ピクロス 儒烏風亭らでんがご案内!ピクセルミュージアム

【ぴくろす じゅうふうていらでんがごあんない ぴくせるみゅーじあむ】

儒烏風亭らでんがご案内!ピクセルミュージアム

【じゅうふうていらでんがごあんない ぴくせるみゅーじあむ】

ジャンル パズル
対応機種 Nintendo Switch、Windows(Steam)
発売・開発元 Jupiter
発売日 2025年6月5日*1
定価 2,420円
プレイ人数 1人
レーティング IARC3+
判定 良作
ポイント 約150点もの美術作品・芸術作品の解説がフルボイスで聞ける
パズルゲームとしても老舗の腕が光るクオリティ
ピクロスシリーズ
ホロライブ関連作品
邪神ころね / ピクセルミュージアム / お宝マウンテン

概要

Vtuberグループ「ホロライブ」に所属するタレント「儒烏風亭らでん」を主役に据えたピクセルパズルゲーム。
開発のJupiterは1995年発売のマリオのピクロスに始まり2025年現在もピクロスシリーズのゲームを多数開発している老舗であり、そのノウハウが活かされている。

Steam版は商標登録の関係でSwitch版のタイトルから「ピクロス」が抜けているが内容は同一である*2

+ 儒烏風亭らでんとは

Vtuberグループホロライブのhololive DEV_IS(デバイス)という部署のReGLOSS(リグロス)というガールズアイドルグループのメンバーで、歌やダンスに精力的に取り組んでいる。
ショート動画がバズったことで地上波でも取り上げられた「まいたけダンス」なども有名。
学芸員*3の国家資格を持ち、趣味は美術館巡り、ホロライブに入った理由は美術や芸術の面白さを世界に発信するためという筋金入りの美術フリーク。その活動が認められ美術館からの依頼で音声ガイドを担当するなど美術界隈で注目されている。
また、前座見習い*4という立場ではあるが落語を学んでおり、食レポなどのトークスキルが非常に高いため食品等のPR配信の依頼も多い。
以上のようにアイドルVtuber事務所であるホロライブのメンバーとしては異色の経歴を持ち、破天荒な活躍で話題となっている。


特徴・システム

基本的なピクセルパズルの遊び方、各種操作、アシスト機能等は同社開発のピクロスSシリーズに準拠するため、そちらを参照されたい。
本項では、本作独自の要素について詳述する。

本作は「儒烏風亭らでんが館長となって開いた美術館の展示物を、ピクセルパズルを解くことで完成させていく」という設定になっている。
作中では、これらの展示物は「体験型展示*5」になっていると説明される。

  • メインメニューは美術館のエントランスのような作りになっており、以下の4つの項目に分けられる。
  • 展示フロア
    • 多数の展示品(ピクセルパズル)が置かれた、メインコンテンツ。
      展示物のジャンルによって「彫刻」「日本画」など15の部屋に分かれており、各部屋には10種類のパズルがある(ただし、うち1つはロックされており、残り9つのパズルのうち5つを解くことで解禁される)。
      つまり、展示フロアには合計150のパズルが展示されている。
  • 館長のプライベートルーム
    • 2階にある、らでん館長がくつろぐ雅な自室。
      ここには儒烏風亭らでんがVtuberとして活動してきた中で思い出深いもの(例えば、初配信に彼女が使用していた能面であったり、ReGLOSSのデビューソングのジャケット画像など)が置かれている。
      これらのアイテムは20~25問の小~中型ピクセルパズルを全て完成させると全体像が明らかとなり、らでん館長による思い出話を聞くことができる。
      この小型ピクセルパズルは展示フロアのパズルを完成させることでアンロックされていく、ピクロスSシリーズでの「クリップピクロス」方式になっている。
  • オプション
    • ゲームのオプション設定。
      ポーズメニューからもオプション設定が可能。
      エントランス内ではフロアマップとして表現されている。
  • ミュージアム
    • イベントムービー等を閲覧できる。
      エントランス内ではグッズショップとして表現されている。

