鉄腕アトム
【てつわんあとむ】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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メディア
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2MbitROMカートリッジ
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発売元
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コナミ
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開発元
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ホームデータ
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発売日
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1988年2月26日
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定価
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5,500円(税別)
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判定
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ゲームバランスが不安定
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バカゲー
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ポイント
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結構難易度高い バズーカ兵自重しろ 謎解き要素は面白い
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手塚治虫シリーズ
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概要
多くのクリエイターに影響を与え神様と呼ばれた有名な漫画家・手塚治虫の代表作『鉄腕アトム』のゲーム化作品。
ジャンルはオーソドックスな横スクロールアクションとなっている。
ゲーム内容
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操作方法
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Aボタンでジャンプ、Bボタンでパンチ。
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アトムお馴染みのジェット飛行もできるが、これを出すにはタイミングよく横方向に連続で3回ジャンプする必要がある。
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ライフシステム
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体力であるウランが徐々に減少し時間制限も兼ねているシステム。
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よくある残機制ではなく、即死攻撃や穴への落下、ダメージや時間による減少でアトムのウランが0になった時にお茶の水博士の持っているウランから補充される。アトムのウランと博士のウランが両方ゼロになった時にゲームオーバーとなる。
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アトムが爆散しようが奈落の底に落ちようが博士はたちまち修理してくれるが、ペナルティとしてアトムの持っていた分のウランがなくなりステージの最初に戻される。
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プレイ中はほぼいつでも任意で博士を呼び出すことが可能。すぐさま博士が駆けつけてきて、ウランを補充してくれる。
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ミスした場合と違って博士を呼んで補充した場合はその場で復帰できる。ミス時同様に博士からヒントも聞けるので困ったら呼ぶといいだろう。
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博士はいずれの場合でも必ずアトムのウランを最大充填しようとし、博士のウランがアトムの不足分に満たない場合は持っているだけ全てアトムに詰める。アトムのウランは破壊されると残量を問わず空になるので、何度もやられていると博士の側のウランはすぐに尽きる。
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博士の補充以外でアトムのウランはゲーム中たった二か所しかないウランスタンドでの購入、もしくは命の水取得で補給できる。博士のウランは命の水を持ってステージクリアするかコンテニュー時に購入することで補給できる。
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メッセージシステム
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ほとんどの敵は殴ると1文字ずつ喋る。メッセージの長いものほど耐久力が高いという画期的なシステムである。
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攻略のヒントだったり、命乞いだったり、どうでもいい内容も多い。
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複数の敵をまとめて殴ると同時にそれぞれが1文字ずつ喋るため、何を言っているかとても分かり難くなる。
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お金(コイン)による買い物
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一部の敵やオブジェクトを殴ったりするとコインが出る。これを集めることで一部のステージで買い物が出来たりゲームオーバー時のコンテニューが可能に。
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普通にゲームを進める分にはあまり溜まらないので特にコンテニューを利用したい場合は積極的に稼ぐ必要がある。
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鬱すぎるゲームオーバー画面
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悲しげなBGMの中、石像付きのアトムのお墓の前に佇む博士が表示されるという物。
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ステージ1と2と10では真っ暗な空にGAME OVERの文字が添えられるが、それ以外のステージでは博士からお別れのメッセージが流れる。
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メッセージの内容はステージ毎に異なっており「〇〇で しんだ あとむへ」と、ステージ名を絡めた文章になっているなど妙に芸が細かい。
