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*PANZER FRONT bis. 【ぱんつぁーふろんと びす】 |ジャンル|SLG|&amazon(B00005OVSH)| |対応機種|プレイステーション|~| |発売元|エンターブレイン|~| |開発元|シャングリ・ラ、ソユーズ|~| |発売日|2001年2月8日|~| |定価|6,800円|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 -日本のコンシュマーでは唯一と言っていい戦車シミュレーター。本作はその一作目の改良版。戦車数、ミッション数を増やし、バランスも調整、さらにストーリーモードとミッションを自作できるコンストラクションモードが加わった。 -舞台は第二次大戦の1941年~1945年のヨーロッパと一部日本((日本マップは一つのみであり、場所は鹿児島に位置する串良。1945年11月という作戦年月日から見て分かる通り、もしも日本が降伏せずにアメリカとの沖縄戦線で善戦を繰り広げていたらという架空のミッションである。))。史実を想定した戦闘を再現している。プレイヤーは戦車小隊の小隊長となり、戦場を戦い抜く。 --使用できるのはドイツ、アメリカ、イギリス、ソ連、日本の戦車。 **特徴 -戦車が登場するゲームはいくつかあるが、このゲームが他のゲーム違う点は、戦車というものを精密に再現している点である。 --そもそも戦車とは、装甲された車体に大砲を積んだもの。その装甲は来た砲弾を弾き返すか、打ち抜かれるかだけである。 --砲弾を弾き返す限り、基本的に装甲はダメージを蓄積しない。つまり他のゲームのような、HPに当たるようなものは本質的には存在しない。 ---ただし砲弾の衝撃などにより、貫通されなくとも内部の機器が故障、または乗員が死傷する場合はある。ただ本作では、乗員の死傷は再現されていない。 -当時の戦車は通常、車長、運転手、通信手、射撃手、装填手の五人で動かす。本作ではプレイヤーの役割は車長、運転手、射撃手の役割となる。通信手と装填手はコンピューターが行う。 -小隊長としてのプレイなので、小隊で連携しミッションをクリアする事になる。他の車両への指示は細かく、多彩な戦術を取る事ができる。むしろ戦術を考えないとクリアできない。 -使用する戦車を変更できる。史実を想定しているためミッションで使用する戦車は史実通りなのだが、これを他国の戦車や、自軍のさらに強力な戦車など好きな戦車へ変えられる。これは敵でも行え、お互いが相手の戦車を使うなどという事も可能。 -車両以外にも、歩兵、対戦車砲、ヤーボ(爆撃機)、野砲支援がある。 -架空の戦車を使ったストーリーモードがある。ただミッション自体は、通常のミッションを若干変えたもの。配置されている戦車の種類等が違っている。 -自分でミッションを作れるコンストラクションモードが用意されている。これによりクリア後も自分でミッションを組み立てプレイする事ができる。ネット上では未だに多くの自作ミッションが見られる。 **評価点 -戦車というものの再現性の高さ。 --戦車は基本的に正面を向けた戦闘を想定しており、正面の装甲が一番強く、後方が一番弱い。そのため当たる場所によって、被害の受けやすさが極端に違う。しかも各部位の装甲厚も違う。例えば、正面から見ても、車体下部、上部、砲塔などが違うのはもちろん。防盾((砲を守る可動式の装甲。))と砲塔の装甲値も違うなど、細かな点まで設定されている。 --砲弾の入射角によっても、被害を受けるかどうかが異なる。垂直に当たる場合と、浅い角度で当たる場合では、同じ装甲でも打ち抜かれる場合とそうでない場合に分かれる。軍事用語で言う避弾経始が反映されている。さらに距離が遠いほど貫通力が落ちるため、近距離で打ち抜けたものが、遠距離では打ち抜けないという事が起こる。 --二次大戦の戦車は、砲弾の初速が遅い。このため、目標と着弾地のズレを考えて照準をつける必要がある。距離に対しては、放物線を描いて飛ぶ砲弾のズレを考えてつけなければならない。