連れてって、ダンジョンへ!!
【つれてってだんじょんへ】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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Windows(Steam)
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メディア
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ダウンロード専売
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発売元
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芒果派對(Mango Party)
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開発元
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風船花火
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発売日
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2023年6月29日
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定価
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1,300円(税込)
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レーティング
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アダルトゲーム
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判定
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良作
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ポイント
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台湾製カードバトルRPG かわいく魅力的なキャラ 一部翻訳が気になる部分はあり
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概要
台湾のインディーゲームメーカー風船花火が制作した成人向けゲーム。
原題は『帶我去地下城吧!!』(意味は日本語と同じ)
ストーリー
ある日、主人公は突如異世界へと飛ばされ、そこで行方不明となった妹を探している女性のユナと出会う。
出会ったのもつかの間、二人は魔物に襲われるが主人公の指示でユナが魔物を撃退できたことから、ユナは主人公にダンジョンの探索に同行してくれないかと持ち掛ける。
ユナが言うにはダンジョンの最奥にはどんな願いも叶う神器が眠っているとの伝説があり、
こうして主人公は元の世界に帰るため神器を求めユナと協力しダンジョンの最奥を目指すのであった。
特徴
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ジャンルとしては『Slay the Spire』に代表されるデッキ構築型ローグライクである。
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本作の特徴的な点は、事前に拠点でデッキを調整してからダンジョンに挑み、ダンジョン内ではカードの増減・入れ替えが原則的にはできないという点にある。
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このため類似ジャンルの作品とは違い、現場での引きの強さ・取捨選択よりは事前の準備に比重が置かれた作品となっている。
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デッキとカード
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初期のデッキ枚数は8枚で、ストーリーの進行で最大10枚まで増やせる。
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カードは色ごとに、赤は力属性、緑は速度属性、青は魔法属性として扱われる。
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ダンジョン内のモンスターも同様に属性を持ち、力→速度→魔法→力…の三すくみの相性がある。
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また、ボスやアイテムカードは無色の無属性で、弱点・特効はない。
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カードは攻撃・防御・回復の三種に分類され、それぞれカードの左下に威力orアーマーの発生数or回復量が記載されている。
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一度防御カード使えば後は何ターン経過してもアーマーの累計値は消えないだけでなく、戦闘後もアーマーの累計値はダンジョンから出るまで引き継がれる。
また、アーマーがある間は副次的にHPに直接攻撃を受けた場合に発動する追加効果を防ぐことができる。
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ルーン
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各カードには、ルーンを3~5個まで自由に付け外しができる。
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ルーンをつけることで、威力アップや効果の追加・すでに付与されている効果の強化が行える。
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ただし、各カードは3個までしか追加効果を同時にセットできない。
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最初から追加効果が1個か2個ついているカードは、残りの2or1枠分しか追加効果を付与できない。
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バトルの流れ
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ターンごとに全快するクリスタルの残存数までカードを使うことができる。
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1ターン内に複数枚のカードを使用できるが、カードごとにクリスタルの消費数が左上に記載されており、そのターン使えるクリスタルの上限以上は使うことはできない。
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一度使ったカードは使用済み扱いとなり次ターン以降は手札に戻らない。
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デッキのカードを使い切った際は、カードを一枚破棄することで使用済みカードを再生できる。
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デッキの全てのカードを破棄した状態で自ターンを迎えた場合は敗北となる。
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破棄時に、一部のカードや特定ルーンを付与したカードはオーラというパッシブ効果が発動する。
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オーラはそのバトル終了後もダンジョンから出るまでは効果が持続する。
