ジュエリー・ハーツ・アカデミア -We will wing wonder world-

【じゅえりーはーつあかでみあ うぃーうぃるういんぐわんだーわーるど】

ジャンル アドベンチャー
(公式ジャンル名:落ちこぼれクラスが世界を救う青春学園ファンタジー)

対応機種 Windows 8.1/10/11
発売・開発元 きゃべつそふと
発売日 2022年7月29日
定価 【パッケージ】10,780円
【ダウンロード】9,800円(税込)
レーティング アダルトゲーム
判定 なし
ポイント 異能力バトルに比重が置かれた
本編内にはエロなし
演出・システムに難あり
きゃべつそふと作品


輝け、僕らの意志ー



概要

「きゃべつそふと」ブランドの6作目。公式略称は「ジュエハ」。
あまいろショコラータ』シリーズで半数のヒロインを担当していた「しらたま」が本作のメイン原画を担当。
アメイジング・グレイス (以下アメグレ)』『さくらの雲*スカアレットの恋 (以下さくレット)』のメインシナリオライター冬茜トムが本作のシナリオを担当している。
発売年が近い同ライターという点でブランドのファンからは『さくレット』と比較して評価されやすい。

ストーリー

フリギア王立ジュエリー・アカデミア──
そこは『意志(ジェム)』と呼ばれる不思議な宝石を研究する学園。
主人公ソーマ・ジェイスはアカデミアに眠る『賢者の石』を探るべく、
エージェントとして『クラス・ダイヤ』への潜入を試みる。
しかし……彼が配属されたのは謎の新設学級『クラス・ペガサス』だった。
──素性を隠す外国のスパイ・ソーマ。
──剣にしか興味のない女子・ベルカ。
──誰ともつるまない孤高の不良・ヴェオ。
──獣人にして稀代の才媛・メア。
──成績も態度も最悪の王子・マークス。
──唯一まともなクラスの良心・アリアンナ。
ペガサス組に揃ったのは目的も国籍もバラバラな6人の少年少女。
彼らはしばしば反発し合いながらも、やがて世界を脅かす危機に直面することになる。
『石喰い』──
それは、ノヴァ大陸全土を石化せんと迫る謎の災厄。
その最前線に位置した彼らは、元凶の組織《メデューサ》との闘争に巻き込まれていき……?
「いくよみんな──わたし達の全力を、思いっきりぶつけてやろう!」
果たしてソーマはミッションを達成できるのか。
そして、大陸を喰らう石化の脅威に打ち勝つことはできるのか。
世界を羽ばたく意志と絆の冒険譚──ここに輝く。

(公式サイトより引用)

特徴

  • 「Ethornell」エンジンによるノベルゲーム
    • 基本的なシステムは『アメグレ』とほぼ同様である。
    • 『アメグレ』と同じく章仕立ての構成となっている。
  • ほぼ一本道の展開
    • 直後にだけ影響する選択肢と、エッチシーンに関連する選択肢が存在する。
      • 主人公の移動先・会話中の質問時などで選択肢が出るが、これらは順番を選ぶだけで総当たりすることになる。
      • 試験問題を解く場面も似たようなもので、間違えても直後に修正されるため、大局には影響しない。
      • 即死選択肢が一つだけあるが、バッドエンドのテキストはごくわずかしかなく、事実上一本道といってよい。同ライターの『もののあはれは彩の頃。』における永沈に近い。
    • いわゆる途中下車形式であり、メインヒロインは4人。ただし一般的な恋愛ADVの個別ルートに当たる要素がやや特殊。
    • タイトル画面に「エピソード」の項目があり、本編を特定箇所まで進めると、補完エピソードが解禁されていく。
      • 4つが一般エピソード(うち1つはエッチシーンの前置き)で、12がエッチシーンである。閲覧すると次のエピソードが解禁される連動したものもある。
      • 大きなバトルを終えた要所などで、特定のヒロインと関係を深めるか友人の関係を続けるかを選択する。友人の関係を続ける選択をした場合は次章以降の別ヒロインは恋人・友人の関係を決める選択肢が出なくなる。
      • 恋人になったヒロインとのデートイベントなどは「エピソード」で行われるため、本編内での会話などはほぼ変わらない。終盤まで進むと選んだヒロインごとの短い会話が発生し、アナウンスとともに、エッチシーンが解禁される。
  • 話の特徴
    • オリジナルのファンタジー世界「ノヴァ大陸」が舞台。コカトリスやバシリスクなどは既存の創作物から名前がとられている。
    • 主人公はスパイとして最上位の「ダイヤ組」に入るはずが、謎の「ペガサス組」に振り分けられる。
      • 公式ジャンル名は「落ちこぼれクラスが世界を救う青春学園ファンタジー」だが、ペガサス組には学力一位(メア)と二位(ソーマ)がおり、他メンバーも一人を除いて学力は上位で、何かしらの強みも持つ。そのため、「落ちこぼれ」というより「個々のスペックは高いが、協調性がない」メンバーの集まりである。
    • 並々ならぬ意志を持つ者は意志に応じた宝石を発現し、異能力を使用できるようになる。
      • 竜巻を発生させる「トルマリン」のような戦闘向けの能力が多いが、出世の意志「ヘリオドール」のような非戦闘系の意志も存在する。
      • 宝石は物理的には壊れず、紛失しても宿主に戻るが、意志が折れると宝石が砕け散り能力を失う。

