重装機兵ヴァルケン
【じゅうそうきへいう゛ぁるけん】
ジャンル
|
アクションシューティング
|
 高解像度で見る 裏を見る
|
対応機種
|
プレイステーション2
|
発売元
|
クロスノーツ
|
開発元
|
ソフトアクション
|
発売日
|
2004年8月26日
|
定価
|
4,980円(税別)
|
プレイ人数
|
1人
|
レーティング
|
CERO:全年齢対象
|
判定
|
クソゲー
|
ゲームバランスが不安定
|
劣化ゲー
|
シリーズファンから不評
|
ポイント
|
2004年クソゲーオブザイヤー次点
ゲームバランス悪化 PS2なのにSFCから劣化した操作性 兵士達の終末(終幕) アーク・ノバ地下(落下) 原作OPの代わりに謎の0面追加 細かな演出面が尽く劣化
|
クソゲーオブザイヤー関連作品一覧
|
重装機兵シリーズ
|
概要
1992年発売のSFCアクションの傑作『重装機兵ヴァルケン』を、12年の時を経てPS2ソフトとしてリメイクした作品。
名作のリメイクにファンは歓喜したが、その実態は…
問題点
オープニング・0面
-
本来のOPは丸々カット、タイトル画面前後のデモもカット。
-
代わりに「SFC版でカットされた幻の0面が復活」と喧伝していたが、内容は強制スクロールの完全一本道で、すぐに終わる。しかも自機は無敵で、ボスは何もしなくても勝手に倒される…というチュートリアルにすらなっていないただの作業。
-
シナリオについても、AS部隊が出撃から20秒も経たずに帰艦命令を出されたり、オリジナル版でも極太ビームで轟沈するチョイ役だったバーシスの同型艦に追加されたシュールな内容の報告と何故か付いたサラトガという名前、ボスキャラについても説明が一切なかったりと支離滅裂。おまけにスキップできるのはボス撃破後のモノローグのみ。これではOPデモの改悪としか思えない。
-
そもそもこの「幻の0面」とやらは移植スタッフによる捏造である。確かにSFC版には容量の都合でカットされた要素が多々あったが、それは0面などではなかった。内容に深く関わる肝心な部分はことごとく手抜きしておきながら、何故このような無駄な要素に力を注いだのか。
+
|
タイトル画面。
|
アニメ調で背景から浮きまくっているヴァルケンの上半身はまだ目を瞑る事もできるが、タイトルロゴのすぐ左上でへこへこ動くヴァルケンのシルエットは何とかならなかったのか。
|
システム、操作性
-
「難易度が高いため、クリアできないステージの練習用に」と、一度クリアしたステージを(
「到達した」ではない
)単体で遊べるAPPENNDIXモードが搭載されている。子供でもすぐ気づくレベルの酷い矛盾である。
-
システムやゲームバランスの調整が満足になされておらず、無駄に難易度が上がっている。特にキーレスポンスと機動性(スピード)の低下が顕著で、原作経験者は強い違和感を覚えてしまう。
-
ダッシュの仕様が大幅劣化。コマンドダッシュ(方向キー2回)とダッシュジャンプが削除され、ダッシュ終了時に慣性が乗らずピタッと停止する。さらにダッシュ終了までシールドを構えられなくなった。
-
上記に加え、空中での落下速度が不自然に速く(重力加速度を無視している)、着地寸前にバーニアを吹かしても必ず硬直する。さらに空中では左右、宇宙空間では全方位の移動速度が低下しているため、敵弾を避けるのが難しい。
-
射角の微調整が利かなくなり(見た目通りの9段階)、歩兵等の小さい敵を倒すのが難しくなった。
-
ホールド(移動時に機体の向き・射角を固定する機能)しても左右の向きが変わる。スタッフはホールドの意味を理解しているのだろうか?