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ダンジョン
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ダンジョンは100階まであるメインダンジョン、シナリオ中に訪れる特殊ダンジョン、稼ぎ用のサブダンジョンが存在する。
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真エンドまで到達するとエンドコンテンツであるアビスダンジョンに挑めるようになる。
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ダンジョンでは類似ジャンル作のように常に1~3択の進行先が表示され、一つ進むごとにダンジョンの1階層に扱いとされる。
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ダンジョン内の選択肢一覧
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モンスター:いわゆる雑魚戦。よほどカードを破棄したりHPが減ってない限りは負けることはないが、買ってもお金とルーンしか手に入らないのでローリスクローリターン。
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レア・変異モンスター:強敵戦。勝利すればアイテムを1つ入手できるがそれなりに敵は強い。ハイリスクハイリターン。
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休憩:休むことで破棄したカードの再生か、カード再生+体力回復のどちらかを行える。後者を選んだ場合はオーラが一段階ダウンしアーマーが減少する。
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ショップ:そのダンジョン内でのみ使える特殊なカードを買うか、アイテムを購入できる。
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宝箱:アイテムを入手できる。ただしたまに敵との戦闘になることもある。(勝利すればアイテムは入手できる)
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イベント:会話イベントが発生し、三択で選択肢を選ぶ。どの選択肢でもカードが強化されるが、選択肢ごとに強化内容は異なる。
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エリート:いわゆる中ボスで、勝利するとHPが全回復し破棄済みのカードが全て復活する。
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ボス:文字通りボス戦。勝利すればダンジョンクリアとなる。
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HPが0になるかデッキのカード尽きた場合その時点で探索終了となるが、負けてもペナルティはない。
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ボスキャラ相手に敗北した場合、特殊な敗北イベントが発生することがある。また、エンディングを見た後はCG全開放機能が解禁される。
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メインダンジョンは20階で一区切りとなっており、20階ごとに登場するボスを撃破すると以降は次の階からワープして始められるようになる。
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その他
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拠点となる街ではカード・ルーンの購入・デッキの編集・ルーンの作成と付け外し・セーブや各種設定が行える。
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難易度は三段階となっており、拠点でいつでも変更できる。
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成人向けゲームではあるが近年のゲームプレイ配信需要も見据えてか、設定にて「いい子モード」をONにするとよからぬシーンを表示させずに進めることができる。
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ただし一部の性的表現を含むテキストはそのまま表示されるので、言語表現にまで規制がかかるような厳しめのサイトで配信するのはあまりオススメしないが。
評価点
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魅力的なキャラクターたち
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全体的に美少女ゲームとしてややベタさは感じられるが、王道を抑えた造形と言える。
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特にメインヒロインのユナは、主人公に対して好意的で、勇敢な性格ながら少し抜けた一面もあるのが愛らしく、イベントでの掛け合いもラブコメ調で読んでいて微笑ましい。
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また、ダンジョン内で起こるミニイベントでは3つの選択肢から選ぶ展開になるので、ある程度負けて再挑戦するのが前提となるゲーム故に再挑戦時もワンパターンにならず別の選択肢も楽しめる。
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他の登場人物も美女揃いで、成人向けゲームなのでもちろん「そういうこと」もばっちり。
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前述の通り台湾製だがキャラクターのセリフ部分の翻訳に関しては概ね正確で、しっかり全編日本語ボイスつき。
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声優は数人程度なので大半が兼ね役だが、演じ分けも問題ない。
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システムメッセージ等で若干ながら硬い表現になっている箇所はあるものの、ゲームプレイ上は差支えない。
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ただし、後述の通り特定の場面にて少々翻訳が荒い部分もあるが。
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テンポ良く進められるバトル
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バトル中の動作が軽く、コストの数値が低くリソース管理しやすいことやあらかじめ優先的に破棄することを前提としたデッキの構築をするため、戦闘中に迷う時間が発生してしまうことをなるべく抑制している。
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インディーながら戦闘アニメの高速化も可能で、どの程度高速化するかも設定画面から三段階で調整できる用になっており、スピーディかつ自分にほどよい速度で楽しめる。
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デッキ構築の面白さ
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三すくみや各種追加効果、制約などから特定の戦法やカード一強ではないバランスがとれており、シナジーを考えながらデッキを組む楽しさがある。
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また、本家『Slay the Spire』や一部のフォロワー作は探索中にカードが増えていくためいかに弱いカードを捨てるか・デッキに入れないようにするかという重要だが説明の無い攻略テクニックが存在するが、
