本記事では、アーケードゲーム『ゴルゴ13』と、続編(バージョンアップ版)の『奇跡の弾道』『銃声の鎮魂歌』について扱います。
また、混乱を避けるため作品名を『ゴルゴ13』、キャラクターとしての名を『ゴルゴ』で統一しています。
ゴルゴ13
【ごるごさーてぃーん】
| ジャンル | ガンシューティング |  | 
| 対応機種 | アーケード | 
| 使用基板 | SYSTEM12 | 
| 販売元 | ナムコ | 
| 開発元 | ライジング エイティング
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| 稼働開始日 | 無印 | 1999年 | 
| 奇跡 | 2000年11月 | 
| 銃声 | 2001年 | 
| 判定 | 全作 | スルメゲー | 
| ゲームバランスが不安定 | 
| ポイント | 細部にまで徹底された原作愛 キャラゲーとしては秀逸
 だからこその高々難易度
 実力次第で原作を追体験可能
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| ゴルゴ13シリーズ | 
 
概要
1968年に連載が始まり、50年以上経った現在も連載中である、さいとう・たかをによる劇画アクション『ゴルゴ13』を題材としたガンシューティング。
ゴルゴはしっかりした理由と依頼金があればどのような依頼でも受ける超A級の狙撃手で、依頼の多くは要人の暗殺だが、中には「無実の証明のため耳のピアスのみを狙撃」だの「核による自動報復装置が暴走した衛星を破壊するため宇宙空間で狙撃」などといった、とんでもないものもあり、それすらも完遂していく。
ナムコの『ガンバレット』シリーズのように複数のミッションを次々とクリアしていくルールを取っているが、最大の特徴は劇中でゴルゴが愛用していたM16アサルトライフル型のコントローラーを用い、スコープを覗いてプレイすること。
なおスコープに関しては、米国タスコ社製の実銃で用いられているもので、スコープから顔の位置が近過ぎても遠過ぎても画面が見えなくなるよう設計されている。覗くとセンサーが反応して狙撃ができる画面になり、顔を離すと遠景が見える画面になる。
特徴
ゲームの進行順
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【1】規定のコインを入れる。フリープレイの場合はスタートボタンを押す。
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ここでスタートボタンを押す前に、隠しコマンドを入力することで、後述する隠しモードでゲームを開始することができる。
 
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【2】照準のリセットを目的とした照準テスト(試し撃ち)が入る。的は用意されているが、狙わなくても弾が切れたら、原作のコマ演出の後にこのモードは終了となる。
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【3】ステージセレクト。プレイしたいステージを照準に合わせてトリガーを引いて決定。
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【4】原作漫画のコマを活用したスライドショーストーリーか流れる。トリガーを引けば次のコマへ進み、スタートボタンを押せばミッション説明へとスキップできる。
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【5】ゲーム開始。ターゲットを仕留める、弾が切れる、時間切れになったら、成否に応じた演出が入る。
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【6】リザルト画面。ここで信頼度がゼロにならなかった場合は再び【3】のステージセレクトへ、なった場合はコンティニュー画面となる。
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【7】全ステージ達成するか、コンティニューしなかった場合は、最終スコアが表示されてゲーム終了。
    