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アトムは原作でも最終回で死を迎えるラストが何度も描かれており、後味は悪いが原作らしい描写とも言える。
評価点
多彩なステージ構成
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横スクロールアクションではあるが単純に障害物や敵を避けゴールに到達すればクリアという面は少なく、アイテムを集めたり謎を解くことによって進めるステージもある。
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謎解きの一例として音や数字を合わせることで道が開けるパズル、出現したオブジェの数を覚え数字を入力するもの等、なかなか凝った仕掛け。
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またクリアに複数の条件が設定されており進み先が分岐するステージもある。分岐後のステージはどちらもそれぞれ別の謎を解かなければクリアできないが、どうしても謎が解けない場合は1面からやり直して別のルートを選ぶことも可能ではある。
プレイヤーを楽しませる様々な会話
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後述のバカゲー要素にも係る所ではあるのだがNPCと会話する場面がそこそこ存在する。質問に対し返答を二択で選ぶ事もあるのだが、選択次第では会話がとんでもない事になったり、どこか少し頭のずれた話をされたりして笑いを誘う。また同じNPCでも開始時の内容が数パターンある場合もあり全体的な数は意外と豊富。
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後述するように雰囲気や展開こそアニメ版とのズレが激しいが、ゲームとしてはステージごとに違う仕掛けがほどこされており、謎解きを楽しみながら進めることができる。
殴ると一文字ずつ喋る敵を倒して得たヒントを活用したり、特定の場所をパンチすることでアイテムが出現したり、音合わせや数字合わせなど面白さを出すための工夫は随所に窺える。
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1面から即死攻撃する雑魚が出るため即死ゲーかと身構えそうであるが、2面以降は即死攻撃を受ける頻度が大幅に減る。攻撃を食らってもウランの減少のみで済むことが多くなるため、敵の出現パターンやステージ構成を覚えながら進めることだろう。
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あえて良く言えば、ゲームが始まってすぐに即死攻撃する敵を出すことにより、プレイヤー側の注意深さを促しているとも受け取れる。
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謎解きも理不尽に難しいものではなく、ステージによっては空を飛ぶことでスルーしてクリアすることも可能。
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エンディング後も何かボタンを押すことでスコアとウランを継続して1面からプレイできるため、慣れたプレイヤーならタイムアタックや何周できるかに挑戦したりするのもいい。
繰り返しプレイすることで上達がわかり、原作と違う雰囲気も味として楽しめるようになれるだろう。
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グラフィックは地味に頑張っている。アトムや博士、ウランといった原作キャラの再現性は高い。
問題点
前述のライフシステムの仕様が分かり難い。
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更にウラン補充にもバグがあるらしく、補充するウランが足りない場合は補充量がおかしくなったり、ひどい時にはアトムのウランが減ったりすることもある。
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この補充のバグについては、説明書にもしっかり記載されている。「博士も慌てて間違えたのでしょうね」と苦しいフォロー付き。少なくとも、隠さずキチンと書いた分だけマシではあるか。
大金が必要なコンテニューとウラン購入
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前述のようにコインがあればコンテニュー可能なのだが、最低でもコイン10枚が必要でコイン1枚に付き10ウランが再開時に補充される。しかし10枚分100ウランでは焼け石に水ですぐにまたウラン切れとなってしまう。
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アトムと博士のウランを満タンにするためにはなんと130枚ものコインが必要。
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さらに終盤ではウランが大量に必要になるであろう難所が存在するのでコインを稼げる場所でしっかり稼いでおかないといけない。
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幸いにも序盤である2面に楽にコインを稼げる場所があるのでここで必要な分を一気に稼いでおくとよい。
原作の世界観や雰囲気を無視したキャラクターや背景
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このゲーム制作時期にはアトムの新作は特になく一番近いのがアニメ版第二作(1980-1981)だが、漫画版もこのアニメにもこのゲーム内容に該当のエピソードはなく、このため原作とはまったく関係のない展開やキャラクターのオンパレードである。
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更に、中には会わなくても攻略上問題ないキャラもいたりする。
ジェット飛行のためのコマンドが出し難い
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飛行するには横方向への連続3回ジャンプが必須なのだが、横方向のみというのが曲者で、うっかり縦に跳んでしまうとやり直し。タイミングがずれたり地形に引っかかっても失敗したりと、飛ぶにはかなり手間がかかる。
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理不尽なところが否めない飛行システムだが、ゲーム的な処置と割り切る分には良く出来ていたりもする。飛べない場所・飛びにくい場所が多すぎる嫌いがあるが、アクションの一要素として上手く取り込まれている。
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飛行能力そのものは、ゲーム中でも強く意識されている。1面はアトムが波止場から飛び立つことでクリアとなり、最後(厳密にはその1つ前だが)のステージの最終局面も崩れ行く要塞から、子ども達(後述のセレナードとインドラ)を連れ飛び立つことで幕を閉じる。
意地悪な地形や操作性。
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飛行を制限するためなのかデコボコとした足場やら天井の低い場所も多く、普通に歩いたりジャンプするのにも引っかかるためストレスがたまる。
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後半には飛行しないと進めないがジャンプするための足場がかなり意地悪く組まれている場面があり難しい。時間を浪費するだけならまだしも、落下死の危機と背中合わせでもあり危険。
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操作性に関しては、アトムの挙動自体はそこそこ小気味よいので慣れればどうとでもなる部類ではあるのだが、そこまでが難しい。
