ウィザードリィ外伝IV ~胎魔の鼓動~

【うぃざーどりぃがいでんふぉー たいまのこどう】

ジャンル RPG
対応機種 スーパーファミコン
メディア 32MbitROMカートリッジ
発売元 アスキー
開発元 アスキー、アクセス
発売日 1996年9月20日
書換 ニンテンドウパワー
1997年12月1日/1,000円/F×8・B×4
判定 なし
ポイント 異色風にしてベーシックなWIZ
全体的に低難度
セーブデータ破壊バグあり
Wizardryシリーズ


概要

WIZシリーズを移植・販売していたアスキーがオリジナルシナリオの作品として、GBで独自展開してきたWiz外伝シリーズ。
4作目である「胎魔の鼓動」はプラットフォームをSFCに移して発売した。


ストーリー

(説明書4・5ページより引用)

<序章>

 「遥か遠い古、東方の地に国、成立ちていくばくもなく、異形の輩いずくよりあらわれいで戦乱と殺戮をもたらす。国まさに滅びんとするその時、光放ちたる天軍神人輝く天道より降臨す。久しく災いをなし、人々を恐怖に陥れてきた異形の者どもと戦い、これを征す。異形の者の長、輝きたる者の力の凄まじきを恐れ、地の奥に身を隠したるが、かの者これを見いだし、三種の神器を以て封印となす。」

―古代伝承―

 やがて、そのような伝承も人々の記憶から消え失せ、さらに幾星霜もの時が過ぎた。そして、いつしか三種の神器(生と死を示す書物)(力と技を表す剣)(護りと精霊を司るローブ)が祀られた塔にそれぞれを信仰する部族が住みついた。彼らはそれぞれの塔にこもり、信仰の異なる他の部族を敵視し、嫌悪感を抱き侵入者をこばんだ。

 ある年、国土全域を支配下に治めていた東方の城「緋蓮城」の主、「輝永」公はとつぜん病にたおれ、数日後には還らぬ人となった。王の死はまたたく間に広まり、地方領主の中にはここぞとばかりに反旗をひるがえす者も現れ、全国各地で戦が起こった。争いは争いを招き、裏切りは裏切りを生み、戦禍は国中におよんだ。

 輝永公の嫡男にして、緋蓮城の新しき主君「輝羅」に仕える三人の賢者は、再びこの世を平定する案をねるため、一堂に会した。一人の賢者が「このまま戦が続けば国が滅びるのは必定、領内には流れ者や難民も増えており、いつこの城が攻められてもおかしくはない。さらに邪悪なモンスターを見たという噂まである。早急に手を打たねば。」というと、もう一人の賢者は「しかし、この乱れきった世を平定するには、輝羅様はあまりにも幼いうえに、戦場へ赴いたこともない。」といった。  二人の意見を聞いていた賢者は、「それならば、伝承にあるあの三種の神器の力をもって反乱分子を討伐し、輝羅様こそが新しき王だと宣言するのだ。だが、城の兵を動かせばさらなる混乱を招きかねん。ここは一つ、領内の流れ者や冒険者たちをたよってはどうだろう?」こういうと三人ともしばらく考え込んだが、それより他に方法はないだろうという結論に達し、すぐさま布令がだされた。  「此の戦乱の世を平定せんが為、我らが領内にある三つの塔に祀られし、三種の神器を取り揃え、我らが新しき王に献上せし者には《黄金拾萬》並びに《兵法指南役》にとりたてるもの也。」

