SIMPLE2000シリーズ Vol.87 THE 戦娘
【しんぷるにせんしりーず ぼりゅーむはちじゅうなな ざ なでしこ】
ジャンル
|
ベルトスクロールアクション
|

|
対応機種
|
プレイステーション2
|
発売元
|
D3パブリッシャー
|
開発元
|
タムソフト
|
発売日
|
2005年11月10日
|
定価
|
2,000円(税別)
|
レーティング
|
CERO:12歳以上対象
|
判定
|
ゲームバランスが不安定
|
ポイント
|
信用できない能力値 堅過ぎる敵 万年金欠病
|
SIMPLE2000シリーズ
|
概要
D3パブリッシャーによる廉価版ゲームシリーズ『SIMPLE2000』の1作。「戦娘」は「なでしこ」と読む。
2人の主人公を選んで操作し、外国からの侵略ロボット軍団を叩き潰すのがゲームの目的。
企画原案は『闘神伝』シリーズのディレクターを3作目まで務めた中岡慎太郎氏によるもの。
特徴
-
全10面からなるベルトスクロール形式で、出現するザコ敵を全て倒せば先に進む事ができる。各ステージにはボス敵も待ち構えている。
-
最初から使用できるキャラは2人。1度クリアした面に再チャレンジする事も可能だが、クリアした面は主人公毎に記録される為、「そのキャラでクリアした面」にしか再チャレンジはできない。
-
2人同時プレイも可能。1人が倒れた場合、もう1人のライフを半分貰って復活する事もできる。
-
条件を満たす事で隠し主人公が更に2人追加される。
-
主人公の基本攻撃はパンチとキックのみだが、組み合わせによって多彩なコンボ技へ派生させる事ができる。
-
また専用のゲージを消費して行う「リレントレス・アクション」なるものがある。通常攻撃に続いて追撃を浴びせたり、敵の攻撃を一瞬無効化したりできる。消費したゲージはリロードを行う事で何度でも回復できるが、その際には隙が発生する。
-
同メーカーの開発による『お姉チャンバラ』シリーズのCOOLコンボに近いシステムである。
-
敵を倒すと、お金に当たるアイテムかライフ回復アイテムを落とす。
-
金は主人公の能力アップや新たなコンボ技の習得の為に使われる。本作には経験値や装備品は存在せず、パワーアップには金を使うしかない。
-
ストーリーモードを1度クリアすれば、条件を満たした上でのクリアを目指すチャレンジモードが追加される。
評価点
-
独特の世界観
-
軍国主義のまま近未来を迎えた日本のような、あるいは大正時代をサイバーパンクにしたかのような凝ったもの。
-
BGMの雰囲気と相まってアトラスの『デビルサマナー 葛葉ライドウ対超力兵団』に通じるものがある。なお、本作のほうがやや先に発売された。
-
各ステージの冒頭でナレーションによるストーリー説明が流れるが、これは戦時中のラジオ放送を意識したもの。さらに字幕も漢字とカタカナのみとなっており、雰囲気を出している。
-
レベルの高いグラフィック
-
定価2000円のゲームとして見れば十分きれいに仕上がっている。
-
リロードの際に薬莢を排出したり、ダメージを受けると黒いオイルの様な物が地面に飛び散ったりと、演出も細かい。
問題点
難易度関連
-
金によってアップできる能力は、生命力・攻撃力・ジャンプ力・移動スピード・リレントレスアクションによる範囲攻撃の威力の6項目があるのだが、これが問題だらけ。
-
高いジャンプが要求される場面は皆無。移動にしても、何度でも使えてしかも使用中は無敵という「ダッシュ」がデフォルトで存在する。従ってジャンプ力と移動スピードは上げても無駄である。
-
敵の耐久力が異常なまでに高い。1面のザコですら通常攻撃を7~8発浴びせないと破壊できない。
-
同じ姿をした敵であっても面が進むごとに耐久力がグングンアップするらしく、その面で手に入れた金を全て攻撃力に注ぎ込んだとしても、次の面ではまた7~8発浴びせないとザコを倒せない為、本当にパワーアップしているのか疑わしく思えるほど。
-
一応クリア済みの面を再プレイすると、少ない攻撃回数でザコを倒せるようになっている為、アップしているのは確かなのだが…。
-
なお主人公の初期の攻撃力は100だが、これを3500ぐらいにまで上げても1面のザコは3発程殴らないと倒せない。どういうダメージ計算になっているのか?