ただ当時の照準機と同様、本作の照準機も距離をあわせるための仕組みがある。移動目標に対してはやはり弾速の遅さからズレがでるため、着弾地と移動予測先を考え狙わなければならない。 ---なお、慣れてしまえば照準の適性距離を調整する事無く2000m超の距離で動く敵を初弾撃破する芸当も可能になる(高難度面はいちいち調整している暇が無いことが多い)。 --砲弾の種類。対装甲目標のための徹甲弾と、非装甲目標のための榴弾など、目標によって使い分けなければならない。また当然だが、弾数に限りがある。 --部位破壊も再現されている。履帯切断や砲の故障などがある。運転席の覗き窓を狙って、重戦車を正面から破壊するという事すらできる。ただし、ゲーム性の問題もあり、対象部位に命中しても必ずしも破壊されるという訳ではない。 --動きも再現性が高い。ギアの上げ下げや、段差において転輪がバラバラに反応するなど、戦車らしい動きを見せてくれる。 -リアリティを高める効果音に音声。 --ドイツ語、ロシア語、英語の音声通信は全てネイティブ。 ---日本の戦車も出ているのだが、日本語音声がない点は残念な所。 --砲の発射音も迫力あるもの。 ---わざわざ陸上自衛隊の富士演習場に取材に行くまでして作られた。 -ゲーム性とリアリティの両立。 --戦車をうまく再現している本作。このため、正面から何発入れても敵を破壊できなかったり、逆にちょっとした死角から側面に打ち込まれ、一発で破壊されてしまうなど、緊張感のあるゲームとなっている。 --さらに小隊単位での戦闘は戦術性を持たせ、戦車での戦闘を深めている。 --一方で、過度なリアリティはないため、ゲーム性とのバランスがうまく取れている。 -用意された戦車は実に多彩。 --戦車を含む車両等は全部で75種。この他に爆撃機が4種、規格外サイズの装甲列車も登場する。ティーガーI、M4シャーマン、T-34などの有名どころはもちろん、マウスやシャーマンジャンボ、JS-3まである。さらに架空戦車が6種用意されている。架空戦車は強力ではあるが、時代の雰囲気から逸脱しない程度の能力になっている((架空戦車は現実で運用できるかという部分では怪しい物が多く「ガスタービンで高速に走行する戦車」から「車内が狭くなりすぎる戦車」さらには「無駄に砲塔が大きい戦車」「キャタピラが無駄に二重になっている戦車」とあくまでデザイン重視である。))。おまけ程度だが現代戦車の「90式戦車」「T-80」が登場する。 --さらに戦車以外として、各種兵員輸送車、対戦車砲などもある。特に対戦車砲は戦車にとって大きな脅威の一つ。草むらや林に紛れ込んだ対戦車砲は、なかなか視認しにくい。 --串良飛行場に特攻練習機「白菊」が駐機しているが、ヤーボとしての参戦はなくオブジェに留まっている。 -車両以外の要素の存在により、単なる戦車シミュレーターではなく戦場の再現という方向性のものとなっている。戦場の雰囲気がよく出ている。 --さらに第二次世界大戦の雰囲気を再現しているというだけではなく、実際に行われた戦闘が各ミッションとなっている。独ソの多数の戦車が激突した「クルスク戦車戦」、ミハエル・ヴィットマンの活躍で知られた「ヴィレル・ボカージュの戦い」など、第二次大戦通ならすぐにでも思いつく戦闘が多数ある。 -難易度調整も細かい。 --難易度としては高めのゲームだが、難易度設定を下げる事もできる。その設定も細かい。一番簡単な設定では、砲弾数無制限、発射速度倍化、故障無し、目標マーカー及び、距離の表示となる。初心者でもある程度プレイできるようになっている。 -コンストラクションモードもなかなか出来がいい。 --COM側の細かな動きが設定できるなど、かなり優秀なエディタ。ステージ自体が作れないのは残念な所でもあるが、用意されたステージはかなりの数であり、不足感はない。 --あえてもう少し手を加えてもらい点があるとすれば、文字を打つのが不便な点だろうか。 **難点 -戦車戦を精密に再現しているのが特徴だが、やはりゲーム。実際とは違う面がある。 --キャタピラを左右逆回転させてその場で180度回る方法を超信地旋回という。