ゴルゴ13 ファイルG13を追え
【ごるごさーてぃーん ふぁいるじーさーてぃーんをおえ】
| ジャンル | ハードボイルドアドベンチャー | 
| 対応機種 | ニンテンドーDS | 
| 発売元 | マーベラスエンターテイメント | 
| 開発元 | ガイズウェア ボトルキューブ
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| 発売日 | 2009年6月18日 | 
| 定価 | 5,229円(税込) | 
| プレイ人数 | 1人 | 
| セーブデータ | 3箇所 | 
| レーティング | CERO:C(15才以上対象) | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | ゴルゴ13初の携帯機ゲーム 主人公はゴルゴではない
 深刻なボリューム不足感
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| ゴルゴ13シリーズ | 
 
概要
説明不要の長寿劇画「ゴルゴ13」のゲーム化作品。ニンテンドーDS及び携帯機向けとしてのゴルゴ13ゲーは今現在本作のみである。
ジャンルとしてはノベルタイプの会話アドベンチャーに該当する。それに加え、おまけでミニゲームなどが付いている。
ちなみに本作はゴルゴ13(以下:ゴルゴ)が主人公ではない。ゴルゴは主に狂言回し的な配役として登場する。
キャラクターデザインは2008年に放送されていたTVアニメ版基準のものが採用されている。
キャラの会話はノンボイスだが、渋い声で定評のある千田光男氏がナレーションを演じている。
任意セーブ方式。DS本体を縦持ちで行い、すべてタッチペンで操作するプレイスタイルとなる。
ストーリー・登場人物
フリーライターである久我京平は呼び出された親友・内藤真二の家を訪れ戦慄する。そこには内藤が射殺体として息絶えていたのだ。
内藤の周辺にあったパソコンや通信機器、そして膨大なディスクの山などが徹底的に破壊されていた。
何かの陰謀によって内藤が殺害されたと確信した久我は、内藤が殺害される前日に彼から手渡されたUSBメモリを握り締める。
USBメモリのデータには解読不明な謎の暗号が残されていた。好奇心旺盛な久我は、無残にも逝ってしまった内藤の弔いを兼ねた謎の解明に乗り出した。
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主な登場人物。
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久我京平
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本作の主人公。元東洋通信社政治部勤務だった過去を持つフリーライター。
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内藤から手渡されたUSBメモリの謎を解明する為に世界各地を歩き回る。その先には危険が待ち構えているかもしれない事を承知で…。
 
 
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内藤真二
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久我の高校時代からの親友。オカルト・陰謀論好きで著名なウェブサイトを経営していた。
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天才的なパソコン知識を持っており、性格である好奇心が元で触れてはいけない陰謀に巻き込まれ殺害された。殺害前に親友であった久我にUSBメモリを託す。
 
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増子健
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外務省の総合外交政策局・安全保障政策課の一員。かつての久我の取材を通して、彼と懇意となった過去がある。
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真面目で頑固だが情に厚い性格。親身となって久我の身の危険を案じ、内藤殺害に関する情報を提供してくれる。
 
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ゴルゴ13(デューク・東郷)
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一切の情報が不明の超A級スナイパー。彼に狙われて逃れたターゲットはほぼ0%である。
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ほんの一瞬ではあるが、街中で生前の内藤と連れ歩いていた久我は通りすがりのゴルゴと遭遇している。
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その大胆不敵な犯行から内藤を殺害した犯人がゴルゴだと疑う久我だが、果たしてその真相は…?
 
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上記以外にも特定のシナリオ限定の登場人物も多数存在する。ゴルゴ以外にも原作に登場した人物が存在する。
主なルール
主なモード
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はじめから / しおりを辿る
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本作のメインモードにあたる。
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「はじめから」で新規プレイ、「しおりを辿る」で以前セーブ(しおりを挟む)したデータからのロードによる再開ができる。
 
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ゴルゴマニア
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メインモード内で特定条件を満たすと解禁されるモードの1つ。ギャラリー関係の項目が主となる。
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このモードでは以下の項目が用意されている。
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「アルバム」…メインモード内で表示されたイベントスチルを鑑賞できる。
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「音楽鑑賞」…ゲーム内で流されたBGMを鑑賞できる。
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「Gファイル」…ゴルゴがかつて標的にしたターゲット関する簡易なファイル(データベース)が鑑賞できる。原則的に本作とは無関係なファイルが多数を占める。
 
 
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ゴルトレ
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メインモード内で特定条件を満たすと解禁されるモードのもう1つ。ミニゲーム関係の項目が主となる。
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このモードでは以下の項目が用意されている。
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「ゴルゴ検定」…主に原作に関するゴルゴ13関連のクイズがプレイできる。
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「俺の後ろに立つな」…ゴルゴの背後に人が通りかかるので、背後に近づいた瞬間にタッチしていく。成功するとゴルゴのチョップが通行人に炸裂する。
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「Ace In The Hole」…ガンシューティング風のステージで張りぼて(?)の人型ターゲットを撃っていく。ターゲットの中には撃ってはいけない民間人も混ざっている。
 
