取り込みを特色とする3DOとの相性も良く、違和感も少ない。
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ウルトラマンの変身シーン(通称ぐんぐんカット)も、原作そのままのカットが使用されている。
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VISUAL MODEでは、3話分しか収録されていないものの、原作映像のムービーが視聴できるのも地味に嬉しい。『パワード』は諸事情により2025年現在でも視聴手段が限られている(余談にて後述)ため、この点も評価したいところ。
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『パワード』のオープニング主題歌もしっかり収録されている。それまでの容量の限られたROMカセットでは難しかった主題歌の収録が、CD-ROMが自由に扱えるハードで発売したことにより実現したのも嬉しい点。
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地味に貴重なデータベース
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原作のスチール写真も収録されており、ファンにはたまらないものとなっている。
問題点
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相変わらず高い難易度。
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これまでのシリーズ同様難易度は高め。姿勢が低いせいで立ち大キックが当たらないケムラー、火力の高いレッドキング、地面に潜るテレスドンなど、厄介な敵が多く、子供にとってはVISUAL MODEのクリアさえ一苦労なほど。
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一応、それを見越してかVISUAL MODEのコンティニュー回数は9とかなり多く設定されているが、BATTLE MODEではデフォルトだと3回までしかコンティニューができない。
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とりわけ本作をプレイした人にとって強いと評されているのが、ダダ。
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急降下キックを対空技で潰してくる、無敵の突進技を繰り出してくるなど、難易度ノーマルでもかなり苦戦する。
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また、今までのシリーズで強力だった急降下キックは、本作では使用するのにゲージを消費するようになり、相対的に弱体化している。これまでのシリーズで強力だった反動だろうか。
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必殺技であるメガスペシウム光線を発射する条件が厳しすぎる。
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特徴にて記述したように「ゲージが満タンの状態を10秒間維持する」という条件を満たす必要があるのだが、これが思ったよりも難しい。
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敵怪獣もウルトラマンと同様挑発に相当する動作を持っている他、本作のウルトラマンはしゃがみガードをするだけでゲージを消費してしまうため、思いの他ゲージが満タンの状態を10秒維持するのが難しい。
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そしてやっとの思いでメガスペシウム光線を放てたところで、メガスペシウム光線の発生時間がかなり遅く、光線を放つ前に攻撃を受けて潰されたり、ガードをされたり、避けられたりすることも珍しくない。
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ただ、その代わりにメガスペシウム光線の威力はかなり高く、直撃すれば敵のライフを半分近く削れるほど強い。
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原作再現ができてないところがある。
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2D格闘アクションのウルトラマンシリーズでは高い原作再現度も魅力であったが、本作の原作再現度は、いまいちなものとなっている。
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まずウルトラマンが戦える制限時間が2分と短い。ゲーム的にはそこまで困りはしないが、ウルトラマンと言えば3分の制限時間というイメージと反している。
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評価点にも書いたが、ウルトラマンの戦闘スタイルが原作と違いすぎる。アクションゲームとしては激しいバトルができることは正しいのだが、原作再現という観点ではやはり問題。
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また、開発・発売時期の都合上仕方のないことだが、ドラコやゼットンは登場しない。
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本ゲームの発売日が1994年3月20日に対してテレビ番組『パワード』のVHS発売時期が、1993年12月5日~1994年8月25日。つまり、原作が完結していない時期にゲームを開発・発売しているので、原作終盤に登場するドラコ(パワードドラコ)とゼットン(パワードゼットン)は本作では登場しない。
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原作では、ドラコはウルトラマンを圧倒したとてつもない強さから隠れた人気を誇り、ゼットンは前述したように評価の芳しくない『パワード』の戦闘シーンの中でも例外的に戦闘シーンが高く評価されているため、『パワード』ファンからすると少々残念に感じるところ。
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ならばゼットンの代わりに誰がラスボスを務めているのかというと、BATTLE MODEの最終ステージでは、「バルタン星人Ⅱ」というオリジナルキャラと対戦する。
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念の為補足するが、原作最終話に登場した「サイコバルタン星人」ではない。グラフィックも最初のステージに登場したバルタン星人の使いまわしとなっている。
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そのバルタン星人Ⅱの撃破演出も、パワードスラッシュで真っ二つに切断する、というこれまた原作にないもの。初代マンのバルタン星人二代目のオマージュだろうか。
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対戦モードの劣化。
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『ウルトラセブン』にも搭載されていた対戦モードもVS MODEとして本作に収録されているが、『セブン』と比べて劣化している部分がある。
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まず、1Pはウルトラマンを必ず使用しなくてはならない。一応隠しコマンドで2PやCOMにウルトラマンを使わせることもできるが、この仕様のせいで怪獣同士の対戦ができなくなった。
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片方がウルトラマンを必ず操作しなくてはならない都合上、同キャラ対戦もできない。当然ウルトラマン同士の対戦もできない。
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一応、『ウルトラセブン』では、同キャラ対戦を行うと1Pと2Pの区別がつかないという問題点があったのでこの仕様にした可能性もあるが、せめて別々の怪獣同士の対戦はできるようにして欲しかったところ。
総評
原作の『パワード』と異なり、激しい格闘戦を行うウルトラマンを見ることができる、ある意味貴重な作品。
CD-ROMが扱える32bit機に移行したことにより、原作の映像をそのまま再生できるなど、当時としては進化した演出を見れるのも革新的であった。
ただし、原作が完結していない時期に開発・発売したというメディアミックス特有の致し方ない事情があるとは言え、前述したウルトラマンの戦闘スタイルの違いも含めた総合的な原作再現度はSFCの『ウルトラマン』『ウルトラセブン』 と比べて下がってしまっているのは、残念なところ。
またSFCの『ウルトラマン』『ウルトラセブン』と同じ問題点として、キャラゲー要素を抜きにした、一つのアクションゲームや対戦ゲームとして見た場合は、相変わらずゲームバランス・アクション・システムに粗削りな部分が多く、ファンやマニア以外には勧めにくいのも事実。
原作の不満点だったアクションが大幅変更されていることや、資料写真や原作映像などの収録のことを考慮すると、良くも悪くも『パワード』を知るファンに向けた作品であると言えよう。
余談
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本作以降、2D格闘アクションのウルトラマンゲーの完全新作は発売されておらず、現状最後の2D格闘アクションゲームのウルトラマン作品となっている。
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実は2017年になるまで、原作『パワード』を見る手段は限られており、地味に視聴が難しい作品でもあった。
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まず『パワード』の版権が円谷以外にもあるなど色々と複雑らしく、長い間VHS・LD以外のソフト化がされていなかった。
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2017年になってようやくBlu-ray版が発売されたが、ウルトラシリーズを扱った円谷公式のサブスク「TSUBURAYA IMAGINATION」では、2025年時点でも『パワード』は未配信となっている。
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以上のことを考えると、ゲーム内に原作映像を流用している本作は、かなり貴重と言えるかもしれない。
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DATE BASEで見ることができるバルタン星人の画像の中に、何故かゲームに一切登場しないサイコバルタン星人が1枚だけ混ざっている。
最終更新:2025年05月06日 00:25