 ある者は一攫千金を、またある者は仕官を、そしてまたある者は真の平和を、それぞれ求めて城下へと集った。


特徴

東洋風の世界観

  • もともとWIZシリーズにはサムライ、ニンジャなど和風の風味が盛り込まれていたが、外伝IVではその部分をさらに強調。舞台を「緋蓮」と呼ばれる日本風の国に移し、迷宮も畳に障子など和風に。刀系統の武器も大幅に増えた。
    • ただし、おおむね「アメリカ人の見た勘違い日本」の世界観である。当時のゲームは和製でもそういうのが多かったが。
    • 和風の装備品が大幅に増量し、侍や忍者の装備品に専用品が多くなった。
    • 敵も和風のもの(侍、忍者、妖怪など)がメインに。とはいえ洋風の敵やモンスターも普通に出る。
      • というか太ももを露出したセクシーくノ一が大幅に増殖。東洋うんぬんよりお色気が勝る異色の世界観に。
  • プレイヤーの職業や種族はBCF(#6)の通り。

イベントの大幅増加

  • 序盤で探索する3つの塔には、これまでの作品とは比べものにならないほどのイベントが待ち受けている。たいていは「施錠された扉を開けるためのキーアイテムを持ってこい」という内容なのだが、ある扉を開けるのに別の塔で拾うアイテムが必要になったりと、その組み合わせは複雑怪奇。
    • 和風Wizを謳っているだけあって、女のすすり泣きやしゃべる生首など、日本の怪談風の演出がてんこ盛りである。

本編(ナンバリングタイトル)へのリスペクト

  • ゲームを進行すると出てくる古の迷宮。これが#1の迷宮に酷似しており、同一の迷宮ではないかと思わせるのだが、なぜそれが東洋の国にあるのかという説明は無し。
  • さらにゲームを進行すると舞台はリルガミンに移る。こうなるともはやいつものWizである。外伝IIIから引き続き、ダイヤモンドの騎士も友情出演(?)。