 
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設定
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「BGM・効果音の音量調整」「文字速度の調整」「スキップ機能を朗読のみかフルにするかの調整」の各設定ができる。
 
メインモードのルール
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ゲームの主な流れについて。
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基本はいわゆる一般的な会話アドベンチャーでゲームが進行する。
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DSの両画面にキャラの立ち絵が表示され、画面をタッチする度にふきだしで会話が行われる。アクション要素のあるゲーム性はメインモード内では一切発生しない。
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画面下には「しおりを挟む(セーブ)」「読み返し(バックログ)」「スキップ」「手帳メモ」のアイコンがあり、それをタッチするとその機能が使用できる。
 手帳メモアイコンをタッチすると「登場人物紹介」「Gファイル」「しおりを挟む・辿る」「設定」「ゲームリセット」の各機能が使用できる。
 
 
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シナリオ分岐について。
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本作は選択肢によるシナリオ分岐・マルチエンディング方式を採用している。
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ゲーム開始時のサブタイトルは全シナリオ共通で「ファイルG13を追え」だが、その間の選択肢次第でサブタイトルが変化する。
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分岐後のシナリオは「前編・後編」の二部構成になっている。シナリオをすべて終えると、バッドエンドに陥らない限りはそのシナリオ専用の正規エンディングを迎える。
 
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選択肢やテキストスナイプ(下記)の選び方によってはバッドエンディングとなる場合がある。
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名目上はゲームオーバー扱いだが、バッドエンディングでないと出現しないイベントスチルもある。よって、あえてバッド直行のプレイを目指さないとゴルゴマニアのアルバムが完全には埋まらない。
 
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分岐の変化を表で示すと以下の通りとなる。
 
| ファイルG13を追え | ⇒ | 暗黒の野望(前編・後編) | ⇒ | 正規エンディング1 | 
| ⇒ | 電子の墓場(前編・後編) | ⇒ | 正規エンディング2 | 
| ⇒ | ペナルティ・エリア(前編・後編) | ⇒ | 正規エンディング3 | 
| ⇒ | 12□14 エクセプトサーティーン(前編・後編) | ⇒ | 正規エンディング4 | 
 
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テキストスナイプについて。
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キャラの会話中のふきだしには時折「テキストスナイプ」という赤い文字が表示される場面がある。
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テキストスナイプをタッチすると銃声と共にヒビ割れする演出が発生する。また、テキストスナイプを無視して次の会話に進む事もできる。
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テキストスナイプをタッチするか否かによっては、その後のキャラの会話に変化が生じてくる。タッチ状況によってはシナリオ分岐などに影響を及ぼす事もある。
 
 
評価点
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シナリオそのものの評価は高め。
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尺不足や早足展開はいかんともし難いが、シナリオ単体としてのクオリティはなかなか高い。
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ちゃんと原作独特のハードボイルドな雰囲気は再現されており、(問題点も少なくないが)特にシナリオが破綻している部分は見受けられない。
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そもそも原作でもゴルゴは狂言廻しな事が多い。なにせ初期やアクション回を除き、劇中でゴルゴの出番は少なく(そのアクション回も後期になるとほとんど無い)、依頼者やターゲットが話を進める事が多いのだから。
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また、本作の設定はゴルゴの「無敵の主人公」イメージを保つのにも役立っている。プレイヤーがゴルゴを操作するゲームではゴルゴが敗北する事も日常茶飯事なので。なお別のゴルゴゲーでは、ゲームオーバーシーンを「プレイヤーはゴルゴの名を騙る偽者だったとして本物に始末される」と言うものにして、「ゴルゴは依頼に失敗した事は無い」と言うイメージを保っている。
 
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ストーリー描写は極力分かりやすい内容であり、原作を知らなくとも「ゴルゴはとにかく凄い腕前の暗殺者」程度の意識をしておけば理解できるものとなっている。
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ただし、原作の374話『シャッター』はこのゲームのシナリオにかなり近い作品であり、またゲーム内で『スティール・メイト』『棺に誓いを』等の原作でも使用されたトリックが多数使われている。原作を全て読んでいる人はかなり既視感を覚えるかもしれない。
 
 
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グラフィック・BGM周りのクオリティも高め。
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アダルティで渋いキャラクターデザインに関しては概ね好評価である。
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流石に行為中の描写は映されないが、何と久我とヒロインとのベッドシーン(事後)がある。これがなかなかエロかったりする。
 本作のCEROにおけるコンテンツアイコンに「セクシャル」が指定されているはこのシーンの為だろう。
 しかし、元となる原作の関係上、流血・殺害といった残酷シーンが多いのに「暴力」「犯罪」アイコンは何故か指定されていない。
 
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BGMに関してもゴルゴ13らしい渋い楽曲となっている。
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曲数は17曲とあまり多くないが、酒を片手に優雅な気分で聴いていたい楽曲である。
 
 
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システム周りの環境は良い部類。
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この手のジャンルにはあるべき機能は大方搭載されている。
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スキップ機能を使用すれば、周回プレイ時にて朗読会話をスキップできて余計な手間が省ける。読み返しで見逃した会話に悩まされる心配もない(但し、一部読み返せない会話もある)
 