評価点

  • 序盤からテンポよく進行するシナリオ
    • スパイとしての諜報活動と学園生活の両立、石化鳥コカトリスの討伐など、序盤から小さなイベントが立て続けに起きる。
      • 学園の授業を通じて世界観や人物紹介を行うため、説明臭さは感じにくく、試験を通じてプレイヤーに最低限必要な情報を理解させる。
    • 仲の悪いクラスが、少しずつ協調しつつあったところで、序盤最大級の敵が登場。苦戦必至のバトルにより、乗り越えるべき敵や目標が定められ、その後も苦難を共に乗り越えていくことで団結していく。定番ながら各自の思想の変化や友情の育みが見どころとなっている。
      • 中盤からエンジンがかかった『アメグレ』『さくレット』と比べ、序盤~中盤の時点で話に引き込まれやすい。
  • 意外性のあるギミックも健在
    • 『アメグレ』『さくレット』のファンが期待していた、予想外の展開は本作にも存在。
    • 奇妙な発言からワンテンポおき、SEとともに衝撃的な一枚絵が出てくる演出とともに常識をひっくり返してくる。
      • ただの一発ネタに終わらせず、このエピソードを踏まえたうえでのテーマが終盤に深くかかわってくる。
  • 素材の増加
    • 人物のみの一枚絵が80枚だった『さくレット』と比べ、95枚と増加。
      • 上述した衝撃的なシーンや意志発動シーンなど、サブキャラも含め印象に残る一枚絵が用意されている。
    • BGM23曲、OP・ED・2ndOP・挿入歌2曲と曲も増加しており、重大なシーンの盛り上げに繋がっている。

賛否両論点

  • バトル描写
    • 身体スペック強化、剣戟に優れるといった単調な能力が多い。
    • テキストこそ変わるものの、最初から最後までシンプルな攻防が多く、能力の意外な相性や予期せぬ使い方といった逆転はほとんど見られない。
    • 意志が折れても事実上戦闘不能となることから、言葉や精神のぶつかり合いが目立ち、舌戦の要素が強い。
  • エッチシーン関連
    • エッチシーンはすべて「エピソード」の項目から閲覧する。そのため「最初から始める」を選択して、タイトル画面に戻らずゲームを進めた場合は最後までエッチシーンがない。
    • エッチの内容は本編内の時間軸のため、本編内からエッチが切り離されているといえる。なお、冬茜トムらしいシチュエーションが多く、過去作と性的嗜好は似ている。
    • 「本編にあったとしても先が気になるから、どの道スキップして後から見返す」といったプレイングをする場合や「緊迫した空気を乱さない」と捉える場合は切り離しを好意的にみられるが、「エロゲとして発売したのだから本編内でエロを入れるべき」といった非難もある。
      • アフターのエッチシーンのみ本編外の『アメグレ』、本編内にすべてのエッチシーンがある『さくレット』もエッチシーンの扱いには賛否あったため、恋愛要素を取り入れつつもストーリー重視の作風のADV全般において万人が納得するエッチシーンの扱いは難しいが、本作は極端な印象が否めない。
    • シーン回収の面倒さについては問題点で述べる。
  • 終盤の展開
+ ネタバレ
  • 因縁の相手の素性やバックボーンが明らかとなり、総力戦により決着する。
    • これまで断片的に情報が出ていた伏線に結び付き、ラストバトルに相応しい展開である。ここまでの評価は概ね高い。
    • ……のだが、上記バトルの直後にさらなる敵が現れて、本当の最終決戦が始まる。
      • 真ラスボスはラスボスよりも純粋な悪として書かれており、これまでの軌跡を踏まえて戦うという流れ自体は自然。伏線はあり、いきなり現れたわけではないものの、突飛気味でもある。
+ さらに……
  • 真ラスボスを抑え込むために、一人のヒロインが道連れにする選択をする。
    • クラスメイトを失いながらも今度こそスタッフロールとともにED曲が流れる。
    • かと思えば、スタッフロールは早い段階で中断。時空遡行によりヒロインを救う道を探し出し今度こそ決着する。
    • ご都合的な展開だが、亡くなった人物は甦るわけではないなど、ご都合に徹しているわけでもない。

