忘れ草

  • 分類:短編小説
  • 初出:「月刊カドカワ」1987年3月号
  • 雑誌時挿絵:高田麻香
  • 収録短編集:夢ごころ

あらすじ

 今、私は月明りの中でこの手紙を書いています。この、あなたへの最後の手紙を……さっきまで夜空が泣いているかのように大きな雫で滴り落ちていた雨があがり、それでもまだ薄く残っている雨雲の端に細くふちを削りとられた月が浮かんで、蒼い光を私の握った筆の先に投げかけています。墨ではなく、まだ雨の匂いを濃く残して濡れたように見えるその蒼白い月明りに筆をひたして、あなたに向けての最後のひと言ひと言を書いているのだと、そんな気がしています。私の体の中の奥深い闇にも同じ月が浮かんでいて、冴えわたりながらもどこか悲しいものに濡れたその光が血と混ざりあいながら指から流れだし、こんな風に文字を結んでいくのだとも……

私は八年間、この武蔵野の家であなたを待ち続けていました。八年前のあの日、ふらりと姿を消してしまったあなたを……。そして今、私はあなたに手紙を書いています。今夜、この家に戻ってきたあなたへ……。

登場人物

    • 妻。
  • あなた
    • 夫。

解題

(スタブ)

収録アンソロジー

  • ポチ編『夢÷幻視13=神秘 幻想・怪奇名作選』(1994年、ペンギンカンパニー)
  • 『京都 愛憎の旅 京都ミステリー傑作選』(2002年、徳間文庫)
  • 『傑作ミステリーアンソロジー 京都迷宮小路』(2018年、朝日文庫)

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最終更新:2018年10月13日 10:58