あれから半年が過ぎ、日本はもう夏を迎えようとしています。もちろん北京も今は五月の末で、梁さん、私たちが二人だけで行った北海公園の湖水のように広い池にもかすかに夏の匂いをふくんだ風が吹きわたり、岸辺の柳が人よりもいち早くその匂いに気づいて嬉しそうに葉をそよがせているでしょう。この半年のうちに、梁さん、あなたから受けとった十通近い手紙に私は一度も返事を書きませんでしたが、かといってあの庭園の冬の風の中で交わした約束を忘れたわけではありません。
秋の芝居の脚本執筆の前にかたづけておこうと仕事をつめておいたところ、予想以上の過密スケジュールとなり「もうわかりません」。