意外性はあるものの、真ラスボス周りのエピソード自体がそもそも必要だったかが賛否分かれる。
多少伏線を放置してでも、一つ前のバトルの方がラストに相応しかったとの否定的な意見が挙がっている。

真ラスボスの真の姿に立ち絵はない。椅子に座っているか、胸を貫かれているかの2枚しか一枚絵がないことや、インパクトのある見た目・背景から、中にはネタキャラとして受け止める人もいる。

問題点

一部謎が残るシナリオ

  • 主人公の宝石が解析されなかった理由、夜の学園潜入時の怪しげなやり取りなど、本筋に大きくかかわらないが、意味深なわりに謎のまま終わるシーンがいくらかある。

演出面

  • 立ち絵・背景
    • 右手を左肩に当てているマークス・タバコを持っているネスター軍曹は基本立ち絵がこれしかない。表情差分はあるが、戦闘や逃走時でもタバコを手放さないのは違和感が強い。
    • 立ち絵がなく声だけのキャラクターが多数いる。数行程度のセリフしかないキャラも多いが、序盤から印象深く中盤に深くかかわるチートルや、衝撃的なシーンに立ち会うキャラもいるため、演出が弱くなっている。
    • 戦闘を避けていた名ありキャラが、終盤の局面で加勢してくれたなどの場面も伝わりにくくなっている。
    • 一部背景も差分が不足しており、テキストで「凄惨に崩れ去っていた」とされているが、崩れ去る前と見た目が変わらないなどの不一致を起こしている。
  • バトルシーン
    • 戦闘者の意志発動の一枚絵を基調として、攻撃側と防御側の絵が入れ替わったり半分ずつ表示されながら、SEやカットインが入る。
      • 基本となる意志発動の一枚絵はキャラごとに1~3枚のため、終盤まで使い回しが目立ち、テキストと絵が一致しない箇所も多い。
    • 前述したように、CG枚数自体は過去作から増えているものの、バトルにおいて絵の使いまわしは目立つため、CGが不足していると感じやすい。
      • 最低限はあるものの、2022年のバトルものとしては見劣りが否めず、ビジュアル面でのバトルの見応えは弱い。

システムの不備

  • 「選択肢までスキップ」がない。
    • 上述したように本作は特殊な一本道のため、ヒロインを選び終盤まで進めることでようやくエッチシーンが解禁される。二人目以降は恋人になって終盤までスキップの作業が必要となるため、スキップボタンを押して待つしかない前世代仕様が不便。
    • さらに、総当たり選択肢も全部選ぶ必要があるため、スキップは何度か止まる。2周目以降は省略可能な選択肢追加などがあればよかったのだが。
    • ゴーレムなど、一部の一枚絵がCGモードから閲覧不可能。OP、EDの見返し機能がない。
      • 『アメグレ』の時点でゲームエンジンの古さを指摘されていたが、本作はCGをすべて埋めるというADVの基本的なプレイングに難があるため、欠点が特に目立つ。

総評

恋愛要素を取り入れつつ、事件を追う構成だった『アメグレ』『さくレット』と異なり、友情やバトルといった要素が前面に押し出されるようになった。
不仲な集団がやがて団結して強大な敵に立ち向かう熱い展開や、各自の意志のぶつかり合い、そして何より常識をひっくり返すような真相など見どころは多い。

一方で、多くを占めるようになったバトルは演出面が貧弱で、システムも2022年製としては不便な点が目立つ。
さらに作品評価を決定づけやすい終盤が賛否両論ということもあり、過去2作よりも尖った面を持つ。