    
        | + | 隠しモードの詳細 | 
ゴルゴモード
 
『奇跡の弾道』より追加された隠しモード。入る方法は『奇跡の弾道(奇跡)』と『銃声の鎮魂歌(銃声)』で異なるため、以下に記す。ホームページでは『銃声』のみ記載されている。コマンド入力に失敗した場合の再入力は不可能で、ゴルゴモードのコマンド成立後、そのクレジットでのプレイは強制的にゴルゴモードでのプレイとなり、通常モードへ戻すことができなくなる。コマンド入力に成功すれば、タイトルロゴに金のグラデーションが掛かるようになる。
『奇跡』では「クレジット成立後6秒以内に「ゴ→ノ→レ→ゴ→1→3」の順にタイトルロゴを射撃」してコマンド入力する。成功すれば効果音と共にタイトルロゴに金のグラデーションが掛かり入力完了となる。
『銃声』では「クレジット成立後に「3→1→ゴ→レ→ノ→ゴ」の順にタイトルロゴを射撃」して『ゼビウス』のコイン投入音が流れたのち、ゲームスタート曲及びメインテーマが流れる。その後画面上から同作に登場する破壊不可能の板状キャラクター「バキュラ」が登場、それを連射して破壊し、その後「NAMCO、8ingロゴの間に」出現した1UPキャラ「スペシャルフラッグ」を撃ち、1UP音と共にコマンド成立という、ナムコらしいもの。ちなみにバキュラは256発ではなく13発で破壊でき、銃声とともに破壊される。
モード名からも想像が付く通り、原作に恥じないレベルで難易度も通常モードに輪をかけて極悪。全てのミッションの中からルーレット演出の後にランダムでステージが選択される上、開始前のストーリーやミッション説明が省かれる。標的が出る位置を覚えておいて開始前の説明やコマを目印にしてライフルを固定し狙い撃つという方法は当然できなくなるので、それだけでも凄腕に等しいプレイを要求される。更に全ミッションの内部ランクも最高値に固定されるうえに、コンティニュー不可能というまさに本物のゴルゴ13を完全再現した超絶難度となっている。だが、最も点数が稼げるのもこのモードなので、ハイスコアラーなら挑むしかない。実際、公式サイトで行われたランキングではこのモードで高得点を叩き出した凄腕のプレイヤー、さながらリアル・ゴルゴが多数いた。
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本作独自の特徴
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ただ狙撃するだけではなく、次々と現れる敵を連射して倒したり、標的が誰なのかを見極めて撃つなどミッションのバリエーションも豊富。
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ミッション失敗になる条件は「時間切れ」「弾切れ」「標的を撃ち損じる」のいずれか。こちらに攻撃してくる敵はいるがただの演出。
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ミッションの数は全部で20。5ステージごとに4列に区切られていて、5つのミッションから1つを選択する方式。
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ミッションごとのスコアは1000点満点で判定されるが、累計スコアは「スイス銀行残高」として記録される。ただし満点を出すのは至難の業。
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各ミッション開始前に、ストーリームービーが挿入される。漫画のコマそのものを切り抜いて使っており、ゲーム用にアレンジが加わっているが、ゴルゴ13らしさの再現度としても上出来である。
評価点
意欲的なゲームデザイン
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アーケードでの狙撃をメインとしたガンシューティング。意欲的かつオリジナリティ溢れる作品である。
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余談だが同時期にコナミから狙撃ガンシューティング『サイレントスコープ』が稼働している(稼働時期はあちらの方が先)。
 
緻密な原作愛と再現度
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キャラゲーとしての出来は良作レベルで、ファンなら納得の原作再現度である。製作者側に熱烈なファンがいるのが容易に想像できる。
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前述の通りミッション開始前のムービーやスコア、細かな部分までゴルゴらしさを演出している。まったく違う話のコマが表示されたり、いくつもの作品から切り抜きして巧妙につなぎ合わせているミッションもある。ゴルゴファンならどの話から流用したのかを探してみるのも面白いかも。
 
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コンティニュー画面も独特で、「空港らしき場所でプレイヤーが本物のゴルゴ13から狙撃される」というような感じの構成になっている。これは
ゴルゴは自分の名を騙る者を許さず、偽物に制裁を与えるシーンが何度もある
ため、味のある原作再現とも言える。
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続編では「ゴルゴが敵に捕まり拷問を受けているシーン(奇跡の弾道)」/「ピンチに遭遇してしまう(銃声の鎮魂歌)」コマの切り抜きがカウントとともに表示されるという『ルパン三世 THE SHOOTING』のような構成になった。なおコンティニューした場合、ゴルゴが敵兵に反撃し倒す/ピンチから脱出するシーンのコマが入る芸の細かい部分も。敵兵を倒して/ピンチから脱出し、ミッションに復帰したものと考えればいいのだろうか?いずれにせよ再起を促し奮い立たせる熱いシーンとなっている。
 