評価点

  • ハードをSFCに移したことによるボリュームアップ。グラフィック、音質、アイテム総数など全てにおいてパワーアップした。
  • システム面は良好なアスキーWizそのものなのでプレイは快適。
    • 周囲の踏破済みマップをワンボタンで表示するミニマップの追加でより快適、かつ迷わずに探索可能。もちろん使わないことも可能。
  • 外伝IIIの問題点の修正。
    • 未登場だった種族「フェルパー」、職業「サイオニック」と「モンク」も追加され、BCF以降で追加された種族&職業が勢揃いした。サイオニック呪文も従来のウィズ形式の名前で登場。
      • サイオニックの攻撃呪文はダメージこそ少ないが敵を足止めする効果がある。またアイテムを鑑定するカルドゥ、若返りや特性値増加のイハロンなど他では代用が効かないものもある。壁の向こう側を透視するカルコやNPCの心を読むノバイスは謎解きにほぼ必須であり、初心者の助けになる。
    • 今作も鍵付き扉が登場するが、バードやレンジャーにも鍵開け能力が備わったことであまり問題にならなくなった。
      • 宝箱を開ける呪文「カルノバ」が鍵付き扉にも対応して開けられるようになった。ただし錬金術最高位呪文なので、アルケミストをマスターするまで使用できない。
    • ドラコンが戦闘中逃走が可能になった。またLv9からブレスの効果範囲が1グループに拡大。
    • フォフィックバグ、ヒーリングバグ、モンスターの状態異常呪文無効化率バグの修正。
    • 前作から転生したキャラは能力値を14まで引き継げるようになり、レベル3までの経験値を得た状態になる。さすがに新規作成キャラよりも大幅に弱いということはなくなった。
      • 転生時に性別を選べるようになり、前作と違う性別にすることも可能になった。ただしバルキリー(女性専用)だけはさすがに性別選択できない。
    • アイテムの種類が増え、宝箱から得られるアイテムも豪華になり、中盤まで初期装備のままということがほぼなくなった。
      • さらに特定のNPCからアイテムを購入できるようになった。不確定名なので値段などから正体を推測するしかないのが難点だが、城の商店と違って在庫が無限。
      • 補助武器が追加され、二刀流が可能になった。また、大刀・槍・弓などは両手武器として扱われ、盾と併用できなくなった。
      • 防具のカテゴリに新たに「靴」が追加された。個人が所持できるアイテムは2個増えて10個になったため、アイテム欄の圧迫にはなっていない。
      • 装備品効果により敵の行動を封じた場合、前作までは何も表示されなかったが、今作では「みをまもっている!」と表示されるので判別しやすくなった。
    • やり直しがきかなくなるマニアモードは冒険の中断ができないという弊害があったが、今作はヘビーモードという名前に変更され、中断できるようになった。
      • ヘビーモードは戦闘中やキャンプ中でも頻繁にセーブされるため、本当にやり直しがきかない。ちなみにヘビーモードの特典は一切無い
  • 種族や職業格差が是正された。
    • 前作で最強種族だったリズマンは元々低かった知恵と信仰心がさらに1ずつ落とされ、全く魔法系職業に向かなくなった。
    • ホビットの素早さが1増加し、罠外しが信頼できるようになった。フェルパー実装により影が薄くなったが
    • BCFではシステムの欠陥により使いづらかったレンジャーは成長が早くなり、弓の射程も伸びて格段に使えるようになった。ビショップもV以前の識別能力を取り戻し、成長が少し早めになった。
    • 強すぎたバルキリーは若干成長が遅めになり、防具も戦士に比べて微妙に弱くなった。それでも専用武器があり、僧侶呪文も使えるため十分に強い。
    • 忍者(とモンク)は装備品を身につけていてもレベル上昇とともにACが下がっていくようになり、素手にこだわる必要はなくなった。
  • これまでレベルアップに必要な経験値は職業で決まっていたが、今作から種族も関わってくるようになった。ドワーフなどの力強くて素早さが低い種族は、盗賊よりも戦士のほうが成長が早い。
    • リズマンは戦士以外の職業の成長が軒並み遅く、その点でも弱体化している。
    • ロード、忍者はどの種族でも相変わらずレベルアップに必要な経験値が多い。
  • シナリオ自体の難易度が低い上に、序盤のレベル上げも容易。キャラクターの育成、レアアイテム集めに専念できるようになった。
    • キャラメイク時にボーナスポイントが10以下だと、道場主から3年間の修行を提案される。修行した場合はそのキャラは3歳年齢が増加するが、Lv4の状態で登録できる。3年でわずかLv3上昇と考えると一見見合わなそうだが、最も困難な序盤を楽に乗り越えることができるメリットは大きい。修行したキャラで序盤の冒険を楽にする・修行で能力値を上げてから本命の職業に転職して冒険開始するといった方針も一考である。
      • 修行には加齢(高齢になるほど能力が伸びにくく、下がりやすくなる)というデメリットがあるが、新規キャラクターの年齢が過去作より少し低めになっている面もあり、また若返りの呪文やアイテムも使用可能になるため悪影響は少ない。
  • アイテムのSPで特性値を上げる場合、種族ごとの上限を超えて上がるようになった。最大は24。
    • これを利用するとリズマンよりパワフルなフェアリー、ノームよりも信心深い人間、特性値オール24のスーパーキャラなども作れる。
  • 酒場やキャンプで覚えた呪文の効果を確認できるようになった。戦闘中でも呪文を選ぶときにLRを押すことで確認できる。
  • 敵出現の際には、不確定名グラフィックがアニメーションして登場する。テンポを崩すこと無く凝った動きをするため見応えがある。特に固定配置されているマーフィーズゴーストは必見。
    • また、正式名のグラフィックが、1つの敵に対し数種類用意されているのも特徴。単なる色違い・細部違いの場合もあるが、敵によっては全面的に別物の絵になっていたり、人型の(職業名で呼ばれているような)敵は同名でも種族違いの絵が用意されていたりと、そこそこバラエティ豊か。

