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Zill O'll ~infinite Plus~ - (2019/02/23 (土) 18:49:32) の編集履歴(バックアップ)


Zill O'll ~infinite Plus~

【じるおーるいんふぃにっとぷらす】

ジャンル RPG

対応機種 プレイステーション・ポータブル
発売・開発元 コーエー
発売日 2009年1月22日
定価 5,040円
廉価版 コーエーテクモ the Best
パッケージ:2010年8月5日/2,940円
ダウンロード:2010年11月18日/2,200円
コーエーテクモ定番シリーズ:2012年8月2日
パッケージ:1,890円 / ダウンロード:1,600円
判定 劣化ゲー
ポイント PS2版にイベントやキャラを追加
しかし新キャラに矛盾多数
深刻な処理落ちとロード地獄
利便性の向上(但し、2周目以降限定
Zill O'llシリーズ
Zill O'll / infinit / inifinit Plus / TRINITY Zill O'll Zero

概要

  • 1999年にPSで発売されたRPG『Zill O'll』をPS2でリメイクした作品である『Zill O'll ~infinite~』を更にPSPへ移植した作品。
  • 「初代→インフィニット」の際も、没キャラや没シナリオ、新規イベントがかなり追加されたが、PSP移植にあたり、さらに追加されている。
  • 仲間キャラは以前から人気だった「フレア」「フェルム」「エルファス」、さらに完全新規キャラ「イーシャ」「ジリオン」の合計5人が追加された。
    • それにともない、PS2版までエンディングが存在しなかったフェルムには個別EDが、エルファスには従来とは異なるEDが追加されている(フレアはPS2版のEDと同じ)。
  • 新規スタート地点「闇に閉ざされた塔」追加。
  • 装備が大幅に変更された。

問題点

ロード、処理落ち

  • 初代もインフィニットもロード時間が長いと指摘されていたが、本作ではその傾向がますます悪化している。
  • 例としては、マップの切り替えで5秒程度、ダンジョン移動中の魔法でしばらくフリーズするなど。
  • とくにギルドの仕事では、移動中の魔法が必須ともいえるため、あせったプレイヤーは多いだろう。
  • いちおう、メディアインストール機能はあるが、それでも遅い。しかもPSP-2000の場合、この機能を使用すると逆に遅くなるという報告がある。
    • いっぽう、DL版だとロード時間はそれほど気にならないほど短い。
  • ダンジョンでは、3体ほどの敵が同時表示されるだけで処理落ちする。
  • もともと、キャラクターの動きや町移動の手間など、けっしてテンポの良いゲームではないのだが、上記の点によってますますテンポを損なってしまっている。
    • この処理落ちは、DL版をPSVitaで起動すると緩和されるという報告がある。
  • さらにキーレスポンスも悪く、すべての操作がワンテンポ遅れる。

システムの劣化

  • ギルドでの仕事を請け負う際、一覧に表示されない依頼が発生することがある(スクロール不可)。表示は難易度の低いものから上に表示されるため、高難易度の仕事を請けるには、いったん低難易度の仕事を引き受けてから解約する必要がある。

セリフの設定ミス

  • 新規加入キャラで頻発。
    • イベント時、セリフの設定ミスなのか、異なるキャラクターの口調になってしまうことがあり、キャラクターによってはプレイヤーにかなりの精神的ダメージを与える。

新規追加キャラの設定

  • 発売前にコーエーの公式サイトで公開された小説より、「イーシャ」と「ジリオン」が登場するが、そのふたりの設定に旧作からの矛盾が発生している。
  • とくに時系列については、ゲーム内で語られる内容とあきらかに矛盾する点が見受けられるため、ファンからあいついで指摘を受ける事態となった。
    + 新規追加キャラの不評点
  • イベントにおいても、新規追加キャラの設定、イベントはお世辞にも出来がいいとはいえず、ふたりの恋愛関係をひたすら見せつけられる展開になるため、このふたりに感情移入できないプレイヤーはかなり厳しい。
  • しかも追加されたエンディング5つのうち、3つがこのふたりに関連するものであり、そのうちのひとつはふたりの結婚式という、プレイヤーが完全に蚊帳の外になってしまうものである。
    • ほかのふたりはそれぞれの単独エンドで、ジリオンなら女主人公と、イーシャなら男主人公とペアになるもの。ただし、そのルートに行くにはジリオンEDならイーシャを、イーシャEDならジリオンを仲間にできなくなってしまう。また、なぜか単独エンドは2周目以降限定である。
  • じつは新規PT加入キャラのイベントについても、一部で不満の声が上がっているのだが、前述したふたりのシナリオがあまりもひどい出来だったため、それほど目立ってはいない。
  • + シナリオの矛盾点
  • ゲーム内で語られているロストールのクーデター「テジャワの変」の発生時期がおかしい。
    • ロストール王妃エリスのセリフによれば、テジャワの変は娘であるティアナが生まれるころに発生したとのことだが、小説ではすでに会話できる年齢に成長しているティアナが登場している。
  • ジリオンは前述したテジャワの変で活躍し、その後はイーシャのためにアルノートゥンという町のクリスタルに封じられる。だが、同時にネメアが達成した偉業のひとつ、28騎で大量の敵兵撃退にも参加していたという記述もある。ネメアは公式設定で26歳。…あれ?