パズル本編

  • パズルに挑戦している間は、らでん館長が横で見守ってくれる。
    マスを塗ったり×を付けたりすると喜んだり褒めてくれるほか、巻き戻し機能を使うと「まいたけダンス」を踊ってくれる。
    • パズル中のらでん館長はオプションでOFFにすることも可能なので、パズルに集中したい人も安心。
  • パズルを完成させるとドット絵が着色されるだけでなく、実物の美術品の写真も閲覧可能になる(特定の美術品でない問題の場合はイラストが表示される)。
    更に、完成させた展示品についての「解説文」と「らでん館長による音声解説」がアンロックされる。
    • この解説文と音声解説は内容が一部重複する部分もあるものの別の文章になっており、音声解説はらでん館長の感想も込みの内容となっている。
    • また、各展示室でロックされている問題の解説シーンはらでん館長がミニキャラクターではなく大きめに表示され、解説のボリュームも多めとなっている。

評価点

パズルゲームのしての評価点

  • 開発のJupiterはこれまでピクロスシリーズを多数開発してきたこともあり、パズルゲームとしてのクオリティは十分。
    各システムや操作感は同社開発のピクロスSシリーズが基盤になっており、ピクロスSシリーズと同様チュートリアルやアシスト機能が充実しているため初心者にも優しい作り。
    • また、既存のピクロスシリーズとは異なる点として、★1~5の難易度表示がついている。
      ただ単にマス目の量やパズルのサイズで振り分けられているわけではなく、塗りマスが分かりやすいものは低難度、分かりにくいものは高難度というように、正しく難易度として機能している。
  • 既存のピクロスシリーズと異なりパズルゲーム中にらでん館長が喋るようになっているが、彼女は操作しなければ時折動くだけで喋らない。進行に詰まって長考している間に話されて集中力を乱されるようなことがないよう配慮されている。

教養ゲームとしての評価点

  • とりわけ高く評価されるべき点として、美術・芸術に関する解説が充実していることが挙げられる。
    • 既に説明した通り、完成後には実物の美術品の画像、ものによっては図柄などの拡大図まで閲覧することができる。
    • 展示ルームの問題数は150問。つまり、美術・芸術にまつわる音声解説と解説文がそれぞれ150本ずつ収録されているということである*6
      これだけでも読み物や音声作品として十分な価値がある。
      • また、一部の専門用語はハテナマークがついており、ボタンを押すと注釈も読むことができる。
    • 音声ガイドはただ聞くだけでなくログも表示され、読み返したり途中から再生することもできる。細かいが丁寧な設計。

ファンアイテムとしての評価点

  • らでん館長による解説が充実しているのは先述したが、つまり彼女のボイスがそれだけ大量に収録されているということでもあり、ファンアイテムとしての価値も高い。
  • 館長室ではらでんの配信や動画にまつわるエピソードが聞けるが、その中にはらでん以外のReGLOSSのメンバー4人のエピソードもあり、ReGLOSSグループの推しにとっても嬉しい。
  • ドット絵で表現されたらでん館長のクオリティも高い。

その他の評価点

  • BGMが良い。曲数こそ多くないものの、落ち着いたクラシック風のものや和風のものが多く集中しやすい。
    • 特に、展示室や館長室など館内で流れている曲「メインテーマ」は記憶に残りやすい。
    • また、あるパズルを解くとReGLOSSのデビューソングである「瞬間ハートビート」の和風インストアレンジも選択可能になる。
  • エピローグやプロローグの選択画面は3つ折りのパンフレット、オプションはバインダー、オプションから選択できるクレジット*7は展覧会図録*8風の外見になっており、細かい部分にも美術館らしい演出が拘られている。