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ちなみに女性関係などのお色気シーンに関しては、一切のカケラも無いのでそちらへの期待は寄せぬよう。FC版とはえらい違いである。一方で射殺されるシーンや死体のコマ等のグロいコマは白黒ながらも当然の如く出るため、徹底的に硬派さを全面に押し出してることが窺える。
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また、後述するように何名かの依頼人が変更されている中、変更されなかったキャラとしてヒュームの他にデイブやマークも登場している。
ミッション題材の秀逸さ
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ミッションの題材も素晴らしい選出で内容の再現度も極めて高い。ゴルゴの狙撃の感覚を十二分に堪能できる。後述するがこれが問題点と表裏一体となってしまうのだが…。
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ミッションの題材となったエピソードはいずれも評価の高い名作及びスーパーショットが行われている作品から選出されている。ここでは稼働後に出版された公式ファンブック『ゴルゴ学』で行われた総合人気投票とベストスナイプ投票で上位にランクインした作品の多くが採用されていた。また後にアニメ化された作品も多い。このことから、ファンなら喜ぶ非常にわかっているラインナップ。
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『スーパー・スターの共演』『G線上の狙撃』『死闘ダイヤ・カット・ダイヤ』『36000秒分の1秒』『スティンガー』『呉越同舟』『アッシュ最良の日』『幻のジゼル』など。ヒュームが依頼人となる『薔薇の下で』があるのもファンには嬉しい点。
 
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内部ランク変動による難易度での標的の挙動の変化や、狙撃を失敗した際のリアクションなど、作り込みがなかなか細かい。
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犬を頼りに標的を見抜いて狙撃するミッションで犬を撃つことができるのは公式サイトでネタにされた。当然ミッション失敗になるのでマネしないように。
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また、このミッションでは標的は顔を整形したマフィアという設定なのだが低難度だとマフィアも他の人物も近寄ってきた犬に親しげに接する。みんな犬好きなのだろうか。高難度だとこちらの意図に気付くらしく、犬が特定した瞬間に逃げるように動く。
 
 
細かいところも原作尊重仕様
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獲得スコアを「報酬」、累計スコアを「スイス銀行残高」と称する辺りもポイント。単位は$である。
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一件の依頼(ミッション)で受け取る報酬は精度ポイントが高く、なお且つ早い時間で狙撃に成功した場合、150万ドル~200万ドルに達するが、ギリギリでのクリアだと数10万ドルまで落ち込む。ゴルゴへ支払う報酬としては適切な額である。ちなみに、依頼失敗すると失敗の度合いにもよるが基本的に数千ドル程度といった経費相当の額しか振り込まれない。致命傷ではないが一応命中した、信頼度低下の低めのパターンでは数万ドル振り込まれる場合もある。
 
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弾切れ、または時間切れになると「ACCIDENTAL」と表示される。これはゴルゴの狙撃失敗の代表例からきている。
賛否両論点
一部の原作改変
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ゲームの都合上やむを得ない面もあるが、ストーリーや設定は大幅に改変、省略されている。
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例えば、ソリストは企業家に、ショービジネスの帝王は情報屋に、実在の国名は一切登場しないなど。キャラクターの名前や設定も変更されている。
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中には狙撃内容が異なるものも。例えば、狙撃手の指を撃つことで狙撃位置をずらし、依頼人のすぐ後ろのターゲットを狙撃させるのを、狙撃手そのものを撃ち、狙撃を阻止する。スティンガーミサイルのシーカー部を撃ち抜き、追跡能力を無力化するのを、何発も銃弾を撃ち込みスティンガーミサイル自体を破壊する。『メジャー・オペレーション』と『バトル オブ サンズ』が題材の『G暗殺計画』はコマを流用しただけでほとんどオリジナルの内容となっている。
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ストーリーは「バスで移動中にゲリラ部隊の襲撃を受けたゴルゴが報復のためゲリラ部隊を殲滅、逃げだした司令官をヘリを撃ち落として仕留める。」というものだが、冒頭の襲撃部分が『メジャー・オペレーション』冒頭の米軍の攻撃、狙撃され驚く司令官の顔アップが『ヘッドハンター』の交通事故と言う、ゴルゴと無関係の場面、最後のヘリ爆発シーンが『バトル オブ サンズ』の爆弾によるヘリ撃墜コマ。元の話を知っていると少し戸惑うかもしれない。
 
