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HOSHIGAMI 沈みゆく蒼き大地
【ほしがみ しずみゆくあおきだいち】
ジャンル
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シミュレーションRPG
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対応機種
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プレイステーション ニンテンドーDS
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発売元
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【PS】マックスファイブ 【DS】ASNetworks
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開発元
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【PS】マックスファイブ 【DS】バーンハウスエフェクト
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発売日
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【PS】2002年2月7日 【DS】2007年5月24日
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定価
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【PS/DS】4,800円(税別)
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判定【PS】
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クソゲー
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ポイント【PS】
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出来のよろしくない『タクティクスオウガ』 遠距離攻撃至上主義(敵も味方も) レベリング必須の鬼のような難易度
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※本稿では「余談」以降を除き、判定含めオリジナルであるプレイステーション版について言及しています。
概要
1997年にPSで怪作『ストレスレス レッスン れすれす』をリリースしたマックスファイブが、5年の沈黙を破って送り出した同社2作目のゲームソフト。
キャラデザはたかみち氏が手掛けており、ゲーム中の立ち絵イラストはもちろんのこと、グッズ用イラストやイメージビジュアルも同氏が担当した。
内容としては、剣×魔法×精霊を束ねたコテコテのファンタジー世界を舞台に、『タクティクスオウガ』風としか言いようのない画面とシステムでゲームが展開していく。
作中にスライムやゴブリンなどの「モンスター」の類は登場せず、もっぱら人間キャラのやり取りだけで物語が構成され、作中には複数の分岐とエンディングが存在。
こういったところにも『タクティクスオウガ』感があるものの、肝心のゲームバランスはというと製品タイトルとは裏腹に徹頭徹尾突き抜けて難しく、多くのプレイヤーを意気消沈させるものだった。
ストーリー
3000年を超える歴史を誇るマーディアス大陸。現在は三つの大国が存在している。
その内の一国ヴァイレムが、精霊の力を「コイン」に封じ込め誰でも自由に魔法の使役を可能とする技術「コインフェイム」を開発。
さっそく大陸全土へ「コイン」が広まり、人々はより豊かな生活ができるようになった。
しかしそれから僅か一年後、技術の起案者であるフェルナンデスがクーデターにより自らヴァイレム帝国の実権を握り、他国へ突然侵略を開始した。
「コインフェイム」の軍事転用に成功したのである。突然の脅威に、他二国は防戦を余儀なくされている。
帝国に反発して出来上がった義勇軍は、新たな職種バトルヘルパー(傭兵)達から成るギルドを結成し、果敢にも帝国とゲリラ的に闘いを始めた。
以上は、やがて大陸全土を巻き込む戦乱の序章に過ぎない……
でもそのわりにゲーム内の描写はイマイチで実際の危機感が希薄だったりし、
ただの一傭兵と思いきや案の定ものすっごく高貴な血を引いていた主人公の青年ファズが各地でいろんな仲間と出会いつつ、
裏で暗躍していた太古の精霊や悪人の生まれ変わりをなんやかんやで気付いたらぶちのめしてた、そんなわりとよくある物語である。
途中で人死にもあり、傾向的にはシリアスの部類。
ゲーム進行
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すごろく風のワールドマップを使って移動し、街はメニュー形式で利用できる。目的地(ステージ)に着くとそこでイベントとバトルが発生。
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イベント中の選択肢などで物語が分岐。
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レベル上げ専用のステージ「試練の塔」もマップ上に点在している。それぞれ敵の編成が異なる。
バトルの基本的な要素
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3Dモデルで描画されたステージのクォータービュー。ただしキャラ自体はドットで、『タクティクスオウガ』臭がすごい。
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『タクティクスオウガ』のようにターン制を廃し(つまり自軍フェイズ&敵軍フェイズといったものが無い)、あくまで素早い者から順に、敵味方入り乱れて行動するというシステムを採用。
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戦闘中に体力が尽きた仲間は、たとえメインキャラであろうと死亡し、その後も生き返らないまま物語が進行する。
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モブキャラについては街の紹介所で何名でも補充できるが、メインキャラが死んでいると特定のルート分岐に乗れないのは言うまでもない。
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味方を殴って経験値を稼げるものの、上記の仕様のせいで慎重に行う必要がある。
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一応、戦闘不能になった仲間に対し、戦闘が終了するまでに復活系のコインフェイムで戦線復帰させればセーフとなる。
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キャラの側面や背後から殴られるとダメージが上がったり回避できなかったりする。
特徴的なバトル要素
