「あのう、杉崎先生でしょうか」 電話は若い女の声である。初めて聞く声だった。身上相談らしい、友江はそう思った。杉崎料理学校の校長として二十年、去年の春に自分の離婚体験や女手一つで二人の子供を育てながら料理学校を開いた経緯を一冊の本にまとめて出版したら、それがまずまずに売れ、女性雑誌から自立した女としてよく取材を受けるようになった。 その頃から時々見知らぬ女性が手紙や電話で人生相談をもちかけてくる。
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