本作の場合微妙なカードが強制的にデッキに入る余地がなく、使いにくいカードが連続して並び続けたり無駄なカードを渡されたせいで引きたい時にキーカードが引けないと言った事態が起こらず、プレイヤーの考えたデッキをシステム面から崩されることがない。
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ルーンで細かなカスタマイズが可能なので、ある程度他のプレイヤーと似たデッキになっても自分だけの独自の戦略やゲーム体験を味わえる。
賛否両論点
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運次第で途端に簡単になってしまう部分はある。
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アーマーを展開する防御カードに残留ルーンをつけておくと運次第で大量のアーマーを抱えたままボス戦に突入でき、戦略よりその場の運が勝ることがある。
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特にカード『石を拾う』は、アーマーに加え低ダメージアイテム『石』を生成するため、残留ルーンで大量のアーマー展開+あらかじめ攻撃時に追加効果が発生するオーラがある状態で『石』を使うと運次第で一気に両方を稼げてしまえる。
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もっともあまり難しくし過ぎると気楽にお色気を楽しみたいユーザーがクリアを断念しかねないので、抜け道的な救済措置と考えたら妥当か。
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また、一部の実績は超大量のアーマーを抱えた状態でボス戦に挑むことを前提としているので、このコンボは開発としても想定している節がある。
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カードを破棄することでデッキを再利用可能にするという本作の特徴的なシステムだが、プレイヤーによっては合わないと感じる可能性がある。
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人間の心理として「できなくなること」によるネガティブな印象は「できるようになる」ポジティブな効果より大きく感じられるいわゆる心理学でいうネガティビティ・バイアスがかかりやすい。
本作ではカードを破棄して得られるリターンが小さいため、そのように感じてしまう人を産み出しやすい設計になっている。
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特に序盤は破棄してオーラを得られるカードが少ない、オーラによるバフ効果の数値が低い、ゲーム中盤以降に登場する破棄した際の効果付加ルーンがない、という点で破棄する行為はだんだんジリ貧になってくだけと感じてしまう人もいる。
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また、休憩した時にHPを回復するとオーラが1段階ダウンしてしまうので、大半のカードが「オーラ1段階アップ」と言う効果なので、戦闘に慣れるまではやりにくさを感じられる場面もある。
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デッキ切れの概念がある以上、極端に時間をかけて相手を追い詰めるような戦法はできず、どんなデッキを組むかという選択の幅こそあれどやれることには限りはある。
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とはいえ、価格を考慮すれば十分戦略性はあり、他のカードバトルゲームにないユニークな要素にはなっているので独自性を好意的に評価するユーザーもいる。
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ゲームに慣れてくればオーラを重ねたまま減少させずにボス戦に持ち込めるようになるので、自身の策がうまくいったという実感を得やすい。
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結局のところあくまで「合う」か「合わない」かの好みの差で、欠陥とまではいかないだろう。
問題点
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バトル中の状態異常や追加効果に関する専用用語がゲーム開始直後から多く、どれがどのような効果を発するのか即時に把握しにくい。
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「燃焼」や「出血」など直感的に継続ダメージだろうと連想できるものもあるが、「納刀」や「専念」など単語を見ただけでは効果を想像しがたいものもある。
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効果の「そのターン限り付加」か「次のターン以降も継続」の違いがアイコン等を用いて整理・分類されていない。とにかく使ってみて慣れていくしかない。
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各カードにカーソルを当てた際の補足説明も文字がこまごまとしており、視認性はあまり良くない。
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カードに書かれた説明文は、開発者向けの仕様書の記述のような「条件+小数点以下まで記載した具体的な数字」という体裁の記述がなされており、ユーザー向けの噛み砕いた説明文になっていない。
瞬時に暗算できる人ならば有用かもしれないが、数字の羅列では感覚的なイメージが掴みにくい。
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カードの説明文は直感性を重視した抽象的な説明文だけを載せて、カーソルを合わせた補足をもっと見やすく・伝わりやすい文にしたり、拠点やヘルプにて後から何度でも読めるTIPSを充実した方が良いと思われる。
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上述の通りキャラクターボイスが入る箇所の翻訳はしっかりしているのだが、そうでない部分は若干難がある。
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ボス戦などでボイスがない演出上のセリフがあるのだが、かなりたどたどしい言い回しになっている。
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主人公の一人称は「俺」なのだが、テキストウインドウの発言者欄では一貫して「私」。
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だが、終盤では一人称が「私」が混じる場面もあり、シリアスな場面なだけにマイナス点。
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その他、あまり適切でない場面で「気まずい」という表現が使われるなど、キャラクターのセリフではない地の文や主人公のモノローグには気になる箇所もある。
総評
システム部分が快適で、キャラクターも王道的でかわいい。
完成度の高いゲームルールとテンポの良いバトル、自分だけのデッキを組む面白さがきちんと確立されている。
仕様に多少慣れが必要で、翻訳も100%完璧とは言えない部分もあるが、
低価格ながら美少女要素と戦略カードバトルRPG要素がしっかり両立された一作と言える。
余談
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全年齢版の開発も進んでいたのだが、長らくパブリッシャーを交えてSteamと交渉していたがうまく行かず、2025年5月にSteam側の都合により中止せざるを得ない状況に陥ったとの告知があり、発売中止となった。
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風船花火のスタッフは「他のプラットフォームでの発売方法を模索中」とコメントしている。
最終更新:2025年07月06日 01:07