当時の戦車で、できなかった訳ではないが、足周りに負担がいく(ティーガーなどの重量級戦車ともなれば余計に)ので多用することはできなかった。 --距離の表記が実際の四倍になっている。現実通りにすると、遠距離の目標が極端に小さくなりすぎたり、足が遅すぎたりと、ゲームとしての難点が出てくる。そのためこのような処理を行われている。 --歩兵が全く攻撃してこない。実際には歩兵も戦車に対し近接攻撃を行っていた。もちろん、むやみに行っていた訳ではなく、頻度は低かったが。 --地雷などが存在しない。ゲーム性を損なうからだろう。 --プレイヤーが味方を撃つとその戦車は破壊されるが、コンピューターの戦車が自軍を打っても破壊されず、砲弾はすり抜けてくる。アルゴリズムを簡略化するためと思われる。 --史実を想定はしているが、ミッションの状況が実際とは異なる部分も多い。 --一部データーに実物とは異なる部分がある。 -戦車破損の仕様 --特徴にて前述の通り、本作の戦車は砲弾攻撃によって破損することがある。 ---具体的には「履帯(キャタピラ)破損」と「砲破損」の二つに分類されており、キャタピラの場合は直撃を受けた方のキャタピラが操縦不能になり、大砲の場合は砲弾の発射自体が不可能になるという仕組みである。((履帯はどちらか一方が破損した場合、もう片方のキャタピラは絶対に壊れなくなるという謎仕様。)) ---このシステムによってドイツの重戦車と敵対、そして中小型戦車の使用を強いられるマップの多いアメリカやソ連では破損システムを戦術の一つとして練り込めるといった要素がある。 ---しかし勿論ながらプレイヤーの戦車も破損の対象とされており、プレイヤーの戦車が敵の攻撃によって破損した場合、''修理や操縦機の切り替えといったリカバリーを効かせる要素が全くないので実質詰み状態になる。'' ---どれだけ自軍が優勢な状況でも、プレイヤーの破損状況次第では味方機への指示だけではどうすることもできない状況は少なからず存在するため、戦術として利用できる破損システムも状況によって良くも悪くも揺れ動くといったところか。 ---破損システムはオプションによってオンオフが可能。しかしこのシステムを失うことにより難易度が変化するマップは存在するだろう。 -PSのスペック不足による問題がある。 --遠距離になると地形や建物などを描写できない。このため狙いは正確なのに、表示されてない遮蔽物に砲弾が防がれたりする事がある。((このシステムを利用し、茂みの中から一方的に攻撃するといった非現実的なことも可能になってしまっている。敵戦車はプレイヤーを目視しないと移動や後退といったアクションを起こさないため、被弾しても停車したままといったことが現実味を欠いている。)) --破壊された戦車は残骸としてその場に残るのだが、表示数に限界があるため、新規に戦車が現れる度に消えていく。ただしプレイヤーから離れた戦車が消えていくので、目の前の残骸が突然消えるという事はない。 --前作のDC版はグラフィックが格段に綺麗で、表示限界による問題もPS版ほど酷く無かった。本作も上位機種ならば改善出来たであろうが、他機種へ移植されなかったのは惜しまれる。 -バグと思わしき部分。 --戦車はその車体の各部に細かな装甲値があるのだが、その一部に設定ミスらしき部分がみられる。そのため一部の重戦車が、旧式の戦車に正面から破壊される等がある。 ---分かりやすいのがショートブル。重装甲の架空戦車だが、よく正面から撃破される((車体を巨大化しキャタピラを二重にすることでドイツの重戦車に対抗できるアメリカの重戦車というのがショートブルのコンセプトではあるが、このバグに加えてキャタピラが大きいことから履帯破損がし易く、外見とは裏腹に意外と脆い戦車となってしまっている。))。 //直視バイザーや機銃を抜かれているのでは? -マップによって使用できる戦車の種類が異なる --評価点にて前述の通り、本作では75両の戦車を操ることが可能であるが、マップによって使用できる戦車が異なるといった点がある。 ---具体的にはマップごとに他軍の戦車を利用できないという訳ではなく、一部の「マウス」や「90式戦車」「T-80」といった強力な戦車が一部マップで使用できないことがある。マップごとのゲームバランスを損なわないために行われた処置であると思われるが、戦車シュミレーションと言うだけあってこの規制がかけられているのは非常に惜しい((コンストラクションモードでしか使用できない車両も幾つか存在している。))。 **総評 戦車マニアを狂喜させたゲーム。PCでは戦車シミュレーターは出ていたが、遊びやすいコンシュマーで出た意義は大きい。また、完全にリアルという訳でもなく、ゲームとしての面白さも維持している点も評価されるべきだろう。特にコンストラクションモードは、ネット上に様々な自作ミッションを作り出した。まさに一生遊べるゲームと呼べるかもしれない。~ ただ支持層は一部の熱狂的な者だけにとどまった。やはり戦車という狭いジャンルで、リアルを追求した本作を支持する層が多くないのは仕方がないことではある。万人受けできないというのはむしろ折込済みだろう。 **その後 だがこの続編が、リアルをさらに追求する方向に向かったのは評価が分かれる所。次作の『[[PANZER FRONT Ausf.B]]』がリアル度をさらに上げたため、ゲームの難易度が上がった。このため評価が二分。この事もあり当時から本作をPS2などでリメイクして欲しいという声は多かったが、結局実現しなかった。 そのせいか、2017年現在、マルチ専用で人気作となっている『World Of Tanks』(PC/Mac/360)はeスポーツ路線、シム系の『[[War Thunder]]』(PC/Mac/PS4北米)は、最終目標を空陸海の全てを再現する戦場シミュレーターMMOの一要素としての戦車であるため、戦車を題材にした家庭用ゲーム機向けシミュレーターは、海外でも正式リリースされていない((PCからの移植であれば『Panzer Elite Action: Fields of Glory』のPS2/Xbox版が2006年に出ている。))。
*PANZER FRONT bis. 【ぱんつぁーふろんと びす】 |ジャンル|SLG|&amazon(B00005OVSH)| |対応機種|プレイステーション|~| |発売元|エンターブレイン|~| |開発元|シャングリ・ラ、ソユーズ|~| |発売日|2001年2月8日|~| |定価|6,800円|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 -日本のコンシュマーでは唯一と言っていい戦車シミュレーター。本作はその一作目の改良版。戦車数、ミッション数を増やし、バランスも調整、さらにストーリーモードとミッションを自作できるコンストラクションモードが加わった。 -舞台は第二次大戦の1941年~1945年のヨーロッパと一部日本((日本マップは一つのみであり、場所は鹿児島に位置する串良。1945年11月という作戦年月日から見て分かる通り、もしも日本が降伏せずにアメリカとの沖縄戦線で善戦を繰り広げていたらという架空のミッションである。))。史実を想定した戦闘を再現している。プレイヤーは戦車小隊の小隊長となり、戦場を戦い抜く。 --使用できるのはドイツ、アメリカ、イギリス、ソ連、日本の戦車。 **特徴 -戦車が登場するゲームはいくつかあるが、このゲームが他のゲーム違う点は、戦車というものを精密に再現している点である。 --そもそも戦車とは、装甲された車体に大砲を積んだもの。その装甲は来た砲弾を弾き返すか、打ち抜かれるかだけである。 --砲弾を弾き返す限り、基本的に装甲はダメージを蓄積しない。つまり他のゲームのような、HPに当たるようなものは本質的には存在しない。 ---ただし砲弾の衝撃などにより、貫通されなくとも内部の機器が故障、または乗員が死傷する場合はある。ただ本作では、乗員の死傷は再現されていない。 -当時の戦車は通常、車長、運転手、通信手、射撃手、装填手の五人で動かす。本作ではプレイヤーの役割は車長、運転手、射撃手の役割となる。通信手と装填手はコンピューターが行う。 -小隊長としてのプレイなので、小隊で連携しミッションをクリアする事になる。他の車両への指示は細かく、多彩な戦術を取る事ができる。むしろ戦術を考えないとクリアできない。 -使用する戦車を変更できる。史実を想定しているためミッションで使用する戦車は史実通りなのだが、これを他国の戦車や、自軍のさらに強力な戦車など好きな戦車へ変えられる。これは敵でも行え、お互いが相手の戦車を使うなどという事も可能。 -車両以外にも、歩兵、対戦車砲、ヤーボ(爆撃機)、野砲支援がある。 -架空の戦車を使ったストーリーモードがある。ただミッション自体は、通常のミッションを若干変えたもの。配置されている戦車の種類等が違っている。 -自分でミッションを作れるコンストラクションモードが用意されている。これによりクリア後も自分でミッションを組み立てプレイする事ができる。ネット上では未だに多くの自作ミッションが見られる。 **評価点 -戦車というものの再現性の高さ。 --戦車は基本的に正面を向けた戦闘を想定しており、正面の装甲が一番強く、後方が一番弱い。そのため当たる場所によって、被害の受けやすさが極端に違う。しかも各部位の装甲厚も違う。例えば、正面から見ても、車体下部、上部、砲塔などが違うのはもちろん。防盾((砲を守る可動式の装甲。))と砲塔の装甲値も違うなど、細かな点まで設定されている。 --砲弾の入射角によっても、被害を受けるかどうかが異なる。垂直に当たる場合と、浅い角度で当たる場合では、同じ装甲でも打ち抜かれる場合とそうでない場合に分かれる。軍事用語で言う避弾経始が反映されている。さらに距離が遠いほど貫通力が落ちるため、近距離で打ち抜けたものが、遠距離では打ち抜けないという事が起こる。 --二次大戦の戦車は、砲弾の初速が遅い。このため、目標と着弾地のズレを考えて照準をつける必要がある。距離に対しては、放物線を描いて飛ぶ砲弾のズレを考えてつけなければならない。ただ当時の照準機と同様、本作の照準機も距離をあわせるための仕組みがある。移動目標に対してはやはり弾速の遅さからズレがでるため、着弾地と移動予測先を考え狙わなければならない。 ---なお、慣れてしまえば照準の適性距離を調整する事無く2000m超の距離で動く敵を初弾撃破する芸当も可能になる(高難度面はいちいち調整している暇が無いことが多い)。 --砲弾の種類。対装甲目標のための徹甲弾と、非装甲目標のための榴弾など、目標によって使い分けなければならない。また当然だが、弾数に限りがある。 --部位破壊も再現されている。履帯切断や砲の故障などがある。運転席の覗き窓を狙って、重戦車を正面から破壊するという事すらできる。ただし、ゲーム性の問題もあり、対象部位に命中しても必ずしも破壊されるという訳ではない。 --動きも再現性が高い。ギアの上げ下げや、段差において転輪がバラバラに反応するなど、戦車らしい動きを見せてくれる。 -リアリティを高める効果音に音声。 --ドイツ語、ロシア語、英語の音声通信は全てネイティブ。 ---日本の戦車も出ているのだが、日本語音声がない点は残念な所。 --砲の発射音も迫力あるもの。 ---わざわざ陸上自衛隊の富士演習場に取材に行くまでして作られた。 -ゲーム性とリアリティの両立。 --戦車をうまく再現している本作。このため、正面から何発入れても敵を破壊できなかったり、逆にちょっとした死角から側面に打ち込まれ、一発で破壊されてしまうなど、緊張感のあるゲームとなっている。 --さらに小隊単位での戦闘は戦術性を持たせ、戦車での戦闘を深めている。 --一方で、過度なリアリティはないため、ゲーム性とのバランスがうまく取れている。 -用意された戦車は実に多彩。 --戦車を含む車両等は全部で75種。この他に爆撃機が4種、規格外サイズの装甲列車も登場する。ティーガーI、M4シャーマン、T-34などの有名どころはもちろん、マウスやシャーマンジャンボ、JS-3まである。さらに架空戦車が6種用意されている。架空戦車は強力ではあるが、時代の雰囲気から逸脱しない程度の能力になっている((架空戦車は現実で運用できるかという部分では怪しい物が多く「ガスタービンで高速に走行する戦車」から「車内が狭くなりすぎる戦車」さらには「無駄に砲塔が大きい戦車」「キャタピラが無駄に二重になっている戦車」とあくまでデザイン重視である。))