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ミッション途中で狙撃対象が変更される様な事は無く、依頼に虚偽や罠はない。『傑作・アサルトライフル』が題材の『砂塵舞う大地』ではラリーカーのタイヤを狙撃すればそれでミッションクリアになる。サビーヌ兄弟との死闘を予想したプレイヤーには肩透かしとなるかもしれない。
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このせいか依頼人の裏切りがある『シンプソン走路』原作の『クーデター前夜』が初代では逆にややこしくなってしまい、原作の「依頼人が標的の将校(弟)をかばってすり替わる」という展開がカットされ「標的(一般兵の黄色い軍服)の傍に何か目立つ青い士官服の男がいる」という原作を知らないとこいつ誰?な展開になっていた。もちろん開始前の標的表示はちゃんと黄色い軍服の男なので間違える心配はないが、スタッフもややこしいと思ったのか2作目では顔が描き直され「黄服→ただの一般兵士、青服→標的の将校」になっている。
 
 
コマの使い回しとその他
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原作のコマの切り抜きをそのまま使っているが故に、心臓を撃ったのに額が撃ち抜かれるコマが表示されるという事態に陥るケースも。
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コアなファンなら気付くであろうツッコミ所がある。例を挙げると、『見えない軍隊』が題材の『最大有効射程』というミッションでは敵部隊の中に何故か燐隊長が居るなど。
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説明すると原作の『白龍昇り立つ』に登場する「極地法など登山家の恥だっ!!」の台詞で有名なキャラで、クリア後に表示されるカットインの中にいる。おそらく本来戦う敵部隊と服装が似ているので数合わせに流用したと思われる。
 
問題点
『ゴルゴ13 』らしさを追求しすぎたことが裏目に出たのか、総合的な難易度は非常に高い。
単純な狙撃難易度の高さもさることながら、その他過酷過ぎる仕様が存在する。
徹底された原作再現による高難易度ぶり
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大抵のミッションが一発勝負。ミスショットしてしまえば終わり。
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標的が小さく、当たり判定が非常にシビア。ゴルゴが行う狙撃なので当然と言えば当然なのだが…。
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標的が人間の場合、命中しても頭部か心臓(に近い胴体部)に当たらないと失敗扱いになってしまう。頭の方が高得点であり、命中さえすれば得点は入る。
 