その他

  • PT加入キャラを全員仲間にするとベストエンディングを迎えられるのはインフィニットと同様で、新規加入キャラもその条件に含まれる。…が、なんとこの5人はそのエンディングにおいてその場にいるだけで、一言も台詞を発しない。インフィニットのベストエンディングに、ただ新キャラを配置しただけである。
    • フェルムとフレアは酒場のシーンにて無言で棒立ち。エルファス、ジリオン、イーシャはラストシーンに申し訳程度に現れるだけ。とくに前者ふたりは、皆が大いに盛り上がっている中で蚊帳の外になっており、なんとも不憫である。一言、二言程度の台詞を挟むくらいはできたのでは…?

評価点

  • 2周目から新アイテム「通信機」が登場する。これにより、従来は猫屋敷でしか出来なかった仲間の入れ替えがどこでも可能になった。
    • 手間が減ったのはもちろん、メンバーを入れ替えるため猫屋敷に向かう途中で歴史が進行してしまう…といった事態を防げるようになり、イベント回収にも余裕ができた。
  • 従来は一部のキャラクター以外、店売りの汎用装備だったが、本作では仲間になるキャラクター全員に固有の装備が設定されている。
    • 従来は鍛えられなかった固有装備も(コストは高いが)鍛冶屋で鍛えられるようになった。アイテム係と揶揄されていたキャラクターにも活躍のチャンスが!
      • しかしながら固定武器属性の関係上、結局はラスト付近からアイテム係になるキャラが何人かいる。素直に好感度がMAXで装備変更可能にすればよかったのに…。
  • 複数条件を満たしている場合、どのキャラクターとのエンディングを迎えるかを選択可能になった。
    • これにより、特定キャラのエンディングしか見られない!という事態がかなり改善された。一部キャラは呪いと呼ばれるほどエンディングの優先順位が高かったため、これについては嬉しいかぎりである。
  • スタート時に誕生日として設定した日に宿屋に泊まると、仲間たちから祝ってもらえるイベントが追加。
    • ささやかなイベントだが、メンバー全員にその好感度に応じた台詞がふたつずつ用意されている凝りようである。好感度が一定以下の場合は軽く祝ってもらう程度だが、一定以上になるとどのキャラも思わず笑みがこぼれるほどの嬉しい言葉をかけてくれる。
    • ただし、「闇に閉ざされた塔」でスタートした場合は、ある理由によってイベントが発生しない。
  • フィールドや戦闘時のモーションが多少ながら修正されており、本作特有のぎこちなさが、気持ち程度だが改善された。
    • たとえばルルアンタの勝利ポーズは、PS2版だとかなり不気味だったが、今作では普通にかわいらしくなっている。

総評

無印から拡充されたPS2版を移植+αという形で二度目のリメイクを行い、より理想に近くなったZill O'll…となるはずが、「+α」の中でも、おそらくスタッフが最も気合を入れたであろう新規追加キャラの周辺が酷評の嵐であった。
歴史物が得意なコーエーの送り出した中世ファンタジー風RPGということで、初代の時点ですでに詳細な過去の歴史が設定されており、キャラクターたちも非常に人間くさく描かれていた。
それだけに、今回のリメイクでの追加点はことごとく浮いてしまっており、非常に残念な結果となってしまった。
とくに時系列の矛盾は、ゲーム中のセリフをしっかり読んでいれば防げる程度のものであり、スタッフの理解不足を嘆く声は多い。
また、処理落ちやロード時間の長さと、システム面でも新たな問題が多数生じてしまっており、プレイの快適性も大きく損なっている。
改善された要素もあるとはいえ、普段のプレイは従来よりはるかにストレスが溜まりやすいことにかわりはなく、改善要素自体も2周目以降限定であるため、その恩恵にあずかる前に投げてしまったプレイヤーも多い。
こういった問題点もあり、結果として劣化ゲーといわざるを得ない作品になってしまった。
しかし、それでも好評だったPS2版の要素は全て内包しており、持ち運び可能という携帯機ならではの利点もある。
なんだかんだで、現時点においてもっとも要素の充実したZill O'llであることも確かであり、DL版をPSVitaでプレイすれば快適性の改善は望めるうえ、現在なら安価で購入可能なため、
今からZill O'llを始めるなら、本作を選ぶのも悪くないだろう。だが間違ってもUMD版はお勧めしない。
本作の問題を改善し、いまだ残る謎をも解き明かす、さらなるリメイクや新作を期待したいところだが、以降のZill O'llは『TRINITY Zill O'll Zero』が発売されたのみにとどまっているのが現状である。


余談

新規追加キャラふたりについてだが、ゲーム発売前に公式サイトでは彼らを主人公にした小説が連載されていた。
後日、書籍版の発売も発表されたが、発売日は延期をくりかえし、ゲーム発売から10年以上が経過した2019年現在もいまだ発売されていない。