- 分類:短編小説
- 初出:「小説現代」1980年4月号
- 雑誌時挿絵:朝倉摂
- 再録:「小説宝石」1981年6月号
- 再録時挿絵:辰巳一平
- 収録短編集:『戻り川心中』
- 受賞:第34回日本推理作家協会賞短編部門
あらすじ
苑田岳葉は、近代の産んだ天才歌人のひとりである。
二度の心中未遂事件を起こし、その過程を「桂川情歌」「蘇生」の二大傑作歌集に詠んで自害した天才歌人・苑田岳葉。だが岳葉の心中行には、ある恐るべき秘密が隠されていた……。
登場人物
- 私
- 語り手。岳葉の友人の小説家。岳葉を題材にした小説『残燈』を雑誌連載していたが、真相に気付き中断する。
- 苑田岳葉
- 大正期を代表する天才歌人。二度の心中行のすえ、34歳で自害。
- 桂木文緒
- 「桂川情歌」に詠われた心中事件の相手。心中事件では命を取り留めるが、「菖蒲心中」と時を同じくして自害。
- 依田朱子
- 二度目の心中事件「菖蒲心中」の相手。その際に死亡。
- 村上秋峯
- 村上琴江
解題
(スタブ)
各種ランキング順位
収録アンソロジー
- 日本推理作家協会編『推理小説代表作選集 推理小説年鑑 1981年版』(1981年、講談社)
- 日本推理作家協会編『故意・悪意・殺意 ミステリー傑作選16』(1986年、講談社文庫)
- 『日本推理作家協会賞受賞作全集31 短編集Ⅲ』(1996年、双葉文庫)
- 二上洋一編『ほっとミステリーワールド15 連城三紀彦集』(2000年、リブリオ出版、大活字本)
- 齋藤愼爾編『短歌殺人事件 31音律のラビリンス』(2003年、光文社文庫)
- 山前譲編『ときめき 恋愛ミステリー館①』(2004年、廣済堂文庫)
- 『『このミス』が選ぶ!オールタイム・ベスト短編ミステリー 赤』(2015年、宝島社文庫)
映像化など
ドラマ「戻り川心中」(1982年7月3日放送、テレビ朝日系)
連城作品初の映像化。「土曜ワイド劇場」5周年企画の第1弾として放送された2時間ドラマ。ソフト化はされていない。
脚本:大野靖子、音楽:木下忠司、監督:渡辺祐介。主演(苑田岳葉)は田村正和。
岳葉の「菖蒲心中」を昭和30年の出来事に変更し、岳葉を二度目の心中事件でも生き残った設定に改変。
昭和57年、ドラマオリジナルキャラクターの編集者・有馬京子(紺野美沙子)が、岳葉の全集を出版するにあたり、二度の心中事件の真相を調べる……という構成になっている。
映画と違って原作のミステリー部分を踏襲しており、ミステリファンにはこちらの方が評価が高い。
映画「もどり川」(1983年6月18日公開、神代辰巳監督)
連城作品初の映画化。監督:神代辰巳、脚本:荒井晴彦。主演(苑田岳葉)は萩原健一。DVD化済み。
ショーケンの大麻所持での逮捕により、公開は短期間で打ち切りになったらしい。
原作ではさらっと流されている岳葉の退廃的な生活に焦点を当てた文芸映画。
原田美枝子、藤真利子、池波志乃といった女優たちの演じるベッドシーンが見所(でいいのか?)。
ミステリとしての真相部分は残されているが、謎解き要素はほぼゼロのため、ミステリファンからは評判が悪い。
ラジオドラマ「戻り川心中」(1982年1月30日、NHK-FM「FMラジオ劇場」)
脚色:山田正弘、音楽:藤掛廣幸。出演:清水紘治、范文雀、大塚周夫、若杉浩平、安東千恵夫、大村一平、藤城健太郎、槙田美栄子、紀ノ国悦子、柳沢三枝。
小説以外のメディアで作られた「戻り川心中」はこのラジオドラマ版が最初になる。
語り手を依田朱子の夫に変更しているが、それ以外はほぼ原作に添った脚色である。
原作での「私」はほとんど偶然と言っていい形で最終的な真相に気付くが、こちらでは語り手が最後の疑問(桂川での心中を嫌がった朱子が、自ら誰かに似せて髪を切るはずがない)を残して調査を続けた結果、原作の真相に辿り着く。なので、「語り手が真相に気付くこと」の説得力は原作を上回る。
老境の語り手が気付いた真相を抱えきれずに誰かに向けて語るという外枠は「
花緋文字」を思わせる。
漫画「戻り川心中」(作画:花宮えい子、「ミステリーJour」1991年7月19日号)
(スタブ)
関連作品
最終更新:2018年07月28日 03:43