磁界少年 メット・マグ
【じかいしょうねん めっと・まぐ】
ジャンル
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アクションパズル
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対応機種
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ファミリーコンピュータ ディスクシステム
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発売元
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DOG
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開発元
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シンキングラビット
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発売日 ()は書換開始日
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1987年7月3日(1987年9月2日)
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定価
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3,400円
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プレイ人数
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1人
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判定
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良作
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ポイント
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1つのゲームに2つのタイトル 磁力と自力のバランスが絶妙 豊富なステージ
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DOGシリーズ
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概要
1987年7月にDOGから発売されたアクションパズルゲーム。副題は『DOGから君への挑戦状』。
磁石のS極とN極による「引き合い」と「反発」の性質を利用してゴールを目指す、パズル性の強いアクションゲーム。
パッケージのタイトルは『磁界少年 メット・マグ』だが、ゲーム中では『磁界少年 メット・マグ』と『磁界少女 マット・メグ』という対称的な2つのタイトルから選んでプレイする形となる。
内容
ストーリー
ファミコン大好き少年のマグは、いつものようにファミコンをやろうとスイッチを入れた。するとマグの体は磁気化されファミコン内部の電磁界に取り込まれてしまった。
それによって電磁界の磁力バランスは崩れてしまい、元に戻そうとする電磁界の力が働きマグの行く手を阻もうとする。
そんなマグを助け出そうとメグも後を追って電磁界に入り込んできた。電磁界に入った二人は磁力の影響を受ける体質になってしまった。
脱出するには、電磁界にある「マグチップ」をすべて集めなければならない。だが3種類のマグチップを取ることで、マグ、メグとも自身の極性が変化してしまうので頭を悩ませてくる。
二人は頭を使って磁力界を抜け出すことができるのだろうか?
プレイヤーキャラ
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メット・マグ
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ファミコンで遊んでいるうちに電磁界に迷い込んでしまった少年。
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マット・メグ
ゲームシステム
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メインのタイトル画面でセレクトボタンを押すと、『磁界少年 メット・マグ』『磁界少女 マット・メグ』のタイトルが切り替わる。これが実質的なプレイヤーキャラ選択になっている。
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ステージ内に散らばる「マグチップ」をすべて集めてゴールの扉を開き、それを目指すという『ロードランナー』と似たようなゲーム性。
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ロードランナーと違って自力でジャンプできるが、自身の磁極とその磁極を持つブロックとの兼ね合いを利用しなければ基本的には突破できない。
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基本的に青がN極、赤がS極になっており、主人公二人の体の色や、磁力ブロック、非固定ブロックキャラの色がそれに対応している。
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同極なら反発し、異極なら引き合うまさに磁石そのままの性質を持っている。ブロック自身が連なっているとその磁力も強くなる。
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ただし、アクションである程度まではカバーできる。また自力アクションと磁力のかみ合いも必要となる。具体的な特徴は下記の通り。
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下に同極の磁力ブロックがあれば体の半分ほど宙に浮き、その前からジャンプすれば反発力で普段よりも高いジャンプができる。
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上に同極のブロックがある場合は、その反発影響を受けるので高く跳べない。下に異極のブロックがある場合ジャンプはできるが磁力に逆らって飛ぶのでだいぶ低いものになる。
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上に異極のブロックが2つ連なっている場合、ジャンプで触れれば、それにくっついて移動できる。
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時間要素としてタイムポイントがあり50000からスタートし時間経過で減少していく。
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ただこれが0になってもミスにはならないので制限時間はない。
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ステージクリア時にポイントの残りがスコアに還元される他、これが少しでも残った状態でクリアーすれば残り人数が1人増える。
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単純に「時間」というだけでなく、体力(HP)に近い要素も兼ねており敵の攻撃を喰らってもタイムポイントが減る。
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上記の通り、タイムポイントが尽きてもミスにはならないものの、磁力に挟まれて詰みになることがある。
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こうなった場合、下とセレクトで自主的にリタイアすることとなる。
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本作で残り人数が減る機会は、この自主的リタイアのみ。