-
つまり「射撃方向を固定し、敵弾を避けながら敵のいる方向に撃ち続ける」という操作ができなくなっている。
-
ポーズ中のマップ表示が削除された。にもかかわらず、作中におけるクレアの「レーダーで確認できるわ」という台詞はそのまま。
-
要所要所でいちいち読み込みが入る上に、そのロード時間がやたらと長い。テンポが最悪なのは態々説明するまでもないだろう。
BGM・SE
全体的に「場面に合わない電子音が多く入っている」「ボス戦における意味不明なジャズアレンジ」などをはじめ、アレンジの質が劣悪。おかげで「みょ~ん」や「てれってってって♪」など、さまざまな空耳が生まれた。
-
間抜けなタイトルBGMやブリーフィングのBGMはまだマシな方であり、2面などはもはや雑音。ボス戦は音楽の所為でやたらノリノリになっており、緊迫したシーンの雰囲気にどう見ても合っていない。
-
エンディング曲はデータに入っているのだが、なぜか未使用。しかもこれも後半パートはカット。
-
太鼓の音のような腑抜けた銃声、重量感のないジャンプ・着地音、ボボボというノイズじみたバーニア音、タイピング風のテキスト表示音、ピコッというアイテム取得音など、SEの大部分が改悪。さらにはどういう訳かSE自体が鳴らなくなった動作も複数ある。
-
大統領と対峙するシーンでなぜか流れるOPテーマ(SFC版は無音)。
-
前述したように本作のBGMは殆ど改悪アレンジなので、完全に雰囲気ぶち壊しである。
ゲームバランス
全体的に不当に難易度が上昇してしまっている。以下の問題には今作スタッフもインタビューで「もっと難しくしたかったです(笑)」と回答しているものの、完全な調整不足によるものであるため、弁解であるのは言うまでもない。
-
特にバランス不足なのが2面の前半部分。敵機が放つ誘導弾のスピードがSFC版と比べてより激しくなっている。それに比べて強制スクロールも何故かSFC版より遅くなっている。この明らかなバランス不足がきっかけで、先に進めなかったというプレイヤーも多数いた。
-
他にも、4面の降下中は自機より速い敵3機に追い回される、6面の洞窟は中ボス「サーペント」の出現時に音が鳴らない、7面の強制スクロール(=ゾアフレム戦の直後)は中ボス「ヴォルカーノ」を撃破するまで回復不可、ラスボス「ビルドヴォーグ」戦は回復不可かつ腕部の追尾性・攻撃頻度が非常に高い、といった難所がある。
-
自機の操作性・機動性の悪化は前述の通りだが、他にも複数の問題点がある。
-
武器が大幅に弱体化。ミサイル・アームパンチの威力や、バルカンの威力・自動連射速度・弾速が低下している。
-
ザコを倒して得られるアイテムの出現率が激減。Pアイテム(=武器強化)はともかく、Hアイテム(=回復)は出ないものと割り切らざるを得ない。その結果「積極的に動きながら戦うのではなく、シールドで耐えつつ隙をうかがえ」という消極的なゲームバランスとなっている。
-
ボス関係の当たり判定がめちゃくちゃ。更にオリジナル版より敵の体力が多いなど、敵はムダに強化されている有様である。
-
一例として、1面のPアイテムを全部バルカンにつぎ込んでも、2面開幕の強制スクロールで敵が撃ってくるミサイルがなかなか破壊できず食らいまくり、SFC版をやり込んだプレイヤーですらクリアできずに死ぬか瀕死で突破できてやっとのレベルの難易度に跳ね上がってしまっている。
-
SFC版ではやり込んだプレイヤーならば微ダメージで切り抜けることも可能なため、どう贔屓目に見てもバランスが悪化しているのは明白である。
-
隠し武器のナパームをレベルアップさせられるようになる条件が「2面を最低限のスコアでクリア(ボスのみ撃破、道中の岩も自機との接触による破壊すらしてはならない)」なのだが、難易度上昇のため通常プレイではまず不可能になってしまっている。
-
このように難易度が無駄に上昇している一方で、逆に難易度が低下しまくっているステージも存在する。
-
例えば、7面の議事堂で対決する中ボス「ゾアフレム」のAIが劣化しており、入口前で上から攻撃しても何故か襲って来ず、入口下内を右往左往する。ばかなやつめ…
-
一応、空中浮遊しわざと敵を誘き寄せれば追いかけて来るのだが、それでもプレイヤーの思い通りには動いてくれない。
グラフィック
-
全体的に横圧縮がかかっており、うるし原智志氏渾身のデザインのキャラとドット絵もこれによって無惨な姿を晒してしまっている。
-
更に、この点においてもSFC版からの劣化点が多数見られる。
-
字幕に縁取りがついておらず、白い背景やエフェクトに埋もれてしまう。さらに特定のシーンでの文字送りが速すぎるなど、読めない事態が多々発生する。SFC版ではちゃんと縁取りはついていたのに……