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標的が動き続ける、または画面が揺れるミッションは鬼門。前述のスコープの狂いが酷い筺体では安定したクリアは困難でほとんど運ゲーとなる。狂いまでもを計算に入れた未来予測射撃なんて並のプレイヤーに出来るはずがない。
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ライフ制ではなく「信頼度制」。ミッションに失敗すると下がり成功すると回復する。上がり幅(落ちた信頼度の回復量)は成果によって10%~30%と低いが、下がり幅は失敗の度合いにもよるが基本的に50%~80%と、下がり幅の方が極めて大きい。標的に命中せず、アクシデンタル扱いになった場合だと80%は確実である。当然ながら、信頼度がゼロになるとゲームオーバーとなるので、最悪2ステージでゲームオーバーとなってしまう。超A級スナイパーたるもの、失敗は許されないのだ。無論、信頼度は初期値である100%より上には行かない。
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本作は一部のSTGの様な内部ランクがあり、連続で依頼を成功して行くとゲームランクが上がる。
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ランクが上がるとミッションの制限時間がどんどん短くなり、一部ミッションでは狙撃対象や護衛の行動などが変化してより当て辛くなり、失敗時の信頼度ペナルティも拡大していき、命中して得点は入ったものの失敗と判定された場合でも「80%減少」となる。一発勝負の多い仕様とランク上昇のせいで実際の難易度はとんでもない事になる。ノーミスで進めていくと、後半のミッションではおおよそ時間切れの0.3秒以内にターゲットを発見・狙撃を決めなければならなくなるなど、難易度が凄まじい事に…。
 
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完全に初見殺しとしか思えないミッションもある。その反面、内容を理解してしまえば簡単なものも含まれるが。
    
    
        | + | その例 | 
| トローリング・ボート | 標的が寝そべっているため心臓を狙うと腕や肩に命中してしまう。船からの狙撃なので画面が揺れているのも厄介な点。 |  
| 暗殺の庭園 | 候補の4人の中からランダムに設定される標的を見抜いて狙撃するというミッションなのだが、とにかく素早く狙いを定める技術を要求される。 |  
| 独房という名の密室 | 回転扉の隙間を縫って狙撃するのだが、チャンスが二回しかなく、原作を読んでいなければ間違えて隣に立つ接見者を撃ってしまいがち。 |  
| マフィアの履く靴 | ハイヒールの踵を撃ち抜くのだが標的が歩いているため屈指の難度。事前のミッションで失敗しているとランクが下がって立ち止まってくれるのが救い。 |  
| 殺人教団の夜 | 標的が誰なのか、どこに居るのかまるで見当がつかず、初見ではまずクリア不可能のミッション。照明弾を頼りに狙撃するため画面がチカチカしているのも厄介。 |  
| 防弾の城 | 弾数が「無制限」と表示されるが、実際には防弾ガラスを連射して破った後、標的に対しての一発を外すとその時点で狙撃失敗になる。ボスミッション同様、前半後半の二段階方式と思った方が良い。 |  
| オーバーロード | 威嚇射撃で標的を脅して走らせて心臓発作を起こさせて殺害するというミッションだが、命中スレスレの威嚇射撃を連射しなければならない。当然標的本人に当ててしまうと誤射となり失敗となってしまう。 |  
| チャイナ・シンドローム | ランダムである上「写真を頼りに狙撃」としか説明されず、おまけに視界も悪い為、どこを撃てばいいのか判り難い。パターンは数パターンと決まっており、ターゲットも動かず画面揺れも一切ないのだが....。 |  
いずれもゴルゴが行う狙撃、ゴルゴらしい厳格さを再現したが故の難易度である。
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補足
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フォローすると難易度が高いのは確かだがまったく手が出ないような壊れた難易度というわけでもない。
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失敗したら次のミッションは内部ランク低下によって難易度が下がるし、比較的簡単にクリアできるミッションもある。
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また高得点を狙うと難しいが、クリアするだけなら簡単な方法があるというミッションも存在する。弾数が無制限なのをいい事に当たるまで撃ちまくる、標的が盾にしている人物を殺して体を晒すまで待つなど、ゴルゴらしくないやり方になってしまうが。
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そもそも実際の狙撃ではトリガーを引いてから着弾までにかなりのラグがあるため、先読みを要求される。M16の銃口初速は公称975m/秒、仮に公称有効射程の半分の250mで狙撃したとしても、着弾まで約0.25秒かかる。それ以外にも重力や風の影響も加味しなければならず、それらも忠実に再現されていたら確実にクソゲー無理ゲーレベルの超高難易度になってしまうことは確かである。
 