問題点

ストーリー、世界観

  • 従来までとは違いすぎる世界観。それでいて出てくる敵やアイテムが今までのシリーズのデータに和風の妖怪やアイテムなどを当てはめているようなものが多く、違和感がぬぐえない。さらに、和風にもかかわらずテキストが海外小説の翻訳風(つまりいつものウィズ)であるため、ますます違和感が増大する有様。
    • それも前半部だけで、後半以降リルガミンが舞台となる為、結局いつものWizに戻ってしまう。
  • 「ボイラー室」という単語が一イベントだけだが当然のように使われる。しかもただの状況説明でふざけた場面ではない。終盤にはなぜか「電話」がありメッセージも「なぜこんな所に電話があって、いったい誰がかけてきたのかという問題はとりあえず置いておいて」と投げやりなギャグである。
    • ただし、wizardry原典にもカエルの置き物が踊り続けるようなギャグがあったり、動力室で機械を操作するといったイベントはあった。
  • 本編前半は、個々のイベントに力が入っている割に本筋のストーリーはいまいち良く分からないまま終わる。3つの塔をクリアすると、唐突に名前も分からない黒幕が初登場して最終ボスを復活させる。黒幕が一体何をやりたかったのか、そのラスボスは何者なのか、全てプレイしても何ら明らかにならず、さっぱり分からないまま。
    • 説明書のストーリーから察するに、黒幕は三人の賢者のうちの一人で(そのためエンディングでは賢者が二人しか登場しない)ラスボスは古に封印された異形の者の長なのだろう。また後半では「この前来たのは人間ではなくもっと邪悪なものであったようだ」という情報が聞けるので、黒幕は人間ではなく異形の輩だったのかもしれない。
  • 後半は後半で唐突に前作『ウィザードリィ外伝III ~闇の聖典~』のキーパーソンであったアガン・ウコーツが出てくる。しかも、後半部の2回目のスタッフロールでは「SCRIPTURE OF THE DARK2」と表示され、本作が外伝IIIの前日譚であったことが明かされる。つまり「外伝IIIのエピソードゼロ」であるため、前作を知らない人間がプレイすると、「黒幕らしき謎の人物に乗り移られて襲ってきた為やむなく PCが殺した街娘ダリアを、アガンが突如吹き込まれた「アガンにのみ聞こえた声」に従ってどうにかしようとどこかへ去る(その後儀式を執り行う一枚絵)」という非常に後味が悪い上にぶつ切りなエンディングで終わる。
    • もっとも外伝IIIをプレイしていた場合でも、 この儀式の末路を知っているため、なおさら後味が悪い。