-
全体的に爆発の仕方が適当。まるで動画編集ソフトで爆発素材をランダム記置させたかのような簡素っぷり。爆発エフェクトもオリジナル版では拡大演出まで使って派手に表現されていたのに対し、こちらはそのバリエーションもどういう訳か大幅に削られてしまった。しかもこの爆発エフェクトは、なんとラスボスやEDにまで使い回されている。
-
ステージ3に出てくる追尾レーザーに至っては何故かこれだけ原作基準であり、次世代機とは思えないほど非常にカクついている。さらによく見るとSFC版よりも動作が遅くなってる。
-
コンティニュー画面のカウントの迫力まで低下してしまっている(SFCではボールが拡大縮小して数字の形に組んでいた)。
-
エンディングにも手抜き感が漂う。
-
重要なワンシーンでコマ落ちが発生し、画面が切り替わるまで続く。
-
戦争から帰還したジェイクがヴァルケンから降りても機体が爆発しない。
-
エンディングの背景には、一切の脈絡が存在しない謎のハニカム柄が並んでいる。
-
グッドエンドでもジェイクのヘルメットのディテールが変わり、クレアの左足が消えている。
-
スタッフロール途中、突然BGMがブツッと切れその後不自然にループする。BGMループさえまともに出来ていないのはいかがなものか。
-
そしてスタッフロール後に表示されるヴァルケンの一枚絵も存在しない。…どこまでも手抜きである。
演出
ゲームに彩りを添えていた細かい演出の殆どがカットされている。次世代ハードでのリメイクでありながら、旧世代機でできていた事の再現すらできていない。ちなみにリメイク版スタッフは、インタビューで『SFC版』の演出の細かさを絶賛していた。
-
バーニアの噴射が壁や床に当たったときに煙がまき上がらない。
-
無重力でもバルカンの薬莢やナパームの弾道が放物線を描く。このゲームの宇宙における物理法則はどうなっているんだ。(原作の宇宙空間では直進する)
-
大気圏突入前後のヴァルケンが赤熱しない。助けに来たバーシスは赤熱しているのに何故…。
-
大気圏突入時に不自然なホワイトアウトの挿入(バリュート展開のドットアニメを作るのが面倒だったので手抜きしたというのがモロバレ)。
-
ヴァルケンから切り離されたブースターが、重力の有無を問わずその場にピタッと制止する。このゲームの宇宙の物(ry
-
最終面でヴァルケンが天井を突き破って突入するシーンがあるが、溜めもせずスピードがノロノロ。
-
瀕死時の演出及びメッセージ、そして死亡時の主人公及びラスボスの断末魔もばっさり削除されている。
-
死亡時の機体がバラバラになる演出も削除されており「無音のショボい爆発エフェクトを出すだけで、コンティニュー画面に切り替わるまで攻撃可能」という超手抜き仕様に。
-
ロボットや兵器の演出も色々と酷くなっている。
-
バーシス(母艦)からの発進時、本来の発進口でなく艦橋付近からヴァルケンが出てくる。
-
ちなみに、ステージごとにバーシスの発進口の位置がコロコロ変わる。
-
さらに、0面・5面のヴァルケンは発進前からバーニアを噴かしている。
-
コロニー外壁をぶち破る突入シーンでは、外壁にヌルリと挿入され、不時着時には無音でボヨンボヨン元気に跳ねるバーシス。
-
ロケットエンジンを破壊していくステージでは、エンジンだけでなく、なぜか噴射炎(バックファイア)まで爆散する。
-
ステージ5のボス「シャトル」では、バーニア部分に不自然に煙がくっついたまま発射する。しかも無音である。
-
倒すと、ショボイエフェクトと共に忽然と消える大型の敵。
-
無音で暴れるラスボス「ビルドヴォーグ」は、巨大ジョイメカファイトと揶揄された。
その他劣化点・改悪点
インターフェイス
-
システム面の刷新についても、APPENNDIXモードの実装と一部設定のセーブのみ。難易度変更、中断セーブ、L2・R2ボタンへの対応、カスタムキーコンフィグといった有用な機能は見当たらない。
誤字脱字
-
1面の『全速で離出(離脱+脱出?)だ!』、3面の『アーク・ノバ地下(落下)までの時間は~』等。
-
百歩譲って「離出」は目を瞑るとしても、落ちることを「地下」と表記するのは流石に正気の沙汰とは思えない。
-
最終面の名称も『兵士達の終末(終幕)』に変わっている。
評価点
-
あらゆる点が劣化しているが、「重厚なロボットを操作する2Dゲーム」という体裁は辛うじて保たれている。
-
全身無敵であるシールドを駆使しつつ慎重に歩を進めれば、難しいシーンは意外に少ない。もっとも、そのようなゲームプレイを「アクションシューティング」と呼べるかは疑問だが…。
総評