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最終ステージ以外は失敗してもコンティニューで先に進めるので、金さえつぎ込めばいつかはクリア出来るかもしれない。これは失敗によるペナルティで信頼度がゼロにならなかった場合、失敗したミッションは選択画面から再度選ぶことができなくなるシステムになっているため。
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何度も挑戦すればコツが掴めるはず。徹底的にやり込めば攻略法を確立させることも不可能ではない。
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この作品をクリアするため及び楽しむためには不屈の精神力と何度も挑戦するための資金が必要になる。
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よって、原作の言葉を借りるなら「10%の才能と20%の努力、そして30%の根気強さ、残る40%はカネ」と言ったところか。
 
一部不明瞭な原作改変
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全体的な再現度は秀逸だが、改変のし過ぎなミッションなどをはじめ、一部問題のある点も存在する。
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『思い出のバイオリン』
 元ネタと思われる『G線上の狙撃』同様、バイオリンの弦を撃ち抜いて切断する、という点は同じだが、原作では依頼主はソリストで演奏中に弦が切れて醜態を晒してしまい腹いせにライバルにも同じ目に遭わせるために依頼しているのだが、ゲームでは形見のバイオリンが借金のカタにとられてしまい他人に弾かれるのが我慢ならないという理由で依頼をしてくる。ゴルゴに依頼できる金があるなら普通に取り返せと言いたくなる。任務が成功してもバイオリンが返ってくる描写も一切ない。タイトルの『思い出のバイオリン』というのもゴルゴ13らしくない。
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強敵との死闘というミッションが『バイオニック・ソルジャー』くらいしかない。このミッションには、第三弾のエンディングでは『鬼畜の宴』のスパルタカス、『落日の死影』のAX-3、『海に向かうエバ』のエバ、『テレパス』のアンナ等が登場する。出演させられなかった制作者の未練だろうか?
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もう一つ謎な改変として「防弾ガラスを連射で撃ちぬく」ミッション『防弾の城』のストーリーが、なぜか原作で同じネタをやっていた『動作4/24』ではなく、激しいビル風をぬって狙撃、それもストーリーにはほぼかかわらず、最後に黒幕が報復されるだけのシーンをやっている『ブラック・ジャイアント伝説』を元にしたムービーを使用。なぜわざわざ違う話を…
 
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上記は原作を読んでないとわからないものであるため、そうでないユーザーからすれば流せる部類であるのが幸いか。
筐体関連
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稼働から時間が経つ事でスコープに狂いが生じてしまう。微差と言っていい僅かなズレでもこのゲームではプレイに支障をきたす。これが非常に厄介でこのゲームを鬼畜の難易度にしている大きな要因であり、元々の難易度も高い上に運ゲーの要素が加わってしまう。
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前述のスコープも含めたライフルコントローラーのメンテがかなり難しいらしい。調整がガタガタな台だとさらに難易度が上がる。現在ではもはやしっかりしたメンテがなされている筺体は稀だろう。
 
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稼働当初から、毎日開店前に店員が設定でスコープの微調整を行っても、夕方にはズレてしまうなんてのはザラ。劣化してくるとズレ始める早さはさらに増す。設定画面では店員がスコープを覗いて画面上の決められたいくつかの固定目標を順番に全て超正確に撃つ必要があり、一発でも失敗するとやり直し。店員の銃の腕前とスコープの覗き方のクセがモロに影響してしまう。
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本作はゲーム開始時にゴルゴが射撃場で人型の的を相手に銃のテストをするが、その的を設定画面同様の固定目標の位置にし、プレイヤーがなるべくど真ん中を撃つ事で毎ゲームごとに補正できる内容にするか、同社の『タイムクライシス』シリーズみたいに、ゲーム開始時に補正モードを選択できるようにするべきであった。
 