戦闘バランス

  • 本編クリアくらいまでの間、敵が弱い。前述の通り最初からある程度強いキャラを作り出せる上、序盤でも楽に経験値を稼ぐ方法があるため、戦闘に苦労するのはごく最初だけ。店に「まっぷたつのけん」など中盤まで通用する強い武器が最初から並んでいる事も低難度化に拍車をかけている。
    • 本編のヌルさに反して恒例の隠しダンジョン「ドラゴンの洞窟」では敵の強さが異常に高騰する。全体的に敵の出現数は少なめだが一人一人が非常に強いため本編クリア直後のパーティでは手も足も出ない。それでも即死や状態異常になることが少なく、攻撃力も大幅に抑えられている地下1~2階あたりはうっかり死ぬ確率は低いが、地下3階以降は敵のレベルが一気に100近くに跳ね上がり、AC-20~40、全呪文耐性100%、通常攻撃でも200ダメージオーバーがザラになりこんな攻撃力で後列攻撃までしてくる始末。たとえ耐えられるHPがあったとしても多くの敵が首切りorノックアウト*1持ち、かつ麻痺・石化など厄介な状態異常も盛り沢山で、かなりの高LVパーティも容赦なく全滅させてくる。
    • 序盤から中盤にかけて呪文抵抗を持つ敵が数多く登場し、魔法使いの呪文やドラコンのブレスで一掃ができなくなる。転職を見越してスペルユーザーだけでパーティーを組んでいると、こういった敵を倒すのがとにかく大変になる。
    • 一部の敵が「バモルディ」「ソコルディ」などの召喚呪文を使い、プレイヤー側と同様にモンスターを呼び出してくる。運が悪いと最終盤のドラゴンの洞窟で出るような超強敵が召喚されることもあるが見返りも充分なので稼ぎに利用する場合もある。もちろん逃げるしかなくなる場合もある。
  • 塔の神器を取る際のボスの一体は、二度戦うことになるが、二度目は敵も味方も呪文が封じられた状態で戦うことになる。それなのに敵は呪文攻撃しかしてこないので(無意味)、絶対に負けることはない。戦闘前のメッセージとは裏腹のガッカリなイベントである。
  • 攻撃呪文のダメージ範囲はレベルに関わらず固定のまま(しかも、高位呪文の威力が下がっていたりもする)で、敵HPの高騰に追いつかず相対的に弱体化している。また、敵1グループ辺りの数が少なめなので、グループ攻撃の必要性も薄い。ドラコンのブレスが強化された事も攻撃呪文の冷遇要因の一つ。
    • ドラコンのブレスは必中ではないが自分の現在HPの半分(ただしブレスのダメージ上限は160)と強力なダメージである。しかも上述したようにわずかLV9で対象が1グループに。その際は一戦闘に一度しか使えなくなるが、十分である。BCF(#6)の時の様なスタミナ消耗というデメリットも無い。
  • 外伝3におけるアルケミストの呪文の一部が外伝4ではサイオニックの呪文に変更された上に使いどころに乏しい雲系攻撃呪文だけが無駄に激増したために使い勝手が更に悪化。
    • HP全回復の「カディオス」、パーティ状態異常治療の「モルフィス」は残ったが、アイテム識別の「カルドゥ」はサイオニックに取り上げられてしまった。
    • 追加された呪文は雲系攻撃呪文以外だと敵単体を麻痺させる「ナグース」敵の能力を下げる「ダーリス」気絶と睡眠を治療する「ジオフィック」があるが、いずれもニッチすぎて扱いにくい。ナグースはサイオニックのグループ麻痺呪文「ロークス」の下位互換であり、まともに使い物にならない。ジオフィックはHPを回復できるわけではないのでHPが1桁になる気絶とむしろ相性が悪く、睡眠はジオフィックを習得しているキャラが寝た場合無意味など使いどころが制限される。
    • 敵にかけられた雲系呪文を消し去る「フィスクレア」を使用しても、行動前に敵が全滅するとフィスクレアの詠唱をやめてしまい、雲系呪文のダメージをそのまま受けるようになった。
  • キャラの性別が選べるが、専用職業、専用装備で女性が優遇されている。
    • 前作には男性専用装備もあったのだが、それらは全て男女兼用になった。逆に女性専用装備は男女兼用にならなかった。
  • 一部の呪文の効果が発揮されない。
    • NPCを友好的にする呪文「ゲネス」の効果がない。というか#5のようにNPCが会話してくれなくなったり、突然襲いかかってくること自体がない。
      • 戦闘中ではゲネスを単体麻痺呪文として使うことはできるが使い勝手が悪い。
    • 隠し扉を発見する常駐呪文「ディアフィック」も効果がない。盗賊系技能を持つ職業がいなければそもそも発見できないし、いても発見確率が上がったりもしない。
    • 通常攻撃の命中率を上げる常駐呪文「オスロ」「マオスロ」はバグで逆に命中率が下がる。バグで効果が無かった前作より悪化させてどうする。
    • 「モーリス」「マモーリス」は相手グループのACを上げ、さらに確率で行動を止めるという効果だが、なぜか「おどろかせた!」と表示されたターンにも普通に攻撃してくる。前作まで強敵の足止め&弱体化に役立っていた呪文が途端に使えなくなった。