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5ステージクリアする毎にボーナスステージに移行する。
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ステージ内には大量にダイヤ(ハート)があり、1つだけでも高得点だが全部取り切れば更にボーナス点。
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ただし制限時間内に出口に入れないと、いくら取っていようが0点。
アイテム
()内はマグとメグで異なる場合のメグ側名称。
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マグチップ
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これを全部取らないと出口が開かないので、いわゆるクリアーのカギとなるアイテム。
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赤ならマグまたはメグがS極に(元々Sなら変わらず)、青ならN極に(これも元々Nなら変わらず)、緑は「リバース」で極性が反転(SならNに、NならSに)する。
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磁力ブロック
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エリア内に配置された磁力を持つブロックで、マグやメグは自らの極性と、このブロックの極性の兼ね合いを考えながら進んでいく。
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手順を間違うと、磁力に縛られてブロックの隙間にハマったり、マグチップを全部回収できなくなったりする。
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名称は同じだが、マグ側が普通の矢印でメグ側はハート型になっている。
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タラップ(タラッパー)
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磁力に関係なく上下運動しておりマグやメグを乗せて運んでくれる。動く方向はタラップは矢印、タラッパーは目の向き。壁などにぶつかると反転する。
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上に乗らず、下からぶつかったりするとその場で上下が反転する。
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マグネタイト(ヒロユキ)
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磁力を持った非固定のブロックで、マグやメグ、磁力ブロックの極性に影響され、引き寄せたり磁力の反発によって押したりもできる。磁力の影響を受けるのはヨコ方向のみ。
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うまく動かすことで足場として利用できる。
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タラップ(タラッパー)に乗せることもできる。
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転送機(魔法の鏡)
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2つが一組になっておりON状態の方に入ることで、もう一方の方にワープできる。
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後述のスイッチによってON・OFFを切り替えられ、片方がONならば一方通行で利用でき、両方ともONならば双方向で行き来できる。
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スイッチ
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上記の転送機(魔法の鏡)のON・OFFを切り替える。
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ニッパー(スニーカー)
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一定時間、敵の攻撃を受けてもタイムポイントが減らない(所謂無敵アイテム)。
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スパナ(赤鉛筆)
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これを取ってクリアすると1つにつき2500点のボーナス。
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ツールボックス(コーヒーカップ)
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タイムポイントを50000に戻してくれる。
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すでに0になっている場合は10000まで戻る。
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ファミコン本体(コントローラー)
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いわゆる1UPアイテムで、取ると残機が1人増える。
敵キャラ()内はマグとメグで異なる場合のメグ側名称。
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ベーダー(ヒスビット)
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クラブ(ガドン)
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飛び道具でマグネタイト(ヒロユキ)を動かす。
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ボーナスステージでは最下部の一本道でマグネタイト(ヒロユキ)を押して出口を塞ぐのがタイムアップと同時になるよう調整されている。
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アイアンバーガー(和尚)
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トゲボウ(ウィム)
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空中をフラフラと飛び回り当るとダメージ。青と黄色の2種類がおり、青の方がダメージが大きい。
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クラウニィ
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雷雲で、電気を飛ばして攻撃してくる。雷は当たると大ダメージで、少しの間しびれて動けなくなる。ただし自身は足場として利用できる。
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これのみマグ、メグどちらのモードでも同じ。
評価点
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低年齢でもわかりやすい磁力の特性を上手くゲームに取り込めており、その挙動も直感的で飲み込みやすい。