-
主人公が近付くと数秒後に自爆するザコが存在する。このザコは他の攻撃をしない上に自爆は周囲の敵にもダメージを与えるものだから、自分で攻撃するより「自爆ザコに近付く→逃げる」を繰り返した方が効率が良い。
-
リレントレスアクションによる追撃も、ライフゲージが表示されるボスを攻撃すると、通常攻撃より強い事がわかるのだが…なぜかザコを攻撃した場合、通常攻撃と同じ発数が必要だったりする。同じザコでもライフが極端に違うのか、
それともザコはライフが表示されないのを良い事に適当に誤魔化しているのか。
-
更にこのリレントレスアクション、追撃も防御も同じボタンで行う上、コンボの入力受け付けタイミングがシビアなものだから、「追撃しようとしたのに防御や範囲攻撃に使用してしまう」という事が度々起こる。
-
その上範囲攻撃は通常の攻撃力とは別に金を注ぎ込まなければならない為、殆ど役に立たない。
-
コンボ技は一応豊富なのだが、繋げている途中で敵を倒してしまっても構わず出続ける為硬直時間が生まれやすく、そこを他の敵に狙われる事も多い。
-
ライフの多いボスなら全て叩き込める…と思いきやボスはスーパーアーマー付きなので技を出している最中に平気で反撃してくる。故にせっかく覚えたコンボ技に首を絞められる事も珍しくない。
-
主人公は、ダメージを受けた後の硬直時間がやたらと長い。またダウンすると起き上がるのに異常な時間がかかる。
-
一応ダウン中は無敵だが、「起き上がる→ダウン」の無限コンボに陥り易い。更に本作にはガードというものは無い。その為被弾とは、他のアクションゲーム以上に恐ろしいものなのである。
-
ライフを消費する事で画面上の敵全てにダメージを与える必殺技も存在する。これはザコなら全滅させられる程強力だが、回復アイテムがろくに出現しない上に回復量も微少の本作では恐ろしくて使えない。
-
後述のチャレンジモードの制限時間のある面ぐらいしか使い道は無いだろう。
-
8面のボスである砲台の難易度が極端に高い。ドーム状の天井から複数の砲台が覗き、一斉に極太のレーザーを発射してくる。攻撃を休む砲台がランダムで発生するのだが、そこに接近する以外には回避方法もダメージを与える方法もない。
-
どの砲台が休むかは、発射前に砲台が特定の色に光る事で判別できるのだが、反射神経テストのごとく一瞬しか光らない上にフェイントまで使う。更にこのボス戦ではダッシュが役に立たず、その上微妙な奥行きがあるせいでジャンプすると障害物に引っ掛かり易い。
-
レーザーの発射時間もやたらと長く、しかも連続ヒットし、その上当たり判定もドット単位のシビアさ。空中でレーザーに尻を焼かれながらエビのごとく延々ピョンピョン跳ね続ける主人公の姿はギャグにしか見えない。おまけに前述の通りダウン時間が長いものだから、立ち上がる頃には次のレーザーが目の前に迫っており…。
-
更にライフは砲台毎に別に用意されている。倒しても倒しても次の砲台が現れる。
-
通常のステージをクリアした後、ボーナスステージ(らしきもの)が出現する事がある。ここをクリアするとリレントレスの使用回数がアップする。ここでは通常のステージをクリアした際の10倍以上もの金を入手する事ができる…のだが、出現条件は不明で、しかもそれだけの金を注ぎ込んでも例によってあまり強くなった気がしない。
-
ザコが一定人数以上現れると表示能力の限界を超えるらしく、画面に表示されなくなる事がある。無論透明になっているだけでその場には存在しているので、平気で攻撃してくる。そしてこれが頻繁に起こる。
-