セーブデータ破壊バグの存在

  • 初期ロットでは、「アイテムの呪いを解く「ジルフェ」という呪文を使うと、セーブデータが破壊されてしまう」という致命的なバグがある。ジルフェを使用した後のデータを書き込む場所を間違えていてチェックサムが狂うのが原因で、ターボファイルでバックアップを取っていてもデータを戻せないという凶悪さ。
    • 修正版への交換、修正されているニンテンドウパワー版の入手など今となっては不可能。
    • 呪いを解くのは従来通り店で行えばよいので、ジルフェはほとんど使う必要のない呪文だったのが不幸中の幸い。

前半戦「三種の神器編」のイベントフラグ管理

  • 序盤で探索することになる3つの塔。イベントや仕掛けは豊富に用意されているのだが、適当にゲームを進めると容易にそれらが破壊されてしまう。これは説明書でも警告されている。
    • 鉄格子は本来スイッチの開閉やイベントアイテムの鍵を使用して開けるものだが、高レベルの盗賊やカルノバの呪文で無理やりこじ開けることが出来てしまう。これを行った場合、解錠した扉に関するイベントが連鎖的に消滅する*2ため、謎解きが中途半端に終わってしまい、腑に落ちない気分になる。
    • フラグの立て方も複雑怪奇。ノーヒントに近いものもあり、鉄格子やNPCに対してイベントアイテムを片っ端から使用してみることも必要になってくる。場合によっては他の塔で手に入れたアイテムを使うこともある。
      • 一部の謎解きのヒントはサイオニック呪文を使ってしか得られない。パーティーにサイオニックを入れていない場合は尚のこと総当たりになる。
    • また各塔に分散しているクリアアイテム「三種の神器」をどれか一つでも持ち帰ると、3塔とも謎解きやトラップの大部分が破壊されてしまい、塔内のNPCもほとんど消滅する*3。最終的には「三種の神器」を全て持ち帰ることになるが、進め方によっては残り2つは単に拾ってくるだけ、ということにもなりかねない。
      • 進め方によっては、強力なアイテムの入手が不可能になる。またイベントが全て「未完」となる為、結末がわからないままのクリアを余儀なくされてしまう。
      • しかも「幻術の塔」は、神器獲得後に全ての罠がスイッチONになるため、転移呪文「マロール」がないと攻略がかなり面倒になる。本作のマロールでは未踏破箇所へは移動できないので、事前に塔の奥地へ踏み込んでいない場合は大変なことに(ちなみに、一つの塔をクリアできるレベルなら一般的な編成では魔術師が含まれ、マロールを習得している)。
    • ただし、これはバグや不具合の類ではなく、「キーアイテムが無くても扉をこじ開けまくってさっさと先に進めることができるように」意図的に組み込まれた仕様である。早く先に進みたい場合はイベントをすっ飛ばしまくり、全てのイベントを網羅したい場合はイベント扉をこじ開けることの無いようにフローチャートを完璧に組んで進めればよい。
      • その証左、というわけではないが、全てのキーアイテムはボルタック商店に陳列することができず、「転生の書」(アイテムコンプリートを達成するともらえるアイテム)の取得条件からも外されている。
    • 当然、扉だけでなく目に入ったNPCをひたすら殺害しても先へ進むことが可能。この場合も詰みはしないが「本来NPCが代わりに受けるはずだった致命的な罠をプレイヤーキャラが受けなければならない」などのデメリットはある。また、特定のNPCを殺害した時にしか見られないイベントも存在。