。おまけ程度だが現代戦車の「90式戦車」「T-80」が登場する。 --さらに戦車以外として、各種兵員輸送車、対戦車砲などもある。特に対戦車砲は戦車にとって大きな脅威の一つ。草むらや林に紛れ込んだ対戦車砲は、なかなか視認しにくい。 --串良飛行場に特攻練習機「白菊」が駐機しているが、ヤーボとしての参戦はなくオブジェに留まっている。 -車両以外の要素の存在により、単なる戦車シミュレーターではなく戦場の再現という方向性のものとなっている。戦場の雰囲気がよく出ている。 --さらに第二次世界大戦の雰囲気を再現しているというだけではなく、実際に行われた戦闘が各ミッションとなっている。独ソの多数の戦車が激突した「クルスク戦車戦」、ミハエル・ヴィットマンの活躍で知られた「ヴィレル・ボカージュの戦い」など、第二次大戦通ならすぐにでも思いつく戦闘が多数ある。 -難易度調整も細かい。 --難易度としては高めのゲームだが、難易度設定を下げる事もできる。その設定も細かい。一番簡単な設定では、砲弾数無制限、発射速度倍化、故障無し、目標マーカー及び、距離の表示となる。初心者でもある程度プレイできるようになっている。 -コンストラクションモードもなかなか出来がいい。 --COM側の細かな動きが設定できるなど、かなり優秀なエディタ。ステージ自体が作れないのは残念な所でもあるが、用意されたステージはかなりの数であり、不足感はない。 --あえてもう少し手を加えてもらい点があるとすれば、文字を打つのが不便な点だろうか。 **難点 -戦車戦を精密に再現しているのが特徴だが、やはりゲーム。実際とは違う面がある。 --キャタピラを左右逆回転させてその場で180度回る方法を超信地旋回という。当時の戦車で、できなかった訳ではないが、足周りに負担がいく(ティーガーなどの重量級戦車ともなれば余計に)ので多用することはできなかった。 --距離の表記が実際の四倍になっている。現実通りにすると、遠距離の目標が極端に小さくなりすぎたり、足が遅すぎたりと、ゲームとしての難点が出てくる。そのためこのような処理を行われている。 --歩兵が全く攻撃してこない。実際には歩兵も戦車に対し近接攻撃を行っていた。もちろん、むやみに行っていた訳ではなく、頻度は低かったが。 --地雷などが存在しない。ゲーム性を損なうからだろう。 --プレイヤーが味方を撃つとその戦車は破壊されるが、コンピューターの戦車が自軍を打っても破壊されず、砲弾はすり抜けてくる。アルゴリズムを簡略化するためと思われる。 --史実を想定はしているが、ミッションの状況が実際とは異なる部分も多い。 --一部データーに実物とは異なる部分がある。 -戦車破損の仕様 --特徴にて前述の通り、本作の戦車は砲弾攻撃によって破損することがある。 ---具体的には「履帯(キャタピラ)破損」と「砲破損」の二つに分類されており、キャタピラの場合は直撃を受けた方のキャタピラが操縦不能になり、大砲の場合は砲弾の発射自体が不可能になるという仕組みである。((履帯はどちらか一方が破損した場合、もう片方のキャタピラは絶対に壊れなくなるという謎仕様。)) ---このシステムによってドイツの重戦車と敵対、そして中小型戦車の使用を強いられるマップの多いアメリカやソ連では破損システムを戦術の一つとして練り込めるといった要素がある。 ---しかし勿論ながらプレイヤーの戦車も破損の対象とされており、プレイヤーの戦車が敵の攻撃によって破損した場合、''修理や操縦機の切り替えといったリカバリーを効かせる要素が全くないので実質詰み状態になる。'' ---どれだけ自軍が優勢な状況でも、プレイヤーの破損状況次第では味方機への指示だけではどうすることもできない状況は少なからず存在するため、戦術として利用できる破損システムも状況によって良くも悪くも揺れ動くといったところか。 ---破損システムはオプションによってオンオフが可能。