母の手紙


あらすじ

 透さん――
 あなたはこの手紙を、私が死んだ後、看護婦さんから受けとることになるでしょう。遺書といった大げさな物ではありません。お喋り好きだった私の最後のお喋りだとでも思って、「少しうるさいよ、母さん」いつものいように顔を顰めて叱ってくれればいいのです。顔を顰めると眉毛の端がぴくんと折れて、そういう所、死んだお父さんとそっくりでした。

自分から息子に結婚を勧めておきながら、嫁をいびり続けた母。その母が死を前に、息子へと手紙で語る真実とは……。

登場人物

    • 透の母。
    • 「私」の息子。
  • 有子
    • 透の妻。

解題

 このような事を書くと先入観を与えてしまうかもしれませんが、この作品を読み始めた時点で、このお母さんの告白する「真実」を想像できる人は、皆無ではないでしょうか。
(『連城三紀彦レジェンド』より 執筆者:伊坂幸太郎)

母から息子への手紙という体裁の、書簡体短編。『日曜日と九つの短篇』収録作の中では最もミステリ色が強い。
さほど知名度の高い作品ではなかったが、『連城三紀彦レジェンド』に伊坂幸太郎の選出によって収録されたことで知名度が高まった。他作品の間ではなく、あえてラストに配置したのはファインプレーというべきだろう。

伊坂 もうひとつ今日の対談のなかで決まったのが、最後の一編となった「母の手紙」。これは僕のお気に入りなんで、今回入れてもらえて嬉しかったです。
綾辻 ここで「母の手紙」を出してくる伊坂さんはさすがだな、と思いました。
伊坂 これ、変な小説ですよね。なんだか、お母さんの手紙を、ふむふむ読んでいると、だんだん奇妙なロジックに巻き込まれていく感じがして(笑)。
綾辻 普通小説として読めば読めちゃうんだけれど、これも実はまぎれもない連城ミステリーである、という逸品です。
(『連城三紀彦レジェンド』収録 綾辻行人×伊坂幸太郎「特別対談 ミステリー作家・連城三紀彦の魅力を語る」より)

ちなみに同じく夫婦と姑の関係を題材にした「青葉」が同月に「オール讀物」に発表されている。

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収録アンソロジー

  • 日本推理作家協会編『殺意の狂詩曲 最新傑作ミステリー〈上〉』(1986年、カッパ・ノベルス)
    • 日本推理作家協会編『逃走コネクション 日本ベストミステリー選集16』(1993年、光文社文庫)

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最終更新:2017年07月02日 01:07