その他

  • 三本の塔には各種謎解きが張り巡らされていたが、それ以降はもう燃え尽きてしまったのか従来のひたすら潜るだけのダンジョンになる。
    • 敵の配置もバランスが悪く、新しい場所に行けるようになっても前半は戦う意味がほぼ無いような状況になっている(それまで戦っていた敵よりも弱く、経験値も低い、アイテムも良いものが出ない)。
      • 特に本編のラストダンジョン「SANCTUARY」の敵は、直前のダンジョンよりも数段弱いものばかり。ラスボスまでもが直前のダンジョンのボスよりも格段に弱く、調整不足感が否めない(直前のボスにあっさり倒された人物に乗り移られた町娘なので、弱いことに不自然さはないともいえるが…)。もちろん苦戦するはずもないので、後半は通路が迷路状に入り組んだダンジョンでスイッチを探し回るだけの作業になってしまう。
  • 本編前半のラスボス前に、壁のボタンを押して像を動かす謎のパズルをやらされる。このパズル、実はルービックキューブと同じシステムで、解法さえ知っていれば3か所を移動しボタンを押していくことで完成できるのだが…
    • 一か所で操作できるわけではなく、各階の像のある場所を回る必要がある*4。転移呪文を使えば少しは楽になるが、それでも面倒。
    • 面を揃えるといっても縦横どの面でもいいのではなく、小部屋に悪魔の死体のあった最下層に全ての像を揃えないといけない。
    • あまりに意地悪過ぎとスタッフも自覚していたのか、取扱説明書のFAQ欄の端にヒントが掲載されていたものの、ヒント自体が漠然としすぎていたためルービックキューブ方式と判らない人が続出。加えてパズルの操作法(壁のボタンの使い方)がノーヒントなので、そもそも何の謎解きなのかさえ分からないまま詰んだプレイヤーも多い*5
  • 「練武場」という「キャラクターを育てるため」という触れ込みの、クリアには関係のない簡易ダンジョンが存在する。当初は三階しかなく、四階より下はゲーム進行にともなって解放される…という触れ込みだったのだが、実際に四階より下が解放される条件は、「その階に対応したエリアの敵を全て倒す」こと。
    • つまり、練武場○階を解放するには対象となる敵を全種類倒せ、ということ。敵の出現場所にはかなりのばらつきがあるので、当然漏れが発生して延々探し回るはめになる。
      • しかも「あと何匹倒せばいいか」という情報を得るには、練武場に一見関係なさそうな死霊の塔にいる「死体回収」を仕事とするNPC「そうじろう」に心読みの呪文「ノバイス」を唱える必要がある。それでも判るのは残り数だけで、具体的な情報(対象怪物の名前や出現場所など)は皆無なので、結局あらゆる階層をしらみつぶしに周回し敵を倒しまくるしかなくなる。
    • 最奥まで解放すると隠しボスと戦えるが、その隠しボスも間違いなく先に会うであろうドラゴンの洞窟の裏ボスよりも明らかに弱い。
    • 隠しボスから入手したアイテムを持ち帰り、欲しがる人に渡すと、いわゆるモンスター事典を見られるようになる。登録されるモンスターを全部倒して揃えないと見られないというのが少々残念。
      • ちなみにこのアイテムを捨てると隠しボスが再出現する。一方、NPCに渡すと二度と隠しボスと戦えなくなる(稼げなくなるともいえる)。
  • 訓練場で転職すると、キャラの特性値がその職業に転職するのに必要な数値まで下がる*6。これはBCF(#6)と同様なのだが、問題は下がる特性値が種族基本値で下げ止まらないこと。
    • 例えば僧侶の転職条件には「運8」が含まれているが、運の基本値が9以上ある種族を僧侶にしても運8まで下げられてしまい、アルケミストやバードなどへの転職が遠のいてしまう。
      • 悲惨なのがバードとレンジャーで、この2職は転職条件に「素早さ8」が設定されているため、どんなに素早い種族を転職させようとも素早さ8まで下がってしまい、宝箱の罠識別や解除が使い物にならなくなる。
    • 説明書には「転職すると特性値はその種族の基本値にそれぞれ戻る」と、前作までの仕様がそのまま書かれている。説明書が堂々と間違いを載せているというのは…。
  • 前作以前からのキャラクターの転生で、シナリオクリア称号を引き継げるのは外伝IIIのもののみ。外伝I・IIからのパスワードを使った転生も不能。称号コンプキャラを作ろうとシリーズを追っていたプレイヤーには残念な結果となった。
  • ビショップによるアイテムの識別難度の数値がなぜか機能していない。このためレベル1のビショップでも簡単に高難度アイテムを識別できてしまう。
    • このためカルドゥの価値が下落。もっとも外伝3ではカルドゥが存在するためにビショップの存在意義が薄れていたが……