ステージ中にはトラップは何1つ存在せず、アイテムも置かれていない。水路の有る面ではその中を進む事もできるが、動きが鈍る事もない。
-
エレベーター内で戦う場面ではカメラがやたらと画面から引いて映す為、主人公の表示が小さくなりすぎてどこを向いているのか分からなくなる。
-
因みにこの「エレベーター内での戦闘」は嫌になるほど何回も登場する。
-
ステージの特定の場所まで来ると司令官との通信イベントが発生する。台詞のスキップはできるがオフにする事はできず、いちいち足止めされる。攻略には全く役に立たない情報ばかりなので『ロックマンX5』のエイリアより邪魔である。
ところで本作には難易度変更機能があり、イージー・ノーマル・ハードの3段階から選べるのだが、これまで書いてきた事は全てイージーモードでの難易度の話である。
これがノーマル以上となるとどうなるか…お察し下さい。
チャレンジモード
-
全100面存在するのだが、ルールは「○秒以内に全滅させろ」「○秒間生き延びろ」など数種類のみで、ノルマ数値が違うだけ。水増し感が漂っている。
-
しかも「クリアすると次の面が現れる」というものではなく、金を払わないと次の面は出現しない。全面出現させる為だけでボーナスステージ2回分の金額は吹っ飛ぶ。
-
一応このモードでも敵は金を落とすのだが、ストーリーモードと違って条件を満たした瞬間クリアになる為、金を集めている余裕は無い。特にボスが現れる面ではそのボスを倒した瞬間終わってしまう為、ボスが出す大量の金は殆ど拾えないのである。
-
特典が「100面全てクリアすると隠しキャラの1人が出現」のみである事が、救いと言えば救いか?
その他
-
主人公・ザコ敵共、声優の演技に問題は無い…がラスボスだけは何を言っているのかわからない。
-
出演はいずれもゆーりんプロ所属の声優。主人公:花(赤)と隠しキャラの声は、この当時はまだ無名だった新井里美氏が担当している。
-
もう一人の主人公:菊は三ツ木勇気氏、ラスボスは橘凛氏、ザコは中野大樹氏と小島尚忠氏、 ナレーションは北斗誓一氏が担当。シンプルシリーズにしては出演声優が多め。
総評
独特な世界観の表現は十分できており、成長・コンボ・チャレンジモードとSIMPLEシリーズとしてはボリュームもバッチリであった。
ゆえに肝心の爽快感の無さがひたすら残念なソフトである。敵は頑丈だわ、すぐに通信で足止めされるわ、倒れるといつまでも起き上がらないわと踏んだり蹴ったり。
売りとなるはずのシステムと相容れないものを組み込んでしまうのが、タムソフトのアクションゲームの宿命なのか?
今となってはベルトスクロールアクションの良作が新旧問わず簡単に遊べる環境が整っているので、本作にこだわる動機が無い限りそちらをプレイするのが賢明だろう。
余談
-
記事冒頭のデータにもある通り定価2千円だったはずが、2021年現在の中古市場は1万円代にまで高騰している。
-
安価という長所が完全に消え失せたので、ますますプレイする理由が無くなってしまう。
-
本作の主人公らはサイボーグなのかロボットなのかいまいち曖昧。
-
条件を満たすと現れる3人目の操作キャラの会話シーンには「君は稼働時間が短い」という文言があるが、それでもハッキリしない。
-
本作のデフォルト主人公2人は、『お姉チャンバラ』シリーズの『THE お姉チャンポン』に、双葉理保・真琴姉妹と共にゲスト出演している。
-
専用シナリオもあり、作中の全BGMが本作のものに入れ替わるというファンサービスもある。敵キャラはゾンビのままだが…
-
また『お姉チャンバラSPECIAL』にも、本作にちなんだ小ネタが出てくる。
最終更新:2024年05月30日 15:00