スペック
かいの化石はHP40の無色たねポケモン。攻撃性能はなく、にげることができないが自分の番にいつでもトラッシュできる。これは他の化石と共通の仕様。
オムナイトは水タイプ、HP90、技はエネ1でダメージ40、逃げる1エネ、弱点は雷タイプ。
1進化としては標準以上の耐久、攻撃力、機動力を持つので、オムスターへの繋ぎとしては十分。なお、相方のカブトとはタイプ以外共通の性能である。
オムスターになると、HPは140、逃げるは2エネと重くなり、技『こだいのうずしお』が解禁。この『こだいのうずしお』がオムスターの肝になる。
こだいのうずしお
『こだいのうずしお』はエネ3(水1無2)で70ダメージを与え、これを受けたポケモンは次のターンに技を使えなくなる。
この説明文を読んで「どういうこと?」と思った人もいるかもしれないが、本当に書いてある通りである。
この技を食らったポケモンは次のターンに技が使えない。
要は技のエネが足りない状態と同じ。『こだいのうずしお』に捕らわれたターンは
特性を使うか、逃げるか、とりあえずエネをつけるか、あとは黙って死ぬことしかできなくなるのである。
麻痺や眠りではないので『おおきなマサラダ』や『ポケモンセンターのおねえさん』で治療することはできないし、アルセウスexの特性『しんわのかがやき(状態異常無効)』をもってしても防御不能。
しかもオムスター側にはエネ消耗だのコイントスが必要だのこの技は連続で使えないだのといった制約は一切ないので、
オムスターは動ける限り毎ターン『こだいのうずしお』を発動し、相手の技をいつまでも封じ続けることが可能。
「なんだそのふざけたバインドは」と思った人もいるかもしれないが、もちろんちゃんと解除方法はある。
まず一番安全なのは、状態異常と同じ扱いなので進化すればバインドが解除される。
ただし、これは進化前であることが前提。そもそも「こだいのうずしお」の威力が70と強いので、進化でバインド解除するにしても痛手は避けられない。むしろたねポケモンであれば進化する前に一撃でお陀仏ということもありえるだろう。
次にシンプルな解除方法は『こだいのうずしお』を受けたポケモンをベンチに引っ込めてしまうこと。
技のバインドが及ぶのはあくまで技を受けたポケモンのため、交代すれば次のポケモンは問題なく技を使える。(ちなみに、状態異常と同じでベンチに引っ込んだ時点でバインドは解除される)
または、腹を括ってオムスターに倒されてしまえば、次のポケモンはバインドなしで行動できる。
ただし、これらの策では貴重なエネルギーやポケモンを犠牲にすることになるし、まだベンチのポケモンが育っていないのであれば出したところで結局何もできずにオムスターの次の餌食になるだけ。そうこうしているうちにエネルギーやポケモンをみるみる消耗させられてしまい、やがては詰み状態になってしまう。
これがオムスターの恐ろしさである。
特に、exの火力とテンプレ手順にかまけているデッキほど容易く詰み状態にされてしまいやすく、己が浅はかさを思い知りつつ切断放置敗北を認めることになる。
対策
これらオムスターの性能を知ると恐怖のあまりおちおち化石博物館にも行けなくなるかもしれないが、この『こだいのうずしお』戦法も適切な対策をとれば十分に対抗の余地がある。
まず、
危険な状態から逃げる想定がしっかりできているデッキならば、逃げるを適切に使うことで身動きを封じられずに戦うことができる。
にげるを何度も繰り返したとしてもエネを枯渇させずに回転させることができるデッキであれば、バインドを食らうたびに逃げるを繰り返せばいい。
オムスター本体がHP140、『こだいのうずしお』は威力70とそこそこ手強いが、それでもダメージレースに持ち込めるなら勝てない相手では決してない。
もちろん『リーフ』や『ヒカリ』を使ってエネをうまく回せれば出し抜くこともできるだろう。
あるいは、バインドを受けたポケモン1体を
生贄にし、その間にベンチでオムスターを一撃で倒せるポケモンを準備しておくという手もある。オムスターは倒したところで1ポイントなのでどう転んでも痛み分けになってしまうが、先がなくなるよりはマシである。
ではそれらが出来ないexのヘビー級で固めたデッキの場合にはどう戦えばいいのか?