総評

一見色モノでありながら、実はオーソドックスかつ古参のWizフリーク向けの作品。
ただし難易度が低めでキャラメイクの自由度も高く、初心者入門にも適している。ジルフェバグ以外は重大なバグも無いので、結局のところ初心者でもシリーズ経験者でも遊べる安心のWizだと言える。
シナリオが中途半端でバッドエンド気味なのと、戦闘バランスの練り込みが甘い点が残念。


余談

  • 本作の没アイテムに「ハートのおまもり」という装飾品が存在し、スペシャルパワーが性転換という効果になっている。
    • アスキー版Wizでは初めてだが、性転換するアイテム自体はPCE版Wiz#1-2で先駆けて登場している。
  • 宿屋で60歳の誕生日を迎えると、特別なメッセージとともに「かんれきのほうい」という装飾品がもらえる。
  • SFC版#5とBCF(#6)からの効果音の流用が目立つ。音源そのものが変わっているために完全にイメージが変わっている効果音も存在し、BCF(#6)では「ぴょん」という投射系の呪文の効果音として使われていたものが「ぷおんぷおんぷおん」という気の抜けた効果音に変わりマウジウツ等に使われていたりする。
  • プレイヤーキャラが死亡した時の断末魔が凄惨。SFC版BCF(#6)にも断末魔はあったがそちらは力尽きて倒れるという大人しめの表現で、こちらは明らかに敵に惨殺されていると印象付けるレベルの絶叫になっている。当時は「 処刑現場から実際に録音してきたのか 」という感想も聞かれた。なお、男女どちらの断末魔も特定のイベントで再生される。
    • 首をはねられた場合は首切りの音が鳴るだけで絶叫してくれない。する暇もなかった、ということか。
    • 次作『ディンギル』では今作と同じ断末魔がリファインされて使用されている。
  • 本作はアスキー外伝シリーズで唯一サウンドトラックが発売されなかったが、代わりにドラマCDが発売している。シングルCDサイズで全三作。
  • 「ウィザードリィ・日の本異聞伝」のタイトルで本作のWindowsPC移植版と思しきソフトの発売が予定されていたが、中止になっている。
    • ゲーム本編に使われる予定だったかは不明だが、テーマソングのシングルCDが発売している。

その後の展開

  • 次作としてPSで「ウィザードリィ ディンギル」が発売された。
    • ディンギルには「外伝」と銘打たれていないものの、同じアスキー作品でシステム・主要スタッフ共にほぼ同じなうえに、本作の「転生の書」のパスワードでキャラクターを転生させられることから、ファンからは一般に外伝シリーズの一作品として認識されている。
  • その後、Sir-Tech社の崩壊に伴ないWIZの版権が乱売され、各メーカーからシステムも世界観もバラバラなWIZシリーズが乱発される事態に。
    • それに対し、外伝のスタッフは「原点回帰」を掲げ、「戦闘の監獄」「五つの試練」を開発、発売した。
+ タグ編集
  • タグ:
  • DRPG
  • Wizardry
  • アスキー

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年04月09日 10:28

*1 気絶状態にして行動不可にしつつ、ダメージに関係なくHPを一桁まで減らす状態異常

*2 アイテム自体は入手可能、ただし「落ちていたのを見つけた」と言う味気ない内容になる。

*3 「神器を奪われた勢力が心の支えを失った事で他の神器を奪いに攻め込む」といったメッセージだけが表示され、プレイヤー側の介入は不可能

*4 最短解を知っていれば階移動はいらないが…

*5 一応、ボタンの配置・色がスーパーファミコンのボタンに対応している。例として緑ボタンであるYはカラーボタンの中では左側にあるので左方向に動く

*6 転職条件のない特性値は種族基本値まで下がる。