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RAPゲージ
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キャラの「行動力」の総量を表したもの。キャラごとに一本用意されており、行動順が回ってきたときゲージは100%。
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移動・攻撃など何かをするたびに減っていき、あまりに減らしすぎると次に行動順が回ってくるタイミングが他者より遅くなってしまう。
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その場から一歩も動かなければ攻撃を複数回行えるし、逆に攻撃を一切せず長距離移動したりを、ゲージの減りを見ながら計画的に行える。
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「行動しすぎると次の行動順が遅くなる」といったSRPGのあるあるが可視化された格好。安心して行動できる。
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「コインフェイム」(魔法)
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装備品であるコインの受け渡しだけで、誰でもコインに対応した魔法を使用できる。
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シュート(ノックバック攻撃)
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本作は全キャラがデフォルトで威力の低いノックバック攻撃を使用可能。対象は、敵味方どちらか1体。
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行動順が回って来ていない仲間を逃がしたり、逆に敵陣へ押し込んであげたり、敵を崖から突き落としたりと、地味に色んなことに使える。
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セッション(連携攻撃)
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行動終了するとき「セッション」という構え姿勢を選ぶことができる。
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先述のシュートで、敵キャラを「セッション」状態中の仲間のもとへぶつけてやると、ぶつけられた仲間がその敵を向いてる方向へさらに吹き飛ばす。
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「セッション」状態の仲間を複数名並べておけば、まるでラグビーのパス回しのように、敵キャラを連続でどつき回して一気にダメージを与えられる。
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性質上単体の敵にしか効果が無いが、威力は特大。さらに撃破時のアイテムドロップ率を激増させるという効果もあり、高価な装備品を奪い取れる。
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敵軍のレベル補正
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自軍で最もレベルの高いキャラに合わせて、敵軍キャラの平均レベルが決定される。
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このシステムに気付けず、1キャラだけ集中的に育てて無双プレイしようとすると真の地獄を見ることになる。
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一応、敵軍のレベル上昇にはステージごとに上限があるものの、上限レベルはゲーム後半ほど高く設定されている。容赦無い。
自軍の成長・ステータスに関わる要素
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ワールドマップ上の街
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以下の施設が存在する。残念ながら酒場といった情報収集やクエストを受けられる施設は無い。
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好きなアイテムや武器種を購入できる「ショップ」
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後述のコインの購入や改造に使うための品を購入できる「コイン屋」
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モブキャラの他、条件を満たしているとレアキャラを雇用できる「バトルヘルパー紹介所」
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スキルの習得と精霊を決める「神殿」
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コインの改造
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コインは資金やレアアイテム「刻印」を使ってどんどん強化できる。
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強化すれば射程を伸ばし、消費コストを抑えることができ、魔法のエフェクトも派手になっていく。
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「刻印」は二つまでコインに付けることができ、コインが別のものに変質する。
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ワンランク上のものになったり、はたまた「事故」により全く別のコインに生まれ変わったり……
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進化のパターンは無数にあり、さながら某ゲームの仲魔並に複雑な仕様となっている。
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精霊の信仰
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本作には火や水など計8種類の属性が存在し、それぞれに対応した精霊もおり、任意で一つの精霊を街の神殿で選び信仰できる。
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これにより、ステータスの成長と得意(苦手)属性&武器種と習得スキルが変化する。
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実質、本作におけるジョブチェンジのようなものである。
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隠しジョブにあたる、光の精霊と闇の精霊も存在。