そんなデッキを組むのが悪いとオドリドリが鳴いている
答えは簡単。オムスターが『こだいのうずしお』を使える状態になる前に対処すればいいのである。
そう、オムスターデッキのシンプルにして最大の弱点は
とにかく構築に時間がかかること。伊達に鈍重すぎて絶滅したポケモンではない。
これは化石ポケモン全体に言えることだが、化石は
たねポケモンではないのでサーチ手段も初手保証もない。ポケモン通信でも引けない。よって、山から化石を引くことが出来なければ何も始まらないのだ。
そしてオムスターの場合は、ようやく山から化石を引いたところで今度はオムナイトを経由して進化させ、なおかつエネを3つもつけなければならない。(ふしぎなアメがリリースされて以降はオムナイトを飛ばせるようになったが、オムスターの場合は結局エネ3をつけなければならないので
ラムパルドや
カブトプスに比べると革命的な恩恵とは言えなかった)
…つまり、相手がかいの化石を繰り出してきた時点で
エネ3付きのオムスターが完成する前に倒せるかどうか時間との勝負になる。幸い、ヘビー級のexポケモンにすればそれらは得意分野であろうから、容赦なく全力をつぎ込んで倒してしまうと良い。
もし『ロケット団のしたっぱ』が手札にいるならば、迷わずオムスターに使うべし。
オムスターの使い方
さて、ここまでは主にオムスターに対峙する際の目線で話をすすめてきたが、ここからはオムスターを使う場合について説明していく。
今しがた述べた通り、とにかくオムスターデッキは重い。重すぎる。なにしろ化石デッキの宿命であるサーチの乏しさと、エネの重さの両方に向き合っていかなければならないのだ。
まずはオムスター自体の完成。これは幸いなことに、アップデートが繰り返されるたびに新しいドロー手段が生み出されているので、それらの恩恵をどうにか絞り出していくしかない。
第一弾リリース当初は
ニャースのドローに頼るか、レッドカードなど相手の構築を邪魔して時間を稼ぐくらいしかできることがなかった。
だが、アップデートで手札を入れ替える
ペラップや
ナンジャモなど化石を手札に回しやすくする手段が徐々に生み出されている。山札自体を圧縮して相対的に化石を引きやすくするのも良い手段である。異次元クライシス版
マシェードの『はっこう』など、ポケモンを山から引くことで山の総数を減らしつつオムナイトやオムスターをかき集めるといった手もGood。
さて、そうこうして何とか『かいの化石』を場に出せたら、今度はエネ3をなんとか工面しなければならない。
普通に考えて『かいの化石』→オムナイト→オムスターと3ターンかかるのだからその間にエネをつけ続ければいいのだが、その間に相手のポケモンは誰が面倒みるんだという話になる。やはりエネは足りなくなりがち。
幸い、水タイプはエネ操作に長けたタイプである。リリース当初は
カスミのコイントスが頼りだったが、その後にリリースされた
シャワーズの『おしながす』が水使いにはお馴染み優秀なエネ操作で、オムスターもこれの恩恵を大きく受けることが出来た。
そしていよいよオムスターの準備ができたら一安心、
ではない。
先ほど述べた通り対策のとりようはあるのだから、こちらはそれに負けないように裏をかいていかなければならない。
逃げるで対策をとられてしまうという点は、こちらも
ナツメや
アカギで無理矢理相手を引っ張り出してバインドをしかければ良い。
バインドがかかっていない敵から攻撃を受ける機会はどうしても発生するので、一撃死しないよう回復手段も欲しくなる。『おおきなマント』『きずぐすり』やポケモンセンターのおねえさんでもいいし、
カイや
リーリエも頼れる。
あとは自身の重さをカバーするために『スピーダー』かリーフも連れていきたい……
……と、オムスターの実力を発揮するには様々な方向からのアシストが必須であり、これらを20枚でどう納めるか、どうすれば思い通りに回るデッキになるかをよくよく考える構築力が必要になるのだ。
そして、これらをうまく手札に揃える運と、揃わなかった場合の切り返しの判断力、それによってつくった手札を正しく扱って勝利に導いていく勝負力も欠かせない。
また、オムスターをサポートとして使うことももちろん可能。
問答無用のバインドで相手を封じたり枯渇させたりするという個性は唯一無二といっていいので、相手の裏をかけること間違いなしである。
ただし、オムスター自身が単体では不便が多いことを考えると、メインカードとの兼ね合いを含めて上手く動くデッキに調整することは案外難しく「こんなに大変ならサポートはオムスターでなくていいのでは?」に陥りがち。
まとめると、オムスターはとにかく使用者のアドリブとタクティクスが問われる超上級者向けポケモンである。
戦術が上手くいくかには相手との相性・ドローの運が問われるし、実際ここに記載してきたことも机上論が多い。(実践環境では相手の猛火力で『かいの化石』も引けずに終わりなんてことはザラである)
それでも「そんなの全て上手く言った場合でしょ?」には決して留まらない、効率の良いデッキや環境を研究して工夫を凝らせば第一線の強豪ポケモン達をも陥れる実力は十分にある侮れないポケモン、それがオムスターである。あとオムスターがマイナーで戦術をあまり知られていないこともあり、先方もわけがわからないまま身動きが取れなくなる…なんて油断も誘える。
構築が難しい分、戦術がうまくはまったときの快感はうずしお、もといひとしお。
個性派が多い化石ポケモンの中でもかなりユニークで使って楽しいポケモンのため、興味がある方はぜひ一度、オムスター族を手にとってもらいたい。