しかしこのシステムを失うことにより難易度が変化するマップは存在するだろう。 -PSのスペック不足による問題がある。 --遠距離になると地形や建物などを描写できない。このため狙いは正確なのに、表示されてない遮蔽物に砲弾が防がれたりする事がある。((このシステムを利用し、茂みの中から一方的に攻撃するといった非現実的なことも可能になってしまっている。敵戦車はプレイヤーを目視しないと移動や後退といったアクションを起こさないため、被弾しても停車したままといったことが現実味を欠いている。)) --破壊された戦車は残骸としてその場に残るのだが、表示数に限界があるため、新規に戦車が現れる度に消えていく。ただしプレイヤーから離れた戦車が消えていくので、目の前の残骸が突然消えるという事はない。 --前作のDC版はグラフィックが格段に綺麗で、表示限界による問題もPS版ほど酷く無かった。本作も上位機種ならば改善出来たであろうが、他機種へ移植されなかったのは惜しまれる。 -バグと思わしき部分。 --戦車はその車体の各部に細かな装甲値があるのだが、その一部に設定ミスらしき部分がみられる。そのため一部の重戦車が、旧式の戦車に正面から破壊される等がある。 ---分かりやすいのがショートブル。重装甲の架空戦車だが、よく正面から撃破される((車体を巨大化しキャタピラを二重にすることでドイツの重戦車に対抗できるアメリカの重戦車というのがショートブルのコンセプトではあるが、このバグに加えてキャタピラが大きいことから履帯破損がし易く、外見とは裏腹に意外と脆い戦車となってしまっている。))。 //直視バイザーや機銃を抜かれているのでは? -マップによって使用できる戦車の種類が異なる --評価点にて前述の通り、本作では75両の戦車を操ることが可能であるが、全てのマップで全ての戦車を使用できるという訳ではなく、マップによって使用できる戦車が異なるといった点がある。 ---具体的にはマップごとに他軍の戦車を利用できないという訳ではなく、一部の「マウス」や「90式戦車」「T-80」といった強力な戦車が一部マップで使用できないことがある。マップごとのゲームバランスを損なわないために行われた処置であると思われるが、戦車シュミレーションと言うだけあってこの規制がかけられているのは非常に惜しい((コンストラクションモードでしか使用できない車両も幾つか存在している。))。 **総評 戦車マニアを狂喜させたゲーム。PCでは戦車シミュレーターは出ていたが、遊びやすいコンシュマーで出た意義は大きい。また、完全にリアルという訳でもなく、ゲームとしての面白さも維持している点も評価されるべきだろう。特にコンストラクションモードは、ネット上に様々な自作ミッションを作り出した。まさに一生遊べるゲームと呼べるかもしれない。~ ただ支持層は一部の熱狂的な者だけにとどまった。やはり戦車という狭いジャンルで、リアルを追求した本作を支持する層が多くないのは仕方がないことではある。万人受けできないというのはむしろ折込済みだろう。 **その後 だがこの続編が、リアルをさらに追求する方向に向かったのは評価が分かれる所。次作の『[[PANZER FRONT Ausf.B]]』がリアル度をさらに上げたため、ゲームの難易度が上がった。このため評価が二分。この事もあり当時から本作をPS2などでリメイクして欲しいという声は多かったが、結局実現しなかった。 そのせいか、2017年現在、マルチ専用で人気作となっている『World Of Tanks』(PC/Mac/360)はeスポーツ路線、シム系の『[[War Thunder]]』(PC/Mac/PS4北米)は、最終目標を空陸海の全てを再現する戦場シミュレーターMMOの一要素としての戦車であるため、戦車を題材にした家庭用ゲーム機向けシミュレーターは、海外でも正式リリースされていない((PCからの移植であれば『Panzer Elite Action: Fields of Glory』のPS2/Xbox版が2006年に出ている。))。

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