評価点
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『タクティクスオウガ』の評価点を幾つか継承している
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オリジナルとは全く別のメーカーが、他社の名作にここまで基盤をそっくり似せられたこと自体も評価できるだろう。
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おまけに独自システムも、作品と相性の良いものに落とし込まれている。
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オプション内にチュートリアルモードが存在している
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システムの内容を個別にチェックできるため、仮に『タクティクスオウガ』系のゲームを一作もプレイせずとも大まかにゲーム内容を把握してから遊べる。
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隠しキャラや隠しダンジョンなどマニアックな要素が充実
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普通にプレイしていたのではまず気付けないような条件で加入する、いわゆる隠しキャラが多数存在する。
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固有絵が多く、そもそもモブキャラのバリエーションも多い。たかみち氏の画風が気に入った方には大きな長所。
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「ヒデキブーメラン」など、「ヒデキ」と名のつく超レア装備を全セット装備すると、キャラの顔絵が西城秀樹氏のような見た目になる。
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ルート分岐についても同様で、一周では見きれないほどのイベントがあるのも長所。プレイヤーのやる気が続けばだが…。
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ステージ数が充実
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本編だけでも、エンディングまで約50ステージも存在する。
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砂漠や雪の街や廃墟など、中には印象深いロケーションもある。
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戦闘中にバグがこれといって起きず、挙動が安定している
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敵軍の強さに悩まされるゲームだが、ゲームが不意にフリーズするといった予期せぬバグで進行できなくなることは無い。
問題点
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敵軍のほうがこちらよりずっと強い上に、その編成がやたら優秀
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敵の増援などがない代わりに初期配置の敵の物量で押しつぶす形の戦闘なのだが。
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高所に敵弓兵がズラリ、動かず攻撃だけに専念 + 弓兵を回復・サポートする敵魔道士 + こちらの回復を阻害する切り込み部隊 などの構成はお約束。
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斯様な鉄壁の布陣による、べつにルール上はズルしてないけど愚直にストレートな高難易度がプレイヤーの心を真正面から折りにくる。どないせいと。
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解決策は、死ぬ気で塔に篭ってコインを強化し続けるのみ。あまりに要求レベルが高く、レベル上げに没頭するあまり現在のストーリーを忘れてしまうほど。
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序盤だけ難しい……何てことはなく、中盤以降も敵軍の基礎力はどんどん高まっていく。
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そもそもストーリーの戦闘自体「試練の塔」でレベルアップしてから戦う事を前提に難易度設定されており、本編中のちょっとやそっとのレベル上げでは返り討ちに遭う。
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これだけ難しいのに、本編の難易度を凌駕する隠しダンジョンまで用意されている。本作のスタッフに自重という言葉は無いようだ。
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レベル差があると攻撃が当たらない
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武器の命中率はLV差が10以上あるとまず命中しなくなる。レベル上げは死活問題である。
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他、地形の効果にも左右される。さらに弓については障害物があったりすると当てられない。敵の弓兵?最初から高所に居ますが何か。
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またレベル差補正でEXP、VOW(信仰値)の獲得量に相当差が出るため、レベル差ができた仲間を手っ取り早く成長させるには「レベルの高い仲間を攻撃系のコインフェイムで攻撃」するのが最も効率が良いほど。
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レベル上げのため、戦闘中味方同士で攻撃し合う作業も延々と行わないといけない。
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遠距離攻撃もといコインしかお呼びでない
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地形に左右されず広範囲を狙えるコインフェイム強化が戦闘の主体となる。他の攻撃手段は結局オマケ。世界観に忠実と言われるとそれまでだが…。
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魔法威力に直結するSPI(精神)を早いうちから上げておかないと泣く羽目に。
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またAGL(素早さ)は戦闘時の行動順に直結しており、これが低いと行動すら取れずに経験値も獲得しづらくなるという悪循環に陥りやすい。