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現在では修理困難なレベルに達してしまったらしく、レゲーを大量に並べている愛知県の天野ゲーム博物館の設置筐体も、一般的な修理屋から「うちでは修理不能なんだけどいる?」というオファーを受けて引き取り、店長が個人でレストアした物である。レトロ物にはありがちだが、動いてる筐体を見つけたらプレイしないと次が無い可能性がある。
総評
キャラゲーとしては合格だが難易度が高過ぎた、というよりキャラゲーとして合格だったからこそ難易度が高くなりすぎたといったところであろう。
題材がゴルゴ13だから仕方ないのかもしれないが、流石に原作再現をゲームバランスに直結させ過ぎな感はどうしても否めない。
ただし、難易度こそ高いが決して理不尽な域という訳ではなく、ミッションをクリアできる腕さえあればゴルゴの狙撃の疑似体験が十分に堪能できる。本気で挑むのなら甘えが許されぬ仕様と高難度故に、一つのミッションごとの緊張感とプレッシャーは半端ではなく、そしてクリアした際の解放感、喜びもひとしおである。
原作ファンならずとも、原発事故を食い止めるべく原子炉内で狙撃を行う『チャイナ・シンドローム』や超人兵士との壮絶な死闘を繰り広げる『血塗られた遺伝子』をクリアした喜びと感動、そして達成感は言い尽くせないものがある。
そして、他に類を見ないゲームであること、原作に対する愛と敬意が強く感じられる作品なのも確かで、そのあたりは十分評価すべきところである。
原作再現度を少々犠牲にしてでも弾数や時間、信頼度ペナルティや当たり判定の緩和や、初心者向けのEASYモードやチュートリアルの選択実装などをしていれば、もっと違う評価になったかもしれない。
原作の存在と秀逸な原作再現度、独自性の強い内容に惚れ込み、高難度に挑むプレイヤーも存在する。二度もバージョンアップ版が出たのがその証拠だろう。そういう意味でも『北斗』に近い部類のゲームと言える。
概要のとおり『ゴルゴ13』はさいとう・たかお氏が逝去した今も絶賛連載中の作品。もしかしたら後継タイトルが制作されることもありえるかもしれない。
続編(バージョンアップ版)
『ゴルゴ13 奇跡の弾道』と『ゴルゴ13 銃声の鎮魂歌』について
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基板に倍精度演算モジュールを導入し、銃の精度を大幅にアップしたと公式サイトで語られている。
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全体的に難易度は上がっているが調整はされており、序盤に選べるミッションは簡単なものが多く、弾数が無制限のミッションが多い。少なくともあっという間にゲームオーバーになるという点については配慮がなされた。
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一部のミッションで「ミッションの選択順やミッション開始前にプレイヤーの狙っている位置に応じてターゲットの出現する位置や挙動が変化する」という厄介な仕様が加わっており、覚えゲーがし難くなっている。
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『奇跡の弾道』では20ステージ中、半数が新規ステージに差替えられ、ミッションの題材は『臆病者に死を』『ノー・リレーション』『顔のない逃亡者』『覚醒・クーデターの謎』『マイアミの奇跡』『バイオニック・ソルジャー』『2万5千年の荒野』『死の翼ふれるべし』『傑作・アサルトライフル』『誇り高き葡萄酒』等、やはり名作揃いのわかっているラインナップ。前作より続投した10ミッションにも変更点がある。
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『銃声の鎮魂歌』では、20ステージ中半数が再度新規ステージになり、残りの半数は前2作から人気のミッションが選抜された「ベストセレクション」という形で再録されている。これら再録分のステージについても依頼内容やシチュエーション等に変更が加えられている。
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また、前作まで最終ステージのみだった2部構成のミッションが通常ミッションに追加された。地雷を狙撃して処理した後に警備隊を殲滅するなど。また、ミッションの最中にカットインが入るミッションもある。(例・敵がドーピングをする、標高の高い場所に誘い込んで銃の射程を伸ばしたのか、と驚く敵の台詞など。テンポが良く演出としていい。)
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あえて言うと、ラストミッションの「護衛狙撃隊」が手ごたえはともかく盛り上がり的に微妙な所がある。
 ミッション自体の難易度は高く「標的の富豪ヒルを守る護衛狙撃手3人を1人ずつ撃破→ヒル本人を狙撃」で4発で4人を仕留めないといけない、つまりミスショットしたら事実上失敗になるという物なのだが、形の上とはいえ、こちらに銃を向ける護衛3人を仕留めると、ゴルゴに気が付いたヒルが
逃げようがないと諦めて窓のそばで棒立ちで待っている
。一応最後のヒルの喰らい判定自体はかなり小さく、難易度自体は高い。さすがにラスボスに当たる相手が無抵抗というのはいかがなものだろうか…。なお、原作「偽りの五星紅旗」でも標的の富豪は覚悟を決めてはいるが、この話ではそもそも狙撃手たちは護衛どころかゴルゴ同様に標的の富豪暗殺に来た別勢力のエージェントであった。
 