マイナーながらも高い完成度を誇る、いわゆる「隠れた名作」と言うべき『SFC版』。もう一度手に取れる機会の乏しい中でのまさかのリメイクにファンは歓喜、そして蓋を開け、絶望していった。
なにより「システム」「グラフィック」「演出」「サウンド」「ゲームバランス」をはじめとしたありとあらゆる内容が見るも無惨に劣化し、リメイクとしてはもちろん、単体のタイトルとして見ても問題外のシロモノに変わり果てていたのだから。
少し触っただけでも「手抜き」や「根本からの技術力不足」などが劣化の原因と察せられる以上、「開発陣はまともに作る気が無かったのか」と非難されても仕方ないだろう。
余談
パッケージ
-
パッケージ画像は「荒野に飛び交う謎の円盤」という意味不明な構図。
-
加えてヴァルケンの絵をSFC版のパッケージ絵から流用しているという手抜き仕様。しかもよく見るとヴァルケンの左足付け根が不自然にでこぼこした輪郭で、質感も明らかに他のパーツと異なっている。それもそのはず、実はこれ、SFCに描かれていたクレーンの作業用アームの先端を消し忘れていたというお粗末なシロモノである。この時点でおかしいと思った原作ファンは多数いただろう。…まあ、そもそも原作を知る余地もない韓国メーカーに丸投げした時点で既におかしいのだが。
-
パッケージ裏には「幻のステージ0を追加!」「キャラクターデザインにはうるし原智志氏を起用。」と書いてあるが、これらの文章は文字通りの捏造、つまり真っ赤なウソである。
個人サイト
-
発売後、本作の劣化具合をまとめた特設サイトが二つも作成された。片方はこちら。
-
もう片方は閉鎖されたが、こちらからアーカイブを確認可能。
-
封鎖された方のサイトには本作のパッケージやディスクが滅茶苦茶に粉砕されたスクリーンショットが掲載されている。本来このようなディスク損壊はとても褒められたものではない行為だが、態々お金を出してこのような酷い出来の代物を掴まされたファンの怒りの一端を垣間見る事ができる…のかもしれない。
サウンドトラック
-
本作の改悪BGMを纏めたサントラも発売されている。
-
たとえ怖いもの見たさであっても購入はおすすめできない。もし興味を持ったとしても、丁寧なアレンジも入っている1992年発売版の方を購入すべきであろう。
-
このサントラに収録された最終面BGMではサビ部分もちゃんと聴く事ができるのだが、今度はループの繋ぎ目が改悪されるという問題が発生している。どうやら何にも学んでいない模様。
フリーゲーム『ガンヴァルケン』
-
BGMのあまりのクソっぷりに「2ちゃんねる」で自作アレンジが投下され、アレンジ曲に触発されて自分たちでゲームを作るという動きが生まれ、ガンヴァルケン(V-II)というフリーゲームが制作された。
その他
-
上述した状況もあってか、開発の裏側が有志により掘り返されるようになる。
-
それだけにとどまらず内部リークまで始まり、結果としてお隣・韓国のゲーマー勢まで巻き込んだ騒動にまで発展した。
-
開発側の予定では更なるシリーズ展開も構想され、スクリーンショットも公開されていたという。しかし本作の悪評が祟ってかシリーズ展開の続報は完全に途絶え、自然消滅した。
-
なお、PS4版重装機兵レイノスの開発スタッフ(ドラキュー代表 富野裕樹氏)曰く、一部の過激なユーザーによる襲撃予告や殺害予告といった犯罪行為がシリーズ展開頓挫の直接的な原因らしい。
-
「後にこれを作った会社の社長と話をする機会があったが「あの時は本当に怖かった」らしい。もともとがゲーム開発よりの人ではないので真に受けすぎなんだと思うが「夜道に気をつけろ」とか
「襲撃してやる」っていう当時でいうと少しやんちゃなファンレター、今で言う殺害予告に本当に恐れていたらしい。」、「PS4への移植については極めてビジネスライクな側面もあるが通常なら許可をだせなかった、というのをだいぶ後になってから聞いた。なぜならあのソフトのファンによる凶行が怖いので、下手な移植をすると僕自身が怪我をすることを案じているようで、僕がVIIの作者だから(下手な移植はないかもしれない、と)許可を出してくれたらしい。」とのこと。
-
ちなみに「VIIの作者」と言っているように、富野裕樹氏は前述したフリーゲーム「ガンヴァルケン(V-II)」のメインスタッフ。PS4版重装機兵レイノス開発の際、ガンヴァルケンについてヴァルケンの版権を持つ人に正式に謝罪したところ「自分たちで作れないものを本当に好きな人達によるファンメイドで盛り上げていってもらえる、これからの作り方に期待している」との応援を同席した佐藤昌平社長から貰ったという。
最終更新:2024年07月03日 23:10