余談

  • 過去5作で皆勤賞だった原画家「梱枝りこ」及び声優の「藤咲ウサ」は今作は不参加であった。
  • アダルトゲーム雑誌BugBug 2022年5月号から8月号まで書き下ろしの小説が掲載されていた。
  • ゲームで使用されていないダミーのCG差分が公式サイトに掲載されている。
  • 体験版は4章までをプレイ可能。序盤最大級のバトルで話が終わるため、製品版への期待を高まらせるには十分だった。

コラボ

  • あまいろショコラータ』のキャラクターとコラボしたタペストリーが販売されている。
  • 2022年のクリスマスムービーで『アメグレ』世界に本作のキャラクターが登場している。
  • 2023年9月29日にDMM GAMESの『天啓パラドクス』でコラボイベントが開催された。

移植・続編

  • 2024年10月24日にNintendo Switch/プレイステーション4移植版が発売された。
  • きゃべつそふと8作目として『ジュエリー・ナイツ・アルカディア -The ends of the world-』が2025年2月28日に発売された。


ジュエリー・ハーツ・アカデミア -We will wing wonder world- (CS版)

【じゅえりーはーつあかでみあ うぃーうぃるういんぐわんだーわーるど】

対応機種 Nintendo Switch
プレイステーション4



発売・開発元 エンターグラム
発売日 2024年10月25日
定価 【通常版】8,228円
【限定版】12,078円
【DL版】7,810円
【ダブルパック】14,278円(税込み)
レーティング CERO:D(17才以上対象)
判定 なし
ポイント 追加CGあり
ゲームエンジン変更で、選択肢ジャンプ追加

概要(CS版)

  • アダルトゲームの移植を多く手掛けるエンターグラムによるコンシューマー移植版。
    • エンターグラムは過去にきゃべつそふとの『さくらの雲*スカアレットの恋』もコンシューマー移植を担当している。

特徴(CS版)

細かい差異はあれど、原作と同じく一般的なノベルゲームである。

  • CGを4枚追加
    • メインヒロイン4枚分の一枚絵が追加された。本編は立ち絵で進行していた部分が一枚絵に置き換えられている。
    • オープニングムービー(曲)が「ヒカリ」に変更されており、その中でも使用されている。
  • 一部表現の変更
    • CS化にあたり、アダルトCG・エッチシーンテキストはカットされている。ほとんどをエッチシーンが占めていた「エピソード」の項目は4シーンのみに。
    • メアが拘束されるCG等が加工され、服の破れなどがマイルドな表現になった。

評価点(CS版)

  • 追加要素
    • 本編に一枚絵が追加されたため、より印象的な場面になった。
  • システムの改善
    • エンターグラムの汎用ゲームエンジンで移植されたため、念願の「選択肢ジャンプ」が追加。個別イベントの回収の待ち時間が大きく軽減される。

問題点(CS版)

  • エッチシーンを除いたストーリーの賛否・問題点は原作からほぼ据え置きである。
  • 総当たり選択肢の面倒さは改善せず
    • ヒロイン攻略毎に総当たり選択肢をやらされる場面は原作と変わらない。
    • 既読スキップ連打で突破できるため楽にはなっているが、二人目以降の攻略時の手間はかかる。
  • キャラごとにテキスト色が付いたが、イメージに合致しない
    • ダイヤモンドのアリアンナが、ルビーのルビイがといった具合に、髪や宝石の色と噛み合っていない配色である。
    • ただし、システムで一色に変更できるため大きな問題ではない。

総評(CS版)

原作は本編にエッチシーンがないため、CS版の本筋に大きな影響はない。
追加CGによるビジュアル面の強化、システムの改良により本編を楽しみやすくなった。
エッチシーンを重視しないならこちらを選んでもよいだろう。

余談(CS版)

  • エンターグラムはエロゲ移植のパック販売もしており、本作も『さくらの雲*スカアレットの恋』とのセット版が発売されている。
    • ただしこの2作に作中の繋がりはない。本来は『アメイジング・グレイス』『さくらの雲*スカアレットの恋』の2作が繋がっているが、無関係な本作がカップリングされている。前者は販売元が「dramatic create」でSwitch版も販売されていないからだと思われる。
  • CS版も体験版が配信されている。
最終更新:2025年02月28日 00:55