 
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続編では公式サイトに最終ステージを除く全てのミッションの解説と攻略指南を載せている。高難度をナムコも危惧したのだろう。
余談
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原作の『ゴルゴ13』にこのゲーム(らしき筺体)が登場している。
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登場するのはSPコミックス151巻収録、文庫版127巻収録の502話『爆弾魔』。舞台は名古屋港で、依頼を受けたゴルゴが要人の暗殺を阻止すべく爆弾を仕掛けたテロリストを狙撃するというストーリー。筺体はリアリティを追求した本物志向で迫力のある大きな銃声がすると語られており、ゴルゴは狙撃する場所の近くにあるゲームセンターにあらかじめロケテとして筺体を設置しておく事によって、ゲームのSEの銃声によって実際の狙撃の銃声が怪しまれないようにカムフラージュした。
 
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3作目『銃声の鎮魂歌』はライジングが最後に手がけたゲームとなった。
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ただしライジングブランドの名が冠された最後のゲームは2作目『奇跡の弾道』であり、稼働直前の2000年10月1日にライジングはエイティングに吸収合併された。
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この為、『銃声の鎮魂歌』まで実際の開発は元々ライジングが担当していたものの、発売版のクレジットではエイティングのみの表記となっている。尚、同作のみ基板がナムコのPS互換基板であるSYSTEM12をベースにした廉価基板である「SYSTEM10」に変わっている。
 
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実は本作の筐体を流用したコンバート・後継作として『エイリアンスナイパー』というゲームが開発されており、実物も当時のショーで出展されていたが(参考は「こちら」※詳細な筐体写真)、こちらは残念ながら開発中止となり、お蔵入りとなった。
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開発経緯
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流行ったゲームの二匹目のどじょうが出るのはいつの時代もあったが、本作もそんなゲームの一つであり、コナミの『サイレントスコープ』を見た中村雅哉社長が『うちでもガンもの作れ』と命令したのが始まりと、インタビュー記事で小山順一朗氏が述べている。
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こちらが一発勝負のスリリングなゲームなのに対し、『サイレントスコープ』は長距離射撃で連続で撃っていくと差別化されている。ゲーム内容に合わせて、ゴルゴはゲーム画面が拡大するのに対し、『サイレントスコープ』はスコープ内に小さなモニターがあり、デュアルモニタ仕様。
 
 
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大阪・新世界にある大型射的場「秘宝館本店」と2階にあるレトロゲーセン「超ザリガニ」がゴルゴ13とのコラボを実現している。もちろん、さいとうプロ公認。
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超ザリガニには本作の筐体が四台も置いてあり、更には今回のコラボのために制作されたマンガまで置いてあると言う徹底ぶり。ゴルゴ13公式ゲーセンの名は伊達ではないと言う事か。もし行く機会があれば(コロナ禍の現状に気を付けつつ)、ゴルゴを心行くまで堪能してみるのもいいだろう。
 
最終更新:2025年01月25日 13:59