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故にどんなキャラでも素早さを高める装備を最優先で付けておかないと厳しい。
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セッションシステムを狙う機会が滅多に無い
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下手に狙うと、セッションのため味方を近場に密集させる都合上、敵の範囲魔法で殲滅されてしまう。
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また中盤から雑魚がセッションを防ぐ装備やスキルを所持していたりするので決める事自体が厳しい。
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一戦にかかる時間が長い
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1キャラにつき移動と攻撃を何度も行えるうえ、アニメがやや長めなので、中盤以降で敵兵が増えてくると待ち時間が相当なものに。
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戦闘中、中断セーブができない
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本作のセーブはワールドマップ上でないと行えない。
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終盤、何ステージか強制的に連戦となる場面だと、味方の死亡に気を付けながら数時間ぶっ続けでプレイしなければならないことも。
総評
見た目だけでなく、システム的にも『タクティクスオウガ』の模倣が多い本作。
しかも上っ面だけでなく、かなり深い部分まで綿密に似せながら構成されているのだが、万人を悶絶させる激辛難易度が引っ付いている。
あらかじめシステムを完璧に理解した超上級者向けに設定されており、広報展開の際にその周知が徹底されていれば多少は世間の評価が変わっていたかもしれない。
どれだけ基盤が優れていようと、さじ加減一つでここまで木っ端微塵にできるという点において、反面教師としては良くできた作品。
もったいないことに、難易度以外で致命的な破綻はこれといって存在しない。
貴方がたかみち氏のファンで、よほどSRPGに自信があるというなら、攻略本片手にじっくり腰を据えプレイしてみるのも悪く無いだろう。
余談
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本作の海外版はペルソナシリーズ等でお馴染みのアトラスから販売されている。
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グッズとしてサントラがリリースされている。後述のニンテンドーDS版についても別途、サントラがリリースされた。
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他にヒロイン「エレナ」のテレホンカードも存在する。
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本作以降、マックスファイブはゲームをリリースしておらず、ゲーム部門が独立する形で「パイングロウ」として会社が新生した。
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そして、アトラスとパイングロウのタッグで後に開発・リリースされたのが『ステラデウス』である。
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世界観的には本作と一切繋がりは無いものの、RAPシステムを受け継いでいるばかりか、同名の脇役が登場する。
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独自の世界観が光り、『タクティクスオウガ』感は大きく減ったが、BGM担当はまさかの崎元仁氏と岩田匡治氏である。
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そもそも「ステラ」=「星」、「デウス」=「神」であり、実はタイトル名からして自重していない。元『ラングリッサー』の開発会社に『グローランサー』を開発させたアトラスらしいというかなんというか…。詳しくは該当記事で。
HOSHIGAMI ニンテンドーDS版
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発売はアークシステムワークス。オリジナルから変更された要素は多い。
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序盤の兄貴分のキャラ「ロムレス」の代わりに新キャラ「カーシャ」が加わり、カーシャ含めて全キャラデザが木村樹祟氏のものに。
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全BGMが変更された。新BGMの作曲はアークシステムワークス作品を多く手掛けていた末村謙之輔氏で、ファンタジー感あふれるテイスト。
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オープニングで難易度設定も可能だが、作中で「HARD」モードが「HOSHIGAMIオリジナルの難易度」と説明されていることから、いかにPS版の難易度が高かったのかがよく分かる。
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難易度変更機能のおかげで非常に遊びやすくなっている。SRPGに飢えているならオススメできる範疇。ただし難易度関連以外の改善点は少ない。
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ちなみに様々な部分で調整が入っているため、HARDだろうと厳密にはオリジナルと比べればはるかに難易度が低い。
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マックスファイブと何の関係もなさそうなアークシステムワークスがどういう経緯で移植に至ったのかは不明。値崩れが激しいため入手は容易。
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ライセンス表記には、マックスファイブだけでなく、先述のパイングロウの名もある。
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作中の追加武器として、「封炎剣」と「封雷剣」がイベント限定で配布された。
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出典はアークシステムワークスが手がける『GUILTY GEARシリーズ』で主人公ソルとカイの扱っていた武器である。
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残念ながら実態はちょっと性能の良い汎用剣で、固有グラフィックなども無い。
最終更新:2024年05月07日 23:47