賛否両論点

  • ノーアシストによる特典(特別なクリアマークが付く等)は無い。
    • 同社開発のピクロスシリーズには有る要素だが、本作はVtuberとのコラボ作品ということで 初心者ユーザーも多いことを見越してかオミットされている。
      そのため、各種アシスト機能を使わずにプレーする理由は自己満足以外には無い。
  • 価格帯
    • 他の版権コラボのピクロスシリーズは1100~1200円程度の価格帯であったが、本作ではその倍程度となっている。
      • Vtuberによる音声解説、各美術館からの画像提供など他の版権コラボと比較すると豪華な仕様なので、仕方がない部分もある。

問題点

  • ストーリーの「お礼メッセージ」解放までがかなり遠い。
    具体的には、館長室にあるパズルを全て完成させる必要がある。
    館長室のパズルは展示室のパズルを完成させるとアンロックされる仕様なので、事実上300ものパズルをコンプすることが求められる。ピクロスの実力以上に愛が試される。
  • 本作に限らず同社開発のピクロスシリーズに共通することではあるが、アンドゥ(巻き戻し)が100マスまでしかできない。
    特に大判サイズのパズルでは操作を100マス遡っても修正できない(101手以上前でミスしている)ことがあり、ノーヒント攻略をしている場合は最初からやり直すしかなくなってしまいがち (ノーヒントに拘らないのであれば訂正機能が使える)。
  • パズルを難易度順にソート出来ればよかったという意見も初心者ユーザーを中心にしばしば見られる。
    • ただ、これに関しては展示フロアでXボタン(Switch操作時)を押すと問題を一覧で表示することができるため、この機能を知らないユーザーの意見である可能性もある。
      問題一覧ではその部屋の問題10問が1画面で表示されるため、展示フロアの全150問が15ページに収まる。
      問題一覧のページ移動も瞬間的に行われるため、さほど不便な仕様ではない。

総評

長年ピクロスシリーズを開発してきたJupiterのノウハウと、儒烏風亭らでんという美術を愛するVtuberの魅力・知識を上手く絡めて仕上げられた作品。
儒烏風亭らでんのファンのみならず、美術や芸術に興味のある人、単にピクセルパズルを遊びたい人にも広くお勧めできる。


余談

  • 本作の発売に際して、らでん本人は「ゲーム化によって自分の活躍を多くの人に見てもらえること」よりも「ゲーム化によって美術の面白さをたくさんの人に伝えられるチャンスが得られたこと」を喜んでいた(ゲーム製作発表当日の配信より)。
最終更新:2025年11月16日 09:46

*1 公式サイトによる発売日。Steam版ストアページでは6月4日表記

*2 同じ仕様は「Picross -LogiartGrimoire-(Switch版)」と「Logiart Grimoire(Steam・PS4版)」にもみられている

*3 博物館や美術館、動物園や天文台等の文化施設に従事する役職。展示物や関係資料の収集、所蔵物の適切な展示や管理・修復、展示会や講演会・イベント等の企画運営、その分野における研究や論文の執筆・発表など、非常に広範な業務を担う。

*4 師匠の落語家に師事し、師匠の身の回りの雑用等をこなしながら着物や道具の扱い方等や落語家としての振る舞いを学ぶ、文字通りの見習い。まだ登壇して落語をしたり楽屋に入ることはできない。

*5 一般的な絵画や彫刻のように見て楽しむだけでなく、閲覧者が能動的に楽しむことができる展示物のこと。科学館の展示物を想像するとイメージしやすいが、美術館の展示においても例えばピアノの音を鳴らすとスクリーンに模様が映し出される展示物のようなものが挙げられる

*6 らでん曰く、台本が辞書のような厚さになったとのこと

*7 製作スタッフだけでなく、ゲーム内で使用された美術品とそれを提供した美術館等も紹介されている

*8 展覧会主催者によるメッセージや展示作品のリスト、解説文などがまとめられた雑誌。美術館内のショップ等で販売されている。