 
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ファンにとっては嬉しいサービス。
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千田光男氏によるナレーションボイスが渋く、かっこよく、ゴルゴの世界に合っている。
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ゲーム全般における一部分しか喋らないものの、千田ボイスによる語り口は素敵である。なお、千田氏はTVアニメ版ゴルゴ13でも次回予告及び、準レギュラーのデイブ役を演じている。
 
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ゴルトレにおけるゴルゴ検定の問題がかなりマニアックである。
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なんと、さいとうプロダクション監修による問題作成であり、ディープなゴルゴマニアですらも「分かるかそんなの」と突っ込みそうな位の難問もある。
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しかし、問題数が400問と多くない為、大方プレイすると答えが暗記できてしまう難点もある。
 
 
賛否両論点
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主人公がゴルゴではない。
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概要などの項でも述べた通り、本作の主人公はゴルゴではなく久我京平その人である。
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メインモードは終始久我視線でシナリオが進められ、途中で他キャラの主観視線に切り替わる事は一切ない。
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久我は特別な戦闘訓練の経験も裏社会の関わりもない、ごく一般の民間人である。よって、彼は陰謀の黒幕に武力や裏権力で対抗できるスキルは持ち合わせていない。
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実際、「舞台先で久我が陰謀に関する手がかりを見つける為にシナリオ専属キャラと会話のやり取りをした後、彼の命を狙う黒幕と遭遇してしまい命の危険を察して逃走する」
 という非戦闘描写が大半を占め、主人公(久我)に強くてかっこいいヒーロー的な魅力を感じさせる要素は皆無である。
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狂言回し役であるゴルゴはあくまでも「偶発的に久我に関わった一員」に過ぎない。
 すなわち、久我視線でシナリオが進められる本作においては、ゴルゴがスナイパーとして活躍する描写は他のゴルゴ13ゲーに比べると大分控えめである。
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ゴルゴは決して正義の味方ではない。「ルール」に背いた者を厳格に制裁する。それがたとえバッドエンディングにおける久我当人であっても…。
 
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もっともこれはこれで原作の雰囲気を保っている。
 
問題点
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深刻なボリューム不足感。
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フルプライス作品としては明らかにボリュームが薄く、すぐにゲームを制覇できてしまう。
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メインモードのシナリオ分岐は4通りしかなく、各シナリオのプレイ時間に関しても(バッドエンディングの寄り道を考慮しても)大体1時間前後で終わってしまう尺の短さである。
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よって、本作におけるメインモードの推定プレイ時間は4時間程度という計算となる。シナリオ分岐のフラグ調整に迷ったとしてもプラス1時間位だろうか。
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メインモード以外ではゴルトレ位しか遊べるモードがない。ゴルトレに関しても所詮は軽いミニゲーム集なので、流石に連続でプレイすると早期から飽きが回ってくる。
 
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素材に関する問題点。
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キャラの立ち絵・表情の素材バリエーションがあまり多くない故に、同じ素材が定期的に使い回される。場面によっては明らかに状況と合っていない素材の使われ方もある。
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イベントスチルがすべてのシナリオを制覇しても30枚しかなく、この手のゲームにしては物足りない。
 
 
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メインモードのストーリー展開が早足気味。
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各シナリオにおける話の流れがとんとん拍子で進みすぎる節がある。
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大体どのシナリオも「久我が舞台に到着し、専属のキャラとのやり取りを行う ⇒ 黒幕が現れる ⇒ ゴルゴが黒幕を倒す ⇒ エンディング」というアップテンポなテンプレ展開となっている。
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上記のプレイ時間の件も相まって、主要・シナリオ専属キャラの存在感を引き立てるインパクトが薄いままに正規エンディングを迎えてしまうあっけなさは否めない。
 
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やっつけ臭いバッドエンディング。
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バッドエンディングは正規のそれに比べると手短に済まされる事が多い。それ自体は同系統のジャンルでもありがちだが、「何故そうなる」と疑問を抱かずにはいられない終結が幾つかある。
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とあるバッドエンディングは「久我がビールを飲みすぎた」「何の脈絡もなく登場した女性に一目ぼれして夫婦関係になった」という突っ込みどころ満載のトンデモ終結がある。
 
 
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人物描写に関しての原作との相違点
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原作にも登場したあるキャラクターが久我にゴルゴの似顔絵を描いて渡すという行為をする。こんなことをすればゴルゴから死の制裁を受ける可能性が極めて高い。原作で印象的なキャラだっただけにこの描写は痛い。
 
総評
とにかくボリューム不足感が惜しまれる作品。ゴルゴ13のキャラゲー及びノベルゲームとしての出来は良いので、通なゴルゴマニアも納得できる範囲のボリュームがあれば良かったのだが…。
主人公がゴルゴではないので、「ゴルゴを操ってA級スナイパー気分に浸りたい」目的で本作を購入するのはあまりお勧めできない点に注意されたし。
余談
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後に原作の劇画にて『G13ファイル』という題名の作品が登場した。内容もインターネット内に存在するゴルゴ13に関する機密データを巡る攻防であり、この作品にかなり近い。
最終更新:2022年11月27日 11:27