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また、ブロックが並んでいる数でその影響力の強弱が表示されているのも直感的にわかりやすい。
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併せて3種類のマグチップも単純に取ればいいのではなく、その順番が大事になるため、よりパズル要素を強めている。
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パズルとアクションが両立したバランス。
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磁力による引き合いと反発というパズル要素だけでなく、それに自身の起こすアクションとの兼ね合いで進めたりするので完全にギミックに縛られるわけではない。
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例えば引き合いの磁力でも、ジャンプすることで多少は動けたりもするし、横方向の反発だからといって進めなくなるわけではない。
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こういった部分で、それぞれの要素がしっかり機能している。
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非固定のブロックキャラ「マグネタイト(ヒロユキ)」もまた、その特性がしっかりと活かされており、引き合いや反発を利用した誘導で足場として活かすことができる。
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上記に付随して敵キャラも利用できることで攻略の幅が広がる。
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敵の攻撃や敵自身を足場に飛ぶことで取れるアイテムがあったりなど、技術介入によるボーナス要素も随所に見られる。
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当時としては珍しい、キャラによって世界観が変わるシステム。
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マグなら男の子らしいデザインになり、メグなら女の子らしいデザインになるなど、同じゲームでありながら見た目が大きく変化するのは当時は非常に珍しいものだった。
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とはいえそれぞれ雰囲気が変わっても中身は同じ。そのためキャラクターの個性という点ではないに等しいが。
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ステージ数は100と非常に豊富。
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中身も、いろいろとギミック構成が絶妙なものばかりで手抜き面のようなものは少ない。
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序盤のステージでは順路がわかりやすく、あまり考えず道順通りに辿るだけでもクリアーしやすくできているため、初プレイなどへ配慮もできている。
問題点
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タイムポイントがゼロになってもミスにならないため制限時間要素や体力要素がないがしろ。
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一応、本来得られる1UPがパーになるので変則的にミスに感じられるかもしれないがゼロになっても何もないというのはさすがに違和感がある。
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そのためミスがプレイヤーの自主的なリトライのみに限られる。このためゼロになってしまうともはや敵の攻撃を気にする必要もなくなる。
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「敵の攻撃=即死」でなくとも「タイムポイントゼロで敵の攻撃を喰らうとミスになる」ぐらいはあった方がゲームとして緊迫感も出ただろう。
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攻略の自由度はかなり低い。
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移動が制限されるシステムである都合上、ほとんど攻略手順が決まっているため、とりあえず動かしながら臨機応変にギミックや敵の対処をしたり、行き当たりばったりで雰囲気を楽しみながら遊ぶようなプレイスタイルには向かない。
総評
磁石の同極と異極による反発と引合いという子供でも馴染みある要素が上手くゲームに落とし込めており、それとキャラ自身のアクションが兼ね合うことや、マグチップによる適切な変化が求められることでパズル性、アクション性とも高められており、これまでにない独自性がある。
ステージ難度は少しずつ上昇し序盤はプレイしながら感覚をつかんでいけたりなど難易度面バランスも比較的整っており、ステージ数は100と豊富で磁力を利用したテクニックが掴めれば先へ先へ進む達成感や手応えを感じていけるだろう。
初心者でも飲み込みやすく、慣れてくるとより強いパズル要素のめり込んでいける上級者向きのゲーム性をしっかり両立できている。
余談
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全100ステージをクリアーするとエンディングでキーワードが告知され、説明書の応募券を貼ってキーワードを書いたハガキをスクウェアに送ると300名にDOGライセンスカード、50名に最新液晶カラーテレビが当るキャンペーンが行われていた。
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副題『DOGから君への挑戦状』はこれに関連しているものと思われる。その副題の脇には星形の吹き出しで「豪華プレゼントが当たる!!」と書かれている。
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なお期限は発売年の8月末なのでソフト発売から2ヶ月ほどの猶予しかなかった。
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書換開始は9月で既に期限を過ぎているため書換版説明書ではキャンペーンの記載は一切なくなっている。
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ご存じの通り、本作のメディアであるディスクカード(磁気ディスク)は磁石に弱い。
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ディスクソフトの取扱説明書では、それを表現したイラストはU字型磁石を近づけられたディスクが嫌がっている様子だが、本作の説明書ではブロックキャラのヒロユキがディスクをいじめる役になっている。
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説明書の発行年月日を見ると「昭和62年6月31日初版」と書かれている。
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この架空の日付は前例としてソ連のテレビ映画「6月31日」(1978年)や児童小説『6月31日6時30分』(寺村輝夫・1974年)などがある。
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のちにはミステリー小説『6月31日の同窓会』(真梨幸子・2016年)なども該当する。
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なお架空の日付を語る上で、本作のこの表記での認知度は限りなくゼロに近い。
最終更新:2025年05月06日 00:24