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場所が悪いところでジャンプする場合のコツについては説明書できちんと解説してくれているので、その点は親切。
バカゲー要素
唐突で奇妙な展開が多い(というかプレイしただけではあらすじさえ不明)
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ストーリー自体は取扱説明書に「愛と正義の子アトムは、光の神アハーの怒りを受けて沈んだアトランチス(原文ママ)で人々の罪を代わりに背負い大陸とともに封印された神の申し子セレナードとインドラを助け、アトランチスに光と平和を取り戻すのだ。」(要約)とあるのだが、ゲームの出だしは「科学省に泥棒が入ってアトムが追跡する」というものであり、特に上記の説明を受けることはない。
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ちなみに上記の泥棒が盗んだ品物は1面で普通に見つかるがただのコイン(コンテニューで使用するものと同じ)であり、盗難事件はここで解決している。
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敵キャラの何か変なメッセージ内容
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前述の通り敵を殴る事でメッセージを得られるのだが、ヒントでない場合は「もっとぶって」「ぽてちん」「なぐられころんでおおいたけん」など妙な物が多い。
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頭に天使の輪を付けた謎のキャラ「アバブ」。
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アバブはカリギュラ教の教祖であるが秘密軍艦に捕まっており、助けると「わたしリカちゃん」と意味不明なセリフと共にしばらくアトムにくっついてくる。
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その後のステージ「カリギュラ神殿」で再会すると会話でき、内容次第ではウランを補給してくれたり先のステージに進めたりするのだがゲーム内ではカリギュラ教や教祖などの説明は一切ない。
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会話の内容はかなりぶっ飛んでおり趣味のような雑談から哲学的な話に「このゲームは面白いか?」と言ったメタネタ。また「一緒に暮らそう」と聞いてくるがこれに応えると「帰って親と相談しろ」と1面に戻されるというトラップもある。
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このゲームの奇妙さの集大成「たくらまかんバザー」
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入り口には恵んでくれと言う乞食が居るがお金をあげると「乞食は儲かるからお前もやれ」と言われる。
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新聞屋ではお金を払ってニュースが見られるが特に役立つ物は無い。そればかりか「巨人、阪神に連勝」「せいこ離婚か」といったゲームに全く関係の無い内容もあれば、「アトム、墓地で死ぬ」という内容の後に「しまったこれは明日の新聞だ」とふざけた事を言われる物もある。
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占い屋は会話が数パターンあり場合によっては攻略情報を教えて貰えるがお金の払い損になるケースが多く、内容もギャグや意味不明な内容ばかり。
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他にも「ウランは売らんと思うか?」と駄洒落を言うウランスタンドや「ゲームなんだから何か買ってよ」とメタ発言をする土産屋などどこかずれた会話をする人たちばかり。
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ちなみにバザーの区間ではウランが減らない。だからといって会話を面白がって油断していると…
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またバザーのあるステージは二重構造で上を進むと前述のバザーなのだが、下ルート左端の穴に落ちると閻魔大王の居る地獄一丁目に行く事が出来る。「かわいいから私の子供になりなさい」「ロボットが来たのは初めてだから仲良くしよう」等と怪しい発言でアトムを引き留めようとしてくる。脱出するにはコインを全部払うかバザーで赤い羽根を買ってくる、又はじゃんけんに三連勝しないといけないのだが閻魔大王のじゃんけんの最初の手が地獄の端の辺りに浮かんでおり不気味。
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ウラン(妹の方)と学校の先生であるヒゲオヤジが氷漬けにされているアイスランド(文字通り氷の世界)。
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新聞屋では「ウランが誘拐され犯人は北へ逃げた」という情報を得られる場合があるが何故誘拐されたかは全くわからない。
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助け出すには氷の女王が欲しがる物を持っていく必要があり、そのヒントは雑魚敵のペンギンから得られるが答えが眼鏡の場合は「ろうがん」、ダイヤの場合は「みえっぱり」など微妙に気の抜ける内容。
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他にも謎を解かねば先に進めずゾロアス教徒がうろつきゾロアス教の神と勝負させられるゾロアス遺跡、無限のループの砂漠、穴から魂が飛び出しそれを取るとなぜかコインに変わる魂の谷、暗闇に覆われ水と光るブロックしか見えないドクロの迷路など、なぜアトムがそこへ行かなければならないのかがさっぱりわからない展開が連続する。
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その上、その場所のいくつかは「行かなくてもよい」、というより「行かない方がいい」場所だったりする。
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原作(コミック版)では、唐突なメタネタや脈絡のないギャグ要素も散見されるため、上記のおかしな要素もある意味で、原作を再現した要素だと言えなくはないが……。
総評
奇妙な雰囲気と、微妙にぎくしゃくした難易度を誇る作品。
アトムのキャラクターを尊重しようとした気配も見受けられないことはないのだが、奇怪な世界観とあまり直観的でない操作性、そして特殊なゲームルールが原作ファンを戸惑わせる。
一応、なんだかんだで難しいなりに遊びこめるようにはなっており、慣れてしまえば楽しめたという意見も少なくはない。
ゲームとしては及第点の域であり、単なる安直で不出来なキャラゲーとなっていないのは救いと言える。
キャラゲーだからこその問題点や不満、違和感も目立ってしまっているのではあるが。
グラフィックやメッセージ、事件の展開等に関しては、意外に「アトムらしさ」を再現している部分も多い。そのため原作ファンにとっても、全く駄目な作品というわけではない。
ただし中途半端にアトムっぽいため、余計におかしな部分が鼻につくという側面も持つ。
またアトム抜きでも、おかしな部分や練り込み不足、未完成らしき要素はあちらこちらに散見される。
キャラゲーとして見ても見なくても、結局のところ評価は、良作とも呼び難いがクソゲーと切って捨てるにも惜しい意欲作といったあたりに落ち着くだろう。
最終更新:2023年12月11日 12:53